ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第6羽後編です。


お話をするお話―2

散歩をした次の日の放課後。

 

「じゃあなー!」

 

「また明日」

 

「リクー、カケルー。またなー!」

 

「また明日~」

 

いつもの6人で下校中、リク、カケルと別れる。

 

「ん?ココア姉ちゃんとリゼさんからメールだ」

 

「こっちにも来てる」

 

雪兎とチノはケータイを取り出しメールを確認する。

内容は、それぞれの理由で今日の仕事に遅れることが書かれていた。

 

「なんて来てるの?」

 

「二人とも仕事に遅れるそうです」

 

「チノと雪兎だけで大丈夫なのか?」

 

「まぁ、何とかなるよ」

 

二人でお店を回すのは特に問題はないが、多少忙しくなるくらいだろう。

 

「じゃぁ、私たちが手伝ってあげるよ!」

 

「え?」

 

「お二人とも、いいんですか?」

 

「もちろんだよ!」

 

「本音は?」

 

「あいつらがチノんち行ったって聞いて私も行きたくなった!」

 

「私も~」

 

父の日の話を聞いたのだろうか、カケル、リクの話を聞いて興味を持ったようだ。

 

「ではお願いしましょうか」

 

「そうだね」

 

「よーし!早速出発だー!」

 

「おー!」

 

マヤは元気よく握り拳を振り上げると駆け出し、メグもそれに続く。

 

「いやいや、二人ともうちの場所知らないでしょ!」

 

「待ってください!」

 

そのあとをすぐに香風姉弟が追いかける。

 

―――――――――――――――――

 

ラビットハウスに着いた一行はタカヒロに事情を説明し、快く二人の手伝いの許可をもらう。

一足先に着替え終わった雪兎はティッピーとホールで三人を待っていた。

 

「雪兎の友達が来たと思ったら、次はチノの友達とはのぉ」

 

「前に二人が来た時の話を聞いて行きたくなったみたいでね」

 

「ほっほっほ。チノが友達を連れてくるとは、ちょっとは成長したということかもしれんな」

 

「そうかもね」

 

二人(?)で雑談をしていると、カウンター横の扉が開く。

 

「おっまたせー!」

 

「雪兎くん、どうかな~?」

 

マヤとメグがホールにやってくる。

二人はそれぞれ、マヤはリゼの制服を、メグはココアの制服を着ていた。

本来着ている人物とイメージが合うためよく似合っていた。

 

「うん。二人とも似合ってるよ」

 

「サンキュー!」

 

「えへへ~♪ありがとう!」

 

「お待たせしました。では、早速始めましょう」

 

「「おー!」」

 

少し遅れてやってきたチノが仕切るように言い出すと、雪兎とチノは、マヤとメグに仕事を教えながら業務をこなすのだった。

 

―――――――――――――――――

 

マヤとメグも少し慣れてきたころ、カウンター横の扉からココアが急いだ様子で入ってくる。

 

「遅れてごめん!制服が無かったんだけど…、あれ?」

 

「あっ、おかえりなさい~」

 

ココアが帰ってきたことに一早く気づいたメグが挨拶を返す。

 

「私の制服!?もしかして、私リストラ!?」

 

「ん?」

 

メグがココアの制服を着ていることで、勘違いをするココア。

 

「おーい、チノー!このもこもこしたの可愛いな!倒したら経験値入りそう!」

 

マヤがティッピーを頭に乗せて撫でまわしているが、ココアが気づくと早足で駆け寄る。

 

「リゼちゃん!?いつの間にこんなに小っちゃく!?」

 

「小っちゃ!?」

 

「あれ?よく見たら違う…?」

 

マヤのことをリゼと勘違いしているが、顔を見るとすぐに気づく。

 

「リゼって、この制服の持ち主?クローゼットにこれがあったけど、その人、裏の仕事も引き受けてるの?」

 

そういうと、マヤは懐からハンドガンを取り出す。

 

「リゼちゃん!大変な物置き忘れてるよ!」

 

「マヤさん!ティッピー返してください!」

 

「何、大騒ぎしてるんですか?」

 

キッチンから雪兎が戻ってくる。

 

「チノちゃん、雪兎くん。ごめんね、遅くなって。…ところで、二人は昨日の」

 

「私のクラスメイトです」

 

「ココア姉ちゃんとリゼさんが遅れると聞いて、うちを手伝ってくれることになりまして」

 

「マヤだよ!」

 

「メグです」

 

「そっかぁ、ありがとう。マヤちゃん、メグちゃん!」

 

「お礼なんかいいって。ねっ!メグ!」

 

「楽しいし、制服も可愛いしね」

 

ココアのお礼に、マヤとメグは元気よく返事をする。

 

「二人ともよく似合ってるよ!あともう二色増えれば、悪と戦うのも夢じゃないよ!」

 

ココアの頭にはラビレンジャーという謎の戦隊イメージが浮かんでいる。

 

「マジで!私、ブラックがいい!」

 

「私、ホワイト~」

 

「…ピンクとパープルじゃなくて?」

 

制服の色ではないのかと雪兎がつぶやく。

 

「何と戦うんですか…」

 

「…ライバル店かな?」

 

「ただの営業妨害じゃないですか」

 

ココアがわけのわからないことを言い出し、呆れるチノ。

 

「えっとぉ、ココアさん…」

 

呼び方に困っているのか、メグが小さい声でココアの事を呼ぶ。

 

「あっ!私の事は、お姉ちゃんって呼んでね!」

 

「気にしなくていいので…」

 

「雪兎は、普通にココア姉ちゃんって呼んでたな」

 

「そう呼んでほしいって言われて、最初に言ったきり定着しちゃって」

 

雪兎は少し照れながら頬を掻く。

 

「雪兎くんは素直だからね!ほら、チノちゃんも雪兎くんみたいに、みんなのお手本見せて!はいっ!お姉ちゃんって!」

 

「どうしてこの流れで呼んでもらえると思ったんですか」

 

ココアはチノに、お姉ちゃん呼びを促すが華麗にスルーされる。

 

「チノちゃんと雪兎くん、羨ましいなぁ~。こんな優しそうなお姉さんと一緒に暮らせて~」

 

「「えっ」」

 

「いえいえ、姉らしいことは何もできませんが。これ、パンのおすそ分けだよ!」

 

メグの言葉に上機嫌になったココアはどこからか、パンの入ったバスケットを取り出す。

 

「わぁ!ありがとうございます」

 

メグはバスケットから一つパンを受け取ると、口に入れる。

 

「はっ!お料理も上手!どうしてこんな素敵な人だって教えくれなかったの~」

 

「ココアさんは、パンしかまともに作れないんですよ!?」

 

「この一面しか見てないと、そう感じてしまうのも無理ないような…」

 

普段のココアを知っている分、チノと雪兎は困惑気味である。

ワイワイと話し込んでいると、カウンター横の扉が開き、リゼが入ってくる。

 

「すまない!部活の助っ人に駆り出されて!…ん?」

 

「あっ!リゼちゃん紹介するね」

 

ココアはマヤとメグの肩を掴んで引き寄せる。

 

「私の新しい妹たちです♪」

 

「嘘をつくな。その流れ前にも見たぞ。…そうだ!」

 

ココアの二人の紹介に、既視感を感じつつも突っ込みを入れるリゼだが、何かを思い出したように声を出す。

 

「私としたことが、あれを失くしたみたいで、誰か見てないか!?」

 

「あれ?」

 

「もしかして、これ?あと、コンバットナイフも入ってたけど、こっち?」

 

マヤはハンドガンを取り出すと、さらにコンバットナイフまで取り出す。

 

「うぇぇ…」

 

「リゼ!うちに物騒な物を持ち込むでない!」

 

チノはマヤが取り出した物騒なものに怯えて、ティッピーも思わず声を荒げる。

 

「素人が扱えるものじゃない。返せ」

 

「そのセリフ、かっこいい!」

 

リゼは至って真剣な表情でマヤから銃とナイフを取り上げるが、マヤはなぜかかっこいいと感じている。

 

「言ってることは正しいんだけどなぁ…」

 

やりとりが完全に日常から乖離しているせいか、中学二年生的には心が躍るセリフに感じてしまう。

マヤはそそくさとチノに耳打ちをする。

 

「リゼって役者目指してるの?それとも、ミリオタ?」

 

「ミリオタ…って何です?」

 

「えーっと…、まあいいや」

 

ミリオタという言葉が飛び出すが、チノも発言したマヤ本人も意味が分かっていないようだ。

 

「私も、CQCとかできるよ!」

 

(こいつ!CQCに精通しているのか!?…軍の関係者か?)

 

マヤが発言すると共に構えてリゼが驚く。

リゼも迎え撃つように構えを取る。

 

「マヤがCQC出来るなんて聞いたことないんだけど…?」

 

「マヤちゃん、またテレビの影響を受けてるんだよ~」

 

雪兎の疑問にしっかりメグが答える。

マヤは無邪気にリゼに詰め寄るが、リゼは警戒しながら間合いを取る。

 

「リゼって、立ち振る舞いが普通の女の人と違うねぇ!憧れちゃうなぁ!」

 

「やっぱり私って浮いてる!?」

 

マヤはリゼの立ち振る舞いがかっこいいと感じているようだが、リゼの方はマヤの発言を気にしている。

 

「ココアちゃんを私の目標にするね!」

 

「そんなこと初めて言われた…!」

 

一方、メグはココアの方が気に入ったのか、目標にすると言い出すと、ココアは感激したように両手を口に当てる。

 

(…不安だ)

 

メグがココアを目標にすると言い出したことに一抹の不安を覚える雪兎。

 

「ねぇチノ。チノはどっちに憧れてるの?」

 

「憧れ…」

 

マヤの質問にチノは少し考える。

 

「…強いて言えば、シャロさん?」

 

「「ですよね」」

 

高校生組の中で一番まともという認識は、ココアとリゼにもあるようだ。

 

(え?…うん。まぁ、妥当…かなぁ…?)

 

雪兎はシャロも大概だと思うが心の中に仕舞っておくことにした。

 

「ねえチノ、雪兎!今日はこのまま手伝ってもいい?」

 

「あ、はい、もちろん」

 

「うん。構わないよ」

 

「ありがと~。じゃぁ私、コーヒー淹れてくるね」

 

「あ!私もやってみたーい!あいつらもやってたって言ってたし!」

 

「はいはい、順番ね。二人とも」

 

手伝い継続の許可が出ると、わいわいとマヤとメグは盛り上がる。

テンションの上がっている二人を雪兎が窘める。

 

「リゼちゃんと一緒にお客さんしてようかな」

 

「なんか新鮮だなー」

 

ココアとリゼは窓際の机を相席で座って、客として振る舞う。

メグは早速淹れたコーヒーを、ココアの前に運ぶ。

 

「はい。どうぞ~」

 

「ありがとう。あ、メグちゃん。コーヒー豆を生で食べない方がいいよ」

 

「え?あはは。知ってるよ~」

 

「えっ」

 

ココアが知識を披露するが、メグはすでに知っていてショックを受ける。

続けてマヤもリゼにコーヒーを持っていく。

 

「親の影響を受けると、殺伐とした考え方が身について、大変だよな。お互い」

 

「お互い?」

 

一方、リゼの方はマヤが軍の関係者という考えが抜けておらず、苦労話を持ち掛けている。

 

「あっという間にあの二人も馴染んじゃったね。姉ちゃん」

 

それをカウンターの近くから見ていた雪兎は笑いながら言う。

 

「雪兎ー!追加でサンドイッチとナポリタン頼むー!」

 

「お願いしま~す!」

 

「了解ー」

 

雪兎は追加の注文を二人から受けると、手を振ってキッチンの方へと向かっていった。

一方、チノはその様子を不安な表情で見ていた。

 

「…おじいちゃん。この気持ち、何なんでしょうか…」

 

「むぅ…」

 

チノの中には今までに感じたことのない感情が渦巻いていた。

 

―――――――――――――――――

 

ある日の甘兎庵。

お客としてチノと雪兎が来ていた。

マヤとメグが手伝いに来た日以来、カケルやリクからも分かるほどに、チノに元気がないことに見かねた雪兎は、悩みを吐き出した方が楽になれると、千夜に相談しようという流れになった。

チノと雪兎は向かいに座り、チノはあんこを抱っこしている。

 

「はい。どうぞ」

 

千夜が二人に、お茶を出す。

 

「ありがとうございます。すみません、お仕事中に」

 

「突然押しかけてしまってすいません」

 

「ううん。あんこに会うついででも、チノちゃんが私に相談してくれて嬉しいわ」

 

「千夜さん…」

 

「雪兎くんもチノちゃんのことが心配よね」

 

「そうですね。周りから見ても明らかに元気がないので吐き出させようと思いまして、今日はお願いしますね」

 

「任せて。…それで、そのお友達がどうしたの?」

 

チノはぽつりと話し始める。

 

「…ときどきお店に来るようになって、…ココアさんとリゼさんの妹のようになってて…」

 

(シャロちゃんに教えたらなんて言うかしら)

 

リゼの妹という言葉に、混乱しているシャロの様子が千夜の頭に浮かぶ。

 

「それに…、もやもやするんです」

 

「嫉妬してるのね」

 

「嫉妬?誰にですか?」

 

(自覚がないのね!)

 

(ないんだよなぁ、この姉は)

 

雪兎も一応、話を聞いてはいたが、自分の中にあるもやもやの正体がわからないとチノが言っていたので、どう伝えればいいかと言葉選びに困っていた。

 

「…その、雪兎が他の女の人とベタベタしてる時と似てるんですが違うんです。だからよくわからなくて」

 

「あらあら」

 

「姉ちゃん。本人の前で言うのはやめようね?」

 

感情としてはそれに近いが、雪兎本人の前で言うのはやめてほしいと突っ込みを入れる。

 

「ココアさんは、年下だったら誰でもいいんです」

 

(誤解を招く発言だわ!)

 

「リゼさんはマヤさんに、親近感を覚えてしまったみたいですし」

 

(勘違いではあるけどね)

 

「メグさんもマヤさんも、まるで私の事を忘れてしまってるみたいでした…」

 

チノは寂しそうに目を伏せる。

 

「チノちゃん。寂しいならいっその事、うちの子になっちゃいましょ。雪兎くんと一緒に」

 

「余計ややこしいことに…」

 

「僕を巻き込まないでください」

 

千夜の提案は、何故か雪兎にまで飛び火する事態になっている。

 

「あの~」

 

会話をしていると隣の席から突然、別の女性の声が聞こえてくる。

 

「もしかして、ラビットハウスのお孫さんでしょうか」

 

「「そうですが?」」

 

「おじいちゃんのお知り合いですか?」

 

「ラビットハウスには学生だった頃、よくお邪魔していました。でも最近は心の準備が…」

 

「心の準備?」

 

「もやもやしてしまう気持ち、分かります。とても大切な人たちに囲まれているんですね」

 

祖父の知り合いという信頼を感じてか、チノはこの女性にも悩みを話し始める。

 

「…私、どうしたらいいのかわからないんです。こんな気持ち、初めてで…」

 

「…初めて、ですか。だったら良いことなのかもしれません」

 

「良いこと…?」

 

「きっと、心が教えてくれてるんだと思います。あなたは、あなたが思っている以上に、その人たちのことが好きなんだって。…すみません。差し出がましいことを。では、私はこれで」

 

一通り話終えた女性は原稿用紙を一纏めにすると席を立ち、会計を済ませて退店していった。

 

(不思議な人だ)

 

(すごい。わかりやすい言葉で姉ちゃんにちゃんと伝わってる。…あれ?あの人…、散歩に出かけた時に、ココア姉ちゃんと喋ってた人のような…?)

 

「私ったらダメね。チノちゃんの相談にちゃんと乗れなかったわ」

 

「そんなことないです。雪兎の言ってた通り、聞いてもらえて心が軽くなりました」

 

その言葉に、千夜と雪兎は笑顔になる。

すると突然、甘兎庵の扉が勢いよく開くと、フルールの制服姿のシャロが駆け込んでくる。

 

「りりりりリゼ先輩に、いい妹が出来たってどういうことー!?」

 

シャロは目を回しながらケータイを突き出してくる。

 

「…メールしたんですね」

 

「またややこしいことに…」

 

「うふふ♪」

 

―――――――――――――――――

 

ラビットハウスではリゼとココアがカウンターで会話をしていた。

 

「…ねえ、リゼちゃん」

 

「ん?」

 

「カケルくんとリクくんが来た時もそうだったんだけど、私、チノちゃんと雪兎くんがあの二人と仲良くしてるのを見てたら、嬉しいんだけど、ちょっと寂しくなっちゃったんだ。きっと、私の知らない二人の一面を一杯見てるんだろうな…」

 

チノと雪兎の知らない一面を想像し、それを知らない自分に涙を零すココア。

 

「ココア…。…私だってそういうの、分からなくもないぞ。私だけ、ここに住み込んでないわけだし…」

 

「え?何か言った?」

 

リゼも共感するが、最後の方は言葉が尻すぼみになりココアには聞こえていなかった。

 

「何も言ってない」

 

「えー?」

 

その後もココアは何を言ったのか迫り、誤魔化すリゼ。

そんな様子を扉から見ていたチノと雪兎。

 

「…雪兎、おじいちゃん。もやもやしてたのは私だけじゃなかったみたいです」

 

「うむ」

 

「そうみたいだね」

 

二人がホールに入ると、ココアとリゼがこちらに気づく。

 

「あ、おかえり!二人とも!」

 

「開店準備始めるか!」

 

「「はい」」

 

開店準備終えたラビットハウスではいつもの4人で仕事をしていた。

 

「やっぱり、この4人で仕事してる時が一番落ち着くね」

 

「そうかもな」

 

「リゼちゃんと雪兎くんがコーヒー豆を挽いたり、料理したりして、チノちゃんがお客さんに運んで、私は…、日向ぼっこ?」

 

「さぼるな!」

 

堂々としたココアのさぼり宣言に、リゼがすかさず突っ込みを入れる。

 

―――――――――――――――――

 

次の日の学校。

 

「チノのやつ、元気になったみたいだな」

 

「そうだね。最近、見るからに元気なかったからね」

 

「良い相談相手に会えて、気持ちの整理がついたみたいでさ。もう大丈夫だって」

 

チノと別れたユカリ隊は教室に向かいながら、今朝のチノの様子を話していた。

一方、チノは教室に着き、自分の席に座る。

 

「チノちゃんおはよう~」

 

「おはようございます」

 

チノの席にメグとマヤが集まる。

 

「その…、もう具合大丈夫?」

 

マヤが心配そうにチノに声を掛ける。

 

「…何のことです?」

 

「最近、ずっと元気なかったじゃん」

 

「声掛けにくかったから心配だったの。我慢しちゃダメだよ?」

 

「そうそう。変なとこで遠慮するからさ」

 

二人が自分の事を忘れてしまっているようだ。

そう感じていたチノだが、二人の言葉にハッとする。

忘れてなんかいない、自分の事をちゃんと見ているではないか。

 

「…大丈夫ですよ。今、治ったみたいです」

 

そのことに気づいたチノは笑顔を見せる。

 

「今治ったの!?」

 

「なんで~!?」

 

―――――――――――――――――

 

ある日の夕暮れ時、日の入りを知らせる鐘が町中に響いている。

ココアはティッピーを連れて、町を一望できる高台に来ていた。

 

「夕焼けがきれいだね~、ティッピー。私、お姉ちゃんとして、二人のお手本になれるような生き方…、出来てるのかな」

 

(小娘が何を言う)

 

物寂しげな表情で夕日を見つめるココアの発言に心の中でティッピーは突っ込みを入れる。

 

「リゼちゃんとは仲良くなれたけど、まだ変な子だって思われてないかな」

 

(リゼの方が気にしてるじゃろ)

 

「年頃の子の接し方は難しいですよね」

 

突然、どこからか女性の声が聞こえてくる。

 

「青山さん!?」

 

塀の陰に座っていたのは、チノが相談し、散歩でココアが喋っていた見知らぬ女性、小説家の青山ブルーマウンテンだった。

 

「奇遇ですねぇ~」

 

青山は立ち上がると、ティッピーに気づく。

 

「まぁ、可愛らしいうさぎ!」

 

(ギクぅ!)

 

旧知の相手である青山に撫でられて、毛が逆立つティッピー。

 

「青山さんが書いた小説!読んだよ!うさぎになったバリスタ。すっごく面白かった!」

 

「ほ、ほんと?…実は、主人公にモデルがいるんです」

 

「ほんとー!どんな人なの!?」

 

「昔、お世話になった喫茶店のマスターです。お店が経営不振の時に、いっそうさぎになりてーっと、愚痴っていたのを参考にしました」

 

当の本人であるティッピーは冷汗はだらだらと流している。

 

「映画化されるほど売れるようになったと、報告したいんですが、忙しくて間が空いてしまい…」

 

「…久しぶりで緊張しちゃうんだね」

 

「はい」

 

「でも、うさぎになりたいなんて、お茶目なんだね!」

 

「実に、ユーモラスです。白いお髭が素敵な、根は優しいお爺様なんですよ」

 

(恥ずかしいわ~い)

 

ベタ褒めを間近で聞かされている本人のティッピーは、恥ずかしさで死にそうになっていた。




マヤ、メグのお手伝い、チノのお悩み編でした。

チノちゃんのお悩み相談では雪兎くんを同行させるか迷いましたが、千夜、シャロが5羽で全カットだったのでさすがに入れたいと思いまして、同行という形に落ち着きました。
まぁ、シャロは後編ではセリフ1つだけの登場でしたが…。
青山ブルーマウンテンも本小説で名前がここで初登場。
結果的に雪兎くんがいないところで名前が登場という割と異例の事態にw
まぁ、Cパートは丸々カットでも問題はないような気もしますがね。雪兎くん入れる余地がないですし。
雪兎くんがいない場面で名前を伏せ続けてたらどこで出てきたんでしょうかね…w

そして、1期もついに折り返し地点に着きました。
正直2、3話くらいで挫折するかと思ってましたが、これだけ続けられるとは正直思っていませんでした。
このまま1期、2期、OVA2話、BLOOMと続けていけたらと思います。

引き続き、お付き合いいただけると幸いです。
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