ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟― 作:テクト
息抜きに書くつもりが思った以上に手間取ってしまいました。
アクセス10000超えました。いつもありがとうございます。
日の出から少しが経った頃。
雪兎の部屋の目覚まし時計が鳴り始める。
「ん…」
目を覚ました雪兎は少し声を漏らすと、手を伸ばして目覚まし時計を止める。
いつもの休日なら即二度寝コースだが、今日は事情が違う。
眠気を押し殺して起き上がると、首をコキコキを鳴らして眠っている頭を強制的に叩き起こす。
着替えてリビングに降りると、調理をしているリゼがいた。
「リゼさん、おはようございます」
「ああ、おはよう。休みなのに自力で起きるとは珍しいな」
「今日は友達と出かけるので、ちゃんと起きますよ」
「友達?あいつらとか?」
「はい。リクのサッカーの試合の応援をした後、3人で遊ぶ予定なんです」
雪兎は話をしながらも適当にあるもので朝食を摂る。
一方、ホールではココアとチノが接客をしていた。
「いらっしゃいま――あっ、カケルくん!おはよう!」
「おはようございます。ココアさん」
来店したのはカケルだった。
「おはようございます。カケルさん。雪兎ですか?」
「うん。そろそろ行こうと思ってね」
「分かりました。呼んでくるのでちょっと待っててください」
チノはそういうとカウンター横の扉に入っていく。
「雪兎くんと待ち合わせかな?」
「はい。今日はリクくんのサッカーチームの試合があるので二人で応援に行くんです。それで、その後は3人で出かけるということになってます」
「そうなんだ~。いいなぁ~、私も行きたかったなぁ」
「え?」
男子中学生の輪に混じる女子高校生。
カケルはイメージするが、明らかに違和感しかない。
「カケル。お待たせー」
カウンター横の扉から余所行きの服に着替えた雪兎が出てくる。
「じゃ、行ってきますー」
「いってらっしゃい~」
「気を付けて」
ココアとチノに見送られて、雪兎とカケルは外に出る。
「自転車取ってくるからちょっと待ってて」
「分かったよ」
雪兎が自転車を持ってくると、カケルも自分で乗ってきた自転車に乗り、サッカーコートへと向かった。
―――――――――――――――――
街外れにあるサッカーコートには人が集まっていた。
試合前の準備運動をしているリクがちらりと客席の方を見るが、二人の親友の姿は見当たらない。
(あいつらまだ来てないのか…)
準備運動の時間が終わり、出場する選手がコートに並ぶ。
「あ、試合始まりそう」
「急ごう」
自転車を漕ぎながら遠目でコートを見ると、試合開始前の挨拶が始まろうとしていた。
雪兎たちもスピードを上げて、駐輪場に自転車を止めて観客の人だかりをかき分けて前の方へ向かう。
その時に、試合開始のホイッスルが鳴り響く。
「あ、始まった」
「リクくんは…あそこだね!」
リクは転がっていくボールをチームメイトと追いかけて相手陣地側に上がっていく。
リクがボールを取り、パスを回してゴール前を目指す。
ゴール前まで上がったリクのチームメイトがリクにパスを回し、リクがシュートを打つ。
リクが打ったシュートはゴールキーパーのブロックを抜けて、ネットに突き刺さる。
「おお!入った!」
「綺麗に決まったね!」
周りの観客たちからも歓声が上がる。
相手陣地からリクたちのチームメイトが戻ってくる。
その時に、リクと二人の目が合うと、二人は応援するように手を振る。
「今日は来てくれてありがとうな」
試合はリクたちのチームが勝った。
現地で解散になり、リクは二人と合流していた。
「勝ててよかったね」
「リク大活躍だったじゃん」
試合中にリクはパスにシュートと大活躍のように二人には見えていた。
「そうでもねぇよ。周りのフォローがあればこそだ」
リクは頭を掻きながら少し照れた様子で言う。
調子に乗っているというよりは謙遜しているといった様子だ。
「さて、そろそろ俺たちも行こうぜ」
「そうだね。どうしようか」
「荷物邪魔だから、俺んち行って荷物置いてくるわ」
「オッケー、移動しようか」
三人はそれぞれの自転車に乗ると、リクの家へと向かった。
―――――――――――――――――
自転車でしばらく走り、町の一角に着く。
リクの家には後関雑貨店と書かれた看板が付いてた。
「店の中で待っててくれ。すぐ戻るから」
三人で店内に入ると、中はそこまで広いわけではないが、所狭しといろいろな商品が並んでいる。
「ん?もう帰ってきたの」
「今日は試合だけだから早いって言ったろ」
「んじゃあ、店番交代ね」
「今日は姉貴の担当だろうが」
「ちぇ~」
レジ前で店番をして女性と会話をするとリクは奥の扉に入っていった。
女性、後関空はリクに似た顔立ちで、短い黒髪にエプロン姿で気怠そうな雰囲気を纏っている。
「…んで君たち、店に来たのに何か買わないの?」
「え?…あ、じゃぁ」
突然、ソラにジト目に低めの声で話しかけられた雪兎は慌てて商品を見渡す。
文房具、アクセサリ、日用品、よくわからないものと雑貨屋らしく色々なものが並んでいる。
カケルは気にせず棚を見ながら時間を潰している。
「おい。友達に強制的に買わせようとすんな」
奥の扉からリクが戻ってくると、ソラに苦言を漏らす。
「強制とは言ってない。買わないのかって聞いただけ」
「不機嫌な顔と声でそんなこと言われたら気まずいだろうが」
「普通の顔ですー。普通の声ですー」
「だったら少しは店員らしく愛想よくしろよ」
「んー。めんどい」
ぶーっと口を尖らせてソラはリクに抗議する。
リクはそんな姉の様子にため息を漏らすと、無視して二人と合流する。
「雪兎、何も買わなくていいぞ。姉貴のいうことなんか気にすんな」
「え、いや、一応お店に来たんだし…」
「お前ほんと律儀だな…」
「雪兎くんらしいね」
雪兎はラビットハウスの三人へのお土産と思い、三種類のうさぎのキーホルダーを選びレジへと向かう。
「ずいぶんとファンシーな趣味だねぇ。君、可愛いもの好き?」
「いえ、姉と知り合いのお土産にと」
「ほ~う。お姉ちゃん思いだねぇ。どっかのバカ弟とは大違い」
「だれがバカ弟だ、クソ姉貴」
「誰もあんたとは言ってなーい」
リクの抗議を相手にすることもなく、ソラは雪兎の会計を済ませる。
「はい。どうも」
「雪兎ー、早くいくぞー」
「分かったー。また来ますね」
「はいはい。ありがとね~」
ソラは相変わらず、気の抜けた表情でひらひらと手を振り雪兎たちを見送る。
そして、三人の後姿をじっと見ている
(ふむ、素直な青、生意気な赤、眼鏡な緑…)
三人の着ていた服の色や特徴を見ていると、三人は自転車を漕ぎ出し視界から消える。
三人がいなくなったところで、ソラの視界に入ってきたのは一羽のうさぎ。
(三人組のちびオスうさぎ。…ふふん♪ビビッときましたよー)
ソラはそう感じると棚からスケッチブックを取り出し何かを描き始めるのだった。
―――――――――――――――――
「「「ありがとうございました」」」
ラビットハウスでは帰っていく客を三人で見送る。
扉が閉じると同時にそれぞれの持ち場に戻ろうとしたとき、再び扉が開く。
「いらっしゃいま――あれ?雪兎くん?もう帰ってきたの?それにカケルくんにリクくんも」
「出かけたんじゃなかったのか?」
「今日はお客で来ました」
「ちょっと早いけど昼飯にな」
「というわけでココアさん。三名でお願いします」
「なるほど。では三名様、こちらにどうぞ~♪」
三人は客としてきたことを説明すると、ココアは接客モードに切り替えて三人を席に案内する。
三人が席に着くと、リゼがメニューと水を持ってくる。
「注文はどうする?」
「俺はカツサンドとブルーマウンテンで」
「ボクはカツサンドとキリマンジェロ」
「僕はカツサンドとオリジナルブレンドでお願いします」
「いや、お前がいないとカツサンドは出せないだろ…」
「はい。なので、サクッと揚げてきます」
「客なのに自分で作って食べるのかよ!?」
リゼに突っ込みに構うことなく、雪兎は早足でカウンター横の扉に入っていった。
「あー…、カツサンド三つにブルーマウンテン、キリマンジェロ、オリジナルブレンドだな。ちょっと待ってな」
とりあえず注文を取ったリゼはカウンターへと向かう。
「試合はどうだったの?」
「俺らのチームが勝った」
「リクくん大活躍でしたよ」
「お前は自然に混ざってサボるな!」
雪兎が離れた席にはいつの間にかココアが座って二人と雑談をしている。
チノがコーヒーを人数分を入れて少し待つと、雪兎がカツサンドを持って戻ってくる。
「はい。姉ちゃんよろしく」
「自分で持って行ってもいいのに」
「一応お客だからね」
お盆にカツサンドを載せて自分の席に戻る雪兎。
チノは呆れつつもお盆にコーヒーを載せると三人の席に持っていく。
「お待たせしました。カツサンド三つと、ブルーマウンテン、キリマンジェロ、オリジナルブレンドです」
「お、きたきた」
「待ってました」
「ブルーマウンテンがこれで、キリマンジェロ。オリジナルブレンドは自分っと」
雪兎はテーブルに置かれたカツサンドとコーヒーを二人に渡す。
「それでは、リクくんの勝利を祝しまして」
「「「かんぱーい!」」」
「…喫茶店で祝賀会?」
「願掛けでカツサンド食べるなら試合前だろ」
ココアとリゼが突っ込みを入れるが三人は気にすることなく食べ始める。
「んで、これからどうするよ」
三人は食べながらも今後の予定を相談する。
「どっか行きたいところある?」
「ん~…特にこれってのもないし、適当にぶらついていきたいとこ見つけたら入るでいいんじゃないかな」
「そうだな。腹減ったら雪兎が美味い店知ってそうだしな」
「そこは任しておいてよ」
(雑だな…)
三人の会話を横で聞きながら、計画性のなさにリゼは心の中で突っ込みを入れる。
さすがに育ち盛りの男子だけあって、あっという間にカツサンドを平らげ、コーヒーを飲み干す。
「「「ごちそうさまでした」」」
「雪兎のカツサンドはやっぱ美味いわ」
「うん。ここに来るたびに食べたくなるね」
「そう言ってもらえると、作ってる側としても嬉しいよ」
「「お邪魔しました」」
「行ってきまーす」
食べ終わった三人は会計を済ませてラビットハウスを出ていった。
「…男子ってあんな感じに雑なのか?」
「お兄ちゃんたちも似たような感じだったと思うよ」
「私たちにはよくわからない世界です」
ラビットハウスに残った女子三人は呆れ気味にその背中を見送った。
―――――――――――――――――
三人は自転車であたりをぶらつき、店に入ったりして時間を過ごす。
昼食時を少し過ぎたころに、リクが空腹を覚える。
「そろそろ何か食いに行こうぜ。小腹空いてきたわ」
「雪兎くんお勧めの店に行く?」
「じゃ、甘味処の甘兎庵に行こうか」
三人は甘兎庵へと向かった。
「ここが、甘兎庵?」
「そ、和菓子のお店だよ」
「へぇ~」
店に近くに自転車を止めて店前に立つと、甘兎庵を知らない二人は興味津々といった様子で店を見ている。
雪兎が扉を開けると同時に何か黒いものが飛び込んでくるが、雪兎は慣れた様子でそれをキャッチする。
「うお!?なんだこいつ!」
「うさぎ?」
「ここの看板うさぎのあんこだよ。なんか妙に懐かれてねぇ」
「雪兎くんいらっしゃい。あんこが扉の方をみたからすぐに分かったわ。…後ろの子たちはお友達かしら?」
「千夜さんこんにちは。二人は僕の友達です。二人とも、この人は千夜さん。ココア姉ちゃんのクラスメイトだよ」
「千夜よ。よろしくね、二人とも」
「リクです」
「カケルです」
雪兎が二人に千夜を紹介し、二人も自己紹介する。
「今日は三人でお願いします」
「分かったわ。じゃ、こちらのお席にどうぞ」
千夜が三人を席に案内すると、水とお品書きを持ってくる。
「はい、お品書きよ」
「あ、ありがとうございます」
カケルがお品書きを受け取り中を見ると、顔をしかめる。
「えーっと、ナニコレ…」
「うん。そうなるよね…」
カケルの反応に雪兎が同意する。
「和菓子って種類がよくわからんな」
「なら、指南書をどうぞ♪」
リクが指南書を受け取り、お品書きと照らし合わせる。
「あ、こういう感じか。じゃぁ翡翠スノーマウンテンにするか。冷たいもの食べたかったし」
「え?」
「分かるの?」
「写真見れば大体わかるな」
「「ええっ!?」」
リクのあっさりとした反応に二人が驚く。
種類がわからないだけで、名前から中身が分かってるようだ。
「あら、君は分かるの?」
「ああ。俺もうちで新しい商品入ったときに、商品に名前つけて怒られたなー。消しゴムにホワイトアウトブロックとか、星の飾りに、夜空を駆ける瞬光一閃とかつけたりしてな。ここの店のメニュー名も中身が分かればどれかってのは大体わかる」
その言葉に、千夜はリクの手を取る。
「もったいないわ!それほどの才能を持て余すなんて!」
「変な名前つけるなって、親が許してくれないからな~」
「なら、リクくんならこれに何て名前を付けるかしら?」
そう言って千夜が取り出したのは桜餅だった。
リクはそれを手に取りまじまじと見る。
「う~ん…。桜餅か。…深淵が纏うは薄紅の鎧…」
「良いセンスね!でも、お菓子だからもうちょっと柔らかい感じがいいわね」
「…分かる?」
「…全然わからない」
盛り上がってる二人を横目に完全に置いてけぼりになっている雪兎とカケルだった。
―――――――――――――――――
甘兎庵で軽食を済ませた三人は、再び目標もなく街をぶらぶらと周る。
ゲームセンターや、本屋などに寄って時間を潰しているとまたどこかへ食べに行こうという話になった。
「っで、雪兎くんのお勧めがここ?」
「フルール・ド・ラパン?何の店だ?」
「ここは主にハーブティーを取り扱ってる喫茶店だよ」
やってきたのはフルール・ド・ラパン。
「いらっしゃいませ~♪」
雪兎が扉を開けると、シャロがいつもの仕草で出迎える。
「こんにちは、シャロさん」
「って雪兎くん?ココアたちと一緒じゃないなんて珍しいわね」
「はい。今日は僕だけ休みなので」
「そうなんだ。後ろの二人は?」
「僕の友達です」
「初めまして、カケルです」
「リクです」
「シャロよ。よろしくね」
初対面の二人がシャロに自己紹介をし、シャロが返す。
「この人が知り合い?」
「うん。さっき行った千夜さんの幼馴染」
「ここ、コスプレ喫茶か?」
「そういうわけじゃなくて、制服は店長さんの趣味らしいよ?」
「職権乱用だね」
(…違うと思うけど)
カケルの発言に心の中で突っ込みを入れるシャロは気を取り直して咳払いをする。
「こほん。では三名様ですね。こちらへどうぞ」
シャロが三人を席に案内するとキッチンへ向かい、水とメニューを持ってくる。
「こちら、メニューになります」
「ハーブティーって初めて飲むな」
「僕も未だにシャロさんに聞かないとわかんないなぁ」
「ボクはビルベリーでお願いします」
リクと雪兎が迷っている中、カケルはすぐに注文を言う。
「あら。カケルくんは効能分かるの?」
「はい。僕も家でたまに飲んでますから」
「さすが博識」
「興味があったら調べてるだけだよ」
「俺に合ったやつとかあるのか?」
「そうだねぇ」
カケルはメニューを見ながらリクにあったハーブティーを見繕う。
「リクくんはハイビスカスかな。肉体疲労に効くよ」
「へぇ~」
「雪兎くんは、オレンジブロッサムなんていいんじゃないかな。安眠作用があるんだ」
「あれ?ラベンダーじゃないの?」
「ラベンダーも効くけど、他のハーブティーでも同じような効能があるのよ。ものによって少しずつ違うから、今の状態でブレンドしたりする人もいるわね」
「ハーブティーも奥が深いんですね」
「そうだね。ブレンドで効果も上がるし、味を追求するもよし、効能を追求するもよし。いろいろな楽しみ方があるんだよ」
「健康にもいいけど飲みすぎには注意ね。他にも――」
ワイワイとシャロとカケルがハーブティー談議で盛り上がっている。
「あいつ、意外な趣味があったな」
「…ここまでシャロさんと馬が合うとは思わなかった」
一向に話し終わりそうにない二人を、注文で割り込んで止めるのだった。
「「「ごちそうさまでした」」」
ハーブティーとクッキーを食べ終えて、会計を行う。
「はい。ありがとうね」
「シャロさん。ハーブティー美味しかったです」
「また来ますね」
「じゃあなー」
帰っていく三人を見送るシャロ。
(…ココアと千夜がいないとめちゃくちゃ平和…。男の子の方が常識人…?)
雪兎は二人の関係者なのに、一切声を張り上げて突っ込みを入れてないことになぜか寂しさを感じるシャロだった。
―――――――――――――――――
夕日が空を染め上げる時間。
フルールを後にした雪兎たちは公園に来ていた。
三人はベンチに座りながら、そこらへんで買ったお菓子を食べながらのんびりしていた。
「そろそろ解散にするか」
「日も落ちそうだしね」
「うん」
そういうとベンチから立ち上がり、三人は向き合う。
「今日は応援ありがとな。それに、雪兎のおかげで食べ歩きも捗ったし」
「そうだね。あまうさもフルールも知らなかったし、また機会があれば行きたいね」
「また美味しいところ見つけたら教えるよ」
「じゃ、解散!」
「「お疲れー!」」
リクの掛け声を合図に二人で声を合わせる。
それぞれ自転車に乗り、帰路に着く。
雪兎はラビットハウスの方に向かうと、自転車なのですぐに到着する。
自転車を裏口に置くと、まだラビットハウスが開いているので正面から入る。
「ただいまー」
「あ、おかえりー!」
「おかえり」
ラビットハウスに入るとココアとリゼが出迎える。
「楽しかった?」
「はい。ゲームセンターとか本屋に行って、あとは甘兎庵とフルールに行ってきました」
「千夜とシャロのところにも行ったのか?」
「いいなぁ。私も行きたかった…」
「男子の輪に混ざろうとするな」
「弟たちを見守るのも、お姉ちゃんの大事な勤めだよ!」
「ユカリ隊はお前の弟じゃないだろ」
相変わらずのココアにいつもの調子でリゼが突っ込みを入れる。
「さて、晩御飯の仕込みをしますので僕は先に」
「ああ」
「雪兎くんの晩御飯!今日は何かな~♪」
「あはは、まぁあんまり期待しないでくださいね。あ、そうだ」
雪兎は何かを思い出すと、カバンから紙袋を取り出す。
「これ、お土産です」
「いいの!?ありがとう!」
「え?私にも?」
「もちろんですよ」
雪兎は二人に手渡すと、ココアは早速袋から取り出す。
「おお!うさぎのキーホルダー!」
「それぞれ色違いになってます」
「ありがとな雪兎」
「いえ、日頃お世話になっていますから」
雪兎はカウンターの方へと向かうとチノにも渡す。
「はい。姉ちゃんの分」
「ありがと。わぁ、可愛い…!」
チノも袋からキーホルダーを取り出すとキラキラと表情が明るくなる。
「じゃ、後はお願いしますね」
雪兎はそういうと奥の扉へと入っていった。
―――――――――――――――――
数日後。
「行ってきまーす」
「ちょい待て弟よ」
「あん?」
後関家ではリクが学校に行こうとしたときに、ソラが呼び止める。
「なんだよ姉貴」
「これ、あの子たちに渡してやんな」
ソラは手に持っていた紙袋をリクに渡す。
「なんだこれ?」
「あんたら三人見てたらビビッときたから作った新商品の試作品。お礼もかねてあの子たちに渡しといて。あんたの分もあるから」
「はぁ?…分かった」
「じゃ、よろしく~」
リクは紙袋をカバンに仕舞うと、ソラの気の抜けた見送りを後ろに学校へと向かった。
「あ、リクくん。おはよう」
「おっす」
いつもの通学路を通り待ち合わせ場所に着くと、既にカケルが来ていた。
「あいつらは?」
「まだ来てないよ」
二人で雑談をしているとすぐに雪兎たちもやってきた。
「おっはよー!二人とも」
「リク、カケル。おはよう」
「おはよ~」
「おはようございます」
挨拶をし、学校に向かう途中にリクが先ほどソラからもらった紙袋を取り出す。
「雪兎、カケル。姉貴からこれもらったからやるよ」
「なんだそれ?」
「俺もまだ見てないからわからん」
「開けてもいい?」
「ああ」
三人がそれぞれ紙袋から取り出すとボールペンが入っていた。
雪兎のは青、カケルのは緑、リクのは赤とそれぞれに色が違っている。
「ボールペンだ」
「だね」
「色は違うけどみんなお揃いだね~」
「柄のうさぎも微妙に違います」
「ほんとだ」
ボールペンにはうさぎ柄が入っているが、それぞれ特徴が異なっている。
「なんか俺のやつ目つきが悪い」
「ボクのは眼鏡かけてるね」
「雪兎のは普通の感じです」
「これって、もしかして三人をイメージしてるんじゃないかな~?」
「確かにリクのやつなんか目つきがそっくりだな」
「俺はこんなに目つき悪くねぇよ!」
「でも。どれも可愛いです」
「そうだね」
後日、新商品として並んだ三色の三種のうさぎ柄のボールペンは後関雑貨店で結構いい売れ行きだったという。
ユカリ隊の休日でした。
男子中学生メイン回ということで、千夜、シャロと絡ませてみました。
リクの中二病ネーミングセンスと、カケルのハーブティも守備範囲の博識をそれぞれ二人に接点を持たせる感じにしてみました。
リクの姉も初登場です。
名前 :後関空(ごせきそら)
年齢 :23歳
身長 :159cm
リクの姉。
ダウナー系のめんどくさがり。
デザイナー系の大学の出で、卒業後、実家に就職。
主に商品開発や店番を任されている。
デザイナー経験を生かして、オリジナル商品の開発を行っており、一部は評判がいい。
思いついたら即席でスケッチを描いてすぐに作り始めるのだが、思いつかないと全く動かないタイプ。
リクとの仲は普通。お互いに罵り合ったりはしているが仲が悪いというわけではない。
今後の登場は中学生組ほどはまず出ないので、後関雑貨店のシーンがあれば出てくるかもというレベルです…w