ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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 遅れてすみません。
 6巻です! さくさく進んでいきたいですね。



第6巻〜第7巻
新章 侮ること無く努めて冷静に


 

 生徒会室に集まるのは生徒会のメンバー。といっても、一年は俺と一之瀬のみで少し気まずい空間だったけど。珍しく集まった今回の目的は生徒会の引継ぐをすることらしい。だけど、堀北先輩と南雲先輩の仲があまり良く無いから空気は最悪。……そういえば、体育祭の綾小路のことで堀北先輩に聞かなきゃな。綾小路とどういう関係なのかを。

 

「例年通り、先に内々で済ませておき、1週間後に改めて全校生徒の前で行うこととする。南雲は事前に文章などを考えておいてくれ」

 

 堀北先輩は淡々と作業を進めていく。その様子はもうこの教室に来ることは無いだろうに悲しさはあまり感じなかった。

 

「分かってますよ。しっかり全校生徒の記憶に残る文章にする予定です」

 

 南雲先輩は嫌な笑顔をする。絶対なんかする気だよ。でも、綾小路が堀北先輩と繋がっているんだとしたら、俺は対抗して南雲先輩と手を結ばなきゃいけないんだよな。今のうちに南雲先輩のことを知っておかないとな。

 

「先輩。お渡ししたいものがあります」

 

 俺と一之瀬は前へ出て、花束と色紙を渡す。絶対に堀北先輩他の三年生は全員、さっきから気づいていたとは思うけれど、橘先輩だけは気づいて無かったようで驚き、嬉し涙を流していた。こんなことを言っては失礼だと思うけど、こんな純粋な人がAクラスとして生き残ってきたのが信じられない。

 

「みんな……良い人ばかりです!! これからの学校も安泰ですね会長」

 

「ああ……そうだな」

 

 情動的な橘先輩と厳格な堀北先輩。今更だけど、相性良くバランス良いコンビなのかもしれない。だからこそ、生徒会の運営は上手くいっていたのかな。そういう点では南雲先輩が描くこれからの生徒会は少し心配だな。

 

「堀北先輩。少し話したいことがあるんですが、いいんですか?」

 

「何を聞きたいんだ?」

 

 一同解散となった後、俺は堀北先輩に話しかける。堀北先輩は妹とは違ってポーカーフェイス気味だから、俺からの質問に対して何を思っているか分からない。だからこそ、言葉でしっかりと答えを引き出すしかない。

 

「綾小路清隆と知り合いなんですか?」

 

 堀北先輩は真面目な顔を崩すことは無く、動揺も無かった。どちらかというならば、俺のことを探っているような、そんな目をしていた。

 

「何故、そんなことを聞くんだ?」

 

「Dクラスの生徒が生徒会長とリレー勝負をする。Aクラスの生徒が気になるのは変ですか?」

 

 堀北先輩にしては考えこんでいるような時間だが、普通の人にとっては短い時間で考えて、答えていく。

 

「綾小路清隆にはそのくらいの価値があると思っただけだ」

 

「え、あ、ありがとうございます」

 

 堀北先輩なら答えてくれない可能性も全然あったのに答えてくれた。これは堀北先輩なりの優しさってやつなのかな。でも、これは大きな収穫かもしれない。綾小路と堀北先輩が繋がっているかもしれないっていうことの。

 

★ ★ ★

 

 

 案の定、全校生徒の前でこれまでの体制を倒すと言った南雲先輩。いや、もう南雲会長か。南雲会長が実質的に支配しているらしい二年の人たちは湧き立っているけど、俺たち一年ともう卒業が近い三年からは歓声の声はあまり上がること無く、真顔の人が多い印象だった。

 

「お疲れ様です、南雲会長。お昼まだですよね? 一緒にどうですか?」

 

 俺を値踏みするような目。相変わらず堀北先輩と別の意味で考えてることが分かりづらい人だな。だけど、俺は自分を偽るのは得意だ。南雲先輩とも上手く付き合っていけるかな。

 

「……いいぜ。新しい生徒会として親睦を深めるか」

 

 無事に南雲先輩から了承をもらえ、向かうのはよく行っているらしい回転寿司屋。中は思ったよりも人が居なくて、わりと話はしやすそうだった。

 

「俺の奢りだ。好きなだけ食えよ」

 

「分かりました。遠慮せず頂きます」

 

 遠慮せずとは言ったものの、ぼちぼち遠慮しながらお寿司を口に運んでいく。船で食べた以来だけど、やっぱりお寿司は月一ぐらいでは食べたいよなー。

 

「大体話の内容は分かるが、話してみろ」

 

「堀北先輩には橘先輩という信頼出来る右腕がいました。でも、南雲先輩にはそんな人間は居ません。俺は康平の元で右腕をやっている実績があります。どうですか? 俺を右腕にしません?」

 

 強気に強気にいく。曖昧な意見なんてもらわない。この間、神室から報告を受けたけれど、坂柳が俺のことを綾小路に言ってたんだ、グズグズしてる暇なんて無い。

 

「確かにな、お前の言うことも一理ある。だが、下関、お前を採用するかは俺の自由だ。今のところは右腕候補にしてやるが、採用されたきゃ、俺に実力を示せ」

 

「……分かりました」

 

 やっぱり一筋縄じゃいかないみたいだ。でも、絶対に綾小路と坂柳は俺を退学に出来る試験があるなら、攻撃してくる可能性が高い。その時の為にも南雲先輩からの助けをもらえる立場になっておかないと。

 

 

★ ★ ★

 

 

 中間テストも終わり、先生からの講評や順位の発表などが行われる。今回のテストも流石Aクラスといったところで全員が退学の危機なく終えていた。そういった点ではこの時間は他クラスと比べても何も無い時間のAクラスなんだけど、今回は真嶋先生から別のお知らせがあった。

 

「次の期末テストの前に小テストをすることになる。この小テスト自体は成績に反映されることのない中学三年程度の範囲のもので、全100問の100点満点だ。この小テストは期末テストに活かされることになっている」

 

 その後の真嶋先生の説明によると次の期末テストはこの小テストの結果によってペアを決定して、一蓮托生で一科目でも60点未満を取ったら、二人とも退学というものだ。赤点も取ったらダメというものもあるが、はっきり言えば、Aクラスの今の成績だったら、全く問題無いと思う。順番的に坂柳が指揮を取るだろうけど、この試験で罠に嵌めるようなことはしないだろう。多分。

 

「それから、この試験にはもう一つ重要なことがある」

 

 真嶋先生の言うことはこの試験の重要性を一気に跳ね上げた。この試験では自分たちで問題を作り、それを他のクラスの期末テストとするらしく、その末、総合点で勝った方が相手のクラスから50ポイントを奪えるということだった。普通のテストでもポイントの奪い合いが発生するなんて、あんまり考えて無かったな。

 

「希望クラスはこちらに伝えてもらったら構わない。では、君たちの力を信じてる」

 

 真嶋先生が去った後のこのクラスの空気感は死んでいるように静かだった。俺が知っている限りの葛城派は坂柳派の人間を睨みつけ、坂柳派の人間も葛城派の人間を睨む。いつになったらこのクラスのこの空気感が良くなるかは分からないが、数泊の呼吸の後、坂柳が声を発する。

 

「では、約束通り、今回の試験は私が指揮を取らせて頂きますが、構いませんか?」

 

「ああ、構わない。今回も体育祭に引き続き頼んだ」

 

 坂柳の宣言に康平は考える余地もせずに了承の旨を述べる。次の試験がどんな試験か分からないから、何とも言えないが、そこそこの結果を残して坂柳は康平にバトンを渡してくれればいいけど。それに……綾小路と坂柳の関係がよく分からないから、一年の内には坂柳降ろしをしなきゃな。綾小路の味方をされたら、困るからな。

 

「では、こちらで問題、攻めるクラスは決めさせて頂きます。追って連絡もしますね」

 

 伝えることは伝えたとばかりに坂柳は教室から出ていく。その傍に神室と橋本を置いて。その神室は合図のように俺の方を見る。多分、今日、俺の部屋に来るってことだろうな。あまり聞かなかった坂柳という人間についても聞いてみるか。

 

 

★ ★ ★

 

 

「どうだった会議は?」

 

「無難だった。あの感じ、Bクラスに攻撃するんじゃない? 他クラスには興味がなさそうだったし」

 

 さっきまでやっていたらしい坂柳派の会議を神室からどんどん聞いていく。温かいカフェオレが冷めるぐらい、それについて話したところで、俺は坂柳について聞く。

 

「それで、今更なんだが、坂柳と綾小路の関係を知らないか? この間、知らせて来てくれた時は混乱であまり聞かなかったから」

 

「直接聞いた訳じゃないことは先に言っとく。下関が偶に言ってるホワイトルームを外から見てたのが坂柳だと思う。綾小路は坂柳のこと知らないみたいだったし、坂柳も綾小路と直接会ってなかったみたいだから」

 

 坂柳の父親は国が作ったこの学校の理事長だ。政府側の人間である綾小路の父親が作ったホワイトルームと関わりがあってもおかしくは無いか。だからといって、俺は坂柳に対して憎しみを抱くことは無い。そんなことを言っていたら、ホワイトルームに関係している人間全員に復讐しなきゃいけないからな。俺は綾小路だけで良い。俺の家族を殺した綾小路の一族全員だけで。

 

「そうか。だったら坂柳が俺のことを知っていることも納得だ。今まで気にしないようにしてきたけれど、これで色々納得出来る。ありがとう。神室が居ないと坂柳にまで怖がることになってたよ」

 

 ソファーに靠れる俺は隣に同じように靠れている神室の方を見ながら感謝を述べる。本当に神室がいて良かった。俺なんかには勿体ないぐらいの子だ。……その神室の手に俺は探り探り重ねる。何でこんなことしたんだろうか、分からない。でも、俺の部屋に置かれた彼女の手を見たら手を置きたくなったんだ。何か、俺……気持ち悪いな。

 

「……。私も坂柳のことが全部分かってる訳じゃない。でも、坂柳は危険だから、敵対するなら……覚悟を決めた方が良いと思う」

 

 さっきまで俺の方を見て喋っていた神室は下を向いて話していた。それがなんだか、照れさせたみたいで、少しだけ嬉しい。神室の忠告もしっかりと聞いておかないとな。それも綾小路と坂柳がどの程度手を組むのかが大事だな。

 

「分かった。仕留めるなら、一気にいくよ」

 

「そういえば、今回の試験は前回通りで、何もする予定は無いとは言っておく。……後、この期間中に一度ぐらいは綾小路に会おうと思ってる。本来だったら、気づかれる前に退学させて、終わり側に言うつもりだったんだけど……ここまでバレてるんだったら、言ったほうが楽だと思うから」

 

 綾小路清隆。ホワイトルームという場所で育った彼に勝てるほど俺は驕っていない。でも、綾小路清隆に勝てれば、俺の人生は大きく進むんだ。全力は尽くす。

 

「分かった。私も出来る限りのサポートはするつもりだから」

 

「ありがとう」

 

 その日の夜。俺の携帯に西野からの連絡が入った。




 綾小路やホワイトルーム関係の情報は下関と坂柳は同じぐらいになったかな。
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