ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第1羽ラストです。


ひと目で尋常じゃないもふもふだと見抜いたよー3

夕暮れが近づきラビットハウスも閉店の時間となった。

 

「お疲れ様~」

 

「お疲れー」

 

「「お疲れ様です」」

 

女子三人は同じ更衣室に入っていき、雪兎は一人、男子更衣室で着替える。

手早く着替えをすました雪兎が更衣室を出るとそこにはタカヒロがいた。

 

「どうだ?ココアくんとは仲良くできそうか?雪兎」

 

「あ~、仲良くしなくてもあっちから仲良くしてきそうって感じかな」

 

「はっはっは。あちらの保護者の方から聞いた通りの子のようだね」

 

雪兎の返答に笑って答えるタカヒロ。

 

「はい。昼のお駄賃とタイ焼き」

 

雪兎からお金が入った封筒と紙袋を受け取る。

 

「なんだ、また無駄遣いしたのか?」

 

「美味しいからノーカンで」

 

「相変わらずお前は食べ歩きが好きだな。後でゆっくり頂くとしよう」

 

タカヒロは笑いながら雪兎の頭を軽くなでると自室へ戻っていった。

 

「雪兎くん!リゼちゃん帰るからお見送りしよ!」

 

突然後ろから声かけられて少しびっくりして振り向くと、ココアが笑って立っていた。

 

「ほら。行こう!」

 

「わっ、と!ココア姉ちゃん引っ張らないで!」

 

ココアは雪兎の手を握ると早足でホールへと向かう。ラビットハウスを出たところでチノとリゼが待っていた。

 

「わざわざ見送りに来なくてもいいんだぞ?」

 

「え~?せっかくみんなで初めて働いたんだから、別れもみんなと一緒だよ!」

 

「オーバーな…」

 

ココアとリゼが会話しているときに雪兎は視線を感じそちらを向くと不機嫌そうなチノの姿が映る。

 

「姉ちゃん?」

 

「…なんでもない」

 

「?」

 

すぐにそっぽを向くチノに首を傾げる雪兎。

 

「じゃあな!」

 

「「お疲れさまでした」」

 

「バイバーイ!」

 

帰っていくリゼに元気よくココアは手を振る。

リゼの姿が見えなくなるまでココアは手を振り続けた。

 

―――――――――――――――――

 

家に戻った3人はリビングに集まっていた。

 

「今日の夕飯係は私なので、雪兎は先にお風呂入っちゃって」

 

「了解~」

 

雪兎は軽い返事をすると着替えを取りに部屋へと向かう。

 

「今日の夕飯はシチューでいいですか?」

 

「野菜切るの任せて!」

 

「いえ、一人で大丈夫です」

 

「え~…」

 

チノの手伝いをしようと提案するココアだがあっさりと却下される。

そこであることを思い出しケータイを取り出す。

 

「チーノちゃん♪」

 

「はい?」

 

「じゃじゃーん!」

 

ココアのケータイの画面に写っていたのは4つのラテアートだった。

そこにはそれぞれ顔が描かれている。

 

「これ…」

 

「さっき密かに作ってたの!」

 

「私達?」

 

「そうだよ!」

 

1つは丸を二つくっついて上はうさぎの顔で下はちょっと眠たげなたれ目の顔。

1つは緩みきったような表情の顔で周りに花が咲いている。

1つは丸からツインテールのような二つの突起が出ており、キリっとした表情の顔。

最後は明るい表情をした顔の周りにコーヒーカップとうさぎのシルエットが描かれている。

 

チノも思わず見とれていると、ノックの音が部屋に響き、扉が開く。

 

「…何者?」

 

「こちら父です」

 

入ってきたのはタカヒロだった。

ココアは初対面のためか呆気に取られている。

チノは作業を中断するとタカヒロの近くに駆け寄る。

 

「この家も賑やかになるなぁ。今日からよろしく」

 

「あ、お、お世話になります!」

 

ココアは気を取り直すと頭を下げて挨拶をする。

 

「こちらこそ。チノと雪兎をよろしく。じゃ」

 

「は、はい!」

 

タカヒロは頭を下げるとティッピーがチノからタカヒロに飛び乗る。

タカヒロはティッピーを頭に乗せたまま部屋から出ていった。

 

「…お父さんは一緒に食べないの?」

 

「ラビットハウスは夜になるとバーになるんです。父はそのマスターです」

 

「へぇ~!そうなんだ!なんか裏世界の情報提供しそうでかっこいいねっ!」

 

「…何の話ですか?」

 

どや顔でわけのわからないことを言い出すココアに困惑するチノ。

野菜を切り終わり具材を煮込み始めた辺りで雪兎が風呂から戻ってくる。

 

「上がったよーっと」

 

「あ、おかえり雪兎くん!」

 

雪兎は頭にタオルをかけており、まだ髪が湿っている。

 

「さぁ雪兎くん、座って座って。お姉ちゃんが頭を拭いてあげましょう!」

 

「いや、自分で拭きますから」

 

「遠慮しない♪お姉ちゃんに任せなさーい♪」

 

席に座った雪兎のタオルをココアは手に取ると頭を拭き始める。

これは言っても聞かないと判断したのか雪兎はおとなしくしている。

 

「…むぅ…」

 

鼻歌を歌いながら上機嫌に頭を拭くココアと目を閉じておとなしくしてる雪兎を見てむくれるチノ。

 

(雪兎は私の弟なのに…、ココアさんに甘えて…)

 

「ねえねえ雪兎くん。チノちゃんと雪兎くんは双子なんだよね?」

 

「そうですよ」

 

「じゃぁなんでチノちゃんがお姉ちゃんで雪兎くんは弟なの?」

 

「…あ~それは…」

 

「雪兎の方が母から出てくるのが遅かったんです。母はよく「チノはすぐに出てきてくれたんだけど、雪兎は中々出てこなくてねぇ」って言ってました」

 

「そうなんだ~。えへへ、お寝坊さんだねぇ」

 

「今でもお寝坊さんです。全く、困った弟です」

 

雪兎は顔を赤くするとうつむく。

くっ…、事実である以上言い返せない…!

ちらっとチノの方を見るといたずらっ子のような表情で舌を出してこっちを見ている。

確信犯か!この姉めっ…!

 

(ココアさんにベタベタしてるからだよ)

 

恨めしい雪兎の顔を見て満足したのか、上機嫌な顔になるチノ。

言葉に出さずに香風姉弟の応酬が行われてる中、ココアは手を止めてタオルを畳む。

 

「はい。終わったよ」

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして♪あ、雪兎くんにはまだ見せてなかったよね?これ、見て見て!」

 

ココアはケータイを取り出すと雪兎に手渡す。画面には先ほどのラテアートの写真が写っている。

 

「これは…、僕達ですか?」

 

「そうだよ!」

 

「上手ですね。よく特徴を捉えてます」

 

一目で4人の誰が分かるくらいに特徴が出ている。っが、ココアに当たるラテアートのこの緩み切った表情で本人は何とも思わないのかと少し疑問に思ってしまう。

 

―――――――――――――――――

 

シチューも完成に近づきつつある中、ココアはチノの側に来ていた。

雪兎は自分の席でケータイをいじっている。

 

「そろそろかな?」

 

「もうすぐです」

 

「えへへ。なんかこうしてると姉妹みたいだね!」

 

「…姉妹ですか…?」

 

姉妹、という言葉がチノの頭をよぎる。弟という男の姉弟はいるが姉という女の姉妹はいない。

 

(姉がいたらこんな感じなのかな?)

 

「…ココアお姉ちゃん…ですね?」

 

「…うおおぉぉぉ!!もう一回言ってぇ♪」

 

チノの発言にテンションがMAXになるココア。

緩みまくったその表情から周りに花が咲いてるような錯覚に陥る。

 

(………)

 

ココアの反応に固まるチノ。

雪兎もこれは、ココア姉ちゃんのスイッチ入ったな…っと察する。

お昼に散々、姉呼びを拒否してたのだからその反動だろうと。

その後もココアの姉呼び要求は続く。

 

食事中も。

 

「お願い♪もう一回♪」

 

皿洗い中も。

 

「お願い。もう一回…」

 

食事を終えて雪兎は自室に戻り、しつこく追いすがってくるココアを無視して風呂に入るチノ。

すると扉の外から慌ただしい足音と共に扉が開くとココアが入ってくる。

 

「チノちゃーん!一緒に入ろう!ココア風呂だよぉ!」

 

(ココア風呂!?)

 

二人ではバスタブが結構狭い。

お互いに体育座りの恰好で背を合わせて湯船につかる。

 

「はぁ~♪気持ちいいねぇ♪生き返るぅ♪ねぇ!今日は一緒の部屋で寝ていい?」

 

「一緒の…ですか?」

 

「うん!」

 

ココアはうさぎのおもちゃを手に取ると握る。

独特の気の抜ける音が浴室に響く。

 

「荷物まだ届いてないし、一杯お話したいことあるし。あっ、雪兎くんともお話ししたいな♪」

 

(お話…、一緒に寝る…。私にちゃんとできるかな…)

 

小さいころに雪兎と一緒に寝てたことはあるがさすがに今は別々の部屋で寝ている。

年上の人とはいえ、近い年の人と過ごすのは初めてだ。

 

「ふ、不束者ですが、お手柔らかに、お願いします…」

 

チノの返答を聞いたココアは微笑むとおもちゃを握り、返答の音を鳴らす。

 

―――――――――――――――――

 

一方そのころ天々座邸にて

私服のリゼが自室に戻ると同時にベッドに座り込む。

 

「聞いてくれよワイルドギース。今日新人が入って、こいつが中々変わったやつでさ。練習用のラテアートが余りまくって大変だったよ。当分はカフェラテは飲みたくないなぁ~」

 

リゼは話をしながらベッドに横になる。

視線の先には眼帯を付けて、迷彩柄の帽子を被り、銃を背負ったうさぎのぬいぐるみ。

 

「くぅっ!寂しくないっ!寂しくないのぉ~!!」

 

一気に現実に引き戻されるリゼであった。

 

―――――――――――――――――

 

チノの部屋でドライヤーで髪を乾かしているチノとココア。

 

「そう言えばティッピーは?」

 

「父と一緒にバーで働いてます」

 

「そっかぁ…。ぎゅ~ってして寝たかったのになぁ…」

 

チノの言葉にしょんぼりと肩を落とすココア。

 

「ティッピーは抱き枕じゃないです」

 

「じゃぁ、チノちゃんをぎゅ~ってして寝ようかな♪」

 

ココアがチノに抱き着くと、チノは手に持っていたうさぎのぬいぐるみをココアの顔に押し付けて引き剥がす。

 

―――――――――――――――――

 

バーになったラビットハウスのホールではタカヒロがカウンターでコップを磨き、ティッピーは机に乗っている。

 

「やれやれ、大変なことになりそうじゃ」

 

「チノと雪兎。仲良くなれるといいな」

 

「ココアといったか。あの娘、あっという間に店に馴染んじまった。雪兎はともかく、チノにはああいう友達があってるのかもしれん」

 

ティッピーの言葉にふっと微笑むタカヒロ。

 

「雪兎の方は問題ないだろう。チノと違ってあの子は物怖じしないからな。すぐに仲良くなるさ」

 

「だがその…、勝手に抱き着かれると困るというか…、わしもほら、こんな体だけど一応あれだし…」

 

「なぁんだ。楽しくなりそうじゃないか、親父」

 

「だぁぁーーっ!!バカモン!!お前にわしの気持ちがわかるかぁぁ!!」

 

話の途中でラビットハウスの扉が開く。

 

「いらっしゃい」

 

「話を聞けぇぇぇ!!」

 

何事もなかったかのように接客に切り替えるタカヒロにばいんばいんと跳ねて抗議するティッピーの姿があった。

 

―――――――――――――――――

 

♪~ ♪~

 

「うん?メール?ココアから?」

 

布団をかぶっていたリゼがスマホの着信に気づく。

差出人にはココアの文字。

メールを開くと「明日からも頑張ろうね」というメッセージと4人を模したラテアートの写真が添付されている。

 

「あいつ…、こんなの作ってたのか…。壁紙にしておこう」

 

リゼは軽く笑うとスマホを操作し写真を壁紙に設定した。

 

―――――――――――――――――

 

静かな部屋にペンを走らせる音と紙をめくる音だけが響く。

雪兎は机に向かって黙々と春休みの宿題を進めている。

 

「ふぁ~…」

 

集中力が切れたところで欠伸が出る。

時計をちらりと見ると遅い時間になっている。

そろそろ寝る準備をしようかと立ち上がり、机の上のケータイを手に取ろうとした瞬間。

 

♪~ ♪~

 

「…メール?」

 

突然鳴り出したケータイを手に取り開くとメールが一件。

メールを開くとココアから「今すぐチノちゃんの部屋に来たれり!」という文字。

なんだろうと疑問に思いつつも雪兎はケータイを閉じるとチノの部屋と向かった。

 

―――――――――――――――――

 

チノの部屋で窓際に寄りかかり、メールを送信したココアはケータイを閉じて外を見つめる。

 

「はぁ」

 

外を見つめながらため息をするココア。

 

(…ココアさん?)

 

今日の様子からは考えられないくらいにテンションの低いココアを見て心配になるチノ。

 

「…シチュー。もう一杯お替りすればよかった…」

 

(そんなこと…)

 

心配した自分の優しさを返してほしい。

 

「チノちゃん!」

 

「え?」

 

さっきの雰囲気はどこへやら、あっという間にいつものテンションに戻ったココアが笑顔を見せる。

 

「この町!とっても素敵だね!」

 

「…そう、ですか?」

 

「うん!」

 

「姉ちゃーん、ココア姉ちゃーん、入るよー?」

 

扉の外からノックと共に雪兎の声が聞こえてくる。

 

「は~い♪どうぞ~♪」

 

「ココアさん、ここ私の部屋です」

 

部屋の主ではなくココアが返事をするのはどうなんだとチノは顔をしかめる。

ココアは扉を開けて雪兎を招き入れる。

 

「…なんで来たの?」

 

「ココア姉ちゃんが来いって」

 

雪兎はケータイの画面をチノに見せる。

そこには「今すぐチノちゃんの部屋に来たれり!」とココアのメールが書かれている。

なんだこの文章はと頭が痛くなるチノ。

しかし、当の本人は笑顔で二人の手を取る。

 

「私。この町に来てよかった!これからたくさん楽しいことがありそう!」

 

ココアは満面の笑顔を二人に向ける。

その様子を見ていると、不安ではなく希望に溢れているように感じる。

そんなココアの様子に雪兎とチノは顔を見合わせると自然に笑顔になる。

 

「ココアさん。これからよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「二人のお姉ちゃんとして頑張るね!」

 

「…やっぱりちょっと待ってください」

 

「えぇ~?今日はチノちゃんと一緒の布団で寝~る♪もちろん雪兎くんもウェルカムカモーンだよ!」

 

「色々まずいですから遠慮しておきます」

 

こうして木組みの町の夜が更けていく。

明日からラビットハウスはちょっと違う日常が始まる。




第1羽終了です。
チノはちょっとブラコン気味ですね。とはいえ溺愛一辺倒ではなく喧嘩をしたり姉弟らしいところも書いていきたいですね。
雪兎くんは弟ということもあって年上に流されるということが多くなりそうです。

以下雪兎くんの設定です。

名前 :香風雪兎(かふうゆきと)
年齢 :13歳
誕生日:12月4日
身長 :147cm
趣味 :料理 食べ歩き プラモデル サイクリング
特技 :料理 3Dラテアート
チノの双子の弟。チノに比べると人見知りせず社交的。
ラビットハウスでは調理、買い出し、力仕事を主に担当しているが、客が少ないときはホールにいることも多い。
バリスタの腕はチノの方が上だが、料理の腕は雪兎の方が上。
朝が苦手でチノにいつも起こしてもらっている。
美味しいものに目がなく、買い出しに出かけてはお店を見つけて何か買ってくるのが習慣となっている。
本人曰く凝り性。3Dラテアートは独学で習得している。普段作る料理の方もかなり凝っているらしい。
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