ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

29 / 34
11羽前編です。
色々忙しくて遅筆となってますが最後まで頑張ります。

お気に入り登録100いきました。いつもありがとうございます。


少女は赤い外套を纏いウサギを駆りて聖夜の空を行くー1

町行く人々の服装がすっかり秋から冬へと変わりしばらくした頃。

日の入りも早くなり、夜になった町の広場には溢ればかりの人込みと光のイルミネーション、そして大きなツリーが鎮座していた。

 

「うわぁー…!クリスマスマーケットだー!」

 

ココアたち6人はクリスマスマーケットにやってきていた。

 

「ココアちゃんは、こういうマーケットって初めてなのよね?」

 

「うん!あははー!」

 

お祭りムードの広場を見てテンションが上がったココアが駆け出す。

 

「あ、落ち着いてください」

 

「はしゃぐ気持ちも分かりますけど、転びますよ?」

 

「もうテンション有頂天だよ!どこから行く?」

 

「来て早々、目的を見失うな」

 

「今日は店のツリーに飾るオーナメントを買いに来たんですから」

 

「あ!そうだった」

 

「舞い上がっちゃう気持ちも分かるけどね」

 

「せっかくだし用事が終わったら、色々見て回るか」

 

「そうしましょ♪」

 

リゼの提案に千夜が同意すると、ココアは再びお店の方へと駆けだす。

 

「うわぁーい!」

 

「落ち着いてください!」

 

「チノちゃーん!雪兎くーん!こっちだよー!」

 

「転びますよ」

 

「やれやれ。あー、寒」

 

チノと雪兎はココアの後を追って駆け出す。

ココアが落ちつたところで、再び6人で目的のお店へと向かった。

 

「みんな、クリスマスメニューは決めた?」

 

「ああ。今年は4人で考えたんだよなぁ」

 

「頑張りました」

 

「色々候補が出て、まとめるのが大変でしたよ」

 

「クリスマス限定で、すんごい豪華なパンケーキを作るんだ」

 

ラビットハウスでは、4人の意見をまとめて限定のパンケーキを作ることとなった。

 

「素敵ね~」

 

「甘兎庵では、何か出すんですか?」

 

「うちは、今年もターキーを出すの」

 

「甘味処でターキー!?」

 

「イメージと違いすぎますよ!?」

 

「何故か評判いいらしいです…」

 

甘兎庵のクリスマス限定メニューであるターキーは評判がいいらしい。

 

「じゃぁ、うちはピザ焼こうよ!」

 

「回したピザ生地でお皿を割るのが目に見えます」

 

「若かりし頃のワシなら、回せた!」

 

「あー、そうかもねー」

 

「なんじゃ!ワシの腕を疑っておるのか雪兎!」

 

「チノって、時々すごい冗談言うよな~。雪兎もいつものようにツッコミいれるし」

 

「慣れてますからね」

 

チノがちょうどリゼの前を歩いているので、やはりリゼはティッピーの声を相変わらずチノの腹話術だと思っているようだ。

 

「シャロさんは、当日バイト尽くしですか?」

 

「あ、え、ええ。時給がいいから」

 

「クリスマスの喫茶店は繁盛しますからね」

 

「…本当は、クリスマスくらいゆっくり休めたらいいんだろうけど」

 

「じゃぁ!バイト終わりにクリスマスパーティしようよ!」「じゃぁ!バイト終わりにクリスマス会しましょう!」

 

ココアとチノが同時に振り替えると、全く同じタイミングにクリスマスパーティを提案した。

 

「…おお」

 

「…完璧にハモったな」

 

「わぁ!チノちゃんとハモれる日が来るなんて!」

 

「ち、違います!ココアさんが言ったのはクリスマスパーティ。私が言ったのはクリスマス会です!」

 

ハモれたことに感激しているココアの表情は、完全に緩んでいる。

 

「一緒だよぉ~♪ご馳走食べて、ケーキ食べて、コーヒー飲んで、朝まで踊り明かそうよ!」

 

「踊りませんし、明かしません!…そもそも、クリスマスというのは、心静かに祝うもので」

 

「チ~ノちゃ~ん♪」

 

「う~…」

 

チノの本来のクリスマスの説明を聞くことなく、ココアは頬を擦り付けようとするがチノが手で押し返す。

 

「本当の姉妹みたい♪」

 

「「えっ!?」」

 

千夜の発言に二人が驚いて固まるが、ココアは再びチノに頬を擦り付けようと迫る。

 

「チ~ノちゃ~ん♪」

 

「う~…」

 

「ともかく、みんなで集まるのは賛成だな」

 

「そうだわ!みんなでプレゼント交換しない?」

 

「それいいな!シャロは予定大丈夫か?」

 

「うぅっ…」

 

千夜の提案にリゼが賛成し、シャロの方に振り向くと何故かシャロは両目を涙で濡らしていた。

 

「…シャロ?」

 

「…こ、今年は、大福に蝋燭の夜じゃないのね」

 

(((今まで、どんなクリスマスを…?)))

 

感極まってシャロの口から零れたこれまでのクリスマスの夜に、戦慄するチノとココアとリゼ。

 

「ん?雪兎、さっきから黙ってどうしたんだ?」

 

「…いえ、何でもないです」

 

先ほどから会話に混ざらない雪兎に気づいたリゼ。

雪兎はどこか不機嫌な雰囲気を纏っている。

 

「ココアちゃんに、チノちゃん取られたって思ってる?」

 

「な!?」

 

千夜の指摘が図星だったのか、雪兎は明らかに取り乱している。

 

「雪兎くんも私の可愛い弟だよ!」

 

「ちょっ、ココア姉ちゃん!やめてください!」

 

ココアは雪兎の抱き着くと、先ほどのチノと同じように頬をこすりつけようとしてくる。

 

「むぅ~…」

 

「今度はこっちか」

 

「やっぱり姉弟なんですね」

 

今度はチノの方が不機嫌な表情になると微笑ましく思うリゼとシャロだった。

広場を6人で進んでいくと、どこからか甘い匂いが漂ってきた。

 

「さっきから、なんだか甘~い匂いが」

 

「確かに」

 

「餡子でも煮てるのかしら」

 

「まさか」

 

「あ、あそこじゃない?」

 

「お菓子屋さん、ですかね?」

 

シャロが指をさした先には一軒のお店があった。

店先から見えるショールームには、果物や、今の時期にぴったりな雪だるまや白いうさぎを模ったお菓子が並んでいた。

 

「可愛いー」

 

「マジパンですね。ケーキの上とかに乗ってる」

 

「いろんな形がありますよね。クリスマスならサンタさんとか、煙突の付いた小屋とか」

 

「マジパンって、なんでマジパンって言うんです?」

 

「マジなパンだからね。本気で可愛い子ぶってるんだよ!」

 

ココアは突然、よくわからないことを力説し始める。

 

「え!?これパンなのか?」

 

「確か…、すり潰したアーモンドと砂糖を練って作るお菓子だったかと」

 

「だから砂糖の塊みたいに食べたらあんなに甘いんですね」

 

だが、シャロはマジパンについて知ってたらしく、正しい知識を披露する。

 

「…え、えっ、っとぉ…、ま、マジなんだから…、種族の壁ぐらい超えられるんだよぉ!」

 

「無理しないで!」

 

引っ込みがつかなくなったココアは、もはや根性論でマジパンを語りだすが、流石に苦しい言い訳に千夜が飛び込んで止めるのだった。

先ほどの店を離れて、目的のオーナメントを取り扱っているお店に着いた6人。

 

「わぁ!綺麗!」

 

店の中はクリスマスの飾りつけで溢れており、たくさんの客が入っていた。

 

「オーナメントってこんなに種類あるんだ!」

 

「うちはどれを飾ろうかしら。シャロちゃんの家も飾ってみない?華やかになるわよ~」

 

オーナメントを手に取りながら、千夜はシャロに提案する。

 

「今のままでいいわよ…」

 

シャロは断るが、千夜の目にあるものが留まる。

 

「でっかい天使像~」

 

「こんなのもあるんだなぁ」

 

視線の先にいたココアとリゼの前にあるのは、身長の高さほどもある天使像だった。

何かを思いついた千夜は、目を輝かせて叫ぶ。

 

「テーマは、救世主の生まれた馬小屋!」

 

「馬小屋!?」

 

「ダメかしらっ!?」

 

「ダメに決まってるでしょー!」

 

千夜の提案をシャロは全力で拒否する。

一方、チノと雪兎はラビットハウスで使うオーナメントを選んでいた。

 

「う~ん…、う~ん…」

 

「どれにしようか迷うね…」

 

その様子を見ていたココアは、二人に聞こえないようにリゼに声を掛ける。

 

「ねぇねぇリゼちゃん。ちょっといいかな?」

 

「どうした?」

 

「実は私、クリスマスの夜に二人の枕元にプレゼントを置いてびっくりさせたいんだ」

 

「へぇ~」

 

「でも、どういうのが二人は喜ぶかな?」

 

「雪兎はともかく、チノにはこんなのはどうだ?」

 

リゼが選んだのは、口が裂け、牙をむき出しにした黒いうさぎのぬいぐるみだった。

 

「別の意味でびっくりだね!?」

 

「冗談だよ。あ、そのオルゴールなんていいんじゃないか?」

 

リゼの見ている方向にココアが視線を移すとそこには、メリーゴーランドを模ったオルゴールがあった。

 

「これとぬいぐるみ一緒なら、万が一泣き出しても、きっと笑顔になれるよ♪」

 

「ぬいぐるみは渡さなくていい…」

 

「でも、雪兎くんには何をプレゼントしよう…」

 

「う~ん…。さすがに男子の好みは私にはわからないな。あいつの友達に聞いてみたらどうだ」

 

「そっか!ありがとうリゼちゃん!」

 

ココアはカケルとリクに相談して、雪兎へのプレゼントを決めることにした。

買い物を済ませた6人が店の外に出ると、月夜の空からは雪が降っていた。

 

「雪…」

 

チノは思わず、空を見上げながら呟く。

口からは白い息が出ている。

 

「綺麗だな…」

 

「ずっと空を見上げていると、吸い込まれちゃいそうです」

 

「寒いから早く帰りたい…」

 

「ちょっとはムードを楽しんでよ…」

 

雪に見とれていたところで、寒いのが苦手な弟の空気の読まない発言にチノは呆れる。

 

「ふぉっふぉっふぉっ」

 

「ココアさん?どこ行ってたんですか?」

 

妙な笑い方をしながら一行から離れていたココアが戻ってくる。

 

「えへへ。ココアサンタから、ちょっと早いプレゼントだよ!手出して」

 

ココアは手提げ袋を見せながら、みんなに手を出すように促す。

 

「はい」

 

「これ、私が気になってたやつ!」

 

「ココア…!」

 

ココアが買ってきたのは、先ほどのお菓子屋さんの店先に並んでいたマジパンだった。

 

「私が食べたかったから♪」

 

「…砂糖の塊だぞ?」

 

気を効かせて買ってきた、というよりも自分が食べたかったからみんな分も買ってきたという感じであった。

 

「でも、どうして急にプレゼントしてくれたの?」

 

「私、子どもの頃の夢はサンタさんだったからね!」

 

「夢が多いな」

 

「本当は、寝床に侵入して夢を運びたかったんだけど…」

 

「怖い!」

 

ココアのイメージは、寝ているシャロの部屋をサングラスに風呂敷を背負ったサンタの姿で覗いて侵入を試みている。

傍から見たら、ただの不審者にしか見えない。

 

「ね。さっき話していたクリスマスパーティ、ラビットハウスでやらない?」

 

「いいわね!」

 

「大丈夫かしら、チノちゃん、雪兎くん?」

 

「構わんとも!夜は貸し切りじゃ!」

 

ココアの提案にチノと雪兎ではなく、ティッピーが二つ返事で許可を出す。

 

「普段、自分が働いてるところでパーティなんて、何か不思議な感じだなー」

 

「じゃぁ、メグさんとマヤさんも誘っていいでしょうか?」

 

「あ、いいねぇ!雪兎くんも、カケルくんとリクくんに声を掛けてよ!」

 

「二人とも大丈夫だと思いますよ。リクも当日よりは前の日の方が忙しいって言ってました」

 

「あはっ♪楽しみすぎて眠れないかも!」

 

ちゃくちゃくとパーティの話が進んでいくことに、ココアのテンションも上がっていく。

 

「クリスマス当日に倒れるわよ?」

 

テンションが上がり、くるくると回るココアに千夜が近づき小声で話しかける。

 

「ココアちゃんは十分サンタさんよ」

 

「え?今なんて?」

 

「ううん。何でもない♪」

 

千夜の言葉はココアには届いていなかったが、千夜はそれでいいようだ。

 

「この後、どこへ行こうか?」

 

「屋台でお菓子を買いたいです」

 

「あと、イルミネーション!」

 

「全部行きましょ!」

 

「早く帰りたい…」

 

「雪兎、今日は皆さんに最後まで付き合うの」

 

「じゃぁ、走っていくよー!」

 

「行くぞー!」

 

「あっ、走ると転びますよ!」

 

寒空の中、一人を除いて元気な5人はクリスマスマーケットを見て回るのだった。




クリスマスマーケット編でした。

寒いのが苦手な雪兎くんは終始ローテンションでした。
雪って名前が入ってるのに…w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。