ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟― 作:テクト
ほぼ9割方オリジナルでめちゃくちゃ大変でした。
バリスタ講義開始から二日後。
昨日は二人とも別の用事があっため講義は開かれず、一日開けた開催となった。
4人はそれぞれラビットハウスの制服に着替えてホールに集まっていた。
「そうだチノ。親父が使ってたコーヒー豆をちょっと拝借してきたんだけど、これ、どういう味のやつかわかるか?袋はさすがに持ってこれなかったから、ケータイで撮ってきた」
「見せてください」
チノはリクから、挽かれたコーヒー豆の入った袋を受け取り、写真を見る。
「写真はブルーマウンテンの袋ですね。っで豆は…」
チノは袋から少しだけ取り出したコーヒー豆を指先に乗せると、匂いを嗅ぎ、口に入れる。
「…焙煎具合はフルシティローストですね。挽き具合は中細より細か目…、リクさんのお父さんは濃い目の味がお好みのようです」
「そうか!じゃぁ俺が目指す奴は!」
「はい。方針はこれで決まりですね」
チノがわずかなコーヒー豆から情報を正確に抜き出す。
「すごいねチノさん。あれだけで焙煎具合とかわかるんだね」
「姉ちゃん、味にはほんと敏感だからね。その分、好き嫌いも多いけど…」
「一長一短って感じだね…」
カケルもチノの、コーヒーの目利きの驚いているが、雪兎の言葉から若干残念な感じに変化する。
「カケルはどんな味を目指すの?」
「ボクはとりあえず今の淹れ方を上手くする感じかなぁ。こだわりは今のところ特にはないし」
「そっか。じゃぁ練習あるのみだね」
2人分の機材を用意して、今日の講義が始まる。
リクは家で使用している豆と同じものを選び、カケルはキリマンジェロを選ぶ。
「では、一昨日のおさらいをしながら進めましょう」
チノがそういうと、カケルとリクは前回と同じ手順でコーヒーを淹れ始める。
「たっだいま~♪あ、今日はみんなお揃いだね!」
「「おかえりなさい」」
「「お邪魔してます」」
二人がコーヒーを淹れてるところで、ココアが学校から帰ってくる。
「そういえば、リクくんとカケルくんはどうして二人からコーヒーの淹れ方を習おうと思ったの?」
着替えて戻ってきたココアが二人に尋ねる。
「えっ!?あ、こ、こいつらが喫茶店でコーヒー淹れてるって聞いて興味を持ったから!」
「ボクは…、付き添い?」
「…付き添い?」
理由を言うのは恥ずかしいのかリクは誤魔化し気味に話し、カケルは普通に理由を話すがリクに付き合う形だったので疑問形になっている。
「よーっす。あれ?新人か?」
続いてリゼがラビットハウスにやってくる。
「リゼちゃん!紹介するね。私の新しい弟たちです♪」
「嘘をつくな」
ココアのご機嫌な紹介に突っ込みを入れるリゼ。
「だから、俺らはいつから弟になったんだ」
「気にしないでください。いつもの事なので。この二人はバリスタ見習の弟子たちです」
「弟子?ってカケルと、もう一人は…?」
「こちら、雪兎のクラスメイトのリクさんです。スポーツ大会で雪兎のチームのもう一人です」
「初めまして。リクです」
「前に雪兎が言ってたバスケのチームメイトか。リゼだ。よろしくな」
初対面の二人は自己紹介をし、握手を交わす。
「弟子入り…。まぁ遠からずって感じかな?」
「実際教えてるからね」
「うちでコーヒーを淹れる修行をしているんです」
「要するに、コーヒーを淹れる訓練だな!厳しくいくぞお前ら!」
訓練と解釈したリゼのテンションが上がるが、二人は困惑気味である。
「どうしたんだこの人…」
「リゼさんは親が軍人で、厳しくしつけられてきたからあんな感じに軍隊的な言葉を使うとテンションが上がるんだよ」
「なんだそりゃ…」
「ラビットハウスの人は変わった人ばかりだね」
「…否定できない」
二人のココアやリゼの印象に頭を抱える雪兎。
その様子をリゼは顎に手を当てながら見ている。
「…しかし、小さいのが3人いると見分けがつかなくなるな」
「え?」
「小さい!?」
リゼの小さい発言にリクはショックを受ける。
事実、リゼは160cmくらいあるので三人はリゼより背が低い。
「雪兎、カケル、リク…。三人まとめて、ユカリ隊だな」
「「「ユカリ隊!?」」」
男子三人小隊、ユカリ隊が誕生した。
―――――――――――――――――
ココアとリゼが着替えてホールに戻ってくる。
するとちょうど来客を知らせる扉が開いた。
「いらっしゃいませー」
するとリゼは客を招き入れるように、軽く体を傾けて体の横に手を出す。
「あれ?」
「リゼさん…」
「リゼちゃん、そのポーズ可愛い♪」
「あ、いや、これは…」
リゼが咄嗟に取った仕草に感銘を受ける雪兎とチノとココア。
そのことを指摘されて照れるリゼがだが、満更ではないようだ。
「その、そうか?」
「うん♪」
「はい」
「そうですね。すごくいいと思います」
その様子を後ろで見ていたリクとカケル。
「接客は意外と普通なんだな」
「どういう意味だそれ!?」
「さすがに軍人テンションで接客したらお客さん困惑するでしょ」
「私は軍人じゃない!」
二人の感想にしっかり突っ込みを入れるリゼ。
それなりに客が入りだし、カケルとリクも手が空いた時に仕事を手伝う。
「お待たせしました。サンドイッチとブルーマウンテンです。ごゆっくりどうぞ」
カケルが配膳を行う。
「カプチーノが2点、ココア特製パンケーキが2点で2200円になります」
こちらではリクがレジ打ちを行っている。
「3000円お預かりしましたので、800円のお釣りになります。ありがとうございました」
それぞれの仕事を終えたカケルとリクがカウンターへと戻ってくる。
「おお~、二人とも接客できてる!」
「手馴れてるな」
「俺は、実家が雑貨屋だから店番はよくやってるんだ」
「ボクは、ここにお客で来た時の見様見真似です」
リクは自信満々に答えて、カケルは少し照れながら答える。
「お二人ともしっかりできてます。ココアさんとは大違いです」
「あ、あれ!?」
思わぬ方向からの飛び火にココアが困惑する。
「そうだな。カップを割るし、よくさぼるし…」
「も、もぉ~!弟たちの前で言わないでよ~!」
顔を真っ赤にしてぷんぷんと怒るココア。
「…なぁ、雪兎」
「何?」
いつの間にかキッチンから戻ってきていた雪兎にリクとカケルが尋ねる。
「ココア姉って色々大丈夫なのか?」
「うんまぁ、天然な感じはするよね、ココアさんは」
「接客は問題ないんだよ。接客はね…。ちょっと抜けてるというか…。悪い人じゃないんだよ…」
二人の不安を含んだ感想に雪兎は微妙なフォローをするのだった。
―――――――――――――――――
父の日前日。
ラビットハウスにココアを含めた5人が集まっていた。
リゼは今日は甘兎庵に出ているため、ここにはいない。
「では、お二人の成長を見せてもらいましょう」
「僕たちに二人にコーヒーを淹れてみるんだ。僕たちを満足させることができるかテストだよ」
バリスタ修行最終日ということで、二人がどれだけ上達したかを試すテストを行うことになった。
「お題は最初に淹れたコロンビアでやりましょう。これならどれだけ上達したかわかりやすいと思います」
「じゃぁ二人とも、練習の成果を見せてもらうよ」
「ああ、見とけよ!」
「うん!」
「二人とも頑張って!」
そういうと二人は準備を始める。
最初の頃のおぼつかない手つきからは考えられないほどに、手際よくコーヒーを淹れていく。
「だいぶ様になってきたね」
「うん。手際もよくなってきてる」
「じゃぁ、私はかわいい妹と弟たちのためにパンを焼いてあげようかな~♪」
ココアはご機嫌な様子でキッチンへと向かっていった。
「…あれ、完全に餌付けしてる気分だね」
「…しょうがないココアさんです」
そんな自称姉の様子にため息をつく姉弟。
しかし、コーヒーを淹れている二人の耳には届いておらず、真剣な表情のままコーヒーを淹れていく。
二人ともカップにコーヒーを注ぎ、雪兎とチノの前に出す。
「「お待たせしました。コロンビアです」」
「さてさて」
「では飲んでみましょう」
「「いただきます」」
雪兎とチノは声を合わせてカップに口を付ける。
その様子を真剣に見守るカケルとリク。
「…ふむ」
「…」
「どうだ…?」
「どうかな…?」
二人はカップをソーサーへと戻すと笑顔になる。
チノのコーヒーを少しだけティッピーも飲んでいる。
「この短期間で随分と上手になりましたね」
「うん。雑味もだいぶなくなってるし、抽出もうまくなってる」
「うむ。確実の上達しておるの。これからが楽しみになるのう」
二人の感想にカケルとリクはハイタッチを交わす。
「…ですが、まだまだ駆け出しといったところですが」
「まぁ、この日数で僕らを超えられたら立つ瀬ないけどね」
チノは少し辛辣な感想言うが、雪兎の言ってることも最もである。
「免許皆伝にはまだまだ先かぁ」
「ほんの数日だからね」
「お二人ともよく頑張りました。これならちょっと齧った程度の家庭のコーヒーよりも美味しいコーヒーが淹れられると思います。私たちから教えられることはまだまだありますが、とりあえず修行終了ということにしましょう」
「うん。お疲れ様、二人とも。リクもこれならお父さんをびっくりさせられると思うよ」
「おう!」
「ボクも明日はお父さんに出してみようかな」
「ぜひ、感想を聞かせてください。では、二人ともお疲れさまでした」
「「ありがとうございました!」」
カケルとリクが声を合わせて頭を下げる。
少し堅苦しい雰囲気になるがすぐにその空気は崩れる。
わいわいと、みんなでコーヒーを再び淹れ始めようとしたときにキッチンの方からココアが顔を出す。
「雪兎くん、雪兎くん」
「…ココアさん?」
ココアは雪兎に対して手招きをするとそのまま二人でキッチンへと入っていった。
「次はブルーマウンテンでやってみるか。こっちの方もどれだけ上手くなったかみたいしな」
「ボクはキリマンジェロで試そうかな」
「では、私はカプチーノで」
三人がそれぞれコーヒー豆を選んでコーヒーを淹れ始める。
「そういや、雪兎は?」
「ココアさんとキッチンの方に行ったよ」
「何か企んでますねきっと」
そんな雑談をしつつコーヒーを淹れていると、しばらくしてココアと雪兎がキッチンから戻ってくる。
「みんな~!今日は私と可愛い弟のコラボメニューだよ!」
「雪兎は私の弟です」
いつもの突っ込みが出るが二人は気にせずカウンター席に皿を並べていく。
「これ。カツサンドか?」
「そうだよ!パンは私が焼いて、トンカツは雪兎くんが揚げたんだよ!」
「雪兎くんって料理得意なのは知ってたけど、揚げ物もできるんだね」
「ここでは調理も担当してるからね。他にもいろいろ作れるよ」
「雪兎と同じ班だと、調理実習めっちゃ楽でいいんだよなぁ」
「リクさん、真面目に授業受けてください」
淹れているコーヒーをカップに移してそれぞれの席に並べてカケルとリクは着席する。
ココアと雪兎、チノは店員側でカウンター席で立っている。
「じゃ、修行お疲れ様の乾杯ということで」
「みんな!ちゃんとコーヒーとカツサンドは行き渡ったかな!」
「なんか打ち上げみたいだな」
「そうだね」
「では、召し上がってください」
「「いただきます」」
二人は手を合わせると、カツサンドを頬張る。
「お!めっちゃ旨いぞこれ!」
「ほんとだ!すごく美味しいよ!」
「ありがと、二人とも」
素直な感想に少し照れながら答える雪兎。
自分の料理を美味しいと言ってくれて、笑顔で食べる二人が妙に印象に残るのだった。
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ラビットハウス閉店の時間となり、着替えをすましたカケルとリクが帰ろうとしていた。
「チノ、雪兎。ありがとな。明日は絶対上手くやってやるよ!」
「でも、おじさん。いいんですか?ボクらにコーヒー豆を譲ってもらった上にバイト代なんて…」
「君たちはしっかり仕事をしてくれただろう?仕事に対価を払うのは当然さ」
二人が着替えをするときにタカヒロは、二人にお金の入った封筒と小分けにした挽いたコーヒー豆の袋を渡していた。
「子どもが遠慮なぞせんでいいわい」
「お二人とも、是非またうちに来てください」
「美味しいコーヒー、淹れて待ってるから」
「私も楽しかったよ。また来てね!可愛い弟たち!」
それぞれ言葉を贈ると、二人は帰っていた。
「さて、三人はもう上がっていいよ」
「はーい!お疲れさまでした!」
「はい」
「じゃ、父さん後はよろしくね」
ココア、チノ、雪兎は奥の扉へと向かっていった。
残ったタカヒロはカウンター席に立ち、ティッピーはカウンターテーブルの上に乗る。
「他人にコーヒーの淹れ方を教える。チノと雪兎にはいい経験になったじゃろうて」
「そうだな。人に教えるというのは中々できることじゃないからな。あの子たちもこれでまた一つ成長したことだろう」
「ほっほっほ。二人の成長はいつも楽しみじゃわい」
バータイムの準備をしながら、二人の穏やかな時間は過ぎていく。
次の日、ラビットハウスのバータイムには、うさぎ柄のネクタイを付けて、ラビットハウスのロゴの入りのシェイカーを振るタカヒロと、コレクションのワインが一本なくなったことを喚くティッピーの姿があった。
父の日編、後編でした。
中々思うように筆が進まず、めちゃくちゃ大変な回でした。
マヤ、メグとは一足先に、リク、カケルをラビットハウス組と絡ませる流れになりました。
そして、ユカリ隊爆誕。これは前からやりたかったやつです…w
千夜とシャロは出番が完全にカットに…ごめんよぉ…。
6羽はラビットハウス組メイン回ですのでもうちょっと早く書けると思います。