ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟― 作:テクト
ラビットハウス組メインなのでだいぶ手早く書くことが出来ました。
喫茶店ラビットハウスには二人のバイトさんがいます。
この春から下宿しているココアさんです。
そして、リゼさんです。
いつもの4人が働いているラビットハウス。
リゼがコーヒーを持って客に出す。
「お待たせしました。ごゆっくり」
コーヒーを出したリゼがカウンターに戻ろうとしたとき、後ろから先ほどの二人組の客の声が聞こえてくる。
「ねぇねぇ。あのツインテの子可愛くない?」
「可愛い!ツインテ超似合ってる!」
その声を聞いたリゼはお盆を持ったまま早足で窓の前に立つ。
すると、窓を見ながら前髪をいじる。
「…いいか。ああいう客の冷やかしは気にするなよ。…気にするなよ」
まるで自分に言い聞かせるように声を漏らすリゼ。
「リゼちゃんたら、窓ガラスを鏡代わりに」
「めっちゃ気にしてますよね。あれ」
その様子を見ていたチノとココアと雪兎。
「ん?な、なんだその頭は!?」
リゼがチノの方を見ると驚愕の表情に変わる。
チノの頭の上に乗っているティッピーは、なぜかヘアゴムで上の左右の毛をまとめてツインテールのような形になっていた。
「ティッピーは今、イメチェン月間中なんだって!」
「何事もチャレンジ。だそうです」
「ツインテ可愛いね!」
「さっきのはどっちに対してだ!?」
ココアの感想を気にも留めずに、リゼは駆け足で先ほどの客を追って店を出ていった。
「気にするなって言ってたのに」
「乙女心は複雑みたいです」
「そういうものなのかな?」
チノの頭の上でティッピーはツインテールをピコピコと動かしていた。
―――――――――――――――――
休日の朝。
普段なら喫茶店の仕事があるのだが、今日は全員休みである。
チノは普段より少し遅めに起きるとカーテンを開ける。
窓からは朝日と晴れ渡った空が見える。
「今日はいい天気です。こんな日は部屋でボトルシップを…」
「お散歩行こう!」
突然、勢いよくココアが部屋へと入ってくる。
「休みの日は家でのんびりしたいです。あと少しで作りかけのボトルシップが完成するんです」
チノの視線の先にはほぼ完成状態のボトルシップがある。
「それなら!公園で作って、川に浮かべて流そうよ!」
「…ボトルシップって、何かわかってます?」
ココアの勘違いに呆れ気味のチノだったが、根負けして、散歩に行くことになった。
「雪兎くんも誘ってくるね」
「まだ寝てると思いますよ?」
「なら、起こしてくる!」
ココアは気にすることなく、雪兎の部屋へと向かう。
ココアが部屋に入るが、カーテンは空いておらず、灯りも点いていないため部屋は薄暗い。
カーテンを開けて、ベッドで寝ている雪兎の体を揺する。
「雪兎くん!お散歩行こう!」
「…う~ん。…あと5分…」
反応はあるが、雪兎が起きる気配がない。
「雪兎くんてばー!お散歩行こうよー!」
「うう~…」
ココアも諦めず雪兎を起こそうと体を揺すり続ける。
さすがに雪兎も耐えられなくなったのか体を起こす。
「おはよう、雪兎くん♪」
「…おはよう、ココア姉ちゃん…」
眠たげな表情のままココアの方に顔を向ける雪兎。
「…今日仕事でしたっけ…?」
「ううん。お休みだからお散歩行こ♪」
「…おやすみなさい」
仕事で起こされたわけじゃないと分かった瞬間に雪兎は二度寝に走る。
「二度寝しちゃダメー!」
「…姉ちゃんと二人で行ってきてください。…眠いんです」
「雪兎くんも一緒に行くのー!」
ココアも諦めずに体を揺すり続けるが、雪兎はテコでも動かないつもりで布団を被って潜り込む。
「雪兎は…、やっぱりまだ寝てますか」
余所行きの服に着替えたチノがココアが戻ってこないことから、雪兎の部屋へとやってくる。
「どうしようチノちゃん。雪兎くん全然起きてくれない…」
「わかりました。ここは私に任せてください」
そういうと、チノは雪兎が寝ているベッドに潜り込む。
すると布団がもぞもぞと動き出す。
「…ちょ!?ね、姉ちゃっ!?あ、ひっ!やめっ!お、起きる!起きるからぁ!」
「次寝たらもっときついのいくからね」
雪兎の悲鳴のような声が響くと、チノがベッドから出てくる。
続けて、雪兎も真っ赤な顔でベッドから這い出てくるが、恨めしい表情でチノの事を睨んでいる。
「…こ、この姉っ…!」
「チノちゃん何したの?」
「姉弟の秘密です。ココアさん行きましょう。雪兎は早く着替えてリビングに集合」
それだけ言い残して、二人は雪兎の部屋を出た。
―――――――――――――――――
その後、雪兎も着替えてチノ、ココアと合流し街へと繰り出す。
外は晴れており、絶好のお散歩日和だ。
「この坂道からは町を一望できます」
「この町の絶景スポットの一つですね。…ふぁ~」
「おお!いい眺め!」
まず来たのは高い場所にある、この町の絶景スポットだ。
斜面の下の柵の向こう側には町並みが広がっている。
「自転車があったら、チノちゃんか雪兎くんを後ろに乗せて、この坂を滑走するの!」
「二人乗りはダメですよ」
「そうそう」
ココアは坂道を降りながら危険なことを言い出す。
「あ、その前に、自転車の乗り方を教えてもらわなきゃ。雪兎くんよろしくね」
「「ええー!?」」
「乗れないのに言ったんですか!?」
チノは坂道を爆走し、街灯に正面衝突する画が頭をよぎる。
「私、夕日の中で何度も倒れながら特訓するのが憧れで――」
「よく漫画にあるやつですね」
(話がころころ変わっていく…)
ココアが楽し気に喋りながらも、三人は歩を進めていく。
そんな様子にチノは若干困惑気味だ。
「あ、リゼちゃんだ!」
しばらく歩き、店の並ぶ商店通りに出るとブティックの店先で洋服を見ているリゼがいた。
「洋服を選んでますね」
「何か買うんですかね?」
リゼは二つの服を手に取り、見比べている。
「リゼちゃんって感じの服だね」
「私たちはあまり着ない系統の服です」
「リゼさんが着るやつって、かっこいい系のやつですよね」
別の服を手に取ると、リゼが笑顔になる。
「あ、ちょっと笑顔になった」
「リゼさん、結構顔に出ますね」
「気に入った服を見つけたんですね」
また別の服を手に取ると、険しい表情になりうむむと唸り始める。
「今度は悩んでます」
「何やら葛藤しているようですな」
「そっとしておきましょう」
その様子を後ろで眺めつつ、散歩を再開する三人であった。
―――――――――――――――――
しばらく歩き、公園に出た三人は木陰になっているベンチで一休みしていた。
「ポカポカして気持ちいいねぇ…」
「はい…、なんだか甘い香りもしますし」
「このまま寝れそう…」
「雪兎、外に出てる時まで寝ないでよ」
「甘い香り、…そう言われてみれば」
うつらうつらと雪兎は船を漕ぎ始めてる。
甘い香りという言葉と香りが気になり、辺りを見回すココア。
「あっ!クレープ屋さんだ!」
ココアが見つけたのは公園の道端に出ているクレープの露店だった。
「チノちゃん、雪兎くん。ご馳走するよ!」
「「いいんですか?」」
「お姉ちゃんに任せなさい!」
「やった!」
美味しいものが食べられると雪兎のテンションがちょっと上がる。
クレープ屋に向かうと、金髪のくせ毛の店員で、その姿はとても見慣れたものだった。
「シャロちゃん!?」
「え?ココア!?チノちゃんと雪兎くんも!」
クレープ屋の店員はシャロだった。
「おはようございます、シャロさん。朝早くからお疲れ様です」
「雪兎、もうお昼前だよ」
「こんなところでバイトしてるなんて、シャロちゃん多趣味だねぇ」
「そ、そうよ!多趣味よ!わ、悪い!?」
「シャロさん、生クリームがすごい勢いで出てますよ?」
誤魔化すような感じでシャロが言うが、手に力が入っており、絞り袋から生クリームが飛び出している。
ココアがクレープを三つ注文し、シャロに作ってもらう。
「はい。お待たせ」
「ありがとう!いっただきまーす。ううーん!美味しい!はい!シャロちゃんも上げる!」
チノと雪兎はココアの後ろですでにクレープを食べている。
ココアはクレープを一口食べると、シャロに分けようと差し出す。
「わ、私仕事中よ?」
「まぁまぁ、一口だけでも」
(一口…。クレープなんて、滅多に食べられないし…!)
心の中で葛藤するシャロだったが、誘惑には勝てずクレープを受け取ろうとするが、空から突然黒い物体が降ってきてクレープを粉砕する。
「ああー!また空からあんこが!よりによって、クレープの上に落ちなくたって!」
「あーあ、何やってんだよあんこ。姉ちゃんクレープちょっと持ってて…。ほら、こっちおいで」
雪兎があんこに声を掛けると、あんこは雪兎の腕に飛び込み、雪兎はあんこを抱きかかえる。
雪兎はハンカチを取り出して、生クリームで汚れたあんこのお尻を綺麗に拭きとる。
「う…、うぅ…っ!」
「あれ!?シャロちゃんが私よりショック受けてる!?」
クレープを食べ損ねたシャロが悔しさからか、悲しさからか涙目で体をプルプルと震わせている。
「待ってー!」
公園の道から声がすると千夜がこちらに駆け足で向かってきていた。
「やっと…、追いついた!」
「千夜ちゃん。またカラスにあんこ攫われたの?」
「いつもと制服が違います」
「確かに」
千夜が着ている服はいつもの緑の着物ではなく、黄色で少し派手目の着物だった。
「気づいた?今月は、レトロモダン月間なの!」
「甘兎もそのうち、フルール・ド・ラパンよりもいかがわしくなるんじゃない?」
「そう…、なら、脱ぐわ…」
シャロの辛辣な言い方に千夜は目を伏せると、肩のあたりから突然着物を脱ぎ始める。
「ここで脱がないでよ!雪兎くんもいるんだから!」
ココアがチノを目隠しし、チノが雪兎を目隠しする。
「…見た?」
「…見てないから大丈夫」
(久々の女難…)
雪兎は思わずそんなことを思ってしまうのだった。
―――――――――――――――――
シャロ、千夜と別れて、公園のベンチに戻ると、野良うさぎが集まっていた。
「もふもふ天国最高!」
「おっと。頭の上は危ないから乗るなよー」
ココアはうさぎを抱っこし、雪兎はうさぎたちに集られている。
そんな様子をうさぎが来ないチノがティッピーを膝にのせて横目で見ている。
「…いいんです。私にはティッピーがいますから」
(動物が懐かない体質って言ってたっけ…)
「き、きっと、チノちゃんは口とか毛並みとかがうさぎに似てるから、同族嫌悪されてるんだよ!」
「…意味わかって言ってます?」
「うさぎっぽいから懐かれない…?その発想はなかった」
「そんな発想はココアさんくらいしかないからね」
よくわからないココアのフォローにジト目で睨み返すチノ。
しかし、ココアは気にすることなくチノに抱き着く。
「それなら、私がチノちゃんをもふもふすれば、寂しくなくて解決だね!」
「…何も解決してませんが」
ココアのそんな言葉少し顔を赤くしつつも、満更でもない顔をする。
「あれぇ?姉ちゃんもしかして照れてるー?」
「て、照れてない!」
「お姉ちゃんに照れることなんてないんだよ♪」
「ココアさんも乗らないでください!」
雪兎のからかうような言い方に声を荒げて否定するチノ。
そして、ココアもそれに便乗する。
「あー!チノに雪兎じゃん!」
チノと雪兎が聞きなれた声がすると、そこにはマヤとメグがいた。
「マヤさん、メグさん」
「二人ともお出かけ?」
雪兎は話をしやすいように立ち上がってチノの後ろに移動する。
「うん。映画を見に行ってたの」
「そうでしたか」
「喫茶店の仕事が休みだって知ってたら、誘ったのにー」
「今度二人も一緒に行こうね~」
「うん。次の休みは連絡するね」
「ところで、どんな映画を見てきたんです?」
「私はアクションものがいいって言ったのに、メグがさぁー」
「今流行ってる映画でね、すっごく泣けるんだ~。パンフレットも買っちゃった」
そういってメグが出したパンフレットには、うさぎになったバリスタと書かれている。
(((他人事とは思えないタイトル!)))
物凄く身に覚えのある映画のタイトルに二人と一匹に衝撃が走る。
「あれ?ココアさん?」
「どこ行ったんだろ?」
気が付くと、チノの隣に座っていたはずのココアがいなくなっていた。
「隣に座ってた人なら、さっきどこかへ行っちゃったよ?」
「そうですか」
「捜しに行こうか」
「じゃあね。二人とも」
「学校でなー」
メグ、マヤと別れ、二人でココアを捜しに行く。
しばらく公園内を捜していると、他のベンチで知らない女性と談笑してるココアを見つけた。
「ココアさーん!」
「ココア姉ちゃーん!」
こちらに呼び声に気づいたのかココアが立ち上がると、話相手の女性はどこかへ去っていった。
「捜しましたよ」
「どこ行ってたんですが」
「ごめんごめん」
「ココアさんは知らない人と気軽に話せるんですね」
先ほどココアと話していた女性の背を見ながらチノは不思議そうに喋る。
「チノちゃんも、喫茶店のお客さんと話せてるよ?」
「いきなり世間話はしないですし、…話すのは得意じゃないです」
「姉ちゃん人見知りだからね」
「でも、リクくんやカケルくん、さっきのお友達とも楽しそうに話してたよ」
「雪兎経由で話すようになっただけです。あの二人も、積極的に話しかけてくれなかったら、友達になれてなかったです」
「そんなことないよ」
「え?」
「私にチノちゃんの腹話術の技術があれば!世界を狙ってたのに!」
良いことを言いそうな雰囲気になっていたココアだったが、飛び出した発言は空気をぶち壊す破壊力があった。
「「がんばってください」」
心底どうでもいいという顔で声を合わせる香風姉弟であった。
―――――――――――――――――
日が傾き、空が朱色の染まる時間。
3人は散歩を続けている。
「次はどこに行こうか?」
「そうですね」
「う~ん」
雑談をしながら街路を進んでいると一人の女性とすれ違う。
(…あれ?)
「…リゼさん?」
「は、はい!?」
どこかで見たことあるようなと雪兎が思った瞬間、チノが声を出す。
声を掛けられた女性が驚いた声で立ち止まる。
(ば、バレた!?)
カットモデルを頼まれて、オシャレな服を着こんで大きくイメージを変えていたリゼだがチノにバレたのかと焦る。
(あ~、リゼさんか。確かにいつもの雰囲気とだいぶ違うから一瞬判らなかった…。姉ちゃんすれ違っただけでよくわかったな)
「…人違いでした。失礼しました」
(あれ!?)
リゼが3人の方に振り返るとチノはリゼと認識できなかったのか、人違いと思って謝る。
そして、リゼと分かって声を掛けたのだと思ったチノの行動に雪兎が驚く。
「えっ」
「さっき見かけた時と、服も髪型も違うもんねぇ」
(こっちも気づいてない!?)
(見られてたのか!?)
雪兎はココアが気づいてないことに、リゼは3人に買い物を見られてたことに驚く。
「ん?でもリゼちゃんて呼んだら、振り向いたよ?」
「あっ。き、聞き間違えました。私、その、ロゼという名前なので」
普段とは声色を変えて誤魔化すリゼ。
「そうですか。でも、びっくりです。ロゼさんによく似た人がうちの喫茶店にいるんです」
「ほ、本当?是非行ってみたいわ」
「ラビットハウスというお店です。お待ちしています」
「ええ、いつか必ず。じゃあ」
ラビットハウスにいつか来るという約束をしてリゼは早足で身を翻して去っていく。
「私、雪兎の言ってる通り人見知りするんですが、今の人は何故かいきなり会話が出来ました!」
「やったね!チノちゃん!」
「……」
(もしかしてこれは!ココアさんの影響!?)
(いやあれはリゼじゃろ。雪兎は気づいておるな)
ココアと生活するようになって、成長した自分に感激しているチノ。
しかし、チノ頭の上にいるティッピーは気づいていた。
(カットモデルを頼まれたのはまだしも、買った服をすぐに着たくなってしまったなんて、そんなこと言えないとか考えとる顔じゃったなぁ)
雪兎はおもむろにケータイを取り出すとまるで何かに気づいたような仕草をする。
「あっ、すいません。ちょっと電話来てたみたいなので掛けてきますね」
「お友達から?」
「はい。ちょっと待っててください」
そういうと雪兎は二人から離れた場所に移動し、リゼに電話を掛ける。
『…もしもし』
「リゼさん、さっき…」
『お前気づいてたのか!?』
低い声で電話にリゼが出て、さっきの事を話そうとするとすぐに声色が変わる。
「いや、気づきますよ。…普通は」
『も、もしかしてあいつらも分かって言ってたんじゃ!』
「いえ、あの二人は本当に気づいてないです…」
『え…』
「本気で気づいてないです…」
『…マジか』
リゼは本気で誤魔化せると思ってなかったのか凄まじいまでの呆れた声が出ている。
『…雪兎、このことはあいつらには黙っててくれ!』
「いいんですか?完全にロゼさんとして信じてますよ?」
『カットモデルを頼まれたのはともかく!買った服をすぐに着たくなったなんて恥ずかしくて言えないだろ!?』
「いや、気にしないと思いますけど」
『私が気にする!いいな!男と男の約束だ!』
「リゼさんは女ですよ!?」
頭がパニックになっているのか思っていたことを口走り、自分の性別すらもよくわかってない状態になっているリゼにとりあえず黙っておくことを約束する。
通話を切り、雪兎は二人の元に戻る。
「お待たせしました」
「それじゃ行こうか」
「はい」
三人は日が落ちるまで散歩を続けた。
―――――――――――――――――
ラビットハウスに戻った三人は夕食と入浴を済ませてチノの部屋に集まっていた。
チノとココアはベッドに腰かけて、雪兎は絨毯の上に座っている。
「はぁ~、足くったくた~…」
「たくさん歩きましたね」
「疲れたけど楽しかったね♪」
「…今日は休日なのに色んな人と話しました」
「そうだね。姉ちゃん基本、休日は家にいるから」
ココアはベッドから立ち上がると扉の方へと向かう。
「あ、ココアさん…」
「分かってるよ。明日は学校だから早く寝ないとでしょ。雪兎くんももう寝ないと明日辛いよ?じゃぁ、おやすみ」
「そうですね。ふぁ~…。今日は程よく運動できたし、よく寝れそうです。じゃ、姉ちゃんおやすみ」
ココアが部屋から出ていくと、それに続いて雪兎も部屋を出ていく。
一人残されたチノは頭に手を置くが、そこにティッピーはいない。
「おじいちゃん…、お父さんとバーにいるんだった…」
突然、寂しくなってしまったチノはぬいぐるみを抱えて部屋を出る。
ふと、雪兎の部屋の扉に視線が移る。
(弟に頼るのは姉として情けない…)
寂しいから一緒にいてほしいなんて、姉としての威厳が揺らぐと感じてしまう。
それに、仮に行ったとしても寝るからとすぐに追い出されそうな気がした。
チノは、ココアの部屋の扉をノックする。
「ん?はーい」
ココアの返事を待ってチノは扉を開ける。
「今日はなんだか落ち着きません。まだ、お話ししていたい気分です。でも、ココアさんが迷惑なら…」
「あはっ♪じゃぁ、リゼちゃんから借りたDVD見ようか!」
「…うぅ」
(会話が盛り上がる気がしないです!)
ココアが取り出したDVDにはうさぎたちの沈黙というバツ印の着いたマスクを付けたうさぎのパッケージが描かれていた。
休日のお散歩編でした。
遺憾なく発揮される雪兎くんの寝坊助っぷりに、手馴れた様子で叩き起こすチノちゃんや、軽口を言ってチノちゃんをからかう雪兎くんなど、距離感が近い姉弟感が上手く出せたんじゃないかと思います。
こういう仲良しだけど、お互いに弄ったりする程よい姉弟関係は書きたかったのでこれからも上手く書いていきたいと思います。