ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第4羽開始です。
ほぼオリジナル回になりました。


ラッキーアイテムは野菜と罪と罰―1

登校前の朝。雪兎、チノ、ココアはリビングのテーブルを囲み朝食をとっている。

ココアはご機嫌顔でクロワッサンを口に運び、チノは一口大にちぎると口に入れ、雪兎は眠そうな顔で頬張っている。

ふと、ココアの表情が曇る。視線の先にあるのはコップに注がれたトマトジュース。

チノも食事の手が止まる。チノが見ているのは目玉焼きとウィンナー、そして付け合わせの生野菜。その中に含まれているセロリだった。

 

「ごちそうさまでした」

 

雪兎は食事の手を止めることなく完食し、席を立ったところで視線を感じる。

期待の目でチノとココアがこちらを見ていた。これを代わりに処理してほしいといった視線だ。

雪兎はその視線を気にすることなく、自分の使った食器をもってキッチンの方へと向かっていった。

 

「はぁ」

 

ティッピーは手の止まったチノとココアを交互に見るとため息をつくのだった。

登校の時間となり、通学路を歩く三人は朝食の時の話をしていた。

 

「チノちゃん。好き嫌いせずにセロリも食べなきゃダメだよ?」

 

「そういうココアさんだって、トマトジュース一口も飲んでませんでしたよ?」

 

「えへへ~」

 

「どっちもどっちでしょ」

 

「「うぐっ!」」

 

ココアはチノに指摘するが、逆にチノの指摘に対して笑って誤魔化している。

一方、残さず完食している雪兎の指摘に対しては言い返せずダメージを受けている。

 

「でも、チノちゃんの方が好き嫌い多いよ?我慢して食べなきゃ、大きくなれないよ」

 

「心配はいらないです。ココアさんと同じ歳の頃には、私の方が高くなってます」

 

「そっか~」

 

「根拠ないでしょそれ」

 

どこからその自信は来るのかと姉の言葉に呆れる雪兎。

 

「雪兎くんは好き嫌いないの?」

 

「僕も苦手なものはありますけど、食べられないということはないですね」

 

「そうなんだ!えらいえらい♪さすが私の弟だね!」

 

「雪兎は私の弟です。でも、雪兎も背が低いでしょ。好き嫌い少ないのに」

 

「う~ん。父さんの血が入ってるなら高くなるはずだけど…」

 

雪兎も背が伸びないことには若干だが悩んではいる。父が高いとは言え13歳になっても双子の姉であるチノとわずかにしか身長が変わらないのだ。

 

「でも、チノちゃんって毎日ティッピーを頭に乗せてるよね?それで身長伸びるのかなぁ?」

 

「…はっ!」

 

「た、確かに…」

 

ココアの意外な指摘にショックを受けるチノだった。

 

―――――――――――――――――

 

「背を伸ばしたい?なんだ急に」

 

ココアと別れた雪兎とチノはリク、カケルと合流していた。

マヤとメグは用事があるらしく先に学校に行っている。

 

「今朝そういう話になってね」

 

「まぁ俺ら、揃いに揃って背が低いよな」

 

リクは雪兎とほぼ同じ身長で、カケルが頭一つ抜けて高いが、それでも平均よりは低い。

ここにいないマヤとメグも背が低い。マヤに至ってはチノよりも低いほどだ。

 

「なので、お二人は何か背を伸ばす方法って知ってますか?」

 

「よく言うじゃん。牛乳飲むと背が伸びるって」

 

「それ、牛乳単体だとあくまで骨が強くなるだけで身長には影響がないって聞いたことあるよ」

 

「ええっ!?」

 

「マジ!?」

 

リクの牛乳で身長が伸びる説をカケルが指摘すると、リクだけでなくチノも衝撃を受けていた。

 

「カケルはなんかないの?」

 

「う~ん」

 

「お願いしますカケルさん」

 

雪兎がカケルに聞くとカケルは考え込む。チノも期待した目でカケルを見ている。

 

「食べ物はカルシウムだけじゃなくて一緒にたんぱく質を摂ること。寝る時間は10時~2時の間に成長ホルモンが一番出るからその時間は必ず睡眠をとること。他にも――」

 

「なるほど!なるほど!」

 

「あー、カケルのやつ語りだしたな。こりゃ当分止まらんぞ」

 

「一度うんちく語りだすとすごく長いよね」

 

カケルが身長を伸ばす方法の知識を放出しだすと、チノは目を輝かせてメモを走らせている。雪兎とリクはため息をつくと切りのいいところで話しを切り上げさせて、学校に向かうのだった。

 

―――――――――――――――――

 

4人は学校に到着した。

 

「じゃ、姉ちゃんまたあとで。今日は放課後、用事があるから先に帰ってて。お店には出るから」

 

「わかった」

 

「じゃあなー」

 

「それじゃ」

 

チノは男子三人組と別れ、自分のクラスの下駄箱に向かう。

 

「おっはよー!チノー!」

 

「おはよう。チノちゃん!」

 

下駄箱の前にはマヤとメグがいた。

 

「…マヤさん、…メグさん」

 

「「…ん?」」

 

チノはマヤとメグの前で止まると二人に視線を交互に移す。

そして、そそくさとマヤとメグの間に入るとまた二人を交互に見る。

そんなに身長差がない。

 

「ほっ」

 

それを確認すると安堵の息をこぼす。

 

「そんなに休み中、私たちに会いたかったの?」

 

「照れるじゃーん!」

 

二人はチノの行動の真意はわかっていなかった。

 

―――――――――――――――――

 

お昼休憩になり、雪兎、リク、カケルの三人は机を囲んで弁当を食べていた。

 

「今日の弁当もうまそ―げっ、ピーマン入ってる!」

 

「…うさぎの形したおにぎりとソーセージ、タコさんウィンナー、ひよこの顔したウズラのゆで卵…。またずいぶん凝ってるなぁ…」

 

「雪兎くんの弁当すごいね」

 

「いや、すげぇけど、女子向けだろこれ」

 

「姉弟分を一度に作るからまぁ、しかたない」

 

雪兎はダンディな外見とは裏腹に割とファンシーな趣味がある弁当制作者の父に対して苦言を漏らしたくなってしまう。

リクとカケルは雪兎の弁当事情はよく知っているので特に驚くこともない。

チノの分に比べると、男なので多少はおかずが多くはなっている。

 

「雪兎ー、ミートボールとピーマン交換しようぜ」

 

「なぜその交換条件を飲むと思ったの」

 

「冗談だよ。むぐっ―苦い…」

 

リクがピーマンを差し出してくるが、雪兎はバッサリと交換条件を切り捨てる。

リクはそのままピーマンを口にするが、苦味で顔をしかめる。

 

「でもリクくんは苦手でもちゃんと食べるよね」

 

「食わねぇともったいないからな。腹減るし」

 

「うちの姉にも見習ってほしいよ」

 

苦手なものを一口も食べずに残した姉二人の事を思い出す。

 

「今朝の話、チノが言ってた背を伸ばしたいって話さ、俺も背が低いからわからんでもないなぁ。姉貴の身長くらいは超えたいしな」

 

「確かに…。僕は姉ちゃんよりは高いといってもほんの数センチだけだし」

 

「女性の方が身長が伸びるのが早くて、中学3年くらいには伸びるのが止まるんだ。男性は中学生の頃に一番伸びて高校3年くらいまでは緩やかに伸びる続けるって感じだね」

 

博識なカケルの身長に関する知識を披露する。

 

「…それならあいつらあと一年くらいしか伸びないじゃん」

 

「あくまで統計の話だよ。もしかしたら高校に上がってから急激に伸びるかもしれないし。この一年で伸びまくるという可能性もあるってことさ」

 

「そう思うと僕らも一番伸びる時期ってわけか」

 

「そうだね。今朝にも言った通り、カルシウムだけじゃなくてたんぱく質を摂って、睡眠を――」

 

「あー、長くなるから簡潔にまとめてくれ。全部聞いてたら日が暮れる」

 

またうんちくを語り始めたカケルをリクが割り込んで止める。

カケルは目を閉じ顎に手を当て、考えをまとめ始める。

 

「よく食べ、よく遊び、よく寝る。以上」

 

「結局そうなるんだ…」

 

カケルから出たあまりに簡潔な答えに苦笑いをする雪兎だった。

 

―――――――――――――――――

 

「ごめんね雪兎くん。雑用に付き合わせて。お家の手伝いもあるのに」

 

「気にしなくていいよ。今日は3人入ってるから多少遅れても問題ないし。ま、貸し1つってことで」

 

放課後。カケルの委員会の仕事を手伝っていた雪兎。

仕事を終え、二人で帰路についていた。

リクはサッカーの練習があるからと先に帰っている。

 

「じゃ、ボクはここで」

 

「また明日」

 

カケルと別れてしばらく歩き、ラビットハウスが見えてくる。

ラビットハウスはちょうど客が入ろうと、扉を開くところだった。

 

「いいぃらっしゃっせー!!」

 

客が扉を開けた途端に、ものすごい巻き舌のリゼの声が響いてきた。

その声を聞いた客は扉を開けたままの状態で停止している。

 

「あはは…、いらっしゃいませー…」

 

「…何事ですか?」

 

客が入って少しして、雪兎もラビットハウスに入る。

 

「な、何でもないぞ…。あはは…」

 

「そ、そうそう」

 

なぜか苦笑いをしているココアとリゼ、それを横目に見ているチノがいた。

 

―――――――――――――――――

 

雪兎も合流し、しばらくして閉店となったラビットハウス。

男子更衣室で一人、着替えをしている雪兎。

 

「ん?」

 

ケータイを見るとランプがついており、開くとメールが一通届いていた。

 

「千夜さんから?」

 

『チノちゃん夏バテみたいなの!ちゃんと栄養と睡眠とらせてあげて!』

 

メール内容に首を傾げる雪兎。

今朝の様子を見るにそんな素振りはなかったはずだが。

 

(朝にセロリ食べなかったのは、夏バテ?いやいや、普段から食べないし)

 

疑問に思い、千夜に電話をかけてみる。

 

「もしも―」

 

『雪兎くん!チノちゃん大丈夫!?』

 

電話が繋がり、雪兎が喋り始める前に千夜が大声で話し始める。

 

「千夜さん。音量!」

 

『あ、ごめんなさい』

 

「えーと、姉ちゃんが夏バテってどういうことです?」

 

『今日ね、下校中にチノちゃんを見つけたから後ろから観察してたの』

 

「…観察」

 

なぜ、声をかけずに後ろから観察してたのだろうかと疑問に思うがとりあえず置いておく。

 

『スキップしてたから良いことあったのかなって思ってたら、ジャンプしだして街灯に頭をぶつけたの!前方への注意が散漫になってるからきっと夏バテよ!』

 

「えっ」

 

千夜の説明に頭が追い付かない。スキップの後にジャンプを始めて街灯に頭をぶつけるという流れがよくわからない。

 

『だから、しっかりご飯食べさせて、休ませてあげてね!それじゃ!』

 

「あ、はい」

 

千夜が通話を切り、雪兎はケータイを閉じる。

男子更衣室から出るとちょうどそこにチノがいた。

 

「姉ちゃん」

 

「何?」

 

「街中でスキップした後にジャンプして街灯に頭ぶつけたって本当?」

 

「どうしてそれを!?」

 

「千夜さんが見てたんだって。…何してんの」

 

そういうとチノは口をパクパクさせて顔がみるみる真っ赤になっていく。

どうやら背を伸ばそうと努力してたらしい。




好き嫌いと背を伸ばそう編でした。
話の流れは大体アニメと同じですが、結果的にほぼオリジナルな感じになりました。
男子三人組がほんとに動かしやすいです。
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