ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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初めまして、初投稿となります。
ノリと勢いだけで始めました。

不定期かつ失踪予定ですが書けるとこまで頑張って書いていこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

原作からの変更点として、チノはオリ主に対してはタメ語で話します。


ひと目で尋常じゃないもふもふだと見抜いたよー1

明かりのついてない部屋にわずかな光が、カーテンに遮られた窓から差し込む。

 

PIPIPI…PIPIPI…

 

ベッド脇の目覚まし時計がけたたましく音を出す。

ベッドの布団がもぞもぞと動くと、部屋の主と思われる人物の手が目覚まし時計に伸びる。

目覚まし時計が止まると同時に手はその場で動かなくなる。

外から足音が近づいてくると扉の前で止まる。

 

「雪兎ー。起きてる?」

 

扉の外から少女の声が聞こえる。

反応がないからか、少女は部屋の中へと入る。

わずかに青を含む長い銀色の髪にバツの字に髪留めがついている。

青い瞳の少女、香風チノはベッドの膨らんだ布団を見てため息をつく。

チノはカーテンを開くと布団の中で眠っている人物の体を揺する。

 

「雪兎ー。朝だよ。起きて」

 

「…う~ん。あと5分…」

 

布団の中から聞こえてきたのは少年の声。

ベタなセリフだ…と思いつつチノは体を揺すり続ける。

 

「ご飯冷めちゃうよ。起きて」

 

「う~…」

 

観念したのか少年は目をこすりながら体を起こす。

少女と同じ色の瞳、髪の色をしているが髪は短い。

 

「おはよう。雪兎」

 

「ふぁ~…。おはよう…、姉ちゃん」

 

チノによく似た顔立ちの少年、香風雪兎は大きくあくびをすると立ち上がる。

 

「ご飯できてるから降りておいで。2度寝しちゃダメだよ?」

 

「…了~解~」

 

気の抜けた返事を聞くと、チノは部屋から出ていく。

雪兎はまだ寝ぼけている頭を軽く揺すり喝を入れ、1階へと降りる。

 

「おはよう。雪兎」

 

「おはよ~…。父さん」

 

リビングのテーブルで新聞を読んでいる男性、香風タカヒロは雪兎の様子を見ると、テーブルに置かれたコーヒーを1つ雪兎の席に置く。

 

「なんだ?また夜更かししてたのか?」

 

「そんなに夜更かししてない…はず…」

 

そんな会話をしつつ雪兎は席に着き、角砂糖を1つ手に取りコーヒーに入れる。

ミルクは?――いらない。まだ湯気が大量に出ているコーヒーをかき混ぜる。

軽く息を吹きかけてコーヒーを冷まして口をつける。

――今日は姉ちゃんが入れたカプチーノか。

口に含んだコーヒーの味を確かめつつ飲み込み、ふぅっと一息つく。

起きてから何も口にしてない雪兎の体に染み渡る。

 

「相変わらず寝坊助じゃな」

 

老人の声がする方向に雪兎は頭を向ける。

しかし、そこに老人の姿はない。そこにいたのは丸々とした一匹のうさぎ。

 

「朝が苦手なのは爺ちゃんも知ってるでしょ」

 

声の主はなんとうさぎだった。しかし、雪兎は驚くことなく会話を続ける。

雪兎の祖父は去年に亡くなった。のだが、なぜか飼いうさぎのティッピーの中に人格が宿っているのだ。

生前に「いっそうさぎになりてー」といつもぼやいていたのだが、それが現実になるとは誰も思ってもみなかったことだ。

とはいえ、ティッピーの中にいるのは紛れもなく祖父なのだ。香風家はすでにこの状況を受け入れている。

雑談をしていたところでチノがキッチンから朝食をもってくる。

 

「雪兎。手伝って」

 

「わかった」

 

チノの頼みに二つ返事で答え、雪兎は席を立つ。

キッチンにはトースト、ベーコンと目玉焼きが盛り付けられた皿が置いてある。

雪兎は盛り付けられた皿を手に取るとキッチンに運び、それぞれの席に置く。

 

「では、いただこうか」

 

「「「いただきます」」」

 

タカヒロの合図で手を合わせ、香風家の朝食が始まる。

 

「今日だよね?下宿の人が来るの」

 

ある程度食事が進んだところで雪兎が切り出す。

 

「ああ、昼頃には来るはずだ」

 

「どんな人なんですか?」

 

「それは…内緒だ」

 

「父さんそればっかり」

 

雪兎とチノの質問に片目をつむってお茶目な笑顔を見せるタカヒロ。

二人は以前から聞いているのだがタカヒロは一向に答えようとしない。

 

「全く。わしには教えてもいいじゃろう」

 

「親父は黙っていられないだろ?」

 

「なんじゃと!」

 

タカヒロの返答にばいんばいんと跳ねてティッピーが抗議する。

父は答える気はない。タカヒロの様子から感じ取るとチノと雪兎はため息をつく。

 

「ふふっ…サプライズさ。楽しみにしていなさい」

 

「「むぅ…」」

 

ごちそうさまと二人は手を合わせて食器をキッチンにもっていく。

 

「さ、二人とも。開店準備をしてきなさい」

 

「「はーい」」

 

雪兎とチノはそれぞれ喫茶店の制服に着替えるとホールへと向かう。

香風家は小さな喫茶店を経営している。祖父が喫茶店を始め、現在はタカヒロがマスターを務めている。

チノと雪兎は喫茶店の手伝いで店員として働いている。

雪兎とチノの制服はお揃いだ。男女の違いはあるが、上着は同じ色であり、雪兎は青のネクタイ、チノは青のリボンを胸元につけている。

 

「私は店内を掃除するから、雪兎は外をお願い」

 

「了解」

 

雪兎は掃除用具が入ったロッカーから箒を取り出し、外へと出る。

眩しい朝日で目がくらむ。目が慣れてきたときに飛び込んできた光景は石畳と木組みの家々だった。

――木組みの家と石畳の町。この町はそう呼ばれている。

西洋風の家々が並び、石畳で道路は舗装されており、まるでファンタジーの世界に迷い込んだ錯覚を覚えるが、見慣れた雪兎にとってはいつもの光景である。

店前の道路を手早く箒ではいていく。

箒をしまうと、水の入ったバケツと布巾で窓をきれいに拭く。ピカピカになった窓ガラスを見てよしっと満足気な表情をする。

脚立を持ってきてうさぎとコーヒー、そして「ラビットハウス」と書かれた吊り看板を丁寧に拭いていく。

ラビットハウスはこの喫茶店の名前だ。

脚立と掃除用具を片付けてホールに戻るとチノは掃除を終えてドリンク機材のチェックをしている。

雪兎はキッチンへと向かい、食材の在庫チェックを行う。

 

(足りなくなりそうなのがいくつかあるな。空いた時間に買い出しに行こうか)

 

雪兎は残りの少ない食材をメモにまとめてポケットにしまう。

 

「雪兎ー。こっちは終わったよ?」

 

ホールの方からチノの声が聞こえる。

 

「こっちもオッケー」

 

雪兎がホールに戻るとティッピーを頭に乗せたチノが準備万端と言わんばかりに待っている。

開店5分前とちょうどいい時間だ。

 

「じゃ、始めようか」

 

「うん」

 

「うむ」

 

扉の看板をCloseからOpenに裏返す。

今日もいつもの一日が始まる。

 

―――――――――――――――――

 

「「ありがとうございました」」

 

開店して数時間。

出勤に向かう人々が少なくなってしばらくした頃、客はまばらに来店し、帰っていくを繰り返し店内は雪兎とチノ、ティッピーの二人と一匹になる。

ちなみに今は春休みなので学校に登校する生徒の姿はない。

 

「姉ちゃん。足りなくなりそうな食材があるからちょっと買ってくるよ。そろそろリゼさんも来るし」

 

「わかった。お昼ごろはお客さん増えるからそれまでには戻ってきてね」

 

「りょーかい」

 

「気を付けて行くんじゃぞ」

 

「わかってるよ」

 

雪兎はホールを出ると父に事情を話しお金を受け取る。

 

「あまり無駄遣いしないように」

 

「はーい」

 

父の言葉に雪兎は軽い返事をすると、部屋に向かいリュックサックと自転車用のヘルメットを持って裏口から外に出る。

裏口の脇に停めてある自転車のカギを外すとヘルメットを被り、自転車を漕ぎ出す。

 

「よぉ、雪兎」

 

ラビットハウスの前を通ったすぐのところで声をかけられた。

 

「リゼさん。おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

雪兎よりだいぶ背が高く長い黒い髪をツインテールにした少女、天々座リゼ。

高校二年生でラビットハウスでバイトをしている。

 

「制服で自転車とは、買い出しか?」

 

「はい。食材が切れそうだったので」

 

「そうか。ってことは今チノ一人だろ?早めに入った方がいいか?」

 

確かに今のラビットハウスの店員はチノ一人だ。ティッピーもいるがうさぎなので店員としては期待できない。

 

「大丈夫ですよ。この時間帯はお客さん少ないですから」

 

「そうか」

 

「僕はそろそろ行きますね」

 

「ああ。転ぶなよー」

 

雪兎が軽く手を振り、自転車を漕ぎ出したのを見送り、リゼはラビットハウスへと向かった。

 

―――――――――――――――――

 

ラビットハウスに着いたリゼが更衣室に向かったのを見送ったチノ。

ちょうどその時ラビットハウスの扉が開いた。

 

「いらっしゃいませ…」

 

「うっさぎ♪うっさぎ♪」

 

そこにいたのは薄い桃色の髪は肩くらいの長さで、花の髪飾りをつけた少女。

手に持ったキャリーバックを見るに観光客だろうか?

高いテンションと明るい表情で店内をきょろきょろと見まわしている。

 

「…うさぎがいない?うさぎがいない!?」

 

そう呟くと表情がみるみる変わり焦ったような顔になる。

すごい勢いで机の下をのぞき込むとチノの方を見る。

 

「うさぎがいない!」

 

豹変した客の様子に呆気にとられるチノ。

 

(…なんだこの客…)

 

思わず心の中でつぶやいてしまうチノであった。

 

―――――――――――――――――

 

「もじゃもじゃ?」

 

変な客が落ち着いたタイミングで席に案内し、水を出したところで頭の上のティッピーに気づいたのだろうかそう尋ねる。

 

「は?あ、これですか?」

 

頭の上のティッピーに触れる。

 

「これはティッピーです。一応うさぎです」

 

「うさぎ!」

 

「ご注文は?」

 

「そのうさぎさん!」

 

「非売品です」

 

何を言っているのかこの客は。

一言で突き放すと「うええぇぇ!」っと顔を両手で覆って崩れ落ちる。

 

「せめて…。せめてもふもふさせて!!」

 

すごい勢いで食い下がる変な客。

よほど執着心が強いのか机をたたいて立ち上がる。

 

「…コーヒー一杯で一回です」

 

「じゃぁ三杯!!」

 

即答した客に驚きつつも注文ということでチノはカウンターに向かう。

慣れた手つきでコーヒーを手早くカップ三つに注いでいく。

もちろん中身はすべて別である。

 

「お待たせしました」

 

「おお~」

 

目の前の三杯のコーヒーに感嘆の表情をする変な客だが、視線はすぐにティッピーに向かう。

 

「コーヒー三杯頼んだから、三回触る権利を手に入れたよ!」

 

「冷める前に飲んでください」

 

あくまでここは喫茶店だ。コーヒーを冷めないうちに飲んでもらわないと困る。

待ちきれないという変な客がティッピーに手を伸ばしているところで一言。

口から涎が垂れているように見えたのは気のせいだろうか。

 

「あっ!そ、そうだね!」

 

変な客は席に座り直し、一杯目のコーヒーに口をつける。

 

「この上品な香り!これがブルーマウンテンかぁ!」

 

「いいえ、コロンビアです」

 

的外れな客の感想に顔をしかめるチノ。

変な客は気にすることなく二杯目に口をつける。

 

「この酸味!キリマンジャロだね!」

 

どや顔でチノの方を見る変な客。

 

「それがブルーマウンテンです」

 

またしても銘柄を外す変な客。

鋼の心の持ち主かこれも気にすることもなく、最後のコーヒーに口をつける。

 

「安心する味!これインスタントの…」

 

「うちのオリジナルブレンドです」

 

聞いていられないのかついつい変な客の感想を遮るチノ。

呆気にとられる変な客だがすぐに笑顔になる。

 

「うん♪全部おいしい♪」

 

コーヒー全部に口をつけた変な客は、ゆるみ切った表情でティッピーを抱えて撫でまわしている。

 

「あぁ~。もふもふ気持ちいい~♪はっ!いけない、涎が…」

 

「のおおおおおおお!!!」

 

変な客が袖で涎をぬぐっているとティッピーが叫び、暴れる。

 

「あ、あれ?今このうさぎ叫ばなかった!?」

 

「気のせいです」

 

再び変な客はティッピーを抱えなおすと顔をこすりつける。

ティッピーの顔がすごい表情になっている。

 

「それにしてもこの感触…。癖になるなぁ♪」

 

「もういいですか…?」

 

「あはぁ♪うふふ♪」

 

「あの…」

 

チノの言葉を意に介さずティッピーを撫でまわし続ける変な客。

 

「ええい!早く離せこの小娘がっ!!」

 

耐えられなくなったのか再びティッピーが叫び、暴れる。

 

「なんか!この子にダンディな声で拒絶されたんだけど!?」

 

「…私の腹話術です」

 

「え?」

 

「早くコーヒー全部飲んでください」

 

チノはティッピーを回収すると頭の上に乗せなおす。

変な客はコーヒーを再び飲み始めると、窓の外を見つめる。

 

「私ね。春からこの町の学校に通うことになったの」

 

「はぁ…?」

 

「でも、下宿先を探していたら迷子になっちゃって」

 

「下宿って…」

 

チノは今朝のやり取りを思い出す。

そういえば父は昼頃に下宿の人が来ると言っていた。

もしかして…。

 

「道を聞くついでに、休憩しようと思ったんだけど。香風さんちってこの近くのはずなんだけど、知ってる?香る風って書くんだけど」

 

当たりだった。

 

「香風はうちです」

 

そう告げると変な客の表情がぱぁっと明るくなる。

 

「すっごぉい!これは偶然を通り越して運命だよ!!」

 

テンションが上がっているのか席を立つとチノの手を取りぶんぶんと上下に振り回す。

 

「私はチノです。ここのマスターの孫です」

 

「私はココアだよ。よろしくね、チノちゃん♪」

 

変な客こと、保登ココアと挨拶を交わす。

 

「あとは高校の方針でね。下宿させていただく代わりに、その家でご奉仕しろって言われるんだよ」

 

「うちで働くということですね」

 

「そうそう♪」

 

ただ泊まりは許されないということだろう。住居を貸してもらうのだからその家を手伝うのは当然だ。

 

「と、言っても、家事は私たちでなんとかなってますし。お店も十分人手が足りてますので、何もしなくて結構です」

 

「いきなりいらない子宣言されちゃった…」

 

チノの言葉に肩を落とすココア。

 

「とりあえず挨拶がしたいんだけど、マスターさんは留守?」

 

「祖父は去年…」

 

チノの表情が曇る。とはいえ祖父はチノの頭の上にいるのだが、これは香風家だけの秘密だ。

 

「あっ…、そっか、今はチノちゃん一人で切り盛りしてるんだね…」

 

「いえ、父も弟もいますし、バイトの子がもう一人…」

 

感極まったのか目じりに涙を溜めてココアがチノに抱き着く。

 

「私のことはお姉ちゃんだと思って何でも言って!!」

 

ココアがチノから離れると手を取り真剣な表情でチノを見る。

 

「だから…って、弟?」

 

さっきのチノの言葉を思い出したのかココアが一瞬固まる。

 

「はい、私には双子の弟がいます。今は買い出しに出かけてますが」

 

「弟!わぁ~!私、妹も欲しかったんだけど弟も欲しかったんだぁ♪」

 

すぐに表情がぱぁっと明るくなるココア。よく表情が変わる人だ…。

 

「あの…、雪兎は私の弟です」

 

「うんうん♪だからまず、弟くんの見本になるように私のことはお姉ちゃんって呼んで♪」

 

聞いちゃいない…。ココアのペースに飲まれるチノだが冷静を装って返答する。

 

「では…、ココアさん…」

 

「お姉ちゃんって呼んで!」

 

「ココアさん…」

 

「お姉ちゃんって呼んで!」

 

埒が明かない。頑なに言い方を変えないチノとお姉ちゃん呼びを譲らないココア。

 

「ココアさん。早速働いてください」

 

「任せて♪」

 

無限に続きそうなやり取りはあっさり終わりを告げることになった。




ココア登場まででした。リゼもちょっとだけ出てきましたね。
冒頭のオリジナル部分は地の文が多くなりましたが、アニメ沿いの部分になると減ると思います。
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