ヘスティア・ファミリアが大所帯になるのは間違っているだろうか   作:妹めいたなにか

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竈の神のもとに有志が集う、それは少女が呼び込んだ新たな流れである


前話のあとがきの通りこの話からオリキャラを挟んでいきます。


それは歩み始める冒険者の集いで

新団員が増えた、ベルにとってはあまりに唐突な話で最初に妹の言葉を理解するのに時間を要した。

 

クミもクミでナイフと鎧を買いに行ったら専属契約をその鍛冶師と結んできたというのだから驚きだ。

 

「そ、それで新団員って!?」

 

「今日は演奏が終わった後にオラリオ中を駆け回って入団希望者を探してたんだけど、お兄ちゃんみたいに下地はそこそこあるのにファミリアに入れないって冒険者さんもいるみたいでね、そこらへんが狙い目かなって探したら3人ほど入団希望者が居たの。」

 

「3人も!?」

 

「うん、元々別派閥に所属してた人も居て、鍛えている人もいるから明日にでもダンジョンに潜れるって、ヘスティア様にはまだ言ってないけど、お義母さんとも相談してほぼ採用は確定してるよ。」

 

「うわぁ、だれなんだろう、楽しみだなぁ。」

 

心底ワクワクしているというベルの目は輝いていて入団希望者に思いを馳せる。

 

「まずはヘスティア様迎えに行こうか、エイナさんにお願いしてギルドで待ってもらってるから、急いでホームに連れて行かないと。」

 

「あ、でもうちの神様がバイトしてるってその人達は・・・。」

 

「みんな笑って面白い神様だって言ってくれたけど?」

 

「そ、そうなんだ。」

 

新団員は素直に嬉しいベルだが、どういう人員が来るのか楽しみと不安がごちゃまぜになった。

 

「お兄ちゃんは先に神様を迎えに行ってホームで待ってて、私はホームの掃除をしておくから。」

 

「わかった、よろしくねクミ。」

 

 

 

「新団員だってぇぇぇェェェェェェ!?」

 

バイトが終わりさあ帰ろうとしたヘスティアに突如湧いた吉報、バイトの疲れなど吹き飛んだ、店長に挨拶を済ますと大急ぎで準備にかかる。

 

「すぐに帰ってお迎えする準備しなきゃね!すぐ着替えて準備するから待っててくれ!」

 

そこからのヘスティアの行動は速かった、零細ファミリアにも関わらず自らのファミリアに入団したいと言ってくれる子ども達に思いを馳せながら今か今かと待ちわびる。

 

「いや、こう考えるとベル君一家様々だよ、君たちが来てくれたからホームもこんなに綺麗になっているし。」

 

思い返して教会の内装をぐるりと見渡すヘスティア、地下に住んでいたあの時の廃墟同然だった教会が、今ではなにかの神を信仰していてもおかしくないほどに立派な教会となっている。

 

しかもクミはリフォームにも明るいのかステンドグラスにヘスティア・ファミリアのエンブレムまでつけてくれている。

 

夕日の差し込むステンドグラスは赤い陽の光に照らされ、それこそ自分が司る優しく燃える竈のような色合いになった。

 

「随分と様になった、あいつも、昇った天で喜んでいるだろうか。」

 

「僕は幸せものだよ・・・君たち家族を迎え入れてからこんなにも幸せな日々を送れている、こんなに幸せでいいのかって思えるくらいに満たされているんだ。」

 

「神様そんな大げさな。」

 

「大げさなものか!僕は主神として君たちにできていることはステイタスの更新くらいで主神らしいことを何もできていない、ファミリアを運営していくことは大変なんだって、今更ながらロキやその家族がどれだけ苦労してあそこまで上り詰めたのか、想像すら難しい。」

 

自らを目の敵にしている神だが、家族に対する愛情は本物だ、家族を迎え入れてすぐにその鼻を明かしてやると言った自分は本当に無知だった。

 

「違いますよ神様、何もできていないことなんてありません、神様はこうして僕たちを家族に迎え入れてくれたじゃないですか、色んなファミリアをたらい回しにされた僕をそれでも家族になってほしいと言ってくれた神様に、僕は頑張って報いたいんです。」

 

「ベル君・・・。」

 

ああ本当に自分は果報者だ、ヘスティアは自らの涙腺が緩むもこらえる、これから新しい家族が来るのにしみったれた顔なんてできない、だから笑おう、新しい家族を暖かく迎え入れるんだ、そう自分に活を入れて。

 

「感じ入っているところ悪いが、来たようだぞ。」

 

 

 

「たっだいまー!入団希望者のみんなを連れてきたよー!」

 

「お帰りクミ君!さぁさぁ、君たちが入団希望者かい?」

 

帰ってきたクミが連れてきたのは三人、一人は青髪碧眼なパルゥムの少女、二人目は黒髪黒目エルフの少年、最後が灰髪銀眼なアマゾネスのような猫人・・・って思ったところでヘスティアは内心首を傾げる、入団希望者を前に不審な態度は取れないと表情を作る。

 

(え、あの娘アマゾネス?猫人?どっち?)

 

一目で判別ができないヘスティアは混乱するも笑顔で挨拶をする。

 

「みなさんはじめまして、僕はベル・クラネルです、このヘスティア・ファミリアの団長を務めています、こちらが僕の義母で相談役のアルフィア義母さん、そしてこちらが僕たちの主神、ヘスティア様です。」

 

「このベルの義母で相談役のアルフィアだ、なにか困れば相談には乗ってやる、騒がしくしなければだがな。」

 

「ようこそ、僕はヘスティア、このヘスティア・ファミリアの主神にして竈の神だ、君たちの名前を聞かせてくれるかい?」

 

「では私から、はじめまして神ヘスティア、元ニョルズ・ファミリア所属のパルゥム、【アルス・レティ】です、武器は槍と投槍です、オラリオに来る前に脱退しましたが故郷では漁師や事務をしていました、よろしくおねがいします。」

 

「ならば次は自分が、お初にお目にかかる、エルフの【クロード・フェル】だ、魔法が主な攻撃手段だ、前の所属していた主神から脱退し次の所属先を探していたところクミ殿に勧誘を受けた、よろしく頼む。」

 

「じゃあ最後は私だねーダイダロス通りから来た【ブーケ・ロミリア】、武器はこの鉤爪、アマゾネスと猫人のハーフだけど猫人の特徴も受け継いだの、よろしくー。」

 

「皆ありがとう、さて、君たちはこれからここを家とし、これから共に生きていく家族になる、沢山ファミリアがあったのに僕のファミリアに来てくれたのは本当に嬉しいよ。」

 

「ほう、ハーフアマゾネスか、そのような人種は初めて見たな。」

 

「ママも驚いてたね、私は突然変異みたいな生まれなんだって。」

 

(び、びっくりした、アマゾネスの子どもは全員アマゾネスになるって聞いたけどこういう子もいるのか・・・。)

 

「じゃあ早速君たちに【神の恩恵(ファルナ)】を刻むから僕についてきてくれ、それが終わったら皆で楽しくご飯でも食べようぜ!」

 

「それならお店のあてがあります、今日知ったお店ですが、予算に糸目をつけるつもりはありません、豪華に外食歓迎会にしましょう。」

 

「それいいねベル君!皆でテーブルを囲んで楽しもうじゃないか!」

 

自己紹介を済ませ、全員に恩恵を刻むヘスティア、しかしその全員が特徴的すぎた。

 

 

【アルス・レティの場合】

 

 

(ほげえええええええ!?)

 

「どうしましたヘスティア様?」

 

「いやなんでもないんだ、アルス君、『これ』はニョルズのところから発現してたのかい?」

 

「はい、そうですよ、と言っても漁では使えなくて持て余し気味だったんですが・・・。」

 

 

【アルス・レティ】レベル1

 

 

魔法

 

 

輝け紫電(ライトニング・スピア)

 

速攻魔法:魔法の槍を生み出す

 

追加詠唱

 

轟け雷鳴(サンダー・ジャベリン)

 

エンチャント魔法:武器に雷属性の付加魔法

 

 

(先天性の雷魔法で派生してエンチャントもできる!?この子かわいい顔してとんでもないの持ってたな!?)

 

「雷属性だったんで漁では使い所がなかったんですよね、それで【勇者(ブレイバー)】フィン様に憧れてオラリオに来たんですが、ロキ・ファミリアの門番に追い返されてしまって・・・。」

 

「君もかい?ベルくんも追い返されたって聞くし、ふるい落としが強いのかな?」

 

やはり巨大派閥ともなると新人採用は厳しいのかとヘスティアは訝しむがそれはおいておこうと思った。

 

「やっぱり私がパルゥムだからなんですかね?だからといって夢を諦めるつもりはないんですが・・・。」

 

「ふむ?君は何かを志してオラリオに来たのかい?」

 

「隠すほどのことではないんですが、憧れがあるんです、」

 

「さっき言っていた【勇者】の事かい?」

 

「はい!私達パルゥムは何かと見下されがちです、ですがフィン様は立ち上がったんです、パルゥムの復興を志して戦う姿に憧れる同胞は多いですが、実際に同じように後を追いかけようとするパルゥムはそれほど多くないんですよ。」

 

「それはどうしてだい?」

 

「【勇者】の名を聞いてパルゥムが抱く感情は憧れと諦めの両方なんですよね、自分もああなりたいと願う傍ら、それでも自分は【勇者】のようになれないと憧れとそれ以上の現実をこれでもかと見せつけられるんです。」

 

フィン様はパルゥムのためにと戦っているのに勝手な話ですよね、そう小さく零すアルスには影がさしていた。

 

「ですがそれで諦められるほど、私の頭は良くなかったみたいです、こんな魔法まで発現したなら、挑戦したいと思うじゃないですか、自分は何処まで行けるのか、憧れに何処まで近づけるのか、私はそれが知りたいんです。」

 

「そっか、なら僕の役目は君の道が真っ直ぐ進めるように応援することだね、安心していいよ、ここには強くなれる切欠がたくさんあるから。」

 

(主にクミ君やアルフィア君関連で・・・あの子達鍛えるのも得意なんだよなぁ。)

 

ヘスティアはこの先をなんとなく察している、きっとこの子の夢は本人も思いもよらぬ形で躍進するだろう、クミやアルフィアは基本的にダンジョンには潜らないが、ファミリアのサポートだけでもその技術は群を抜いている。

 

ましてやアルフィアはかつてのトップファミリアの一員で新人教育にも明るい、そこにとてつもない厳しさはつきものなのはお約束であるが。

 

「ありがとうございますヘスティア様、ならば私は何処までもあなたのファミリアとともに歩み、夢を追い求めます。」

 

「うん、アルス君の夢が叶うのを僕はずっと応援するよ。」

 

 

【クロード・フェルの場合】

 

 

 

 

 

 

「主神殿、恩恵を刻んで貰う前にこれだけは話しておきたい、これによっては採用を見送ったほうがいいかもしれぬ。」

 

「どうしたんだい?わけがあるなら聞くぜ?」

 

「実は他ファミリアにも条件もよく属したいファミリアがあったし、エルフが多いファミリアでのコミュニティに属するのも悪くない選択肢であった、しかし私は正直に言うと、力を求めて成り上がりたい欲のほうが強い。」

 

「それでうちみたいな零細ファミリアに?」

 

「うむ、神に嘘が通じんのを知った上で断っておくが悪く言うつもりは毛頭ない、しかし成り上がると言うのは中堅や大手に属するよりも新興ファミリアのほうが都合がいいのだ、今は雌伏のつもりで目立たず備えるが。」

 

「そこまでして成り上がりたいのはどんな理由なのかな?僕は君の事を応援するつもりだけど。」

 

「大した理由はない、成り上がっていけば確実にあやつらが接触してくる、それだけの話だ。」

 

「前の主神から改宗しに来たって言ってたね、それ関係のことなのかい?」

 

「うむ、つかぬことを聞くが主神殿は神アポロンを知っているか?」

 

「うっげぇ!」

 

「ふむ、因縁深き相手なのは察した。」

 

「昔あいつに婚姻を申し込まれたことがあってね、それ関係でかなり苦労した。」

 

「心中察する、まあつまりそういうことだ、数年前に前派閥の団員をアポロンが欲していた、それに伴いアポロン団員からの嫌がらせが増えたのだ。」

 

ヘスティアは眉をひそめる、あの相変わらずの変態神っぷりに怒りと呆れが両方来たのだ。

 

「恐らく何かにかこつけて戦争遊戯で団員を奪おうとしたのだろう、だが前の主神殿はアポロンに奪われるのを嫌って全団員を伴いオラリオ外に脱した、しかし、やられっぱなしで居られるほど私は堪え性ではない、それにアポロンは一度狙った団員はオラリオ外だろうと追いかけてくると聞いた、ならば手を出される前に成り上がり、奴の鼻を明かしてやりたい。」

 

「それとこれは前もって言っておく、アポロンファミリアがどうなろうと前のファミリアがどうなろうと所属先をこれから変えるつもりはない、前ファミリアの情報を知る私がオラリオにいると知れれば奴は必ず動く、なので今はあまり目立ちたくはないのが雌伏の理由と、私を所属させるのを考えてほしい訳だ。」

 

「なるほどね、言いたいことはわかった、たしかにアポロンには僕も思うところがある、それに手荒な手段に出ず備えるという冷静な心を持っているのも君のいいところだ。」

 

「そんなことはない、私はこのファミリアにアポロン・ファミリアがちょっかいを出してくるのが確定した迷惑を掛ける疫病神のような存在だぞ?寧ろこの話を聞いて何故そんなに受け入れているのだ。」

 

「正直今アポロンがこっちにちょっかいを掛けてきてもある事情で楽に返り討ちにできるんだよ、だから君は気にせずアポロン・ファミリアと戦えるように力をつけるといい、でも僕はなるべくこの反則同然の方法は取りたくないからね、できることなら君たちだけで解決してほしい。」

 

「反則同然の方法とやらが気になるが、私を受け入れてくれて感謝する主神殿。」

 

 

 

 

【クロード・フェル】

 

 

 

スキル

 

変幻魔幻(テクニカルマジック)

 

消費魔力に応じて魔法の弾数、威力増加

 

デメリット

 

通常での魔法の連続使用に比べ弾数や威力増加による消費魔力増加

 

 

魔法

 

炎弾(ファイアボール)

 

球状の炎弾を作り撃ち出す

 

詠唱文

 

【爆ぜよ炎弾敵を焼け】

 

 

(お、おぉおおぉ・・・。)

 

「主神殿、私のスキルに驚いたのか?」

 

「うん、クロード君は凄いのを持ってるねぇ。」

 

「前の派閥で恩恵を刻んだら発現したのだ、だがこの身はまだレベル1、魔法はともかくこのスキルは未だに使いこなすには未熟でな。」

 

腕を組み唸るエルフの少年、彼は体を触れられることに忌避感はないらしい、育ったファミリアでは中々に楽しく過ごしていたと彼は語る。

 

「見てのとおりこの魔法は詠唱が短く使い勝手がいいのだが、単発威力は高いわけではない、そこを補うスキルが発現したのはありがたいのだがレベル1には消費が重くてな・・・。」

 

「逆に考えれば君が成長すればするほどこのスキルがとんでもなくなるわけか。」

 

使い勝手の良い魔法とスキルに恵まれているし彼もエルフというのもあって魔力の伸びしろには期待できるだろう、威力の増加も魔力が伸びれば自然と上がり、そこにスキルが乗ればどれほどか。

 

「よし、君の事情もわかった、僕も皆も君を家族として迎え入れるのに何の抵抗もないのはさっきも言った通りだ、ようこそヘスティア・ファミリアへ、今日は盛大に歓迎するぜ!」

 

「よろしく頼む主神殿、このクロード、ヘスティア・ファミリアのために粉骨砕身の思いで尽くそう。」

 

 

【ブーケ・ロミリアの場合】

 

 

(レアってわけじゃないにしろ、特殊なスキルや魔法を持つ子が多くて気にならなくなってきたなぁ、そもそも一番おかしいのがベル君だし。)

 

尚そこに例の理不尽妹とそんな義母は含まないものとする。

 

 

【ブーケ・ロミリア】

 

 

スキル

 

 

野良猫(ストレイキャット)

 

俊敏・器用に高補正、視力・聴覚が常時高い

 

 

「おースキルだ、ヘスティア様ーこれどういうスキル?」

 

「それは君の俊敏と器用をブーストして、その上視力と聴覚が冴えるらしいよ。」

 

「そっかー私ダイダロス通りで一人で生きてたからこういうのが出たのかも。」

 

「え、一人って君さっき母親から自分のことを聞いたって・・・。」

 

「んー私が小さい頃にママはパパと一緒に病気で死んじゃったの。」

 

「うわぁああああああ!?ごめん!僕が軽率だった!?」

 

竈の神が孤児の地雷を踏み抜くなど言語道断とばかりに謝り倒すヘスティアにブーケは慌てる。

 

「あ、謝らなくて大丈夫だよー?寂しくなかったわけじゃないけど、こうして私は生きてるし、こうやって生きていられるのはママとパパが私を小さい頃から鍛えてくれてたからだしね。」

 

両親は厳しくそれ以上に自分を愛してくれた最高の両親だったとブーケは語る。

 

「だからパパとママにいつかお空で自慢したいんだー、二人が鍛えてくれたから私はこんなに立派な冒険者になったよって。」

 

「そういうことなら僕は全力で応援するぜ!!立派な冒険者になって君の両親をびっくりさせてやろうぜ!」

 

「うんありがとうヘスティア様ー。」

 

褐色肌に猫耳と偉い属性のもり方だがその中身は家族思いのいい子でヘスティアの頬は緩む。

 

(この子達を僕は主神として導かなくちゃいけないんだ。)

 

ああ何という重荷だろう、ダンジョンという危険地帯に送り込み、子の成長を期待し、無事を願う、それだけのことにこんなにも心に不安が蝕む。

 

団員が増えるごとにこの重荷は増えていく、それにダンジョンで死ぬのも、寿命で死ぬのも、不変の神はいつか子どもたちを見送らなくてはならないのだ。

 

前代未聞の才能を持つベルや、最強の理不尽であるクミもその例外ではない。

 

常命の人間はいずれ死ぬ、ファミリアを結成した以上、主神は遅からず来る必然の別れに覚悟しなくてはならない。

 

ヘスティアはできることなら危険な目に合わず、家族と暖かく日常を過ごせればそれでいいとも思っている、しかしそうは行かないのだ、当のベルが自らを賭して英雄になろうとしている、そしてそれを成すには多くの助けが必要だ。

 

夢を叶えるために、立身出世を志して、誰にも開かせぬ胸中の願いを抱いて冒険者はオラリオで冒険をする。

 

それを支えるのが主神の役目で、子どもたちが偉業を成し遂げるその瞬間を見たいからこそ神々は下界の大地に降り立ったのだ。

 

(だから僕はこの子達を支えなくちゃいけない。)

 

新団員が3人も増えた、零細ファミリアにとっては僥倖なのだろう、だからこそ主神の自分にできることをヘスティアは考える。

 

(ミアハとかに薬の定期購入の交渉とか、ヘファイストスの新人鍛冶師と契約を結んだっていうベル君の人脈とかも十全に活かしていかないとな・・・。)

 

怠惰なヘスティアは既にその心を改め、団員のために何ができるかと考えを深める、自らのもとに集ってくれた新たな家族のために。

 

不変と言われた神が子どもと関わり考えを改めるという光景は珍しくはない、愛する子どもと歩むために自らができることを模索するようになるからだ。

 

 

 

 

 

 

その夜ヘスティア・ファミリアはベルが今日知った【豊穣の女主人】と言うお店で歓迎会という形でお祝いしようと店に向かった。

 

だがアルフィアはそういう騒がしい場所は好まないため留守番を願い出た。

 

 

「ベル君、紹介してもらったお店ってここ?」

 

「はい、ここのはずですが。」

 

看板を見上げればたしかにその店の名前だ、店の中からは美味しそうな匂いと賑わいの声が伝わってくる。

 

「あってるみたいだよお兄ちゃん。」

 

「この匂い、お腹を擽りますね。」

 

「うむ、匂いだけで腹が減ってくる。」

 

「お腹すいたねー。」

 

「あはは、じゃあ早速、こんばんわー。」

 

店の戸をくぐればベルが見知った顔が出迎える。

 

「いらっしゃいませ!あ、ベルさん!来てくれたんですね!」

 

「はい、シルさんの望んだ大食いが来てしまいました。」

 

「おや、あんたがシルがいってた大食いの客かい!」

 

「はい、シルさんから紹介されてきました、ヘスティア・ファミリア団長のベル・クラネルです、今日は新団員をお迎えしたので歓迎会で皆で沢山食べに来ました、売上に凄く貢献できると思いますよ。」

 

「はっはっは!気に入った!あたしはここを仕切る、ミアっていうのさ!今日はたくさんお金を落としていきな!シル、お客さんをテーブルに案内してやんな!」

 

「はい、ささ、皆さんこちらのテーブルにどうぞ。」

 

「ありがとうございますシルさん・・・次からしっかり予約してきますね。」

 

「はい、そうしてくれると助かります。」

 

テーブルに座って全員思い思いの注文をして、全員に飲み物が行き渡る。

 

「それじゃあ、僭越ながら団長の僕が乾杯の音頭を取るわけですが、小難しいことは抜きで、改めてヘスティア・ファミリアにようこそ!今日はたくさん食べて楽しんで、明日からの活力に変えていきましょう!乾杯!」

 

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

少年少女が食事を楽しみ話題に花を咲かせる、今日出会った赤の他人が主神の下に家族となり、今日から共に歩む同士となる。

 

酔った勢いでヘスティアがベルに抱きついたり、クミは甲斐甲斐しく小皿によそっては全員に渡し、アルスは食事の減りを見て次何を注文するかとメニューとにらめっこしてたり、クロードがお腹いっぱいで眠たそうなブーケをとんとんと叩いてたりなど色々とあった。

 

注文の呼び出しを受けてベルのもとに一人のウエイトレスが訪れる。

 

「すみません、追加のご注文があると承ったのですが。」

 

「ありがとうございます、飲み物のこれとこれが・・・。」

 

「かしこまりました。」

 

エルフの女性は淡々と注文を受け伝えに戻っていく。

 

「酒場に同族の女がいるのは意外だったな、我々エルフは気を許さぬ他者との接触を嫌うきらいがあるだろうに。」

 

「そうなんですかクロードさん?」

 

「団長殿よ、さん付けや敬語はいらんぞ本来は自分が敬う側なのだ、団長なのだから気軽にクロードでいいのだぞ。」

 

「では私も、アルスでお願いしますベル団長、我々は家族なのですから遠慮は不要です。」

 

「じゃあ私もブーケでいいよー団長さん。」

 

「・・・うんわかった、クロード、アルス、ブーケ、明日から一緒に頑張ろう!」

 

「「「了解(です)(だ)。」」」

 

「むにゃ・・・僕が頑張らないと・・・。」

 

「ヘスティア様、寝るなら帰ってから寝ましょうよ。」

 

「神様も限界みたいだし、そろそろ勘定にしようか、シルさーんお会計お願いします!」

 

「はーいすぐ伺いますねー!」

 

支払いを済ませ帰り際ミアに挨拶をすると「いつでも来な!飯を食いに来るなら大歓迎さ!」と豪快に笑って送り出された。

 

「うみゅーべるくぅーん・・・みんなぁ・・・・僕は心から・・・・幸せだぁー!!!!」

 

「もう、何言ってるんですか神様、この時間に叫んだら近所迷惑ですよ。」

 

「こうしてみると我々と同じような少女にしか見えませんね、ですが間違いなく彼女は女神だ、我々が主神と仰ぐに何の躊躇もない優しさを持った善い女神だと思います。」

 

「ああ本当に、面白い主神殿だ、眷属の我々のことを真摯に思ってくれているのがあの時の話でひしひしと伝わったよ。」

 

「ヘスティア様って温かいよねー体温とかじゃなくって、私達を思って包み込んでくれる優しさ、ママを思い出しちゃった。」

 

「クミロミ様が「もし下界に降りてきていたのならヘスティアを頼れ」って言っていたのがよくわかったよ、ヘスティア様は暖かい竈の神様なんだね。」

 

ヘスティア・ファミリアの団員たちは帰路につく、明日は団員でパーティを組み、ダンジョンへと潜る、ベルにとっては始めての同団員との探索だ、リリやヴェルフも皆に紹介しなくてはならない。

 

(お祖父ちゃん、ザルドさん、ファミリアに新しい家族が増えたよ、今日は色々あったけど、明日もきっと色々あると思う。)

 

空を見上げるベル、月明かりが街を照らす、この月を今も故郷の村で祖父も見ているのだろうかと、ベルは早くも祖父やザルドのことを懐かしく感じていた。




徐々にヘスティア様怠惰から脱している、そしてチラッと登場メイドエルフさん、この物語では彼女の過去周りも変化してます
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