ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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12羽前編です。
1期編もいよいよ最終回です。


君のためなら寝坊するー1

雪の降り積もった真冬の朝。

チノの部屋では、ココアとチノがベッドで寝ていた。

チノが目を覚ますと、気持ちよさそうに寝ているココアが視界に入る。

 

「ココアさん。起きてください。ココアさん!」

 

体を揺すってココアを起こそうとするが、ココアが起きる気配はない。

 

「ほんと起きてください」

 

チノは諦めず、ココアの体を揺すって呼びかけ続けるがココアは起きない。

諦めたチノはベッドを降りて部屋を出ていく。

 

「…んぅ?チノちゃん?」

 

ドアの開く音にココアが目を覚ます。

洗面所ではチノとココアが並んで歯磨きをしていた。

 

「…なんで私の部屋で寝てたんですか?」

 

「…えっとぉ。確かねぇ」

 

ココアは少し上を向いて昨日のことを思い出す。

 

「先に寝ちゃったチノちゃんが、袖を離してくれなかったんだよ」

 

「はっ!?」

 

てっきり、ココアの方に原因があると思っていたチノが驚く。

 

「夕食後に焼いたパンの美味しそうな匂いがしたのかなぁ♪」

 

「…美味しそうだったんだと思いますよ」

 

「えっ」

 

ご機嫌なココアが冗談で言ったつもりが、チノの意外な返答に驚く。

 

「…おはよ」

 

そんなところに、ちょうど起きたばかりで眠たそうな顔の雪兎が洗面所にやってくる。

 

「おはよう、雪兎」

 

「雪兎くん!おはよう!ねぇ、私ってどんな匂いがする?」

 

「…ん~?」

 

雪兎は眠気で頭が回っていないのか、気の抜けた返事をする。

しょっちゅう抱き着いてくるココアの匂いを思い出すように目を閉じる。

 

「…パンとか、小麦粉の匂い」

 

「やっぱり!?」

 

姉弟そろって同じような返答を受けて、ショックを受けるココアだった。

 

―――――――――――――――――

 

ラビットハウスでは客がおらず、静かな時間が過ぎていく。

ココアは買い出しに出かけて、チノと雪兎、ティッピーがカウンターにいた。

 

「…ただのお使いなのに」

 

「ずいぶん時間かかってるね」

 

ココアが出かけて随分経つが、お使いから帰ってこない。

 

「…雪兎、おじいちゃん」

 

「ん?」

 

「私、コーヒーの匂い大好きです。緑茶とハーブの匂いも素敵です」

 

チノが喋り出すと二人は静かに聞き耳を立てる。

コーヒーはラビットハウス、緑茶は甘兎庵、ハーブはフルール・ド・ラパンのことだろうと雪兎は考える。

 

「…でも、最近安心する匂いが増えたみたいです」

 

「…そっか」

 

最後の匂いは、朝のやり取りから雪兎は予想する。

ココアのことだろうと。

引っ込み思案の姉が、随分とココア姉ちゃんに懐いたものだと感慨深く思う。

 

「まだかな」

 

ココアの帰りを待ちわびるチノの姿に、出会った頃の警戒していた面影は全く残っていない。

ラビットハウスは静かに時間が過ぎていく。

 

―――――――――――――――――

 

ある日のラビットハウス。

チノ、雪兎、リゼがそれぞれ作業をしていると、勢いよくラビットハウスの扉が開く。

 

「「「「お邪魔しまーす!」」」」

 

来客は、マヤ、メグ、リク、カケルの4人だった。

 

「いらっしゃいませ。みんなお揃いでどうしたの?」

 

「調べものしに来たんだ!」

 

「調べもの…、ですか?」

 

「これだよ」

 

そう言ってカケルが取り出したのは、一枚のプリント。

そこには、職業レポートと書かれていた。

 

「あー、これかぁ。っで、うちに聞きに来たってことかな?」

 

「そうなの~」

 

「あれー?ココアは?」

 

ホールにココアがいないことにマヤが気づく。

 

「まだ着替えてます」

 

「ロッカールームだな!ちょっと行ってくる!」

 

「マヤちゃん。私も行く~」

 

「あ!職業インタビューなら父に…、って待ってください」

 

マヤとメグはロッカーの方に向かい、チノは二人を追っていった。

 

「まぁ、あいつらは置いといて。とりあえず雪兎に聞いていいか?」

 

「僕?僕よりは店主の父さんに聞いた方がいいと思うよ」

 

「雪兎くんのインタビューも参考に聞いておきたいって思ってね」

 

二人は雪兎にインタビューしようと、メモ帳を取り出す。

雪兎は少し困惑するが、少し考えるように上をみると喋り始める。

 

「あ~…、じゃぁ。えーと、やりがいは作ったものが美味しかったって言われると嬉しいね。コーヒーでも料理でもね。また来るよって、言われると気に入ってもらえたのかなって頑張ろうって気持ちになるかな」

 

「ふんふん。なるほど」

 

「ありがとう。雪兎くん。参考になるよ」

 

二人はメモを取り終えるとポケットにしまう。

 

「それじゃ、親父さんにも聞きたいんだけどいいか?」

 

「うん。行こうか。リゼさんすいません。ちょっとお願いしますね」

 

「ああ。任せろ」

 

雪兎はリゼにホールを任せると、リクとカケルを連れてタカヒロの書斎へと向かう。

廊下のところでロッカールームから出てきたココア、チノ、マヤ、メグとばったり出会う。

 

「あっ!二人も来てたんだ♪」

 

「こんにちは。ココアさん」

 

「よっす、ココア姉。っで二人はなんで更衣室から出てきたんだ?」

 

「ココアとチノにインタビューしてたんだ!」

 

「チノはともかく…、ココア姉はバイトだろ?」

 

「私だって、ラビットハウスの一員だからね!」

 

リクの疑問に、バイトのココアが何故か胸を張って、自慢げな顔をする。

 

「雪兎。そっちもお父さんにインタビュー?」

 

「うん。今連れて行くところ」

 

「じゃぁ、一緒に行こうか。ココアさん、リゼさんとお店の方をお願いします」

 

「お姉ちゃんに任せなさーい!」

 

ココアはいつものお姉ちゃんポーズを取ると、上機嫌でホールの方へと向かっていった。

残った6人はタカヒロのいる書斎へと向かう。

チノは後ろに5人を連れて書斎に着くと、扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

少し待つと、中からタカヒロの声が聞こえてくる。

タカヒロからの返事を聞いて、6人は部屋へと入る。

 

「おや、みんな揃ってどうしたのかな?」

 

「「「「こんにちは!」」」」

 

「宿題で、職業レポートのインタビューに来ました!」

 

「お時間、大丈夫でしょうか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

カケルが確認を取ると、タカヒロは快く承諾する。

4人は顔を合わせると、メモ帳を取り出す。

 

「この喫茶店の、やりがいやこだわりは何ですか?」

 

「一杯のコーヒーを大切に。豆にもこだわって、お客様に安らぎのある静かな空間と時間を提供する。先代にはないお客様の立場に立った接客を――」

 

「なんじゃと!?お前よりワシの方が、お客の立場に立っておるわ!」

 

先代、つまり祖父の代にはないという発言に耐えられなくなったティッピーが、声を荒げて割り込む。

チノはあくまで、腹話術と見せるため手で口元を隠す。

 

「…フッ」

 

「なぬ!?」

 

ティッピーの抗議を鼻で笑うかのような対応に、ティッピーが驚く。

 

「チノが二代目に宣戦布告!?」

 

「…チノの声なのか?じいさんの声にしか聞こえんけど」

 

「チノちゃん得意の腹話術だよ~」

 

「…前にも聞こえたけど。幻聴じゃなかったんだ」

 

その横では腹話術ということになっているティッピーの声について知らなかったリクとカケルが、マヤとメグに説明されている。

 

「個人経営って大変なんだなー」

 

「この辺、競争が激しいみたいだねぇ~」

 

「喫茶店っていろんな場所にあるしなぁ」

 

「ラビットハウスも色々考えて経営してるんだね」

 

タカヒロへのインタビューを終えた6人、が会話をしながらホールへと戻ってくる。

 

「お。終わったみたいだな」

 

「甘兎庵とフルール・ド・ラパンもありますしね」

 

「甘味処に、ハーブティーの喫茶店だから、うちとはちょっと違うけどね」

 

「その喫茶店にも、インタビュー行ってみたいねー」

 

「え、あの店にか?」

 

「確かに、こことはまた違ったインタビューが聞けそうだね」

 

「それならココア。休憩時間にでも連れて行ってやったらどうだ?」

 

甘兎庵とフルール・ド・ラパンに行きたいという4人に対して、リゼはココアに連れて行くように提案をする。

 

「えっ。私、これでも仕事あるんだよ?」

 

「その仕事は私たちが代わりにやりますから」

 

「ココア姉ちゃんは4人を連れて行ってあげてよ」

 

仕事の事を懸念するココアだが、チノと雪兎が代わりにやると言い出す。

ココアはそのことに機嫌をよくしたのか、目がキラキラと輝きだす。

 

「わぁー!妹達と弟達の頼みなら、断れないなぁ~♪」

 

「えっ!いいの!?」

 

「よかったぁ~!ココアちゃんとなら安心だね」

 

「…そうか?」

 

「まぁ、ボクらだけで行くよりはいいんじゃないかな」

 

「偵察任務か…。気を抜いたらやられるぞ!」

 

突然、リゼが真剣な表情で考え込むと、4人に対してビシッと勢いよく指さす。

 

「「やられる!?」」

 

「いや、偵察じゃねぇし」

 

「殴りこみに行くわけでもないからね?」

 

「「リゼさんの冗談ですよ」」

 

リゼの発言に驚くメグとマヤだが、リクとカケルは冷静に突っ込み、チノと雪兎は冗談だと二人に教える。

ココアは余所行きの服に着替えると、4人を引き連れてラビットハウスを出ていった。

 

―――――――――――――――――

 

「あら、チノちゃんのお友達の?サービスするわよ♪」

 

まず、ココアが4人を引き連れてやってきたのは甘兎庵だった。

 

「学校の宿題で、千夜ちゃんのところにインタビューに来たんだよ」

 

「ズバリ!ラビットハウスとは敵対関係何ですか!?」

 

「張り合ったのは昔で、今は違うんだよ」

 

「ココア姉が答えてどうすんだよ」

 

千夜にインタビューしているのに何故かココアが答える。

 

「良きライバルと思っているわ」

 

「そうなの?」

 

「最近、チノちゃんをお父さんがジャズやってたって聞いて、音楽も出来なきゃって気づかされたの。でも、楽器無いから歌います!」

 

千夜がそう言うとどこからか、ミラーボールとカラオケセットが出てくる。

 

「すげー!」

 

「カラオケ居酒屋みたい!」

 

「甘味処でカラオケって、なんかおかしくないですか?」

 

「でもさ、バイトしてると、勉強大変じゃない?」

 

「両立するのって難しくないですか?」

 

学業とバイトの両立について気になったのか、マヤとメグが尋ねる。

 

「働くことも勉強の内だよ!」

 

「メリハリ付けてこなせば、大抵何とかなるものよ」

 

「なんかカッコよく見えるな!メグ!」

 

「すごいんだね!マヤちゃん!」

 

「ココアちゃん。今度、数学教えてね!?ちょっとピンチなの!」

 

「私も文系全般教えて欲しいかな…」

 

「「ダメじゃねーか(じゃないですか)!」」

 

両立出来ているように見えたマヤとメグは憧れの視線を、ココアと千夜に送るが、当の本人達は学業の危機に直面していた。

 

―――――――――――――――――

 

次にやってきたのはフルール・ド・ラパンだ。

 

「いらっしゃいませー♪」

 

扉を開き、中に入るとバイト中のシャロが出迎える。

 

「うさぎっぽさが負けてるー!」

 

「ラビットハウス完敗だよ~!」

 

「ラビットハウスはコスプレ喫茶じゃないだろ」

 

しかし、フルール衣装を見た途端に、マヤとメグが青ざめる。

 

「しかも、このスカート丈!」

 

「何!?」

 

マヤが、シャロのスカートを掴み少し捲る。

 

「大胆さも負けてる!」

 

「は!?」

 

「喫茶店だからね?ここ」

 

メグの意見に、カケルが冷静にツッコミを入れる。

 

「歌い出してもおかしくない衣装だね!」

 

「歌!?」

 

「歌うサービスあったっけ?」

 

「無いわよ!」

 

「服よりも、ハーブティー気に入って欲しいな♪」

 

「リラックスした隙にヤルつもりだ!?」

 

「なんでよ!?」

 

営業スマイルでシャロがハーブティーを勧めるが、ココアの斜め上の解釈にすかさずツッコミを入れる。

 

「お店の決めポーズをやってよ!」

 

「無茶ぶり!?」

 

「じゃーん♪」

 

「ラビットハウスではこんな!ほら、二人も早く」

 

「「やらんわ!」」

 

ココア、マヤ、メグは並んでポーズを決めて、リクとカケルにもポーズをするように促すが二人は拒否する。

 

「はっ!?…先輩でさえ、やっていると言うなら…!」

 

ポーズに衝撃を受けて、シャロは少し考えこむ。

 

「これが!そうです!」

 

即興で渾身の決めポーズを披露するシャロ。

 

「でも、リゼちゃんには却下されたんだよね~」

 

「うぅ…」

 

リゼはやってなかったという言葉に、シャロはショックを受ける。

 

「終わったか?」

 

「シャロさんお疲れ様です」

 

「分かってたなら助けて!?」

 

怒涛のツッコミを入れたシャロに、労いの言葉をカケルが贈る。

 

「職業インタビューなら、あっちに小説家さんもいるよ」

 

ココアが指さした先には、ハーブティーを飲んでいる青山がいた。

 

「あの人、小説家だったのか。メグ、行ってみよう」

 

「うん」

 

「青山さんか。インタビュー相手にはぴったりだね」

 

「俺らも行くか」

 

4人は青山の方へと向かう。

 

「…今の職業インタビューだったの?」

 

「あれ?言ってなかった?」

 

今のどこが職業インタビューだったのだろうかと、心の中でシャロがツッコミを入れる。

 

「ぜひ、小説家さんになった経緯とやりがいを教えてください」

 

「私のような者でも、参考になれば」

 

「うんうん」

 

「きっかけは、ある方に勧められて」

 

「そういう経緯があったんですね」

 

「やりがいは…」

 

「やりがいは?」

 

「やっぱり、人を感動させられる時ですか?」

 

「そうですねぇ」

 

「「あっ!?」」

 

「「ん?」」

 

青山は言葉を止めると、突然椅子に座ったまま体を横に倒すと、机の下から店員を覗き込む。

 

「店員さんを観察しても怪しまれません」

 

「人間観察ってやつですね」

 

「これ、ただ覗いてね?」

 

「横になる必要ないだろ」

 

青山の行動にツッコミを入れるマヤとリクだった。

 

―――――――――――――――――

 

甘兎庵と、フルール・ド・ラパンのインタビューを終えた5人は街中を歩いていた。

 

「お金が…」

 

「和菓子とか、ハーブクッキーとか美味しかった!」

 

「色々話も聞けたしね~」

 

可愛い妹と弟達に奢っていたココアは、すっかり少なくなった財布の中身を見ながら落ち込んでいた。

 

「じゃぁ、そろそろ帰ろっか」

 

「そうですね。もういい時間ですし」

 

「えっ?もう帰るの?」

 

「他の喫茶店もインタビューしようよ!」

 

「2軒回れば十分だろ。おまけで小説家からも話聞けたんだし」

 

「えー!お前ら付き合い悪いぞ!」

 

「ダメ!遅くなったら、チノちゃんと雪兎くんに心配させちゃうよ」

 

まだ帰りたくないマヤとメグは顔を合わせると、ココアの方へ上目遣いでねだるような視線を送る。

 

「お願い。姉貴♪」

 

「もっと一緒にいたいね。ココアお姉ちゃん♪」

 

「わぁ~♪もぉ~♪遅くなったらチノちゃんに怒られるんだからね~♪ほら、弟二人も早く早く♪」

 

「「チョロい!」」

 

妹二人のおねだりにすっかり機嫌を良くしたココアは、二人の手を取り次の喫茶店に向かいだす。

 

「チノとどっちが姉が分かんねぇなー」

 

「ふふっ♪」

 

((全くだ…))

 

マヤの発言にメグが笑って同意すると、その後ろをついて行くリクとカケルも同じことを思うのだった。

 

―――――――――――――――――

 

日も陰り始めたころ、ラビットハウスに5人が戻ってきた。

 

「リゼー。帰ったよー」

 

「お。どうだった?」

 

「将来、私たちがここのライバルになる可能性がある!」

 

「寝返る気か!?」

 

マヤはリゼに宣戦布告するようにビシッと指さす。

メグはチノの横に行くと、耳打ちをするように小声で話しかける。

 

「私はね。チノちゃんと雪兎くんが、素敵なお姉さん達と友達でいいなと思ったよ」

 

「お姉さん…」

 

「将来あんな人たちになれるかなぁ」

 

「メグさんだけでも、そのままでいてください」

 

メグの感想にチノは苦笑いをすると、身近な高校生たちみたいにならないようにやんわりと懇願する。

 

「二人はどうだった?」

 

「ココア姉のチョロさ加減が心配になる」

 

「え?」

 

「悪い人に騙されないように、ちゃんと見ててあげてね」

 

「…どういうこと?」

 

インタビューに行ったはずの二人の感想に、首を傾げる雪兎だった。




職業インタビュー編でした。

今回は雪兎くんの出番はほぼ無しで、リクとカケルに頑張ってもらいました。
この二人すっかりツッコミ専門の立ち位置が板についてきましたw
ほんと、ココア、マヤ、メグトリオの怒涛のボケラッシュは見てて面白いですね。
これを凄まじい勢いで捌くシャロとのやり取り大好きですw
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