ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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 今回から8巻です。ルール説明は省き気味でいきます。

 Cranさん誤字報告ありがとうございます。


第8巻
実力 領域外からの一手


 

 ほとんど一年ぶりに訪れた学校公認で学校から出る機会。部活の大会で何度か出ることはあったけれど、康平やAクラスのみんな、他のクラス全員で出ることなんていうのは初めてだった。何のために学校から出るかは聞かされてないけど、十中八九特別試験だろうね。

 

「今回は康平が指揮を取るんだよね?」

 

「ああ。今Aクラスは1195、Bクラスは653、Cクラスは242、Dクラスは212ポイント。盤石と言っても過言では無いポイント差だ。俺も少しは楽な気持ちで試験に臨める」

 

 俺がやったことのせいだけど、Aクラスにこのポイント差があっても龍園との取引のせいでプライベートポイントとしてCクラスに取られてしまう。龍園が居なくなったことで無くなるはずも無く、払い終えるまでは続いていた。

 

「だとしても、坂柳を警戒することに他ないが」

 

「坂柳が退学するまではそうなるだろうね」

 

「ん……まぁそうだな」

 

 そして、バスの中で真嶋先生から今回の試験について説明を受けていた。今回の試験は混合合宿。体育祭以来の一年から三年が同じ試験に挑む試験だ。試験では一学年を6個のグループに分けて、その後他の学年のグループと合流。この大グループで最終日の総合試験に挑む。そして、そこの結果で優秀だったならばクラスポイントとプライベートがもらえる仕組みだ。余程足を引っ張ったら、退学とかあるらしいが、俺や康平、神室にはあまり関係ないだろう。それに、男女別だから、神室とは会えない日々になる。ここまで会わない日々は初めてかも。

 

「目的の場所までに着けば、直ぐにグループを作ることになるだろう。男女揃って作戦を立てられるのは今の時間だけと思ってくれ」

 

 ありがたい真嶋先生からの言葉をもらい、生徒たちに時間が渡される。順番的には今回は康平の指示の元で動く約束になっているけど、今回の試験形式、康平はどういう作戦で行くのかな。

 

「真嶋先生ありがとうございます。さっそくだが、今回の試験は俺が率いるということになっていたが、男女間での指示が取りにくいところから、女子への指示は坂柳に任せたいが、どうだろうか?」

 

 堅実な一手だな。無理に男女とも康平が指揮を執ろうとしても柔軟性や個々の自我の問題でガタガタになる可能性は高いからな。他のAクラスのみんなも納得しているようで、文句は出なかった。後は坂柳が了承するかどうかか。

 

「喜んでお受けさせていただきますが、お互いに最低限のルールは決めませんか?」

 

「もちろんだ。そうだな……退学者を出さないこと。差別的なことをしないこと。Aクラスの勝利を求めることでどうだ?」

 

「私のことを何だと思っているかは知りませんが、それで構いませんよ」

 

 あえて曖昧なルールにすることで、坂柳がもし危ういことをしたときにみんなに疑問を抱きやすくしている。流石だな。それにこうしておけば、葛城派というだけで変な扱いをされる事は無い。そんな事をすれば、強い反感を招くことになるしな。本当に坂柳が守っていたかどうかは雰囲気と神室から聞いて把握するか。

 

 

★ ★ ★

 

 

 三学期になり、日本の四季は冬に当たる。そんな中でバスが止まったのはほとんど山奥とも言える場所。見た目はあまり綺麗とは言えないが、管理はされているような小綺麗さの目立つ建物が二棟。学校ものとそう変わらない大きさのグラウンドと体育館。流石、国が管理している学校、このくらいの施設を用意するのは朝飯前か。全ての建物に暖房がついていることを望むばかりだな。

 

 残念ながら、ストーブが一つしかない、寒さが身体にくる体育館に学校全員の男子が集められる。2年と3年がいることで、1年全体はいつものうるささを潜めて何か指示が出されるのををじっと待つ。そして、いつもは真嶋先生が立つような位置に見たことも無い先生がマイクを持って立つ。

 

「バスの中の事前説明で各自、試験の内容を理解できていると判断させてもらう。よって、この場で改めての説明は行わない。ではこれより小グループを作るための場、時間を設けさせてもらう。各学年、話し合いのもと6つの小グループを作るように。また、大グループを作成する場は、本日の午後8時から設けてある、以上だ。補足だが、大小問わずグループ決めに関して学校側は一切関与しない。仲裁役として入ることも一切しない」

 

 偉い立場であろう先生の長い話の後、学年別に分けられるように距離を取っていき、いよいよグループ決めが始まった。今回の作戦は康平曰く、どのグループにも一定程度のAクラスを入れて、堅実な勝利を目指すというものだった。今のAクラスのクラスポイントならこの作戦でも何の問題も無いだろうな。さて、南雲先輩の方も気になるけれど、こっちを考えるのが先か。

 

「さっそくだが、聞いて欲しい。今回の試験、平等にグループを分けないだろうか?」

 

 康平は予定通りの提案をする。そのさっそくの提案に反応するように神崎に平田、Cクラスの現場のリーダーである金田が近づいてくる。

 

「良い提案だと思うよ。平等な能力になって退学は限りなく少ないと思うから」

 

「だが、それではほとんど全クラスで差が縮まらない。今のようなAクラスが独走状態では素直に頷けないな」

 

「僕も神崎くんに同意ですね。このまま打倒Aクラスで3クラスで組むのもありかと」

 

 やっぱり今の状況では康平の提案は受け入れてもらえないか。でも、これ以上の提案はAクラスから出せないんだよな。これの他は何処かのクラスが過半数を占めるグループぐらいか。結局はどちらかになるとは思うけど。

 

「ちょっと良いかな。リーダーでは無い俺が言うのもあれなんだけど、このどんな試験が出るか分からないこの試験で、Aクラスが居ないのは効率が悪いとは思うよ」

 

 まるで自分たちAクラスが能力的に優れているという奢りのクソみたいな発言。こんな発言を康平にさせる訳にはいかない。でも、こうでもしないとAクラスを食い込ませることは出来ない。

 

「おっしゃる通りだとは思いますが、それとAクラスの提案を受け入れるのは別の話ですよ。どちらかと言えば、もう少し割合を増やしてはいかがですか?」

 

「確かにな。それならば、しっかりとした協議の上で納得出来る」

 

 うーん、Aクラスの提案を聞くっていうのも多分難しいだろうな。平田はこちらに対して頷く可能性はあったけれど、顔を見る限り、しっかりとした協議の方に興味を示したみたいだし、これは難しいかな。

 

「しかし、全クラスの全員が納得するグループ分けは難しいだろうな」

 

「だけど、そうするしか無いだろ。他に選択は無い」

 

「だったら、とりあえず6人立候補するのはどうかな? そのグループに集まりたい人が集まる感じで」

 

 その流れで当然という状況でAクラス代表の康平、Bクラス代表の神崎、Cクラス代表の金田、Dクラス代表の平田は問題なく決まる。でもやっぱり、自分たちのリーダーに群がる自クラスのクラスメイト。茶番じゃないか。

 

「こうなるな。だったら立候補したリーダーで他クラスを指名していくのはどうだ? 余ってしまったグループには涼禅に行ってもらうとして」

 

「俺はそれで構わない。これでAクラスは多少のリスクを負った訳だ。他クラスにも理解をしてもらいたい」

 

 急な康平からの指名にアドリブで何とか答えて、流れをこちらへと持っていく。この方法だったら、他クラスの意向も反映出来、ほとんどのクラスが平等になる。結果的には全クラスの提案の折衷案といった感じかな。何の為の時間だったんだってところはあるけれど。

 

「すまなかった涼禅。お前に危険な役目を押し付けてしまって」

 

「いや、いいんだよ。これくらいはこれからの試練に比べれば安いもんだから」

 

「? ああ、そうだな」

 

 その後はDクラスやCクラスが安心する意味も込めて、優秀であり、信用が一定程度ある浜口が俺と同じようにもう一つの余りグループに配属され、どんどんと4つのグループが指名していくのを眺める。余ったのは全クラスで同じぐらいの数だが、総合的には下位の実力が多いのは口に出さずとも周知の事実だろう。

 

「じゃあ、こっから決めていくか。浜口は希望とかあるか?」

 

「無いですね。ですが、Bクラスが多めの方が嬉しいですね」

 

 余った中には綾小路や龍園、明人などがおり、何とも言えない曰く付きの面子が揃っていた。はっきり言えば、綾小路とこのまま共同生活なんてすれば、俺は自分を抑えることが出来ず、寝込みを襲ってしまうかもしれない。だからこそ、周りに知らないように誘導しつつ、神に祈るしか無い。

 

「なら、俺はAクラスとCクラスを多めに取るよ。その方がそっちも安心だろ?」

 

「そうだね。そっちの方が嬉しいよ」

 

 ドラフト形式を取りながらも相談して自分のグループを決めていく。何とか、運良く綾小路を浜口のグループに押し付けられて、同じ弓道部としての友達である明人を自分のグループにすることが出来た。同じような生活を何日もすることになるんだ。仲が良いやつを取っていくのは当然だ。そして、最後に龍園の処遇を相談する。

 

「こちらとしては出来るだけ引き取りたく無いです。理由は分かりますよね?」

 

「ああ、よく分かっているつもりだ。だが、こっちとしても嬉々として取りたくは無い」

 

 そんな浜口との並行線になりそうな議論を続けていく中、明人が俺の隣にやって来て、申し訳なさそうに、それでも訴えかけるように俺の顔を見る。

 

「涼禅。龍園の面倒は俺が見る。だから、引き取らないか?」

 

「本気……みたいだな。分かった。俺も出来るだけ協力はするよ」

 

 明人が言ってくるよりも前から俺は龍園を自身のグループに入れるつもりでいた。急いで入れなくても浜口が嫌がるであろうことは分かっていたからな。龍園がどのようにして綾小路に負けたのか、後学の為にそれを知ることが綾小路に勝つために重要になる気がする。

 

「よろしくな龍園」

 

「……後悔するなよ」

 

 こっちのグループが龍園を受け入れたことで、一年のグループ作りは終了を告げた。そのまま待っていましたというように南雲先輩が来て、早々に大グループを作ることを提案され、俺たち一年がそれぞれ2年、3年の小グループを指名していく形で、大グループになった。各々のクラスのリーダー達が指揮しているグループは堅実にAクラスの多いグループを指名していった。

 

「俺は南雲先輩のグループを指名します」

 

 そんな中でも南雲先輩のグループはCクラスやDクラスの生徒が多くて、お世辞にも強いチームと言えなかったけれど、南雲先輩に近づきためにも、呼ばれているようにも感じて、指名していた。

 

「堀北先輩。偶然にも別々の大グループになったことですし、一つ勝負をしませんか?」

 

 またいつもの生徒会室のような光景が目の前で始まる。南雲先輩は未だに体育祭のことを根に持っているようで、一年を巻き込むことを躊躇することなく、粘って堀北先輩へと交渉していく。そして、他の人間を巻き込まないことを条件に平均点で堀北先輩と南雲先輩が勝負することが決まった。堀北先輩がもうすぐ卒業するのに南雲先輩がこんな半端な条件の勝負で満足するとは思えないけれどな。

 

「おい、ちょっと待て。お前のことだ高円寺」

 

 堀北先輩との問答が終わり、面白いものを見つけたとばかりに南雲先輩が高円寺の方へと近づいていく。高円寺はあまりに余った綾小路と同じグループで、そうなると必然的に俺たちがいるグループの近くにも南雲先輩が近づいて来ることになっていた。

 

「ああ、君のことは知っているよ。新しく就任した生徒会長だろ? 私に何か用かな」

 

「お前には前から聞きたいことがあってな。丁度いい機会だから、ここで聞いてやるよ」

 

 南雲先輩が目の前に来ても尊大な態度を崩さない高円寺は興味半分に会話を促していく。対する南雲先輩も高円寺を下に見ながら会話を進めていく。その会話内容を聞いていくと、卒業時に現金化されるプライベートポイントをそれよりも高い金額で買い取る約束を3年や2年としていたらしい。ホームページにも次期社長として顔を載せるなどをして、信用を勝ち取るなんて、予想外のことをするやつだよ全く。

 

「私の生まれ持った力をあれこれ言う輩がいるようだが、リベンジボーイはいいのかい?」

 

「リ、リベンジ? ボーイ?? 誰だそれ」

 

「……高円寺、俺のことを巻き込むのを辞めろ。後、俺はリベンジボーイじゃない」

 

「私が咎められるなら、君も咎められて然るべきだろ? ここにいる面々は知っているのかい?」

 

 こいつ、俺の生まれのことを言っているのか? 高円寺コンシェルンの跡取りなら、知っている可能性は大きいが……不味いな。周りの奴も俺に興味を示してきたし、綾小路も俺を見ている。隠すことじゃないが、避けられないか。

 

「どうやら、誰もピンと来てないようだね。彼の祖父は下関涼之助。法務大臣を務め、今は代議士だ。父は下関涼一、知事だったかな。生まれで言えば、私とそう変わらない。彼自身の能力だけでAクラス配属となったかは疑問じゃないかね?」

 

 明らかに俺が不正をしてAクラスになったかのような言い方で、全員からの疑念の目を俺に向けさせている。実際のところ、そんな権力が働いかどうかは俺も知らないが、わざわざあんな悪い意味で政治家の鑑のようなあの爺さんが俺の為に管轄外に権力を働かせてたなんて、考えられない。

 

「そこまでしておけ高円寺。お前はその生まれを実力として使ったことに俺は注意してるんだ。人の生まれをどうこう言うもんじゃない。それに、この学校は公平を謳っているんだ。下関は自身の実力でAクラスになったんだ」

 

「私としたことが、無粋なことをしてしまったようだね。みなも忘れてくれ」

 

 あいつにとっては俺の話題なんて、自分から注目を避ける為の話題なのかよ。高円寺らしいとは言え、こうも平気な顔をして使われると腹が立ってくるな。その後は南雲先輩から解散が言い渡されて、とっとと解散する。他の人に知らても良いが、綾小路に知られたのは痛手だ。本当に。




 各グループの責任者は各クラスのリーダーと下関と浜口です。

 特に政治家のモデルとかは居ませんが、祖父、父、涼禅の三世代総合して、僕自身が思い描く政治家です。
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