イチについて! O-Buster   作:修司

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その空気をぶち破れ!

オーバスター

 

正式名称、第0世代怪獣対策決戦人型マシーン兵器black star。

この会社、エクセリヲンの名前の元である宇宙戦艦エクセリヲンに搭載されていたブラックホールエンジンこと縮退炉からつけられた名前ーーーーというのは建前で、実際は自分の中でなんとかバスターマシンの名前をつけようとして考えた正式名称である。

オーバスターは対使徒に対抗すべく開発したロボットで、モチーフのデザインにはジャイアントロボに登場するロボットGR2を採用しており頭には三日月のようなツノをつけている。

 

 

「どうですか・・・?こいつの様子は」

 

「どうもこうも、ダメージがでかい。肝心の縮退炉は無事だが大腿骨、仙骨にひび割れ。腎臓破裂。筋肉は各所が断裂してる。それも相手から受けたものより技を放つことによって受けたダメージだ」

 

 

「やっぱり・・・。装甲が間に合っていたら今よりはダメージは低いでしょうがそれでも想定より遥かに機体に負荷がかかっています」

 

 

縮退炉の構造を探っていく上で面白い発見はいくつもある。

まず我々はこれを心臓に人型を形成していったが、アニメに登場していた人間のような器官や骨、臓器。これらは全て縮退炉に一定の質量を配給するための構造だった。

人間のように取り込んだ質量を人工胃で分解、人工腎臓でそれぞれの元素に分解、人工腸でそれらを心臓たる縮退炉に送る。

人工肺はおそらく宇宙空間において空気を生成するためのものだし頭脳たる人工知能ももはや人造脳とでもいうような見た目になっていた。

 

こうして一つずつバスターマシンを作っている上でトップをねらえの一ファンとしての心がくすぐられることが何度もあった。

だが、もちろんうまくいっていないこともーーーーー

 

 

「伊藤さん。装甲の生成はあとどのくらいかかる?」

 

「はい、現在素粒子の金型はある程度完成しているのですが、微調整のためバンダイのスタッフとの会議を重ねています。なんといっても限られた素粒子なので金型の失敗はゆるされません。」

 

「まぁ職人さんも初の試みだろうからな。なんてったって200m級のプラモデルの金型だ。まぁ流し込むのは素粒子であるエルトリウムだが。」

 

「これが完成すればたとえ使徒であってもオーバスターの装甲を破壊することは不可能になるはずなんだが・・・なんてったってこの素粒子は反素粒子による対消滅でしか破壊できない。そしてこのエルトリウムは人工素粒子だ。実質戦闘による破壊はなくなる。」

 

「急がなければいけませんね・・・。ていうか情報の流れを見直しましょうよ。今回は重大なインシデントですよ。あったばかりの少年を殺しちゃうとこだったんですから・・・」

 

 

 

 

8時間前ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!ヒーローのご帰還だ!盛大に祝うぞ!」

 

 

整備長の言葉とともにノノや整備士、研究者たちが歓声を上げて戻ってくるオーバスターを迎える。

背部チューブを背中に繋ぐと同時に艦橋がオーバスターに向かって伸びコックピットから降りてきたシンジはそこに足を下ろすと一息つく。

 

それと同時に艦橋から走ってきたノノやスタッフたちに囲まれた。

 

 

「うわわっ!?な,なんですか⁈」

 

 

「よく勝ってくれた坊主!!」

 

「君は俺たちの恩人だ!」

  

「かっこよかったですよ!シンジくん!」

 

 「最後のキックは最高だったぜ!てか怪我はないか?」

 

「おうそうだそうだ。耐衝撃があるとはいえあの高さからの落下だもんな」

 

「け、怪我は特にないです・・・・ていうかお、落ち着いて・・・」

 

 

 

もみくちゃにされながらもシンジはその歓迎っぷりに満更でもないのか少し笑顔を浮かべていた。

そこへパイロットスーツを着た輝諭がそのあとを追って歩いてくる。

 

「あ・・・輝諭さん」

 

 

「シンジくん・・・色々伝えたいことはあるがとりあえず医務室に行くからついてきてくれ。戦闘後の体調チェックをしなければならない」

 

 

「わ、わかりました・・・」

 

 

 

「それと・・・・」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう・・・!君がまもってくれたおかげでこの街は、俺たちは救われた。」

 

そう言って輝諭は頭を下げて絞り出すように言った。その言葉を聞いたシンジは驚いた表情を浮かる。一企業のトップが頭を下げているという状況を理解すると助けを求めるように周りを見渡した。そしてーーーーー

 

 

 

 

 

(あ・・・)

 

 

みんながシンジに向けて笑顔を浮かべている。

彼らからしたらなんてことはない、命をかけて戦ってくれたシンジに対しての感謝を伝えているだけだ。

しかし、その笑顔はシンジにとって大きな意味を持つものだった。

 

 

これまでの彼を見ていると分かる通り彼は自己肯定感が著しく低い。それは彼を巻き込んだゼーレによって仕組まれたことであるのだが、今は置いておく。

とにかくこれまでの人生の中で彼は彼を純粋に感謝するような者に出会わなかったのだ。

 

 

それゆえに、シンジに向けられたそれは大きな意味を持ちーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の運命を大きく変えるきっかけとなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生の診断はなんともなかったそうだ。少し疲れが見られるからネルフにも連絡を入れている。無事で何よりだ」

 

 

 

「そうではなく、怪獣の情報ですよ。会長あなたもう少しで死んでたんですよ?そうなったらどうするつもりだったんですか・・・」

 

「それについては国連に連絡済みだ。とはいえ、この露骨な嫌がらせはやはり堪えるな」

 

 

「なぁに、信用はこれから築いていけばいい。とりあえず次に怪獣が出た際のネルフとの関わり方についてだな」

 

「・・・・・あ」

 

 

 

整備長の言葉に輝諭が反応する。それに気づいた二人は怪訝そうな顔を浮かべてこちらを見た。

まずい、完全に忘れていた・・・・・!

 

 

 

 

 

「パ、パイロット・・・・・どうしよう・・・」

 

 

「「あ・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の件について・・・イレギュラーについて聞こうか」

 

 

 「さよう、シナリオから大きく外れた使徒の撃退。肝心の初号機覚醒はおろかパイロットすら揃っておらんとは・・・。そしてエヴァではなく異なる兵器の存在」

 

「人の作りし物・・・このような存在はシナリオにはなかったぞ」

 

 

暗く閉ざされた空間に声が響く。

空間の中心にはネルフの総司令碇ゲンドウが口元を両手で隠しながら座っておりその周りをいくつものモノリスの立体映像が囲む。

このモノリスたちの名はゼーレ。

太古より世界を裏から支配していると云われる秘密結社。国連を隠れ蓑に活動しており、最終目的である人類補完計画を遂行させるべく暗躍する秘密機関である。

彼らは人類補完委員会を通じてNERVに指令を下している。

そんな彼らの話題の中心は、この場にはいないあの男ーーー

 

 

「・・・今回の件については弁明のしようもありません。しかし今後補完を行うにあたりイレギュラーの存在はシナリオの大きな歪みとなると予想できます」

 

「そんなことはわかりきっておる。問題は奴・・・イレギュラーをどのように修正するかだ」

 

「やつは間違いなくこちらを意識しておる。」

 

「幸いまだ修正の範囲内だ。少なくとも第10の使徒が現れる前に片付けられればそれで良い」

 

 

「碇・・・今回の件は不問とする。だがやつはなんとしてでも片付けろ」

 

 

 

本来行われる予定だった人類補完計画。そこから大幅に変わってしまったシナリオに彼らは焦りを感じていた。

暗闇の中、碇ゲンドウの声が響く。

 

 

「コンタクトは今後行われる予定です。その際に種子は巻いておきます。どうかご安心を。全てはーーー」

 

 

 

 

全てはゼーレのシナリオ通りに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで。これから君はネルフの方に行くことになるんだけど・・・」

 

 

 

 「は、はぁ・・・」

 

 

施設の廊下に備え付けられた椅子に座りながらシンジは曖昧な返事を返す。

 

「とりあえず今回働いてくれた給料だ。現金ですまないな」

 

 

 「そんな・・・こんなにたくさん」

 

 

 シンジに手渡された茶封筒。それは5cmはあろうかという厚さの給料袋だ。1000枚集まることで10CMだとして,少なくともこの茶封筒に入っている札束は400〜500万円は入っているということに他ならない。

中学2年生のシンジにとっては大きすぎる金額だ。

 

 

 

輝諭はシンジを前にして迷っていた。こんな用が済んだら金渡してさよならなんていう終わり方でいいのだろうかと。

どうか煩わしいなどと言わないでほしい。彼の魂は異世界にて生を受け、この世界の諸情報を把握している。そして目の前の少年、碇シンジはこの世界において重要な立ち位置にある。あらゆる意味でだ。

 

 

 

(できることならこっち側の陣営についてほしいが・・・一応向こう側の件についても話を聞きたいだろうし彼自身の意思もある。)

 

 

 

受け取った札束の入った袋を眺めながら頭を下げらシンジ。

そっと顔を上げつぶやくように問いかける。

 

 

「あ,あの・・・父の要件について、何かご存知ですか?」

 

 

「・・・正直にいえば知っている。いや、というより予想はできるというべきか。このタイミングでの呼び出しだ。おそらくはネルフの機動兵器のパイロット収集、だろうな・・・」

 

 

「パイロットって・・・昨日やられていたあのロボットですか?」

 

 

 「おそらくは・・・。人手不足ってのはどこも一緒だな」

 

 

そう言って苦笑いを浮かべる輝諭に対してシンジは沈黙を持って応える。

 

 

 (・・・なんだよそれ・・・父さんは僕がいらないから捨てたんじゃなかったのかよ・・・)

 

幼い頃置いて行かれた記憶が脳裏に蘇る。

彼は自身の父親を苦手としてはいるが決して父親がいらないわけではない。むしろその逆で彼は心の奥底では親の愛というものを求めていた。

 

 

話は変わるが,シンジはかつて誰のものか知らない自転車を拾ったことがある。

別に新しい自転車が欲しかったわけではない。ただその時目に止まった朽ち果てかけた自転車がどこか自分と重なって、そのままにできなかった。

しかしその数刻後にシンジは警官からの補導を受けることとなる。そして保護者の名前を会館から求められた際に答えたのは,世話になっている親戚ではなく実の父親であるゲンドウの名であった。

もしかしたら自分を迎えに来てくれるかもしれない。そんな思いをどこか捨てきれなかったのだろう。だが結局ゲンドウはシンジを迎えに来なかった。

 

 

 

改めてシンジは輝諭の顔を見る。

シンジの表情、それを見た輝諭はシンジの内心を察する為考える。

 

(?何かを求めている・・・?)

 

はて,彼は何故そんな風な表情を浮かべるのだろうか。

金が足りなかった?いや、それは考えにくい。彼が札束を受け取った時浮かべた驚愕の表情は決して演技しているものではなかった。

ではここに残りたいとか?いや、それもどうだろう。結局のところ自分がやったのは原作ネルフと同じことだ。まぁ彼らほど悪い扱いではないと思うが・・・。

 

 

「えーと、どうしたんだい?なんだか気分が落ち込んでるみたいだけど・・・」

 

 

 

「・・・いえ、ただ色々納得できなくて。呼び戻したこととか、これまでのこととか」

 

 

「・・・・・」

 

「今まで散々放っておいて、急に呼び出しといて結局そっちの都合しか考えてない・・・」

 

 

僕の気も知らないで・・・

 

 

そう呟くとシンジは再び顔を下げる。

それと同時に輝諭は目の前の少年が自身の父に対して失望した事を理解した。

 

 

(うーん、困った。今からこの子を1人ネルフに連れてってもいい事ないぞ・・・)

 

 

 

彼は父親を、正確には家族を求めてここまで来ていたのだろう。そうでなければただ来いとしか書かれていない手紙でわざわざ出向いたりなんかしないはずだ。

輝諭はエヴァについて知っていることはそこまで多くはない。記憶の摩耗というのもあるが、何より本人達を目の前にしてもキャラクターと認識できないことが原因だった。

当然だ。いくらアニメと同じ声、そっくりな見た目をしてようと目の前にいる彼らは生きている。生きてる以上アニメでは表現しきれない心の動作というものがあり、それと相対するには人間として認識するしかない。テレビに映った芸能人を前にしたようなものだった。

 

 

(最初は原作の登場人物達に取り入ろうなんて考えてたが、まぁ普通に考えて無理だわな〜・・・)

 

 

 

 

(重い・・・汗)

つまり何が言いたいかというと、輝諭はいきなりこんなヘビーな話を聞いて焦っているということだ。

 

「と、とりあえず一回会ってみようよ。使徒なんて怪獣が出てくるんだ。もしかしたらただ君が心配で呼び戻したのかもしれないし・・・」

 

 

「だったらここに来ない方が安全じゃないですか?実際それで僕達死にかけましたし・・・」

 

「う・・・」

 

 

一瞬で論破されて輝諭は息を呑む。

そうしてフリーズしてしまいもはや輝諭にはフォローするための考えをなんとか口にしようとして口籠もるだけとなってしまう。

 

 

そうして30秒ほど空白の時間ができ、なんとか口を開こうとした2人の元に

 

 

 

 

「かいちょー!お車の準備できましたよー!」

 

その空気をぶち壊すようにピンクの髪をした少女が突っ込んできた。

 

 

 

「・・・・・」

 

「・・・あ、あれ?なんですかこの変な空気?」

 

「い、いや!なんでもないぞ!こっちも色々準備してたんだ。用意ありがとうノノ!早速出かけるとしよう。さ、シンジくんも!」

 

 

「え、え、ち、ちょっとまって・・・」

 

これ幸いとばかりに輝諭はノノがぶっ壊した空気に便乗するように帽子を被りシンジの背中を押す。

先ほどまでと全然違う雰囲気についていけなかったのかシンジは困惑して輝諭にされるがままだ。

 

 

「まぁ色々言いたいこともあるだろうがとりあえずは会いに行ってみよう!話はそれからでも遅くない!」

 

 

「でも・・・」

 

 

「なぁに!詳しい事情はわかんないけどとりあえず君は親父さんに言いたいことがあるんだろう?ならぶん殴るなり罵声浴びせるなりしてスッキリしよう!他人の目の前だから今の君に向こうは手を出さないだろうから絶好のチャンスだぞ!」

 

 

 

 

 

 

「それにーーーーー」

 

 

 

少し立ち止まって輝諭はシンジと向き合う。

 

 

 

 

「もし向こうに居づらくなったらここに来てくれたらいいさ!遊びにくるもよし!見学するもよし!ここにいる奴らも楽しみにしてるだろうからな!」

 

「はい!ノノもせっかくのお友達第一号なのですからまたお話したいです!」

 

 

そうして笑みを浮かべた輝諭とノノ。

輝諭の言葉にシンジは驚くように眼を開くとやがて呟くようにはい、と答え輝諭達の後を歩いて行った。

 

 

 

その顔にはほんのりとした笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

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