ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟― 作:テクト
今回はオリジナル要素多めです。
中学校の体育館。
チノのクラスは体育の授業中だ。
「ほっ!ほっ!…こうかな?こう?」
マヤはバドミントンのラケットを二本手に持ち、ポーズを取っている。
「…マヤさん、何してるんですか」
「勝ったときのポーズを考えてるの!チノもメグも、同じチームなんだから一緒に!」
マヤはチノとメグに促すが、チノは呆れ顔でメグも横で見ている。
「…負けたら意味ないじゃないですか」
「じゃぁ、勝たなきゃね!今度の試合」
「ほら、こう?こう?こうかな?」
マヤの決めポーズが、どんどん変なポーズへと変わっていく。
―――――――――――――――――
放課後。
いつもの中学6人組で下校している。
「今度のスポーツ大会楽しみだな!」
「だよねー!私らも絶対勝つよぉ!」
リクとマヤの運動大好きコンビはスポーツ大会の話で盛り上がっている。
「私たちがバドミントンで雪兎くんたちがバスケットボールだったよね~?」
「そうだね」
「雪兎たちは3人でチームを組んでるの?」
「うん。結構いいところまで行けるんじゃないかな。リクはバスケも得意だし、僕らもそれなりにはできるしね」
中学のスポーツ大会はいくつかある種目の中から選ぶ。
雪兎たちはバスケットボールを、チノたちはバドミントンを選択している。
「…私は運動が得意じゃないので憂鬱です」
チノは嫌そうな顔でため息をつく。
「まぁ、まだ日にちはあるんだし、しっかり練習すれば大丈夫だよ」
「練習といっても…、みんなで集まれる日がそう取れるわけでは」
「私たちと練習できなくても、雪兎くんと練習すればいいんじゃないかな~?姉弟なんだから都合もつきやすいし」
チノの不安にメグが提案を入れる。
姉弟同士であれば都合はつきやすいだろう。
「なるほど」
「確かに。リゼさんにも頼んでみたら?こういう話好きそうだし」
帰ったら相談してみようという話になった。
―――――――――――――――――
ラビットハウスに着いた二人は、帰り道で合流したリゼと共に更衣室に向かっていると、廊下で腕を振り下ろしてイメージトレーニングを行っているココアと出会った。
「…ほっ!…とぅっ!」
「何やってるんだ?」
「もうすぐ、私の学校で球技大会があるんだよ。千夜ちゃんと練習するから、その間バイトに出られなくなるけどいいかな?」
「いいですよ。頑張ってください」
「えっ?ほんとに?」
ココアの心配をよそに、チノは頷いて答える。
「別に忙しいわけじゃないしな」
「一人欠けても大丈夫ですよ」
「あ、あの、…止めないんですか?」
そこにタカヒロがやってくるが、ココアにサムズアップをして部屋と入っていく。
「…そっかぁ」
ココアはとぼとぼと落ち込んだ様子で階段を上がっていった。
「…止めてほしかったのか」
「そうだ、姉ちゃん。リゼさんに聞いてみたら?」
「ん?どうしたんだ?」
「…あの、今度、私も授業でバドミントンの試合があるんですが、…あの、ちょ、調子が悪くて…、練習に付き合ってくれませんか?」
「いいよ!親父直伝の特殊訓練を叩き込んでやるよ!」
「!?」
「特殊訓練…」
チノのお願いに二つ返事で答えるリゼだったが、特殊訓練というよくわからない単語が紛れ込んでいる。
チノはその言葉に青ざめると後ずさりして壁に背を付ける。
「…あの、でも私も人間なので、殺さない程度に…」
「…私をなんだと思ってる?」
「軍人で用心棒…ですかね」
「私は軍人じゃないし…、用心棒でもない…」
そんな様子をみて雪兎はため息をつくのだった。
―――――――――――――――――
日も傾き始めた時間。
チノ、雪兎、リゼは運動着に着替えて、バドミントンの練習のために河川敷の公園を目指していた。
「結局、ココアとあまり変わらない時間にバイト上がれちゃったな。早めに仕事変わってくれた親父さんのためにも、上達しような」
「ティッピーが頭に乗っていたら二倍の力が出せるんです。嘘じゃないです」
「学校にはティッピー連れていけないでしょ。…僕はいいって言ったのに、父さんってば…」
『お前も行ってくるといい。何、店のことは心配するな』
リゼが練習に付き合ってくれるなら自分は残るつもりだった雪兎だが、タカヒロにそう言われて無理やりに上がらされてしまった。
「そういえば、雪兎もスポーツの試合あるんだろ?何に出るんだ?」
「僕はバスケットです。チームメイトと都合が合う日にスポーツセンターで練習しようって話になってます」
「チームメイトは、前にうちに来たあいつか?」
「はい。あとは、うちには来たことないクラスメイトの友達です」
リゼはカケルとの面識はあるが、リクとの面識はない。
「そういえば、リクさんは来てくれないね」
「コーヒー飲めないって言ってたからなぁ。飲めなくていいのに」
雪兎とカケルが何度かラビットハウスに誘ったが、
『コーヒー飲めないんじゃ、行っても失礼だろ』
っと、頑なに断っている。
変なところで律儀なやつなのだ。
「そいつ、そんなにコーヒー苦手なのか?」
「なんでも父親が飲んでた缶コーヒーをこっそり飲んで吐き出したのがトラウマらしいです」
「あ~…、確かに親が飲んでるものが気になるのはわかるな」
「うちのコーヒーを飲めばそんなトラウマは吹き飛ぶはず!雪兎は早くリクさん連れてきて」
「無理に来させても悪いでしょ…」
しばらく歩き、目的の公園に近づいてきた。
「お、この辺の公園だったらいいかな?…ん?」
「お?」
「え?」
三人が橋の上から公園の方を見ると、二人の人が倒れていた。
「…ココアさん?」
「死んだふりにハマっているのか!?」
「いや、それはおかしいですよ」
「千夜さんも?」
「何があった!?」
「行ってみましょう」
二人が倒れてる公園へと向かう。
チノはどこから木の枝を持ってくると、ココアと千夜の周りを囲うようにがりがりと線を引く。
「この状況…、どう見ます?」
「姉ちゃん。それ殺人現場にしか見えないからやめよ?」
「ふむ…」
リゼは考え込むように手を顎に当てる。
「現場に残されたものは…、一つのボール…」
「バレーボールの練習するって言ってましたからね」
「はっ!球技大会の練習というのは建て前で、お互いに叩きのめし合ったということか!」
「どうしたらそう見えるのっ!?」
「…生きてたか」
リゼの斜め上の推理に、ココアがすごい勢いで起き上がって突っ込みを入れる。
続いてふらふらと千夜が起き上がる。
「…バレーボールの練習をしてたの~…」
「それがどうしてこうなったのですか?」
「ボールのコントロールが上手くいかなくて」
千夜は今まで起こったことを話し始める――
『はぁ…、はぁ…、もう、無理…。私、当日休むから…」
『努力あるのみだよ!』
千夜はすでに息が上がっており、弱音を吐くが、ココアは気合十分に千夜を激励する。
『今度はトスで返してね』
ココアはそう言うと、ボールを千夜の方へ高めに打ち上げる。
『トス…。トス…?トス!?トスって何!?』
千夜が咆哮するとそのまま飛び上がり、渾身のスパイクをボールに叩き込む。
勢いそのままにボールはココアの左頬に吸い込まれるように直撃する。
『ごはっ!?』
『体力の…、限界…』
ココアはボールに弾き飛ばされ、千夜はスパイクで体力を使い果たし、その場に崩れるように倒れるのだった――
「千夜ちゃん…、和菓子作りと追い詰められた時だけ力を発揮するから…」
ココアの顔は真っ青になっており、それを聞いていた三人は恐怖に震えている。
「これじゃぁ、チームプレイも難しいな…」
「うーん。基本動作ができないと連携は取れないですね」
「顔に当てたら反則なんだよ?」
「嘘!?知らずにやってたわ」
「えっ…、わざとじゃないよね…?」
千夜の言葉にココアが青ざめる。
「確か、顔面はセーフじゃなかったですか?」
「それはドッジボールなのでは?」
「なぁ~んだ。良かった♪」
「全然良くないよっ!?」
チノの解説に千夜は笑顔を見せるが、殺人ボールが飛んでくる被害者のココアは声を荒げる。
千夜とココア、チノと雪兎、リゼに分かれてそれぞれ練習を再開する。
「チノ。私たちも練習するぞ!」
「はい!」
「僕は後ろから見てますね」
リゼはチノから距離を取った場所でラケットを構えて、雪兎は後ろからチノの動きを観察する。
「いくぞ。それ!」
リゼがラケットでシャトルを打ち上げる。
チノは飛んでくるシャトルを見ながら間合いを測り、ラケットを振る。
「ふん!…あっ」
しかしチノの振ったラケットは空を切り、シャトルは地面に落ちる。
「す、すみません…」
「姉ちゃん力みすぎ。ラケットは腕よりも長いんだから、シャトルをしっかり見て、狙って感覚を掴まないと」
「ゆ、雪兎は小言が多い!」
「姉ちゃんのために言ってるの」
姉弟のやり取りに微笑ましくなったのかリゼが笑う。
「ははっ、落ち着いてやれよ」
「は、はい」
「よし、次行くぞ」
「お願いします!」
「次はシャトルをしっかり見て」
「私そっち行きたい」
「ダメだ」
そんな様子を見ていたココアが混ざろうとするが、リゼが拒否する。
(せめて、関係ない人に当てちゃう癖は直さないと…)
千夜は考え込んでいるが、ココアはその様子に気づかずに練習を再開する。
「今度はレシーブで返してね」
「チノ、行くぞ!」
「あっ!」
「うわっ!?」
リゼもチノとの練習を再開するが、ココアが打ったボールが思った以上に勢いで飛び出し、リゼもシャトルを打った拍子にラケットが手からすっぽ抜ける。
「千夜ちゃん!」
「危ない!」
ラケットとボールは千夜の方向に猛スピードで飛んでいく。
「!、ほっ!」
チノの後ろで見ていた雪兎が咄嗟にすっぽ抜けたラケットを手に持っていたラケットで弾き飛ばす。
「ボールが!」
無理な体制で弾いたため、咄嗟に動くことができない雪兎が叫ぶ。
「あ、靴紐が…」
しかし、千夜は靴紐が解けているいることに気づきしゃがむとボールは頭上を飛んで行った。
「えぇ…」
「自分の危険は回避できるんですね」
雪兎は唖然としており、チノは思わず呟いてしまう。
「リゼちゃん交代してぇ~!」
「しょうがないなぁ…」
ついに根を上げてしまったココアがリゼに泣きつく。
この様子を橋の上で見ている人物がいた。
ココアたちよりも年上の長いゆるふわヘアーの女性。
「楽しそう…。あ、バレーボールとバドミントン…。二つの勢力の激しい戦い…。必殺技の応酬…。書けるかも!タイトルは…、そう、撲殺ラビットレシーブ!」
そう呟くとその人物はどこかへと去っていった。
「ココアさん、バドミントン出来るんですか?」
「任せて!」
ココアはチノの質問に、俊敏な反復横跳びで答えて見せる。
「なんで反復横跳び…?」
雪兎は変わらずチノの後ろでコーチをしている。
チノはシャトルを軽く打ち上げる。
「私の華麗なる振りを見ててね!ふん!」
ココアは打ち返そうと、思いっきりラケットを振りかぶるが空を切る。
シャトルがココアの頭にこつんと当たる。
「あ…」
「…」
「これは気まずい…」
ココアとチノの間に気まずい沈黙が流れる。
「見ないでー!」
「どっちですか…」
ココアはラケットを放り出して手で顔を隠す。
「見な―――ぐはっ!」
「あ…」
ココアの側頭部に突然ボールが直撃すると、ココアは勢いよく吹っ飛ばされる。
「ああ!ごめんなさい!」
千夜は謝りつつ顔を隠してしゃがみ込んでしまう。
「…私、周りに迷惑かけてばっかり…」
「…でもさっきから私にしか当たってないよね…」
「ホーミング機能でも付いてるんですかね…」
千夜はよよよと泣き崩れ、ココアはプルプルと震えながら立ち上がる。
「だとしたら、それはもう愛です。ココアさん、私に華麗なる顔面レシーブを見せてください!」
「そんな愛やだ!」
「落ち着いて姉ちゃん、わけわかんないこと口走ってる!」
「よし、みっちり鍛えてやるからな!」
「何で私の特訓になってるの!?」
なぜかやる気満々のリゼがボールを持ってくる。
「千夜ー!おばあさんが帰りが遅いって心配してたわよー」
その時、お下げに髪を結った部屋着のシャロが公園へとやってくる。
「あら、シャロちゃん」
「お!シャロもちょっとやってくかー?」
「リゼ先輩!?」
リゼがいることにシャロが驚く。
(気を抜いた私服を見られた!こ、こんなことなら、着古した服でこなけりゃよかったっ…!)
「その恰好なら動きやすいし大丈夫だよ!」
(やる気満々だと思われてるっ!)
「被害者――人数は多い方が楽しいよ!」
(被害者!?)
「ココア姉ちゃん、被害者言うのやめましょ?」
ココアが一瞬、悪い顔をしたことを雪兎は見逃さなかった。
結局シャロも参加することになったが。
「それでは、バレー勝負を始めます」
「僕と姉ちゃんは審判です。…なんでこんな流れに?」
(なんで!?)
なぜか高校生組でバレー勝負をすることになった。
雪兎もとんとん拍子に話が進んでいく様子に困惑気味である。
「頑張りましょうね」
チーム分けはココア、シャロ対リゼ、千夜となった。
(先輩に勝てる気がしない…)
シャロは学校でのリゼをよく知っているため、勝てるビジョンが思い浮かばない。
しかし、ココアがシャロの手を取る。
「え?」
「…シャロちゃん。今こそ、あの状態になるべきだよ!」
「えぇ!?っで、でも、そんなこと…、恥ずかしい…」
「ちょっと待ってて!すぐ戻るから!」
「あっ!待って!まだ使うって決めてない!」
ココアはシャロの制止を振り切りどこかへと走っていく。
数分後――
「ヴァリボー大好きぃー!」
カフェインモードになったシャロがいた。
ココアはドヤ顔で缶コーヒーを手にしている。
「カフェインでドーピングしましたね?…っで雪兎はなんで私の後ろに隠れてるの」
「あ、あの時のトラウマが…」
雪兎はぶるぶると震えながらチノの後ろに隠れている。
(なんだか、新鮮…)
そんな弟の様子にチノは思わず笑いそうになってしまう。
「お!シャロやる気だな!」
シャロがコートに入ったためか雪兎も平静を取り戻す。
「それでは」
「試合」
「「開始です」」
雪兎とチノが試合開始の合図を出す。
「行くぞ!」
リゼがサーブを打ち試合が始まる。
シャロがまず打ち返し、リゼがレシーブで返す。
その後も帰ってくるボール全てをリゼが的確打ち返す。
「ふれー、ふれー」
千夜はコートの隅に体育座りをしてメガホン片手にリゼを応援する。
「あ、あれ?」
そんなチームメイトの様子に一瞬リゼが呆けるがボールはレシーブでしっかり返す。
一方、ココア、シャロチームは何故かチームワークが取れており、お互いにしっかりとボールを打ち返す。
(リゼ先輩にぃ~!情けないところ見せられないぃ~!)
酔っぱらいながらもシャロもボールを打ち返す。
(チノちゃんと雪兎くんに、かっこいいとこ見せなきゃ!)
ココアの方も弟妹にいいところを見せようとボールを全力で打ち返す。
「「とぉー!」」
ココアとシャロは息の合ったコンビネーションを見せる。
二人が返したボールが千夜の方へと飛んでいく。
「はっ!…あっ!」
千夜もみんなの動きを見て分かったのかボールをトスで返すことができた。
「すごいぞ千夜!」
「やっとトスできるようになりましたね」
「うん!ありがとう!みんなのおかげよ!」
千夜の元にリゼとチノが集まる。
「「ぜぇ…、ぜぇ…」」
しかし、後ろでは息が上がり、顔を真っ青にしているシャロとココアの姿があった。
「これで球技大会も勝てるかもしれないわ!よぉーし!えいえい」
「「「おー!」」」
「盛り上がってないでこっちにも救援ください!」
必死に二人を介抱している雪兎が悲鳴を上げるのだった。
―――――――――――――――――
中学のスポーツ大会当日。
チノ、マヤ、メグのチームは一回戦、同点で一点入れたら勝ちという状況まで持ってきていた。
「チノちゃん頑張れ~!」
「もう一点取れば、私たちのチームの勝ちだよ!」
コートに入っているのはチノだが、既に息が上がっている。
「はぁ…、はぁ…、はぁ…。…リゼさんに教えてもらったサーブを使うときが来たようです!」
「そ、そんな技…。一般人に使う気か!?」
マヤの心配をよそにチノはラケットを握る手に力を籠め、ラケットを振りぬく。
「パトリオットサーブ!」
チノ渾身のサーブが炸裂するが、弾道が低かったのか、ネットへと突き刺さる。
「引っ掛かっちゃった…。しかも反動で吹っ飛んでる!」
「意味ねぇ!」
体力の残っていなかったチノは耐えきれずに反動で吹っ飛んでいた。
「きょ…、今日のところは…、これくらいに…、しといて上げます…。がくっ…」
「「チノぉーーー!!」」
結局試合には負けてしまった。
「…負けたのに本当にやるんですか?」
「せっかく練習したんだからね~」
「いっくよー!せーのっ!」
「「「勝利のポーズ!」」」
3人で決めポーズを決める。
「雪兎くんたちはまだやってるのかな?」
「一回戦は勝ったと聞いてますが」
「じゃぁ行ってみよう!」
3人は道具を片付けると、外履きに履き替えてグランドのバスケットコートへと向かう。
バスケットコートは三面分を使用していて、試合待ちや負けた生徒たちが観戦に集まっており、それなりの人だかりが出来ていた。
「どこかな?」
「う~ん。あ!あれじゃね?」
「行きましょう」
雪兎たちが試合をしているコートを見つけてそちらに向かう。
ちょうどリクがシュートを決めたところだった。
「お!勝ってるじゃん!」
「すごーい!」
「でもそれほど点数差はないです…!」
互いのチームの実力が拮抗しているのか点差はそこまではない。
「ナイスシュート」
「当然!」
「この調子でいこう」
雪兎たちはハイタッチをして自陣側のコートへと戻ってくる。
「雪兎ー!カケルー!リクー!負けるなよー!」
「頑張って~!」
「が、頑張ってくださーい!」
三人の応援に気づいた雪兎たちが手を振る。
「あいつらもう来たのか」
「負けたのかな?」
「どうだろ?」
軽く雑談をしているうちにホイッスルの音が響き、試合が再開される。
相手側からのボールで始まり、向かってくる相手チームをそれぞれがマークする。
カケルがマークしていた生徒がパスを飛ばし、雪兎の方にボールが向かう。
雪兎がボールを奪おうと割り込むように動くが間に合わず、相手のパスが繋がってしまう。
雪兎のマークを振り切った生徒がシュートを狙ってゴール下へと向かうが、リクがカバーに入る。
しかし、ブロックは届かず相手のシュートが決まってしまう。
「ああ!」
「点取られちゃった」
「雪兎…」
カケルがボールを受け取ると3人は自陣側に戻ってくる。
「ごめん!」
「ドンマイ。気にすんな」
「まだこっちがリードしてるから落ち着いていこう」
リクは雪兎の肩を軽く叩いて、カケルは声をかけて励ます。
ホイッスルが鳴り、試合が再開される。
カケルはリクにボールをパスし、3人は敵陣地に一気に駆け上がる。
相手チームはリクに二人、雪兎に一人がマークしている。
リクはジャンプして高めにボールを投げて、カケルにパスを渡す。
フリーだったカケルにパスが繋がり、相手の一人がマークに入る。
しかし、カケルはそのままスリーポイントのラインからシュートを放つ。
ボールは吸い込まれるようにゴールの中に入った。
「スリーポイントシュートだ!すげー!」
観戦中の生徒からも歓声が上がる。
「ナイススリーポイント!練習の成果だな!」
「これで相手側もカケルが無視できなくなるはずだね」
「はぁ~…、決まってよかったぁ~!」
相手のチームは戻りながら会話をしている当たり作戦を練り直していると見える。
カケルは雪兎とリクほど足が速くないことと、チームで背が高いこともあって、後ろで指示とパスを出す役割を担っていたのだが、攻撃にも参加したいということでスリーポイントシュートの練習を重点的に行っていたのだが、それでも入る確率は決して高くはなかった。
チャンスがあれば狙っていくくらいのつもりだったが、本番で入るとは思っていなかった。
その後も試合が続き、点の取り合いとなった。
相手のパスをリクがカットし、雪兎につないでシュート。
カケルのシュートミスを、リクが持ち前の身体能力を生かしたジャンプで取り、そのままシュートを決める等活躍した。
「「「ありがとうございました!」」」
結果、雪兎たちの勝ちとなった。
「やったじゃん!三人とも!」
「かっこよかったよ~!」
「手に汗握りました…!」
「サンキュ!」
「なんとか勝てたよ」
「ふぅ、ぎりぎりだったぁ…」
6人でハイタッチを交わす。
「っで、お前らはどうだったんだ?」
「負けちゃいました…私のせいで…」
「そっか。残念だったな」
リクがチノたちに結果を聞くと、チノは顔を伏せて答える。
「チノのせいじゃないよ!」
「気にしちゃだめだよ~」
「そうそう、気にすんなよ。チームなんだからさ」
「で、でも!―――痛っ」
まだ気にしているチノに対し、リクは軽く頭にチョップを入れる。
そして、いつにない真剣な表情でリクが喋り始める。
「いいか、チノ。チームで負けた時、自分のせいだって感じるときもある。もし、自分が上手くやれていたら勝てたかもしれない。そう思ったことは、俺も何度もある。反省することは大事だ。けどな、責めるのはダメだ。自分を責めたところで結果は変わらないし、チームメイトを責めてもチームの雰囲気が悪くなるだけだ。もし、自分のせいだって思うなら次に失敗しないようにするにはどうするか考えるんだ」
「次に…失敗しないように」
「そうだ。これで終わりってわけじゃないんだ。来年もまたあるんだから、来年はもっと上手くできるようにすればいいんだ」
リクが諭すようにチノに話す。
「さすが、サッカーチーム所属」
「説得力があるね」
その様子を後ろで見ていた雪兎とカケル。
いつものわんぱく小僧の様子を見せないで真剣に喋るリクに関心している。
「そうだよ!来年こそ一回戦突破だ!」
「頑張ろうねチノちゃん!」
「…はい!」
「リクもたまにはいいこと言うじゃん!」
「たまにはは余計だ!」
マヤの軽口にリクもいつもの調子に戻る。
「さて、そろそろお昼に行こうよ」
「お、もうそんな時間か。めしめし~♪」
「今日はみんなで食べよ~」
「よーし!みんなで次の試合の作戦会議だ!」
カケル、リク、メグ、マヤが校舎の方へと走っていく。
「姉ちゃん。僕らも行こう」
「…雪兎」
「うん?」
「来年は勝てるようにもっと練習する!」
チノは満面の笑みでそう言った。
―――――――――――――――――
球技大会後のラビットハウス。
「球技大会勝ったよ!」
ココアが帰ってくるなり声を上げる。
すでにチノ、雪兎、リゼは制服に着替えている。
「千夜のやつ、大丈夫だったのか?」
「千夜ちゃんだけ、種目をドッチボールの子と交代してもらったんだけど、避けるのだけは上手くて、ボールが全然当たらないの」
「なぜ、最初からドッチボールにしない…」
リゼの突っ込みに、大きく頷くチノと雪兎。
「チノちゃんと雪兎くんはどうだったの」
「…あの、せっかくリゼさんが毎日に付き合ってくれたのですが…」
「姉ちゃんたちは一回戦負け。僕らは三回戦までは勝てたんですけど、準決勝で負けちゃいました」
「そっかぁ~。残念だったね」
「いえ、来年はもっとうまくやります!」
「おおー!チノちゃん気合十分だね!」
チノは拳を握りしめる。
そんな様子のチノを見てリゼが雪兎に尋ねる。
「あんなに自信なかったのに、チノのやつ、ずいぶんとやる気だな」
「チームメイトと約束してましたから。来年こそは勝つって」
「そっか。じゃぁ、私も来年は気合を入れてチノを鍛えないとな!」
「ほどほどでお願いします」
そんな様子を見てリゼと雪兎は笑うのだった。
球技大会編でした。
チノちゃんたちは中学校の体育の授業からスポーツ大会にしてみました。
せっかく中学組ががっつり絡めそうだったので、だいぶ改変してみましたが、楽しく書けました。
ほんと中学組は動かしやすいです。
次回の父の日編は、本編はリゼがメインの話なのでこちらも雪兎くんたちを中心にオリジナル改変になるかと思います。