ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第2羽開始です。

前半にオリジナル要素があります。


小麦を愛した少女と小豆に愛された少女―1

ここは木組みの家と石畳の町。

私、ココアは春からこの町の高校に通うため、引っ越してきました。

下宿先のラビットハウスでバリバリ働いています!

妹と弟もできました!

 

「妹じゃないです」

 

「まぁまぁ」

 

ココアの独白に突っ込みを入れるチノとなだめる雪兎。

 

「この前お客さんに、ココアちゃんはシスターコンプレックスだねって言われちゃった」

 

「「えっ」」

 

「響きがかっこいいよね♪あとね、別のお客さんにはブラザーコンプレックスって言われたよ。こっちもかっこいい♪」

 

「そっちも!?」

 

リゼがカウンターに戻ってくるとココアが駆け寄る。

 

「リゼちゃん聞いてー!私、シスターコンプレックスでブラザーコンプレックスなんだって!」

 

「え!?あ、そ、そうか…」

 

「シスターコンプレックス♪ブラザーコンプレックス♪」

 

よほど気に入ったのかココアは連呼しながら笑顔でぴょんぴょん跳ねている。

 

「いや、どっちも誉め言葉じゃないのに…」

 

「やばい、意味を分かってない…。早く止めなきゃ…」

 

「やれやれ」

 

ココアの様子に3人(?)はため息をつくのだった。

 

―――――――――――――――――

 

春休みが終わり始業式の朝。

朝食を済ませ、登校の準備を終わらせた雪兎はココアを呼びに行ったチノを待っている。

 

「ふぁ~…」

 

雪兎は大きくあくびをすると頭を左右に倒してゴキゴキと首を鳴らす。

 

「忘れ物はないか?」

 

「大丈夫」

 

「お待たせー!あっ!雪兎くんの制服もかっこいいね!」

 

「そうですかね?」

 

雪兎の制服は紺色のブレザーにカッターシャツ、チノのスカートと同じ色の長ズボンだ。女子用と違い帽子はない。

三人は外に出ると見送りのタカヒロとティッピーに手を振る。

 

「いってきまーす!」

 

「「いってきます」」

 

「ああ、いってらっしゃい。気を付けて」

 

「はーい♪」

 

ラビットハウスから出発した3人は同じ道を進んでいく。

 

「二人ともこっちの方向なんだ」

 

「こっちの方向なんです」

 

「じゃぁ、途中まで一緒に」

 

「いけますね」

 

「そうだね」

 

毎朝3人で一緒に通えることが嬉しいのか笑顔になるココア。

 

「では、私たちはこっちなので」

 

「ココア姉ちゃんまた後で」

 

「はやっ!」

 

っが、あっという間に別々の道行きになってしまうのだった。

ココアと別れたチノと雪兎は話をしながら道を歩き続ける。

 

「ココア姉ちゃん迷子になったりしてないかな…」

 

「さすがにそれは、…ないと、…思いたい」

 

普段のココアの様子を思い出す二人。

接客とレジ打ちは問題ないが、日向ぼっこしてさぼったり、皿をひっくり返したり…、仕事が休みの日はお出かけして迷子になったり…。

 

((不安だ…))

 

ココアの無事の到着を二人で祈りつつ歩くこと数分。

 

「お、チノ!雪兎!おはよう!」

 

「おはよー」

 

チノと同じ制服を着た二人組がこちらに手を振る。

黒色の短い髪の元気な笑顔で八重歯が覗く少女、条河摩耶。

赤混じりで茶色の長い髪を下の方で二つ結び、柔らかい笑顔の少女、奈津恵。

マヤ、メグと呼ばれている二人はチノのクラスメイトだ。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、二人とも」

 

「それじゃ張り切って!レッツゴー!」

 

マヤの元気一杯の掛け声で4人は歩き出す。

 

「チノと雪兎は春休みどうだった?」

 

「うちの手伝いをしてました」

 

「チノはいっつもそればっかじゃーん!」

 

「チノちゃんと雪兎くんの家は喫茶店なんだよね~」

 

「雪兎はなんかないの?手伝い以外で!」

 

「そうだなぁ」

 

「メグさんはどうでしたか?」

 

「お買い物したり、読書したりしてたよ~」

 

「いつも通りですね」

 

4人は談笑しながら登校を続ける。

 

「きたきた、雪兎ー!」

 

「おはよう、みんな」

 

今度は雪兎と同じ制服を着た二人組が手を振る。

黒い短い髪でところどころ跳ねあがっている吊り目の少年、後関陸。

茶色のくせ毛で眼鏡をかけた雪兎たちのより背の高い少年、門田駆。

リクとカケルは雪兎のクラスメイトだ。

 

「おはよう、リク、カケル」

 

「おはようございます」

 

「おはよ~」

 

「リク~、カケル~!お前らは何かないのかよ!?」

 

「なんだよマヤ。いきなり」

 

「だって!チノと雪兎は春休み手伝いくらいしかしてないって!メグもあんまり変わらないし!」

 

マヤは叫ぶとビシッ!とチノと雪兎を指さす。

チノは表情を変えず、雪兎は苦笑いで頬をかいている。

 

「とは言っても、俺も家の手伝いとサッカーくらいしか」

 

「お前もかーっ!」

 

「リクくんの家は雑貨屋さんだよね~。リクくんのお姉さんが作ったキーホルダーが可愛くて、つい買っちゃったよ~」

 

メグはカバンからペン入れを取り出すと、金具の部分に取り付けたキーホルダーを見せる。

 

「うさぎのキーホルダー!素敵です!」

 

チノは目を輝かせてキーホルダーを見ている。

 

「そうじゃなくって!カケルは!?お前が最後の砦だぁ!」

 

「ボクは、そうだねぇ。読書以外ならお父さんと釣りに行ったよ」

 

「そうだよ!そういうやつだよ!さぁ、大冒険を聞かせてくれ!」

 

カケルの返答にテンションが上がるマヤ。

しかし、雪兎は苦笑いでメグは困った顔で割り込む。

 

「あ~、マヤ。盛り上がってるとこ申し訳ないんだけど」

 

「そろそろ行かないと学校に遅刻しちゃうよ~」

 

カケルの腕時計を指さす雪兎とメグ。

時間は過ぎ去っていて走らないと間に合わない。

 

「げっ!ほんとにヤバいじゃん!」

 

「走るぞみんな!」

 

マヤとリクの掛け声とともに全員走り出す。

 

「ど、どうしてこんなことにー!」

 

「みんなで集まるとついつい時間を忘れちゃうね~」

 

「休み明けだからみんな会うの久しぶりだしね」

 

「カケル!涼しい顔してないでダッシュ!」

 

何とか時間ギリギリに間に合った雪兎たちだった。

 

―――――――――――――――――

 

初日ということでお昼前に授業が終わり放課後になる。

雪兎は荷物をカバンにまとめて席から立ちあがる。

 

「雪兎ー。カケル誘って帰ろうぜー」

 

ちょうどその時にリクがやってくる。

 

「雪兎くん、リクくん、一緒に帰ろう」

 

「うん」

 

「おう」

 

続けてカケルもやってきて3人で教室を出る。

教室を出てすぐの廊下ではチノ、マヤ、メグがすでに待っていた。

 

「お、きたきた!」

 

「みんなで帰ろ~」

 

結局いつものメンバーで帰宅することとなった。

 

「じゃあなー」

 

「また明日ー」

 

「リクー、カケルー、またなー」

 

ワイワイと雑談しながら下校中。

リクとカケルと別れる。女子三人は後ろで手を振っている。

 

「チノ―、雪兎ー、また明日―」

 

「じゃあね~」

 

「また明日なー」

 

続けてマヤ、メグと別れ、チノと雪兎は帰路に着く。

 

「朝は大変だった…」

 

「みんな揃うの久しぶりだったからね」

 

チノはげっそりといった表情で呟く。

学校には間に合ったがチノは肩で息をするぐらいにクタクタだった。

マヤとリクは涼しい顔をしており、雪兎とカケルは少し息が乱れる程度で、メグもチノと同じぐらい疲れた様子だった。

 

「「ただいま」」

 

「あっ!おかえりなさい!」

 

ラビットハウスに着き扉を開けるとすでに制服に着替えたココアがテーブルを拭いていた。

こちらに気が付くとココアが駆け寄ってくる。

 

「ココア姉ちゃんの方が早かったんだ」

 

「う、うん。そうなんだ!」

 

「高校の方はどうでしたか?」

 

「っ!」

 

一瞬ココアが硬直する。

 

「…こ、この町って可愛い建物が多くて素敵だよね!」

 

「そうですね?」

 

「高校はどうでしたか?」

 

「まるで童話の中の町みたいだよね!」

 

明らかに話題を逸らそうとするココアの様子に顔を見合わせる雪兎とチノ。

 

「「高校は」」

 

「聞かないで!」

 

入学式は明日だったらしい。

 

―――――――――――――――――

 

無事にココアが入学式を終えた当日のラビットハウス。

ココアがパンを作りたいと言い出した。

 

「大きいオーブンならありますよ。おじいちゃんが調子乗って買ったやつが」

 

ポッとチノの頭の上のティッピーが照れたように赤くなる。

キッチンの一角にある妙に大きなオーブンは生前に祖父が買ったものだ。

今では雪兎が料理にたまに使っている。

 

「ほんと!?今度のお休みの日、みんなで看板メニュー開発しない?焼きたてパン美味しいよぉ♪」

 

「自家製のパン…」

 

「話しばっかしてないで仕事しろよー?」

 

カウンターの方にリゼが通りかかると腹の虫が鳴る。

音の主、リゼの顔が赤くなる。

 

「焼きたてって、すごく美味しいんだよぉ♪」

 

「そんなことはわかってる!」

 

再びリゼの腹の虫が空気を読まずに鳴る。

さらにリゼの顔が赤くなる。

 

「焼きたてパン…」

 

雪兎は顎に手を当て考え込むポーズをしていた。

 

―――――――――――――――――

 

休みの日、雪兎、チノ、リゼ、ココア、そしてココアが連れてきた友達がラビットハウスのキッチンに集まっていた。

 

「同じクラスの千夜ちゃんだよ♪」

 

ココアが連れてきたのは茶色がかった黒髪を長く伸ばした少女、宇治松千夜だ。

 

「今日はよろしくね」

 

「チノちゃんと雪兎くんとリゼちゃん」

 

「よろしくです」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく」

 

チノがお辞儀をするとティッピーが落ちそうになる。

 

「あら?そちらのワンちゃん」

 

千夜がチノの頭の上に気づいたのかそちらに興味を示す。

 

「ワンちゃんじゃないです」

 

「犬ではないですね」

 

「この子はただの毛玉じゃないよ!」

 

「えっ!?」

 

正体がばれたのかと思ったのかティッピーが驚く。

しかし、ココアに撫でられすぐに表情が緩くなる。

 

「まぁ!毛玉ちゃん!?」

 

「もふもふ具合が格別なの!」

 

「癒しのアイドルもふもふちゃんね!」

 

「ティッピーです」

 

どうやらばれてはいないようだ。

 

(誰か、アンゴラウサギって品種だって説明してやれよ…)

 

「こいつ、うちで飼ってるアンゴラウサギのティッピーです。仲良くしてやってください」

 

「こういう品種の子もいるのね~」

 

雪兎がティッピーの説明をすると視線を感じたのでそちらを見るとリゼがサムズアップをしていた。

 

―――――――――――――――――

 

調理台にパンの材料と調理器具を並べていく。

 

「ココアがパンを作れるなんて、意外だったな」

 

「えへへ」

 

「「褒められてないと思います」」

 

気合の入っているココアは袖をまくると麺棒を手に取る。

 

「さぁ、やるよぉ!みんな、パン作りを舐めちゃいけないよ!少しのミスが完成度を左右する戦いなんだからね!」

 

「ココアが珍しく燃えている…!このオーラ…。まるで歴戦の戦士のようだ!」

 

ココアのオーラに気圧されるリゼ。

本気を感じ取ったのか少し笑うとすぐに真剣な表情になり任務を託す。

 

「今日はお前に教官を任せた!よろしく頼むぞ!」

 

「サー、イエッサー!」

 

リゼからの任務を受領し、敬礼で返すココア。

 

「わ、私も仲間にー」

 

千夜もハイテンションの輪に混じろうとする。

 

「暑苦しいです」

 

「あはは…」

 

「各自!パンに入れたいものを提出!」

 

「イエッサー!」

 

「さっ、サー」

 

「暑苦しいです」

 

「姉ちゃんはもうちょっとテンション上げようよ」

 

それぞれ具材を取り出す。

 

「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ、焼うどんパンを作るよ!」

 

「私は、自家製の小豆と梅と海苔を持ってきたわ」

 

「冷蔵庫にイクラとサケと納豆とゴマ昆布がありました」

 

「パンなのに和食系の具材ばかり…」

 

「これって、パン作りだよな…?」

 

リゼが取り出したのはイチゴジャムとマーマレードという普通の具材。

 

「僕は豚肉ロースと卵と牛乳、パン粉に千切りキャベツでカツサンドを作ろうと思います」

 

「今から揚げるのか!?」

 

「焼きたてパンと揚げたてのトンカツで、出来立てカツサンドを食べてみたかったので!」

 

雪兎の目がキラキラと輝いている。

いつになくテンションの高い雪兎に若干引き気味のリゼ。

 

「な、なるほどな…」

 

「いいよいいよ!雪兎くん!パン魂が溢れてるよ!」

 

「雪兎もあっち側だった…」

 

珍しくテンションの上がってる弟の様子に呆れるチノ。

 

「まずは強力粉とドライイーストを混ぜて」

 

ココアがボウルに強力粉を入れていく。

 

「ドライイーストって、パンをふっくらさせるんですよね?」

 

「そうそう。よく知ってるね。チノちゃんえらいえらい♪」

 

「乾燥した酵母菌なんだよ」

 

「攻歩菌…!?」

 

チノが固まると表情がどんどん不安の色に染まっていく。

 

「そ、そんな危険なもの入れるくらいなら、パサパサパンで我慢します!」

 

「姉ちゃん何言ってんの…?」

 

「はい、ドライイースト♪」

 

「あっ、…あぁ…」

 

チノはドライイーストを投入したボウルを不安な顔でのぞき込む。

 

「いや、ドライイーストは危険じゃないからね?」

 

材料を混ぜていくと生地がまとまり弾力が出だす。

生地が一つにまとまるとボウルから取り出し机の上でこねていく。

 

「パンをこねるのってすごく体力がいるんですね」

 

「腕が…、もう動かない」

 

「ふぅ、もうひと踏ん張り…!」

 

チノは額に汗が浮かんでおり、千夜も腕を回している。

雪兎は袖をまくって肩を動かしてほぐしている。

 

「リゼさんは平気ですよね?」

 

「な、なぜ決めつけた…?」

 

「千夜ちゃん大丈夫?手伝おうか?」

 

「ううん。大丈夫よ」

 

「頑張るなぁ」

 

(ココアちゃんの手間を取らせるわけにはいかないもの!みんなについていけるって見せなきゃ!)

 

千夜はまくった袖をさらに上げて気合を入れる。

 

「ここで折れたら武士の恥ぜよ!息絶えるわけにはいかんきん!」

 

「なんで武士の恥…?」

 

生地をこね続けていると弾力がだんだん増してきた。

 

「そろそろいいかな?モチモチしててすごく可愛い♪」

 

「生地が?」

 

「すごい愛だ」

 

こね終わった生地をボウルに戻しラップで密閉、タイマーをセットする。

 

「1時間ほど寝かせまーす」

 

雪兎はこの間にトンカツの下準備を行う。

 

PIPIPI…PIPIPI…

 

1時間が経過し、生地を確認すると膨らんでいた。

生地を取り出し麺棒で伸ばすと、各々が思う形に整えていく。

出来上がった生地を鉄板に並べ、オーブンを予熱する。

オーブンの調整は経験者のココアが行っている。

 

「チノちゃんはどんな形にしたの?」

 

「おじいちゃんです。小さいころから遊んでもらってたので」

 

「おじいちゃん子だったのね」

 

「コーヒーを入れる姿はとても尊敬していました」

 

「…爺ちゃんの形って、そっち?」

 

孫の賞賛に顔を赤くするティッピー。

雪兎がチノの鉄板をのぞき込むと、そこには人の顔の形をしたパンが並べられていた。

 

「雪兎、その型は?」

 

「食パン風に四角く焼くにはこれがいるみたいです」

 

「へぇ~」

 

四角い型の内側に食用油を塗り生地を入れる。

残りは卵状の形にした生地を並べている。

成形した生地を並べ終わったチノがオーブンに鉄板を入れる。

 

「ではこれから、おじいちゃんを焼きます」

 

「うわぁーーーー!!」

 

「いや、言い方!」

 

物騒な物言いをする姉に突っ込む雪兎。

 

「千夜ちゃん。ちょっといい?」

 

「何?」

 

「じゃじゃーん!千夜ちゃんにおもてなしのラテアート!」

 

ココアが渡したのはウサギの絵が描かれたラテアートだった。

 

「わぁー!可愛いー!」

 

「今日は会心の出来なんだ!」

 

「味わっていただくわね」

 

「あぁ…」

 

千夜がカップに口をつけようとすると残念そうな顔になる。

ココアの方を見るとすぐに笑顔になる。

 

「あぁぁ…」

 

再び口をつけようするとまた残念そうな顔になる。

またココアの方を見るとこれまたすぐに笑顔になる。

 

「えー、名残惜しいなら写真に撮ればいいんじゃないですか?」

 

ちょうど通りかかった雪兎がアドバイスをする。

 

「それだよ!雪兎くん!さすが私の弟!」

 

「雪兎は私の弟です」

 

ココアは上機嫌で雪兎の頭をなでているが、すかさずチノが突っ込みを入れる。

写真を撮り終わり、ようやく千夜はカフェラテを飲み始める。

 

「チノちゃんさっきからオーブンに張り付きっぱなしだね」

 

「じーっ」

 

オーブンの中を覗いて動かないチノ。

 

「そんなに面白いか?」

 

気になったリゼがチノの隣に付く。

中では熱せられたパンが膨らんでいく様子が見える。

 

「どんどん大きくなっています。あっ!おじいちゃんがココアさんと千夜さんに抜かれました!リゼさんだけ出遅れてます。もっと頑張ってください」

 

「私に言うなよ…」

 

雪兎はコンロの前に立つとフライパンを取り出し油を注いでコンロの火を点ける。

十分に油が温まったところで準備しておいた豚肉を油に投入する。

パチパチと揚げ物の音が響く。

 

「フライパンで揚げるの?」

 

「はい。フライパンで揚げると使う油が少なく済むんです」

 

「へぇ~」

 

雪兎は慣れた手つきでどんどん揚げていく。

 

「カリカリに揚がってる~」

 

「美味しそうです」

 

パンが焼き上がり、テーブルに並べていく。

 

「「「「いただきます!」」」」

 

早速みんなで焼きあがったパンの試食を行う。

雪兎はカツサンドを作っているためこの場にはいない。

 

「美味しい!」

 

「…ふかふかです!」

 

「さすが焼き立てだな」

 

「これなら看板メニューにできるね!」

 

「この梅干しパン!」

 

「この焼うどんパン!」

 

「この焦げたおじいちゃん」

 

「…どれも食欲をそそらないぞ…?」

 

インパクトはあるが看板メニューといわれると微妙なライナップである。

 

「じゃーん!ティッピーパンも作ってみたんだ!」

 

ココアが取り出したのはティッピーの形をしたパンだ。

 

「まぁ!可愛い!」

 

「看板メニューはこれでいけそうだな」

 

「食べてみましょう?」

 

「もちもちしてる…」

 

「わぁ!」

 

「えへへ。美味しくできてるといいんだけど♪リゼちゃんが持ってきたイチゴジャムだよ。美味しいね!」

 

「…あ、あぁ…。でも…」

 

リゼは思わず手元のかじったティッピーパンを見る。

 

(なんか…、えぐいな…)

 

かじったところ、目と口の部分からはみ出す赤いイチゴジャムが猟奇的な絵面を生み出している。

 

「カツサンドできました」

 

「「「「おお~!」」」」

 

雪兎が切り分けたカツサンドとロールパンに挟んだ形の2つを持ってくる。

 

「雪兎くん!早速食べてもいい!?」

 

「はい」

 

「「「「いただきます」」」」

 

それぞれカツサンドを手に取り試食を行う。

 

「おお!旨いなこれ!」

 

「うん!雪兎くん、これ美味しいよ!」

 

「美味しいわ!」

 

「美味しい…!」

 

みんなが賞賛の言葉を贈る。

 

「ボリュームもあるし、これも看板メニューでいいんじゃないか?」

 

「男性客に人気が出そうです」

 

「私のパンと雪兎くんのトンカツで最強メニュー間違いなしだよ!」

 

「そうしたいのは山々なんですけど…」

 

雪兎は困った顔をしている。

 

「何か問題があるの?」

 

「コストと手間が、ですね…」

 

「あぁ、なるほど」

 

喫茶店の経営という面では外せない問題があった。

 

「お父さんと相談して決めよう」

 

「そうだね」

 

後日タカヒロと相談した結果、カツサンドは一日の販売個数を制限するという形に落ち着いた。




マヤ、メグ、千夜登場です。
そして、男子版のチマメ隊ポジも登場。
中学組が6人もいると大変ですが、すごいわちゃわちゃ感が出て、これはこれで楽しく書けました。
リクとカケルの二人はこれからもちょくちょく登場予定です。
雪兎の食べ物への執着心もここで登場です。

以下、リク、カケルの設定

名前 :後関陸(ごせきりく)
年齢 :13歳
誕生日:5月28日
身長 :147cm
趣味 :運動全般 ゲーム
雪兎のクラスメイト。
典型的な運動少年。地元の少年サッカーチームに所属している。
運動神経抜群ですばしっこい。
実家が雑貨屋であり店番もたまにしている。
年の離れた姉がいる。
性格が近いマヤとは気が合うことが多く、何かと二人で仕切ることが多い。
名前の由来は黒茶の碁石茶から(碁石→石の読みを「せき」に→ごせき)

名前 :門田駆(かどたかける)
年齢 :13歳
誕生日:8月1日
身長 :153cm
趣味 :読書
雪兎のクラスメイト。
いわゆる文学少年。眼鏡をかけている。
成績優秀で教えるのが上手いためテスト前には、雪兎、リクの講師を務めることもある。
読書好きで四六時中本を読んでいることもある。
運動神経は、リクには劣るが、雪兎にはついていけるレベル。
実家は普通の家庭であり、一人っ子。
メグと仲がよく、読書の話をしていることが多い。
名前の由来は紅茶のモンターニュブルーから(モンタの部分を抽出→門田→読みを「かどた」に)
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