ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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 これがまぁ綾小路くんの思っていることでした


幕間 綾小路清隆の些事

 

 予想以上にはよくやった男だったが、俺の想像を超えないつまらない男だった。最後の特別試験が坂柳との対決だったら、もっと楽しめだろうと思うほどには。

 

 俺は限界を超えた憎悪だけを宿らせて挑む人間をあの場所で何人も見てきた。それらの憎悪とは違う憎悪を宿してくる下関に多少は期待していた。俺の想像を超えてくれるのではないだろうかと。だが、そんなことは無かった。精神的に安定していなかっただろうこともあるが、果たしてあいつの全力とはどれだったのだろう。

 

 初めて会った時か? 俺との対決を所望した時か? 神室が退学してからか? 俺には分かっていないが、あいつ自身も分かっていないだろうな。その身を俺の父親に注いでいる間は。

 

 初めて会った時は下関の反応に混乱して、自分の対応や顔を疑ったものだが、あいつの過去と俺との関係を聞いた時はある程度は納得した。まさか、父親がホワイトルームを存続させる為にそこまでしていたなんてな。はっきり言えば、中途半端な行為だと言えるし、中途半端にやったからこそ、俺の目の前に下関が現れた。よりあそこに戻りたくなくなったな。

 

 下関は哀れだと思うし、申し訳ない気持ちもなくは無いが、だからといって逆恨みで退学してやるわけにはいかない。もっと下関に感情的に言ってやれば、あいつはもっと成長したんだろうか。もっと俺が干渉すれば、あいつの全力を引き出せたのか。それが俺の下関に対する後悔だ。

 

 ここまで下関に対して残念という分析ばかりしてきたが、だからといって、下関が優秀ではないと言っている訳じゃない。Aクラスに所属しているだけあって能力はそこらにいる人よりも遥かに優秀で多方面に才能を持っているだけではなく、顔も良く、人当たりも良い。綾小路という名前にさえ、固執しなければもっと良い人生があっただろうな。それに……下関のことを羨ましく思う部分もある。下関は神室という人間を何よりも大事にしていた。それはクラスが違う俺にもよく分かった。俺はそんな風に人を愛することも出来ない。そこはやはり羨ましく思わないことはない。まぁ……それが坂柳に突かれてしまったんだがな。

 

 総じて言うならば、下関が俺に対してシンプルな感情を向けてきていたのとは逆に俺は確実なことは言えないが、複雑な感情を抱いていたのかもしれない。簡単には得られないだろう良い経験をさせてもらった。そこは下関に感謝しないとな。

 

 だが、俺にとって下関は何の壁にもならなかった。果たして、俺の壁になるようなやつはこの学校にいるんだろうか。




 綾小路が絶対的で異質な存在であるということを出来る限りこの小説の中でも表現出来たのではないかと思っています。
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