ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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 第五巻開幕です


第5巻
譲渡 時として静観


 

 長いようで短かった夏休みが終わってから二学期になった。個人的には人生で一二を争うほど濃かったけれど、良い意味で濃かったのは今年ぐらいだと思う。神室との恋人の件は康平にしか言っているけれど、康平だろうから、そんなに大っぴらに言わないだろうな。言ってもいいのに。

 そんな思いがあった夏休みだったけれど、新学期は始まってから早々、真嶋先生から色々発表があった。まず、一ヶ月後に体育祭があるらしく、それまでの一ヶ月間は体育の授業が増えるらしい。はっきり言えば、Aクラスは体育などの運動に関すれば、他クラスとはそこまで差がない。しっかりと適切な人材を配置しなければならないとはと思う。しかも、ポイントも特別試験ぐらいに無いにしろ、もらえるらしい。

 

「今回の体育祭は全学年を2つの組に分けることになっている。Aクラスは赤組に配属される。Dクラスも同様に赤組に配属される。今回の体育祭ではDクラスは味方だということになる」

 

 Dクラスが味方か、何か感慨深いな。だけど、今回の試験では坂柳に主導権を渡そうと、康平とは事前に打ち合わせしている。だから、綾小路と関わることは無いかな。

 

 真嶋先生の説明と渡されたプリントを要約すれば、体育祭には全員参加競技と推薦参加競技があり、全員参加競技は一位に15点、二位に12点、三位に10点、四位に8点が与えられて、五位以下は一点ずつ下がっていく。団体戦は勝利すれば500点がもらえる。

 

 推薦参加競技は一位に50点、二位に30点、三位に15点、四位に10点が与えられて、五位以下は2点ずつ下がっていく。最終戦のリレーは3倍の点数がもらえる。

 まぁ、要約して色々と点数を考えてみたが、そこまで事細かに考えて配置する人はいないとは思う。最終的には本人の馬力だろうし。

 

 それに加えて、総合点で負けた組のクラスはクラスポイントが100も引かれ、総合点で一位になったクラスはクラスポイント50もらえて、二位になったクラスは変動無し。三位はクラスポイントが50引かれ、四位は100引かれる。中々に変動の多い仕組みになっているみたいだ。ここで差を縮められる可能性も無くはない。どうせ、坂柳が主導になる予定なんだ。どれだけ縮められても極論問題無い。

 個人競技での順位でプライベートポイントの増減や次のテストの点数がもらえるなどあるみたいだが、それもそこまで気にすることは無いだろう。最優秀賞なんかもあるが、これもAクラスには関係なさそうだ。

 

「ペナルティも存在している。学年の下位10名に課されることになっているが、現段階ではまだペナルティは発表出来ない。くれぐれも気をつけるように」

 

 そう言い残して真嶋先生は口を閉じた。この間に説明した次の時間の全学年での顔合わせの打ち合わせをしろってことなんだろうな。ペナルティについてはまぁ考えなくて良いだろう。クラスで出たとしても一人や二人、なんとかなる。さて、この時間に合わせて、康平にアイコンタクトを送る。それを受け取った康平は坂柳へと近づいていく。

 

「坂柳。今回の体育祭について改めて言いたいことがある」

 

「ええ。どうぞ」

 

「今回は坂柳に指揮をとってもらいたい。俺は無人島と船内で指揮をとっていたからな」

 

「分かりました。謹んでお受けします」

 

 全くもって謹んでいないような表情だけど、素直に了承していた。多分だけど、今回のような周りの状況だったら、坂柳は成功に導かざるを得ないだろうから、そこまで警戒する必要は無いと思う。Dクラスと協力するかどうかは分からないけれど。

 

 

★ ★ ★

 

 

 一時間目の時間は直ぐに終わり体育館に集まる二時間目になった。あんなに普段はガミガミしているこの組だけど、仲良く整列をしたら、そんなこともなくなり普通のクラスと変わらない静かな列となっていたのは少し面白い。

 

「やっぱり多いな。流石に生徒会の人は分かるけれど、二年や三年は知らない人が多いし」

 

「そうだな。率いる人間はよく見ていておいた方が良いかもしれないな」

 

 体育館には総勢400名を超える人たちが揃っていて、こんなにも多くの生徒が揃うなんて入学式以来だと思う。そんな人ばかりがいるこの場所でも堀北会長や南雲副会長、橘書記なんかは直ぐに見つける出来た。やっぱり大物の人たちはオーラというか存在感が違うよね。そんな中見たことない生徒、多分上級生が前へ出て声を上げた。

 

「俺は3年Aクラスの藤巻だ。今回赤組の総指揮を執ることになった。一年生には先にひとつだけアドバイスをしておく。一部の連中は余計なことだというかも知れないが、体育祭は非常に重要なものだということを肝に銘じておけ。体育祭での経験は必ず別の機会でも活かされる。これからの試験の中には一見遊びのようなものも多数あるだろう。だがそのどれもが学校での生き残りを懸けた重要な戦いになる」

 

 三年の先輩から経験を踏まえたアドバイスを貰った。先輩がどんな環境で過ごしてきたか分からないので、真正面からは受け取らないけれど、心の何処かに止めておこうと思う。そして、リレー以外は全学年が一緒になることはないらしいので、各学年の作戦会議に残りの時間が渡された。といっても、俺と康平を含む葛城派は坂柳派の言うことを淡々と聞くだけだけど。

 椅子に座っている坂柳の周りに集まっていた俺たちAクラスの所へ平田を始めとしたDクラスの面々が勢揃いで揃ってきた。

 

「今回、Aクラスを率いるのは私、坂柳有栖です。よろしくお願いしますねDクラスのみなさん」

 

 坂柳と会うのが初めてなのが多いDクラスの人たちの為に坂柳は丁寧にしかも、しっかりとした笑顔で自己紹介をした。こんな自己紹介をする美少女に分類される彼女があんなネチネチとした妨害工作を指示してるなんて思わないだろうな。

 

「うん、よろしくね坂柳さん。協力して頑張っていこうね」

 

「ええ、そのつもりです」

 

 そうしてやっと話が具体的なことに入ろうとした時、近くで集まっていたBクラスとCクラスの面々から体育館に響く声が聞こえた。そっちの方を見ると、声を上げたのは一之瀬だったみたいで、その相手は龍園だった。

 

「こっちは善意で去ろうとしているだぜ?俺が協力を申し出たところでお前らが信じるとは思えない。結局端から腹のさぐりあいになるだけだろ?だったら時間の無駄だ」

 

「なるほどー。私たちのことを考えて手間を省こうとしてくれてるんだねー。なるほどー」

 

「そういうことだ。感謝するんだな」

 

 龍園はとっとと去って行き、それに着いて行くようにCクラスの奴らも去って行った。最初からCクラスは協力する気はないってことか。覚えておくことだとは思うが、どうせ、龍園のことだ、真面目に体育祭はしないだろう。誰かしらに接触して、何かしらの手を打ってくるはず。

 ここにいる全員が一度はそちらを見たが、ことの顛末を見届けると、興味を失ったように自分が先程まで見ていた視点に戻した。

 

「みなさん。見ての通り私は足が不自由ですので、競技に参加することは出来ません。Aクラス、Dクラスともにご迷惑をおかけします。そのことについて、まずは謝らせて下さい」

 

「ううん、いいんだよ。誰だってその点について追求するつもりは無いから」

 

「ですが、Aクラスの参加する人たちは私が決定いたします。何か競技についての相談があるのならば、私に申して下さい」

 

 坂柳がどう考えているかは分からないが、この体育祭では仕方なくリーダーを引き受けたと考えていいだろうな。体育祭では坂柳の得意な裏から色々とするよりは結局所、運動神経が全てだ。適当な結果を出しつつ、次回の特別試験での結果を待つんだろうな。まぁ、坂柳だけへ情報を流されるのも俺には神室が着いている。一応の為の情報をくれるだろう。

 

「それで、話しておきたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

「何かな、坂柳さん?」

 

「クラスメイトをどの競技に参加するのか決めると思います。その過程で私と平田くんの二人で擦り合わせをしたいのですが。どうです?その時に団体競技に関することも決めましょうか。信用出来ない人物がいる中では話せないので」

 

 坂柳は俺と康平のことをチラリと見ながらその発言をした。うーん、神室まで入れないで一対一で話すなんて坂柳のことも意外なことをするもんだな。これが、平田以外のDクラスの人間に聞かれたくないからなのか……神室のことを信用してないかどちかだろうな。後者の場合だったら、俺との関係がバレていることにも繋がるか……、

 

「うん、分かったよ、みんなもそれで構わないかな?」

 

 平田が確認すると、Dクラスの面々は特に迷いなく頷いていた。まぁ、坂柳と一対一なら、平田から力づくで聞くことは出来ないだろうしな。そこまでDクラスの人たちが考えているかは知らないが。

 

「ありがとうございます。それではその日程はまた後日にお知らせします」

 

 

★ ★ ★

 

 

「それで何か坂柳は言ってた?」

 

「さぁ、特に。でも、今回は様子見とは言ってた」

 

 夜、最近部屋に招いて交流している神室に対して、坂柳の情報を聞く。その為に招いた訳では無いにせよ、坂柳の側にいるから、情報はしっかりと聞いておかないとな。

 

「それで今日はカツ丼で良かった?そんな凝ってないけど」

 

「問題無いよ。体育祭の出来事が発表されたってことだし、縁起ものってことでね。それに……おいしいよ」

 

「ありがとう。だけど、下関は高いものばかり食べてきたんでしょ?」

 

「あーまぁ、一応そうなんだけどな。なんか、それよりも美味しいんだよ」

 

 あの日から俺と神室は周りの人間に変に疑われないように、恋人らしい行動を取っている。今回のやつもそれの一環ということを互いにチラッとは言った。何となく、正式な恋人とは互いに言えない空気感だから未だに言えていないからだけど。

 

「……今回の試験、あんた的にはどうなって欲しいの?」

 

「うん?今回、何もしないよ、多分。坂柳が勝とうが、そんな大きい勝利にはならないだろうし、DクラスとAクラスが会った時に一目、綾小路を見たけれど、興味なさそうだったからな」

 

「へぇ、何か意外」

 

 坂柳のことを高く買っているけれど、今までしっかりとした実力は見てこなかった。今回、それを見れるといいけど。

 




 五巻はそこまで話数は無し予定
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