ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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 後半は致死量の青春になってます


進展 試験は終わり、流れは次へと

 

 いよいよ一週間と長かった林間合宿も最終日となったことで終わりを告げようとしていた。最終日に課される試験は禅、筆記試験、スピーチ、駅伝の四つだ。全てこの一週間の間に行ったことで、そこまで緊張することなく出来るだろうとは思う。このグループは人数が少ない点が懸念点だが、個々の実力で見ると優秀な部類の人が多い。そこまで問題は無いだろうな。

 

「緊張してるのか明人?」

 

「ぼちぼちな。あまり下手な結果を残せないからな」

 

 禅は試験と言ってもいつもとやることは変わらない。これまでの一週間でやってきた禅をここでもやるだけだ。と言っても、俺は昔から禅ぽいことはやってきた。そこまで低評価になることはないはずだ。問題点は龍園ぐらいだけど、龍園だって退学にはなりたくないだろうから、それなりの結果を全ての試験で出してくれると思う。

 

「浜口君。そっちのグループはどうだったんだ?」

 

「何とかやっていけてるってところかな。でも、みんな良い人ばっかりだから、それは良かったかな」

 

「じゃあ、グループ分けは上手くいったってことだな。こっちも何とかやっていけてはするからな」

 

 浜口たちのグループと一緒にいる時間はそこまで多くなく、直ぐに次の試験の場所へと移っていく。横目で綾小路を観察したけれど、相変わらずの表情だけど、やることはしっかりとやっていて、禅がすごく様になっていた。

 次にすることになったのは筆記試験。これだけが事前に何をやることになるのかよく分からないものだったけれど、始まってみたら、そこまで警戒するものでも無かった。内容はこの林間合宿で習ったようなことばかりで、普通にしているだけで、ある程度は取れるだろう難易度だった。それ故に差がつきにくいものではあるんだけど、このグループが最下位になることは無いだろうから、気にする必要もないか。

 

 

★ ★ ★

 

 

 駅伝の為に移動して出てきたのは外。2月の空気感は寒く、走るのも億劫になるほどだったけれど、やらない訳にはいかない。駅伝は一人が最低1.2キロを走ることが決まっていて、それを合計した18キロを走らなければならないことになっている。俺たちのグループは他のグループよりも人数が少なく、誰かが多く走らなきゃいけないんだけど、さて、どうしようか。

 

「誰かが多く走らなきゃいけないんだ。誰も辞退や志願をしないなら、じゃんけんをしようと思ってる。どうかな?」

 

 俺の意見を聞いた上で志願する選択も辞退する選択もしたものはおらず、全員が完全に運任せのじゃんけんに挑むことになった。そして、じゃんけんの結果で俺ともう一人に決まることになった。ここで龍園がしれっと勝ってくる辺りが、神に愛されてるやつだとは思わずいられない。

 アンカーには運動神経の高いやつを置いたこともあってか、3位という絶妙な順位を取ることは出来た。ここから直ぐにスピーチをすることになったが、ここだけは俺の得意分野だったので満点レベルの自信で終えることが出来た。この出来だったら、ボーダーラインは超えることは出来ただろう。

 

 

★ ★ ★

 

 

「先に結果に触れることになりますが、男子生徒の全グループが学校側の用意したボーダーラインを全て超えており、退学者は0というこれ以上ない締めくくりとなりました」

 

 試験を終え、体育館に集められた生徒たち。その生徒たちを労わるように見たこともない先生によって労りの言葉がかけられる。その後の退学者は無しという言葉に男子中が喜びの声を上げる。流石にこの試験で退学するような生徒は出なかったか。それは堀北先輩や南雲先輩がチーム分けを担当した時から大体は分かっていたけれど、良かった。南雲先輩が堀北先輩に何か仕掛ける可能性も大いにあったけれど、何も無かったか。綾小路に興味の方角が向いたのかな?

 

「一位獲得、おめでとうございます堀北先輩、さすがですね」

 

「お前の負けだな南雲」

 

「そうですかね。まだ結果発表は始まったばかりじゃないですか」

 

 元々狙うつもりの無かった男子の一位の発表などの後、南雲先輩から何処か奇妙で勝ち誇った言葉が堀北先輩へと送られる。淡々と進んで行く女子の発表の中で3年Bクラスのグループが脱落となり、責任者から生徒会の書記である橘先輩が道連れに指名された。

 こんなことになるなんて思ってなかったな。俺は南雲先輩を色んな意味で舐めていたのかもしれない。堀北先輩に勝つ為とはいえ、橘先輩を狙うようなことをするなんてやるとは思わなかった。いや、俺は南雲先輩を見習わなくてはならないのかもしれない。堀北先輩に失望されようとこの作戦を実行した南雲先輩を。俺だってここまでの気概を持たなければならないんだ。どれだけ人に卑怯や非道と言われようが、綾小路を退学させる覚悟を。

 そして、堀北先輩によってクラスポイントとプライベートポイントが支払われ、橘先輩の退学は取り消され、そのグループの責任者だったBクラスの人もクラスポイントとプライベートポイントで退学が取り消された。ここまでのことが起こった林間合宿だったのに最終的な退学者は0だった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 合宿が終わって訪れた一時の休まる時期。俺はほとんど一週間ぶりに神室と会っていた。合宿が終わる前はあまり感じなかったことだけど、一週間も会えない日々が続くと会いたいって気持ちが強くなっていた。

 

「今日はどこに行くの?」

 

「俺から誘ったけど、神室が行きたいところなら、何処でもいいな。」

 

「じゃあ……映画とかで良い?」

 

「うん、行こっか」

 

 2人っきりのデートなんて初めてキスをしたこの間以来だな。今回もそんな出来事があるのかと期待していないことは無いが、無理にしに行こうとは考えてない。嫌がられるたらショックだしな。

 

「何の映画を見るの?」

 

「特に考えてない。カラオケよりマシだと思っただけ」

 

 神室とは一度だけカラオケに行ったことがある。それも2人っきりで。でも、まぁ、事前の嫌そうな雰囲気から察すれば良かったんだけど、神室は音痴だった。俺は気にも止めなかっただけど、神室が凄い不機嫌そうな顔をしてたから、30分も経たずに別の場所に行った。それから、俺と神室の間でデートスポットからカラオケは外れていた。

 

「流石にカラオケは提案しないよ。買い物とかご飯しか考えてなかったから」

 

「好きなの選んで」

 

 公開している映画は多くがアニメやドラマの映画化が多く、あまり映画などを見ない神室と見るには不適切なものばかりだった。だからと言って、恋愛映画も一緒に見るのはちょっと恥ずかしいし……うん、海外の俺の知らないやつにするか。

 

「これなんかどう?」

 

「どういう作品これ? 全然知らないんだけど」

 

「……弁護士資格の無い人が弁護士をする話だって。俺も全然知らないんだけど、どうかな?」

 

「いいんじゃない? 別に洋画も嫌いじゃないし」

 

 神室の了承を得られたところで、2人で一番近い時間のチケットを買う。一番近くて2時間後だったので、その間に夜ご飯を済ませる為に適当に飲食店を探す。

 

「今日は何の気分?」

 

「オムライスとか? 何でもいいけど」

 

「分かった。じゃあオムライスで」

 

 相変わらず素直に言ってくれない神室のリクエストから洋食屋を探す。案外、洋食屋というのは直ぐに見つかるもので、あまり混んでいない段階で入ることが出来た。神室はリクエスト通りのオムライスを頼んだけれど、俺は何を頼もうか。無難にハンバーグで良いか。

 

「神室は合宿どうだった?」

 

「……面倒くさいことしか起こらなかった」

 

「どんな感じのこと?」

 

「仲良くない女子同士で集団生活送ると面倒なことにしかならないってこと」

 

 神室は思い出すのも嫌なようで、隠そうともせずに顔を歪める。女子ってそういうものだということを実際に知ったのは初めてだった。身近な女子は昔からあまり近くに居なく、唯一と言える妹も一匹狼気質だったので参考にならなかったからな。

 

「苦労ばっかりだったんだな。……お疲れ様」

 

「別にあんたまで気を使う必要ないから。もう終わったし」

 

「まぁそれはそうなんだけど。気持ち的に」

 

「気持ちだけでいいから」

 

 ご飯を食べている間はそれから合宿の話はしなくなり、別の話をずっとしていた。食べ終わるとゆっくりと次に行きたい店などを見ながら映画館に向かい、ちょうど良い時間で受付をする。もうすぐ夜になりそうな時間にこんな映画を見る人はあまり多くないのか、俺たち以外に居たのは数人と言ったところだった。

 

「ポップコーン買わない派なんだ」

 

「いや、夜ご飯食べたからいらないと思って」

 

「まぁどっちでも良いけど」

 

 会話はほどほどにしつつ、映画が始まる。映画の内容は無難と言ったものなんだが、主人公が凄く青臭い感じはした。こうむず痒いようなそんな感じだ。映画の中で所謂彼女とのベッドシーンがあったのだが、海外映画だとこういうのがあるのは想定しておくべきだったな。つい、神室の方を向いてしまって、目が合ってしまった。気まずいな。

 

「ぼちぼちだったんじゃない?」

 

「ああ。だけど、次回作があれば見たいって思えるぐらいではあったな」

 

「じゃあ、次に映画館来るのは次回作の時でいいよね?」

 

 俺と神室は特にこの後のことを考えることは無く、寮へと歩いて行く。その間にはもちろん会話はあったが、俺はずっと別のことを考えてしまっていた。林間合宿で一週間近く神室と会えなかったことと先ほど見たカップルのベッドシーン。

 それらで俺は無性に神室と次の段階に進みたくなってしまっていた。だが、怖いのも事実でその段階に踏み出すには大きな勇気が必要になってくる。嫌われたらどうしようとか、関係性が変わったらどうしようとか、色々と思うところはある。でも、いつ退学してしまうか分からない学校なんだ。今ぐらい勇気を出そう。

 

「……ッ……」

 

「今日さ……俺の部屋泊まってよ」

 

 いきなり手を繋ぎ神室を自分の部屋へと誘う。自分らしくないことは重々承知している。でも、こんな時にどんな誘い方をすればいいのか分からなかったんだ。でも、神室はそんな臭い台詞を言った俺の手をしっかりと握ってくれた。

 

「……はやく」

 

 こっちに顔を見せない神室の歩調が少しだけ早くなる。はっきりとした気持ちはよく分からないけれど、了承はしてくれたんだ。そこまで気負う必要はないとは思う。そのまま2人きりでエレベーターに乗り、俺の部屋まで来る。焦ってしまいいつもよりも鍵を開けるのが手こずったけれども、俺と神室は2人で部屋の中に入った。

 

 

★ ★ ★

 

 

 いつもよりも温もりのある布団の中、俺の隣にはぐっすりと眠っている真澄が居た。彼女の寝顔を見たのは初めてだけど、こんなにも愛おしいものだったなんて、もっと早く気づければ良かったな。幸いにして明日は休日、今日はゆっくりと寝よう。真澄の隣でゆっくりと。




 そういったシーンは書いたことが無いので、試行錯誤しながら書いてみます。納得のいくものが出来たらR18で投稿します。

 最近は動きが少なかったですが、次章から大きく動き出します。
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