ご注文はうさぎですか?―ラビットハウスの看板姉弟―   作:テクト

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第3羽中編です。


初めて酔った日の事憶えてる?自分の家でキャンプファイヤーしようとしたわよねー2

次の日の朝。

甘兎庵の前で千夜が店前の掃除をしているとお隣からシャロが出てくる。

 

「行ってきます」

 

「それは何?」

 

制服で出てきたシャロが手に持っていたのは通学カバンとは別の紙袋だ。

 

「今度働くお店のチラシよ」

 

「私も一枚くださいな♪」

 

「…別にいいけど」

 

シャロは紙袋から一枚チラシを取り出し千夜に渡す。

しかしチラシを見たとたん、笑顔から驚愕の表情に変わる。

 

「こっ!これはっ!?」

 

開店前のラビットハウス。ココアとチノと雪兎はテーブルを囲みモーニングコーヒーを飲んでおり、リゼはカウンターの台を布巾で拭いていた。

 

「シャロちゃんが大変なのーっ!」

 

バァンっと扉が勢いよく開くと千夜が飛び込んでくる。

 

「何事!?」

 

突然のことに全員の視線が扉から飛び込んできた千夜に集まる。

 

「シャロちゃんがっ!こんなチラシを持ってきて!きっといかがわしいお店で働いているのよ!」

 

「なんと!?」

 

千夜の持ってきたチラシには「~心も体も癒します~OPEN Fleur de Lapin」という文字とポットとカップが乗ったお盆を持ったバニーガールのシルエットが描かれている。

 

「怖くて本人に聞けない!」

 

千夜は体を抱くようにしてぶるぶると震えている。

 

「ふるーる・ど・らぱん?心も体も癒します?」

 

(フルール・ド・ラパンってただの喫茶店じゃ…)

 

千夜が落ち着いたところで席に案内し、コーヒーを出す。

 

「どうやってシャロちゃんを止めればいいの…?」

 

「仕事が終わったらみんなで行ってみない?」

 

「潜入ですね」

 

「潜入!?」

 

潜入という言葉を聞くとリゼの目の色が変わる。

 

「あ、その言い回しは…」

 

「お前らぁ!ゴーストになる覚悟はあるのかぁ!?」

 

「ちょっとあるよぉ!」

 

「潜入を甘く見るなぁ!」

 

「「サー!!」」

 

「よーし!私に付いてこい!」

 

「「イエッサー!!」」

 

「はぁ、やっぱり…」

 

潜入という言葉が軍事関係に触れてるのに気づいた雪兎はリゼのスイッチが入ったとため息をつく。

盛り上がってる3人を横目にチノは雪兎に尋ねる。

 

「どこに潜入に行くの?」

 

「フルール・ド・ラパンでしょ。盛り上がりのもいいけど、仕事終わってからね」

 

―――――――――――――――――

 

仕事を終わらせ制服のままフルール・ド・ラパンの近くにやってきた5人は植木の陰に伏せている。

 

「千夜ちゃんとシャロちゃんって幼馴染だったんだね」

 

「そうなの。だから放っておけなくて…」

 

「制服くらいは着替えてもよかったんじゃ…」

 

「いいか?慎重に覗くんだぞ」

 

植木の陰から慎重に店内を覗き込む。

 

「いらっしゃいませー♪」

 

そこにはロップイヤーのうさ耳付きのカチューシャを付けたウエイトレス姿のシャロがいた。

シャロは背後からの視線を感じ振り返ると、5人が店内を覗いてる姿がばっちり見えていた。

 

「なんでいるのよー!?」

 

あっさり潜入がバレた5人は普通に入店した。

 

「ここはハーブティーがメインの喫茶店よ。ハーブはいろんな効能があるの」

 

店内は広く、客もそれなりに入っている。

 

「だいたい、勘違いしたの誰?」

 

シャロはチラシを手にジト目で5人を見る。

 

「私たち、シャロちゃんに会いに来ただけだよ?」

 

「いかがわしいってどういう意味です?」

 

「身も心も癒しますって、マッサージ屋かと思ってました」

 

「こんなことだろうと思った」

 

4人はそれぞれ言い分を話すと、雪兎、チノ、ココア、リゼの視線が千夜に集中する。

 

「その制服、素敵!」

 

千夜は笑顔でシャロの手を握る。

しかし、シャロはこの時、確信を持つ。

 

(こいつかっ!)

 

勘違いの元凶がこの幼馴染だということを。

 

「でもシャロちゃんかわいい!うさ耳似合う!」

 

「て、店長の趣味よ。…はっ!」

 

リゼはシャロをじっと見たまま手を顎に当てる。

 

(こんな格好…、リゼ先輩には見られたくなかった…。あの目は軽蔑の目よ!)

 

シャロはリゼの視線が軽蔑だと思っている。

しかし、当のリゼは自分がうさ耳付きカチューシャとバニー姿を想像していた。

 

(うん。ロップイヤーもいいかもしれない)

 

「それより、なんで制服なのよ」

 

「つい急いじゃって」

 

「店員さんー。注文お願ーい」

 

「こっちも頼むわー」

 

「「少々お待ちくださーい♪」」

 

客の呼び出しに反射的に反応するココアと千夜。

 

「紛らわしいことやめてよ!」

 

「ここ、ラビットハウスでも甘兎庵でもないです」

 

「えへへ~。ついつい。せっかくだからお茶してってもいいかな?」

 

「しょうがないわね」

 

シャロに案内され5人でテーブルを囲む。

シャロが置いたメニューをリゼが手に取り開くが首を傾げる。

 

(ハーブティーの種類ってよくわからないな)

 

「やっぱダンディライオンだよね!」

 

「飲んだことあるんですか?」

 

「ライオンみたいに強くなれるんだよ!」

 

「…たんぽぽって意味わかってないな?」

 

「ライオンとたんぽぽって鬣と花の形のことかな?」

 

「ちょっと違うわね。ライオンの歯がたんぽぽの葉に似てることが由来なの。それと、迷うならそれぞれに合ったハーブティーを選んであげる」

 

シャロはメニューも開かず、それぞれお勧めのハーブティを説明し始める。

 

「ココアはリンデンフラワーね。リラックス効果があるわ」

 

「へぇ~!」

 

「千夜はローズマリー。肩こりに効くのよ」

 

「助かる~♪」

 

「チノちゃんと雪兎くんは甘い香りで飲みやすい、カモミールなんてどう?」

 

「子供じゃないです」

 

「それでお願いします」

 

「リゼ先輩は最近眠れないっていってましたから、ラベンダーがおすすめです!」

 

「ほぉ~」

 

「ティッピーは腰痛と老眼防止の効果があるものをお願いします」

 

「ティッピーってそんな老けてんの!?」

 

「実は結構なお歳だったりします」

 

注文を受けたシャロが戻ってくるとテーブルに透明のティーポット置く。

茶葉の入ったティーポットにお湯を注ぐと色が薄い赤色に変わる。

 

「わぁ!赤く染まった!きれーい!」

 

次にカップの青いハーブティーにレモンの輪切りをつけるとピンク色に変わる。

 

「こっちはレモンを入れたら色が青からピンクになりました!」

 

「ほんとだ!」

 

「面白いわね~」

 

ハーブティーの七変化に盛り上がっているとシャロがクッキーを持ってくる。

 

「あの、ハーブを使ったクッキーはいかがでしょう。私が焼いたんですが」

 

「シャロが作ったのか。どれ」

 

リゼはクッキーを一枚手に取り一口食べる。

 

「…美味しい!」

 

(よかったぁ!)

 

リゼに褒められたのが嬉しかったのかシャロは笑顔のままが赤くなる。

 

(シャロちゃん真っ赤だ!)

 

(こっちの方が面白~い)

 

ココアと千夜、雪兎もクッキーを手に取り食べ始める。

 

「このクッキー、甘くない?」

 

「そんなことないわよ?」

 

「美味しいですよ」

 

ココアの感想にシャロは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっふっふ。ギムネマ・シルベスターを飲んだからよ!」

 

「えっ!?」

 

「ギムネマとは、砂糖を壊すものの意!それを飲むと一時的に甘みを感じなくなるのよ!」

 

「そ、そんな効能が!?」

 

シャロの説明に戦慄するココア。

 

「シャロちゃんはダイエットでよく飲んでたのよね~」

 

「あー、なるほど…」

 

「言うなバカーっ!」

 

千夜の暴露発言に全力で突っ込みを入れるシャロだった。

お茶会は続き、5人はクッキーとハーブティーを完食した。

 

「たくさん飲んじゃった~」

 

「お腹の中で花が咲きそうだよ」

 

シャロが食器を下げにお盆をもって来る。

 

「何かお手伝いできることがあったら言ってください」

 

「姉ちゃん。僕らはお客だからね?」

 

「ありがとう。気持ちだけでも嬉しいわ。チノちゃんと雪兎くん、年下なのにしっかりしてるのね。妹と弟に欲しいくらい」

 

「はっ!?」

 

シャロがチノ頭を優しく撫でている。その後ろでココアがショックを受けている。

 

(大人しく撫でられてる。珍しい)

 

チノは背伸びをすることが多く、撫でられるのを拒むことが多いのだが、シャロを拒否することなく大人しくしている。

ちなみにココアに関してはほぼ諦め気味である。

 

「チノちゃんと雪兎くんは私の妹と弟だよ!」

 

「…何言ってるの?」

 

「雪兎は私の弟です」

 

涙目で訴えかけるココアを無視してシャロは作業を続ける。

 

「2人はリラックスできましたか?」

 

「確かにリラックスしたけど」

 

「少し肩が軽くなったような」

 

リゼは手を組んで伸ばし、千夜は肩を回している。

 

「少し元気になった気がします」

 

「効果出るの早すぎでしょ」

 

「さすがにプラシーボ効果だろ」

 

「ねぇシャロちゃん。ハーブティーって自分のうちでも作れるの?」

 

「そうね。自家栽培する人もいるわ」

 

シャロがココアから視線を外し、少し経って戻すとココアは寝ていた。

 

「ココアさんが寝てます」

 

「今喋ってたのに…」

 

「ハーブティー効きすぎ…」

 

「即効性の薬並みですね」

 

「そんなやばい成分入ってないからね」

 

―――――――――――――――――

 

後日。

チノと雪兎がラビットハウスのホールでモップ掛けをしているとココアがどこからか採ってきた草を片手に勢いよく扉から入ってくる。

 

「みんなー!ハーブティー作ろー!これで出来るかな!?」

 

「えっ…」

 

「…ココアさんそれ」

 

「「雑草です」」




フルール・ド・ラパン編でした。
シャロがいると雪兎くんもボケに走りそうになるのが不思議です。

ふと疑問に思って、ダンディライオンについて調べてみたら鬣と花や綿毛ではなく歯と葉だったというのちょっと驚きましたw
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