ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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遅くなって申し訳ないです。

この4.5巻で物語が大きく進みます


第4.5巻
運勢 本音はいつだって出なくて


 

 波乱ばかりで、俺の記憶にも大きく残ったバカンス旅行が終わり、俺は部屋の中でダラダラしていた。それに加えて、帰って来てから、葛城派のみんなで打ち上げをしたのと弓道部の大会の打ち上げを一年メンバーだけでしたの以外は外に出ていなかった。

 まぁ、特に外に出なかった理由は無いんだが、あの何日間で頭を使い過ぎたのと、弓道部の大会が原因だとは思う。あと何日かは休むつもりでいる。

 

 そんな中、部屋のチャイムが鳴らされる。続けて何回も。……今日の誘いを断ったから、戸塚か?うーん、出たく無いが仕方ないな。

 

「ごめん、康平から聞いてなかったか?」

 

 戸塚だと思って、パジャマから軽い部屋着へ着替えた格好で玄関を開けたんだけど、そこにいつもよりも不機嫌さが鳴りを潜めて、私服で立っていたのは神室だった。え、どうして?この格好はダメだ。

 

「あんた。部屋着、流石にダサ過ぎない?」

 

「ちょっと待っておいてくれ」

 

 一度会ってしまったが、この格好のまま話したりするのは集中出来ない。とっとと、他の人とのお出かけようで、オシャレな部類のやつを着る。後は適当に髪の毛を整えたり、色々してから神室の元へ。

 

「待ったか?何か用があるんだろ?とりあえず、入ってくれ」

 

「……え?何……この部屋」

 

「何驚いてるんだ?その辺に座ってくれよ。人を招くことは想定してない部屋だけどさ」

 

「ボードゲームとかのおもちゃ多すぎでしょ。後、キッチン用品も多すぎ。それに何これ?」

 

 ああ、そういえば、部屋に人を入れたことが無いから忘れていたけど、確かにこの量は少し多いかもしれない。でも、部屋の一角だけだし、生活には困らないから大丈夫だと思うんだけどな。

 

「それはあれだよ。言いにくいけど……復讐計画書。厨二臭いけど、出来は良いんだ」

 

 あの時、あまりの復讐心に駆られた俺が書いたやつだけど、今見ても現実的な案で綾小路に近づく方法が書いてある。これ通り行動する人生だったけれど、ここに綾小路が居てよかった。もう少しだけ、近道が出来るかもしれない。

 

「ふーん、確かに。細々してるけど、具体性は抜群みたい」

 

「神室を加えた計画表は夏休み中に書くからさ、その時もまた見て」

 

 そんな風に軽く未来のことを話していたんだけど……計画書をじっと見ていたり、部屋を物色している神室は俺に用があったんじゃないのか?

 

「それよりも、何の用で来たんだ?」

 

「うん……結構当たる占い師が来てるらしいんだけど、一緒に行かない?」

 

「俺と神室がか?こんな風に誘うなんて珍しくないか?」

 

 神室の表情はいつもと変わらないように見えたけれど、俺に申し訳ないというか、素直に頼みずらいのか、声がたどたどしい感じで声もより小さかった。

 

「復讐の行方とか気にならない?やる気を上げる意味でもやってみても良いと思うんだけど。あと、これは私の意思だから」

 

 神室の意思は堅いようで、俺が一緒に行くと言わないと嫌だと言うのは見え隠れする不機嫌さと機嫌からそう思われるんだけど、どうしようか。確かに、今までは余裕がなさすぎて、占いなんてする気は無かったんだが、縁を担ぐという意味でも、単純に気になるって意味でもやってみるのも悪くないかもしれない。

 

「そうだな。一緒に行くか。いつ行くんだ?」

 

「今から。先に部屋の前にいるから」

 

 早いな。あんまり俺と神室が一緒にいるところを一緒に見られたくないんだが、今更か。だけど、何かしらの口実は考えなければならないな。

 

 初めて部屋の中まで招いたのが、神室だと気づいた俺は気恥ずかしさを抱えつつ、それを悟らせないように神室の前に姿を見せるのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「へぇ、葛城のためにわざわざそんな危ないことしたんだ」

 

「まぁ、康平の妹さんとは一応俺も面識があるから、これくらいのことはするよ」

 

「でも、バレたら一発退学なのにほんと、よくやる」

 

 神室とやりとりしてる会話はこの間、康平から秘密裏に受けた依頼の話だ。あんまり洩らしちゃいけないことなんだけど、神室は信用も信頼も出来る。これくらいのことぐらい大丈夫だろう。

 

「ああ。そういうことか」

 

 今日、ケヤキモールにカップルが多くいたのと、何で神室が俺を誘ったのかが疑問に思ったけど、占いに行くためには二人一組である必要があるらしい。坂柳は占いに向いてなさそうだし、神室が俺を誘うのも納得だな。

 

「そういうこと。色々コースがあるけど、どうする?」

 

 色恋、仕事、学業、天誅殺とかいうよく分からないものまで色々取り揃えているようだった。はっきり言えば、なんでも良いんだが、色恋は二人一組ということで、神室との恋愛の相性を占うんだろうな。それは……むず痒い思いだな。

 

「なんでも良いが、俺のあれは何に含まれるんだ?」

 

「仕事?とかなんじゃない?……仕事と結婚するかどうかでも変わると思うから、色恋も占う?」

 

 え?俺との相性にならないかそれ?いや、でも違うのか?俺は占いなんてやったことないから分からないが、神室の言っているやり方でも出来るのか?

 

「それで良いんじゃないか?ポイントなら、たくさんあるから大丈夫だろ」

 

 少し多かった列が段々と減っていき、いよいよ俺たちの番になった。柄にも無く、緊張する。もし、俺のことが分かったら。もし、俺の闇を見られたら……どうしよう。そんな俺の手を少しだけ、ゆっくりと神室が触ってくれた。

 

「緊張すること無いから。一応、これ占いだから」 

 

 入ると、如何にも雰囲気の場所で俺は緊張感はさっきよりも少し上がってきた。でも、大丈夫だ。俺は結果を楽しみにするだけで良い。

 

「ようこそ。どのプランにする?色々あるけれど」

 

 基本プランがあったけれど、俺たちは基本プランにプラスして、仕事と恋愛を重点的に占うことにした。占い方法は様々で、手相やらなんやらから始まり、タロットや名前、誕生日も含んで占ってくれた。

 

「分かりました。まず神室真澄さん。貴方からいきましょうか」

 

「まず、仕事ですが、大変な苦労をすることはありませんが、過酷な現場になるでしょう。挫けずに続ければ、大きな利益を得ることになると思いますよ。恋愛、結婚ですが、残念ですが、貴方のチャンスは一度きりです。そして、その相手はお互いの時期的に隣の彼氏さんの可能性が高いですね。逃さぬよう」

 

 気まずい。俺と神室は所謂、相棒という立ち位置でお互いの認識の中にある。それをいきなり、運命の人だと言われると何か戸惑うし、俺としても気恥ずかしい。神室も手をグーパーしたりして、戸惑っているようだったけど、変わらず顔は真顔に近かった。

 

「最後まで付き合うとは言ったから、そうなるかも」

 

 俺なんかで良いのか神室?精神的に安定してなくて、復讐に自分の人生全てを使おうとしている阿呆だぞ?そんな俺と……いや、俺だってもう神室が居ないと復讐なんて完遂出来る気がしないんだ。占いでも言われたんだ、神室には最後まで付き合ってもらうさ。

 

「では、下関涼禅さん。貴方の運勢ですが」

 

「貴方の仕事は重大な選択ばかりの仕事のようですね。一度でも選択を間違えると、その道で大成することは無く、終わってしまうでしょう。充分気をつけて下さい。恋愛ですが、お二人の相性はすこぶる良いです。ですが、困難が多いようなので、対策などはして損は無いでしょう」

 

 ざっくりとした結果だが、多分当たっているだろうな。復讐も含めて、俺の将来は危険と隣合わせなことには変わらないだろうから。それよりも、神室と目も合わせられないことの方が問題だ。ここから出たらどう会話しようものか……。

 

「占いはこれで終了です。お二人ともでは」

 

 占いが終わり、退出を促された。そのまま、流れるままに外に出てしまったけれど、神室とは無言のままだ。俺から何かを言えばいいのか?恋愛なんてもう何年も経験してなくて、神室がどう思っているかなんて分からないから、どうしようも無い。

 

「下関」

 

「……何だ?」

 

 神室は決してこっちを見なかったけれど、声をかけてくれた。その声はいつもよりも、震えているようで、また、上擦っているようにも聞こえた。

 

「私たち、相性ばっちりなんだってね」

 

「そう、みたいだな」

 

 いつもは特に気にしないのに神室の言葉に対しての返答にどう思われるか気になって、ただ今は頷くことしか出来ない。

 

「付き合わない?私とあんたで。葛城や坂柳には情報を得るためって言って」

 

 神室の表情はいつにも増して、真面目で、可憐で、綺麗だった。軽く言ったその言葉に、俺は周りの環境も自身の人間関係も関係なく、一言だけその言葉を口にする。

 

「そう……するか」

 

 我ながら最低な返答だと思う。でも、そんな返事でも満足したのか、あまり笑わうことが無い神室の表情は少し笑顔になる。

 

「好きなんて簡単に言わないのが下関らしい。じゃあ、そういう設定で葛城には報告しといて、私は坂柳に言ってくるから……また明日」

 

 言うことだけ言って、神室はどっかに行ってしまった。俺たちは今、付き合っているだろう。多分。でも、それが設定の為のお付き合いなのか、恋愛としてのお付き合いなのかははっきりしない。だが……少なくとも俺はこの占いの時間で神室への恋心というものを自覚した。いつかははっきりさせないとな。

 

 

 ★ ★ ★

 

 

「そうですか。下関くんとお付き合いですか……神室さんも隅に置けませんね」

 

「あんたがもっと下関のこと知りたいって言ったから、してきたんだけど?」

 

 無駄な物が無く、どちらかと言えば、物が少ない部類に入る坂柳の部屋。そこで、神室は下関と付き合ったことを報告していた。淡々と告げつつも、洞察力がずば抜けている坂柳に余計な情報を渡さぬように顔を少しずらして話していた。

 

「フフフ、では、そろそろ頃合いですね」

 

「……何が?」

 

「神室さんに下関くんの過去を教える頃合いですよ。聞きたいですよね?」

 

 神室は迷う。この一歩を踏み出して良いものか。下関本人から聞いた方が良いのでは無いか。下関の精神をより自分が上手くサポート出来る様に聞いておいた方が良いのでは無いか。そんな多くの感情に支配されつつも神室は答えを出す。

 

「まだ短いけど、下関とは関わったから、聞きたく無いっていうことは無い」

 

「フフフ、ではお話しましょう。下関涼禅の過去を。もちろん、私が知っている限りですけど」

 

 直接、下関に聞かなかったことを心の中で下関に謝りつつも神室は坂柳の話へと耳を傾けた。

 




そんなに4.5巻編は長くならないです。、
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