ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第10羽中編です。
たいっへんっ長らくお待たせしました!


対お姉ちゃん用決戦部隊、通称チマメ隊&ユカリ隊ー2

「相変わらずでかいよなぁ」

 

「ボクも前に来たことあるけど、来るのは久しぶりだなぁ」

 

「温水プール楽しみー!」

 

「わくわくだね~♪」

 

7人は温水プールに着くとリクとカケル、マヤとメグのテンションが上がっている。

 

「はしゃぎすぎて逸れるなよ~」

 

「あれ?姉ちゃん?」

 

横にいたはずのチノがいつの間にかいなくなっていることに雪兎が気づく。

6人が辺りを見回すと、野良うさぎに手を伸ばすチノがいた。

 

「何やってんだお前」

 

「あっ、野良うさぎがいたので…」

 

「…だんだんココアっぽくなってないか?」

 

「確かに…」

 

「えっ…」

 

リゼと雪兎の発言にチノは顔を赤くする。

女子と別れたユカリ隊はティッピーを預かり、更衣室に入る。

 

「広いところで泳ぐのも久しぶりだなぁ」

 

「体育の水泳も夏だけだからね。久々に思いっきり泳げそうだよ」

 

「お!じゃぁ25メートル勝負するか?」

 

「いいね!負けたらコーヒー牛乳おごりでどう?」

 

着替えながら盛り上がっているリクとカケルを後目に、黙々と着替える雪兎。

 

「…雪兎?さっきから黙ってどうした?」

 

「体調悪いの?」

 

先ほどから黙りっきりの雪兎に対して心配する二人。

 

「…男友達って、いいね!」

 

「「…は?」」

 

雪兎の顔はとても晴れやかだった。

 

(やれやれ)

 

―――――――――――――――――

 

着替え終わった7人はそれぞれ思い思いにプールを楽しんでいた。

 

「それそれー!」

 

「わぁー♪」

 

マヤとメグはプールでお湯をかけ合い、リゼはプールサイドの椅子に腰かけてのんびりしている。

 

「二人とも!あと10メートル!」

 

「うおぉぉ!」

 

「負けないよっ!」

 

ユカリ隊は25メートルプールでスピード勝負をしている。

チノはプールの一角でティッピーとチェスを指していた。

 

「…おじいちゃん。お友達を泊めるのは初めてで、ちゃんと持て成せるか不安です…」

 

「むぅ…」

 

「今思えばこういう時、ココアさんに頼りっきりでした…」

 

友達を泊めることに不安を覚えたチノは、ティッピーに相談していた。

 

「ありのままのお前で接すればいい…」

 

「…あれ?おじいちゃん声、って青山さん!?」

 

突然、祖父の声に違和感を覚えたチノだが、喋っていたのはいつの間にか横に来ていた青山だった。

 

「って、マスターならきっと言うと思うんです」

 

「あ、あの…、ここへはよく来るんですか?」

 

「小説のアイデアは、どこに転がっているか分かりませんから」

 

よく来る、というわけでもなくただ閃きを求めて来たようだ。

 

「ではでは~」

 

青山はプールに入ると流されるようにどこかへと行ってしまった。

 

「チノー!」

 

青山がどこかへ行くと同時にマヤの元気な声がチノを呼ぶ。

 

「見て見て!リゼに買ってもらったー!」

 

マヤとついてきたメグが持っていたのは水鉄砲だった。

後ろにいるリゼとユカリ隊も、色違いの水鉄砲を持っている。

 

「二手に分かれて銃撃戦やろうぜ!」

 

「は、はい」

 

マヤの提案で二チームで水鉄砲による銃撃戦をやることになった。

チームはリゼ、雪兎、チノチームと、マヤ、メグ、カケル、リクチームとなった。

 

「よぉーし!スタートだ!」

 

「よーし、勝つぞぉ!」

 

(リゼさんが輝いてる…)

 

リゼは気合入れたスタート合図を入れ、雪兎もそれに続く。

 

「俺らも行くぞ!」

 

「うん!」

 

一方、リクとカケルも行動を開始しようとするが…。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「これどうやって水入れるの~?」

 

「使い方分かってなかった!」

 

「なんでだよ!?」

 

マヤとメグは水鉄砲の使い方が分かっていなかったようだ。

 

「そういうことは先に言え!」

 

「ごめーん」

 

気を取り直して、マヤとメグが水鉄砲の使い方が分かったので、二手に分かれて試合を開始する。

マヤ、メグ、カケル、リクチームは柱の陰に隠れて作戦会議をしていた。

 

「…さて、唯一の高校生のリゼがあっちのチームに行ったわけだが、どうする?」

 

「先手必勝!全員突撃で撃破だよ!」

 

「あほか。そんなん各個撃破で終わりだろ!」

 

「でもどうしよう~?勝てるかな~?」

 

「ということで、ここは参謀の出番だ!」

 

リクが指をさしていたのは、目を閉じて会話に参加していなかったカケルだった。

カケルは閉じた目を開くと、喋り始める。

 

「…思うに、戦力はボクらが不利」

 

「何で!?私たちの方が人数多いじゃん!」

 

「話を聞いた限り、リゼさんは一人でこっち四人分に相当する戦力を持ってるといっても過言じゃない。銃撃の腕はかなりのものと見た」

 

「じゃぁ、どうするの~?」

 

「戦力で不利なら戦術で覆す!」

 

カケルはそういうと作戦を立案する。

 

「まず、リゼさんをどう仕留めるかを考えよう。いかにリゼさんといえど一人の人間。必ず隙が生まれる」

 

「じゃぁ、その隙を突いて撃てばいいんだな!」

 

「その通り。っといいたいところだけど、そこで壁になってくるのは雪兎くんだ」

 

「なぜだ?」

 

「おそらく、相手の布陣は運動が苦手なチノさんを逃げに徹しさせて、リゼさんと雪兎くんのコンビでこちらを倒すように動いてくるはず。となると、二人はバディで動いてくるはずだ」

 

「ばでぃ…?」

 

「二人一組で行動するって意味だ」

 

「リゼさんの隙を作っても、雪兎くんがカバーに入る。雪兎くんを倒す、もしくは二人に同時に隙を作らせる必要があるんだ」

 

「…あー!話が長い!もっと簡潔に言って!」

 

カケルの敵戦力分析説明にマヤが痺れを切らす。

 

「じゃぁ簡潔に言おう。今回は二重囮作戦で行く!」

 

「二重囮作戦?」

 

「まず、リゼさんにメグさんが水中から接近し、奇襲をかける。けど、恐らく察知されて先手を撃たれる。その隙をリクくんが別方向から攻撃、この時雪兎くんがカバーに入るはずだからここでリゼさんを狙わずに雪兎くんを相打ち覚悟で仕留める。さらに別方向からボクが攻撃してリゼさんを仕留める」

 

「待って。私の出番は?」

 

「マヤさんはボクと時間差攻撃だ。ボクの攻撃の直後にリゼさんに攻撃を仕掛けるんだ。ボクが外した時はマヤさんが頼りだからね」

 

「おおー!つまり一番美味しい役目だな!?」

 

トリを飾るということにマヤはやる気を出す。

 

「あのー?」

 

「はい?」

 

「皆さんは何をしてらっしゃるのでしょうか?」

 

作戦会議の場に現れたのは、閃きを求めて彷徨っていた青山だった。

一方、リゼ、雪兎、チノチームはチノを隠れさせて、二人で行動していた。

 

「見つけたか?」

 

「いえ、まだ動きが無いようです」

 

周囲の索敵をしつつ二人は柱の陰を移動する。

 

「お前はあいつらをどう思う?」

 

「マヤ、リクのコンビが厄介…っと言いたいところですが、一番厄介なのは間違いなくカケルです」

 

「あいつが?」

 

「ええ。とにかく頭が回るやつなのでどんな作戦を練ってるか」

 

「慎重に行くぞ」

 

後方で柱の陰にはチノとティッピーが隠れていた。

そこに一つの足音が近づいてくる。

 

「ッ!?」

 

「そんな所でどうしたんですか」

 

やってきたのは銃撃戦とは関係ない青山だった。

 

「メグさん、マヤさんには以心伝心のチームワークと、リクさん、カケルさんには抜群のコンビネーションがあると思うので、リゼさんと雪兎に任せて隠れているんです」

 

チノは黙っていて欲しいと指を立てて口に当てる。

 

「あ、そうだ。ティッピーは人前で濡れるのを嫌がるので、預かっててくれませんか?」

 

ティッピーを青山に預かってもらおうと、ティッピーの入った桶を差し出す。

 

「…困りましたねぇ」

 

ティッピーの入った桶を受け取りつつも、青山の雰囲気が変わる。

 

「実は私、マヤさんに銃を託されてまして」

 

「えっ…」

 

「リゼさんと雪兎くんの居場所を聞いてこいと」

 

「わしを人質にする気か!?」

 

そういうと青山はティッピーに水鉄砲を突き付ける。

 

「はああぁぁ!」

 

「姉ちゃん!」

 

「ひゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

叫び声と共にリゼが駆け込み、青山とティッピーに水鉄砲を正確に当てる。

雪兎は、チノを背に隠すように立ちふさがる。

 

「ティッピー!」

 

「メグも見つけたぞ!」

 

「わぁ!?」

 

水がかかったティッピーを心配するチノをよそに、プールから近づいていたメグにリゼは水鉄砲を撃つ。

 

「隙あり!」

 

「何!?」

 

別の柱の陰からリクが飛び出す。

リゼは判断が一瞬遅れリクに水鉄砲を撃つが、リクはスライディングで避けるとリゼに反撃する。

 

「くっ!」

 

「取ったぁ!」

 

「させるか!」

 

リゼは回避行動をとるが、体勢が崩れる。

その隙を見逃さす、リクは二発目を撃つが雪兎がリゼの間に割って入ると同時にリクに向かって撃つ。

 

「くっ!」

 

「くそっ!やられた!」

 

「雪兎!」

 

リクと雪兎は互いの水鉄砲が直撃し脱落する。

 

「リゼさん後ろ!」

 

さらに別の柱からカケルが飛び出す。

雪兎の指示に素早く反応し、リゼは水鉄砲を構える。

 

「しまった!弾切れか!?」

 

しかし、リゼの水鉄砲からは水が出なかった。

 

「リゼさんの銃の総弾数は4発。青山さん、ティッピー、メグさん、リクくんに撃ったあなたに反撃の手段はない!」

 

「くっ!まだだ!」

 

リゼはカケルの銃撃を回避すると、雪兎の方へと体勢を低くしながら転がる。

体勢を立て直すと同時に床にあったものを拾う。

 

「雪兎くんの銃か!」

 

「読みが甘かったな!」

 

「…それはどうですかね」

 

リゼがカケルに銃を向けようとした瞬間、別の方向から水が飛んでくる。

気づいたリゼは再び回避行動をとる。

 

「もらったぁ!」

 

「マヤか!?」

 

「さぁ!二人同時は捌けますか!?」

 

カケルとマヤに十字を取られる形でリゼが挟まれる。

しかし、リゼは回避しつつリクの方へ転がるとリクの水鉄砲を拾う。

 

「なっ!?」

 

「二丁拳銃!?」

 

リゼは二人が照準を合わせなおす前に、二つの銃口を正確に二人に向けると引き金を引く。

 

「くっ!」

 

「うわっ!」

 

カケルは避けるのに成功するが、マヤは避け切れずに直撃を貰う。

回避体勢からカケルは再びリゼに向かって撃つが、十分に狙いが定まっていない水を避けると同時に片方の銃を捨てて、残った銃を両手で構える。

 

「良い作戦だったぞ。だが、相手が悪かったな」

 

リゼは最後の一撃をカケルに撃つ。

銃撃戦はリゼ、雪兎、チノチームの勝利に終わった。

 

「ちべたい…ちべたい…」

 

「悪役って、楽しいですね♪」

 

水に濡れたティッピーは毛がしなしなになって震え、青山は悪役に満足していた。

 

―――――――――――――――――

 

一方の甘兎庵。

早くから来ていたココアは、甘兎庵の手伝いを終えて、千夜、シャロと勉強をしていた。

 

「9649、9661、9677、9679、9689…」

 

「いつまで数えてんのよ。勉強しなくていいの?」

 

ココアはなぜか素数を数えており、その様子にシャロは辟易している。

 

「9697、9719…、あっ!アルバム発見!」

 

「どこまで脱線するのよ!?」

 

ココアがふと本棚の方を見ると、千夜のアルバムを発見する。

アルバムを机の上に広げると、千夜とシャロが学校の制服姿で写っている写真が出てくる。

 

「それは確か…」

 

「高校入学前の写真ね」

 

「…千夜ちゃん、浮かない顔してる」

 

「私と学校が遠くなるから、友達出来るか不安がってたんだっけ」

 

「あっ!」

 

「ほーんと、心配性なんだか――むぐっ!?」

 

「へぇ~、意外~」

 

千夜は恥ずかしくなったのか顔を赤くしながら、シャロが喋っている途中で口を塞いで中断させる。

ココアは時間を遡るように、アルバムのページをめくる。

 

「あれ?この子…」

 

ココアの目に留まったのは、千夜とシャロ、そしてもう三人目の女の子が写った写真だった。

 

「その子は小学生の時に一緒にいたもう一人の幼馴染なの。楓ちゃんって言うのよ」

 

「ご両親のお仕事の関係で、小学生の頃に都会の方に引っ越しちゃったのよ」

 

「…なんだか私に似てる」

 

写真に写っている少女はココアに近い髪と瞳の色をしていた。

 

「そうね。ココアちゃんによく似てるわね」

 

「性格は全然違うけどね。男勝りで、負けず嫌いで、頑固で。よく私たちも振り回されたわ」

 

「でも、楓ちゃんが私たちを引っ張ってくれて、色々な場所を冒険したわね」

 

昔を懐かしむように千夜は穏やかな表情になる。

 

「そっかぁ。私も楓ちゃんに会ってみたかったなぁ」

 

「前は毎年帰ってきてたんだけど、ここ数年は忙しくて帰ってこれないみたいなの」

 

「楓ちゃんの事だから、そのうちひょっこり帰ってくるかもしれないわ。あの子はそういう子だから」

 

この場にもう一人の幼馴染がいれば、どんな感じなんだろうか。

そんなことを思うシャロだった。

 

―――――――――――――――――

 

すっかり日も落ち、空には星が見え始めたころ、リゼと青山はテラスで町の夜景を眺めていた。

 

「リクくん、ごちになります」

 

「くっそぉ…。身長か?身長なのか!?」

 

「タッチの差だったからねぇ。手の長さかな?」

 

ユカリ隊の話声と共に、チマメ隊もコーヒー牛乳を手にテラスにやってくる。

 

「先生~」

 

「「うん?」」

 

「お風呂上りにコーヒー牛乳飲も~!」

 

「…先生?」

 

「あっ」

 

「リゼの事、先生だって!」

 

「つい学校にいる感覚だった。体育の先生みたいだからかな~」

 

「ちょっとわかるかもね」

 

(先生…、教官でなく…)

 

メグの先生呼びに少し感動しているリゼだが、隣にいた青山がなぜかリゼの背に隠れていた。

 

「なぜ隠れている!?」

 

「すみません。先生と聞いて、担当さんがここまで原稿を取りに来たのかと…」

 

「いや、仕事しろよ…」

 

青山の発言にごもっともなツッコミを入れたのはリクだった。

プールを後にし、青山と別れた7人はラビットハウスへと向かっていた。

 

「プール面白かったなぁ!」

 

「ねぇ~!」

 

「いつかカケルにリベンジしないとな…」

 

「次もボクが勝つけどね」

 

(今日の報告ってするべきなのかな?)

 

雑談をしながら歩く4人を尻目にチノはケータイのメール画面を見ながら歩いていた。

送信先にはココアのアドレスが入ってた。

 

「やっぱりココア姉ちゃんに会いたいんじゃん」

 

横から覗き込んできた雪兎はニヤニヤと笑みを浮かべながら、からかうようにチノの顔をのぞき込む。

 

「そ、そんなこと思ってない!」

 

「早くココアちゃんに会いたいよね~」

 

「最近のチノは、よく顔に出るし」

 

チノは顔を赤くして否定するが、メグとマヤも同じことを思ったようだ。

 

(こ、これが以心伝心…!)

 

「前は何考えてるかよく分からんやつだったよなぁ」

 

「表情豊かになったよね」

 

「お、お二人まで!」

 

さらにリクとカケルも加わり、チノはさらに顔が赤くなる。

 

「よし、ラビットハウスまで競争だ!私とユカリ隊が勝ったら、お前らは明日からチマメ隊だー!」

 

「「「ええー!?」」」

 

その様子を見ていたリゼは少し笑うと競争を提案し、うろたえるチマメ隊を気にせず走り出す。

 

「おっと負けてらんねぇ!」

 

「よーし、行くぞ!」

 

「始業式の時みたいだね」

 

「「「やだー!」」」

 

続けてユカリ隊も走り出すと、それを追うようにチマメ隊も走り出すのだった。




7人で温水プール編でした。

えー、オリジナルが多いうえにめちゃくちゃ長くなってしまって、話をまとめるのに時間がかかってしまいました。すいません。

温水プールの銃撃戦はどう動かすか悩みましたが、今までリクに比べて地味だったカケルの活躍場面を書けて満足です。どうしてもリクの方が出番が多くなりがちですからねぇ。キャラ的に仕方ないんですがね。

そして4羽後編以来の存在のみの登場となった千夜とシャロのもう一人の幼馴染、楓ちゃん。
これから先どこかで登場するのかは、気長にお待ちください。
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