ヘスティア・ファミリアが大所帯になるのは間違っているだろうか 作:妹めいたなにか
間隔が空いたのは4周年がさすがの公式最大手過ぎて軽く心が折れ気味であるからでして・・・。
誤字報告いつもありがとうございます
追記:重ねて誤字報告ありがとうございます
リリの改宗が決まった夜、その日のうちにヘスティアはリリに恩恵を与え、リリもヘスティア・ファミリアの一員となった。
リリの犯した悪事に関しては、ギルドと被害者に罰金を支払う方向で纏まった。
因みに額はそこそこ大きかったが個人資産がとんでもなく多いクミが立て替えた、これに関してはリリが自分で稼いで必ずクミに返済することとヘスティアが厳命した。
それはそれとしてヘスティアは被害者はともかくなんでギルドにまで罰金払わないといけないんだとやや憤っていたが、そこにはしっかりと理由がある。
「ギルドは冒険者にとって必要なものだ、だが不始末を犯した冒険者を放置すればそういう手合が溢れかえる、そういう意味では罰金は有用な手段だろうさ。」
「払うもの払っておけばいいんですよ、ああいう手合はあれで黙るんなら寧ろ都合が良いですよ。」
とはクロードとクミの言葉だ、それでもなぁとやや不満なヘスティアだったが、この言葉で逆に不安を覚える。
「まあそれでも、もし私が計画している内容を満たせるくらいお兄ちゃんが頑張ったらそれほど遠くない内にギルドは不要になるかもしれませんね。」
「え、何しでかす気だい・・・?」
「ご心配なさらず、今度はやらかすつもりはありませんし、ヘスティア様の意向に添えると思いますよ。」
「今、「今度は」って言ったよね!?」
クミの計画とやらが本当に気になるが、自分の意向にも添えるとは一体と思ったが、ベルもリリも神酒を耐えきったと言えど酔いが回っていたためその日はリリの改宗を終えて幕を閉じる。
翌朝リリは、ふわふわとした夢心地な気分で目が覚めた。
「んぅ・・・。」
目が覚めて、ふかふかのベッドに包まれて、再び眠気がこみ上げる、目覚めた布団というのはどうしてこうも二度寝の誘惑を駆り立てるのか。
「なんてそんな贅沢思っている場合ではないですね。」
苦笑いし、身支度を整えるリリ、昨日の今日だが決して少なくない金額を新しい家族に負担してもらったのだ、ならばその額以上に身を粉にして働かなくてはならない。
新しい主神は罪を犯したことは許しがたいけれども、最もそれを許せないのは他ならぬリリ自身なのだろうと言われた、償う気があるのならばこれからの人生を誠実に生きて償って行けとも。
不思議な話である、あれほど毛嫌いしていた冒険者達とのこれからの暮らしを考えるだけで、今この身に湧き上がる意欲と情熱は目覚めたばかりなリリの心に熱く燃えたぎっている。
「ふふ、生きているのに、まるで生まれ変わった気分ですよ。」
背に刻まれた新しい家族の証に誓うように、リリはこれからの人生を一生懸命に生きていく。
救ってくれた恩人である新しい家族のためにも。
全員で食事を済ませ、食器を片付けた後、ヘスティア・ファミリアは今日の予定を確認する。
まずブーケは元々の自力こそ高いがギルドで冒険者登録をしなくてはならず、暫くはギルドでの研修とクミとアルフィアの指導の元、ホームでの鍛錬を繰り返すことになる。
だが、アルスとクロードは登録も済ませ、そこそこの経験もあるので問題なくダンジョンには潜れる。
リリは当然ながらサポーターである、現状アルフィアを除けば最もダンジョン経験が豊富なのはリリであるため働きに関しては大いに期待できる。
ヘスティアは、今日も今日とて借金返済のためのバイトである。
そして団長のベルはアルス、クロード、リリを伴い広場へと向かい、担当契約を結んだヴェルフと合流し、互いに自己紹介を済ませる。
そろそろ『怪物祭』が近いのもあってか慌ただしく動くガネーシャファミリアを尻目にベルたちは今日もダンジョンへと潜っていった。
「しかし驚きでした、ベル様の契約鍛冶師があのクロッゾの家系だったとは。」
「うむ、魔剣にかけては右に出る者はいないと有名であるが、最近はとんと話を聞かなくなった。」
「あー悪いが実家の話はやめてくれないか、あまり好きじゃないんだ、というか、クロードだっけか、俺が言うのも何だがお前さんエルフだってのにクロッゾに対して思うところないのか?」
魔剣の中でも恐ろしいほどの威力を秘めたクロッゾの魔剣とエルフの因縁は深く、魔剣を嫌うエルフはその殆どと言ってもいいくらいにいるほどだ。
だがクロードは少し考える仕草をしつつもまるで気にしていないかのごとく姿勢を正した。
「む、たしかにクロッゾといえばかつて我々同胞に多大な被害を与えたが、それは私の世代ではないし、私は未だ若輩でな、魔剣なぞ便利な道具程度の認識しかない、それに私の家族は極東の民族で育ったエルフ故、ラキアとの戦いに関わりが薄いのもある。」
「そんなもんなのか?」
「そんなものだ、それに未だ出会った当日の短い付き合いだが、共にダンジョンに潜りヴェルフ殿の人となりはわかる、魔剣を以て悪意のあることを起こすような人物では無いことくらい若輩の私にもわかるさ。」
「お、おう、そうか・・・。」
「お二方、喋るのも結構ですが腕と口を動かしてくださいな。」
ヴェルフが視線を向ければ、槍に雷を纏わせてキラーアントに直撃させるアルス、しかも場所がキラーアントの甲殻の隙間という絶妙な精度を持って直撃させる技術はなかなかのものである。
「アルスはすごいんだね、キラーアントも結構強いのに。」
「港町育ちは伊達ではないですよ、逃げる魚を仕留めるのと同じようなものです。」
褒めるベルに謙遜するアルスだが、そのアルス当人もベルのレベル1詐欺とも言える動きに目を見張った。
透き通るような白髮を靡かせてダンジョンを駆け回り、閃光のように駆けた後にはモンスターの灰とドロップアイテムが残されていく、それをベルの邪魔にならないようにリリがどかし、魔石とドロップアイテムの回収をしているのだが、その戦利品の多さに経験豊富のリリもてんてこ舞いである。
(これでまだレベル1、ベル団長のステイタスは一体どれほどの貯金を持って次の
アルスとて積み上げた経験はレベル1の中でもそこそこある方だと自負はしているが、その経験が告げている、あの場所へ至るには相当の死線をくぐり抜けて漸く到れる場所だと。
そしてクロードもまた同じような思考を巡らせている。
(かつての大派閥ヘラ・ファミリア、そのアルフィアの親族と言われればその強さにも納得だが、だとすれば団長殿はどれほどの薫陶を受けたのやら。)
長寿のエルフとはいえ肉体年齢は未だ人間の少年程度と変わらないクロードだ、極東育ち故の他のエルフにない独自の価値観を持ってしてもその底しれなさに呆れ半分敬意半分である。
そしてベルは大半のモンスターを討伐するが、敢えて討ち漏らしを出している、単騎で戦っていた前とは違い、今は多人数と組んでいるのである。
今のベルならばキラーアントがどれだけ束になってかかってきても息切れせずに蹴散らせるが、それではだめなのだ。
(思い返せ、お義母さんは僕一人が強くなるだけでは意味がないって言っていた。)
パーティを結成した以上モンスターと戦うエクセリアを独占するのはこの上ない戦犯と言ってもいい、だからこそ、討ち漏らす相手を慎重に決めている。
(標的だけを見るな、全体を見ろ、体を動かせ、意識を研ぎ澄ませ・・・。)
義母達家族から受けた薫陶が今のベルの中に燃える以上そこに油断は一切ない。
その薫陶の中にはゴブリンを巣から追い出し、そのまま波状攻撃で
討ち漏らしたキラーアントにも視線を向ければ、新しい家族たちがしっかりと奮闘している。
遠距離の敵はクロードが牽制し、中近距離の敵はアルスが引受け、全体をリリが見て指示を出し、そのフォローをヴェルフが行う。
(ギリギリの調整は難しい、けれど僕だけじゃない、みんなで強くなるんだ。)
事前に伝えていたが、キラーアントを敢えて数匹討ち漏らしてそっちに向かわせると伝えた際にもリリはともかく三人とも普通に理解を示した。
ギルドの座学を突破し冒険者として歩み始めた以上、そこに甘えは絶対の敵だ、自分たちには頼れる団長がいるからと寄りかかるのではない、団長に追いつき支えるという気概が見ているだけでベルからも伺える。
(やっぱりいいなぁ。)
少しばかり変則的だが、ベルが調整して、他のメンバーが若干の無理をできる範囲でモンスターを倒す、ただモンスターを倒しただけでは上質な経験は得られない。
だが、同時にエイナの教訓もある、【冒険者は冒険をしてはいけない】半端な実力で身の丈に合わない戦いの末路は大抵死だ、だからこそエイナは担当アドバイサーとして心を鬼にするのだ。
(無茶をさせず、されど甘やかさず、お義母さん、これ本当に難しいです。)
クミにも言ったが自分に団長など務まるのか他ならぬベル自身が疑問に思っているが、当の皆が自分を団長と慕ってくれている、ならばこそ、その期待に応えよう。
「ベル様ー!そろそろ潮時です!帰還しましょう!」
「わかったリリ、【福音】!」
鐘の音が響く、その音の先には吹き飛ぶモンスターの死骸達、流石に連発こそできないが、ミノタウロスとの戦いは自分に相当な魔力を与えてくれていたようだ、ともかくこれだけ減らしておけばすぐに湧くことはないだろう、強化種が生まれないように追撃で持ち帰れない魔石を砕いておき、ベルは帰還の号令を飛ばす。
「今のうちに帰還しよう、皆行こう!」
「「はい!」」「おう。」「了解した。」
「それにしてもよかったのか?俺がこんなに取り分もらっちまって。」
ダンジョンから帰還後、配分が終わり、ヴェルフのもとには有用な鍛冶の素材となるドロップアイテムが山積みになっていた。
「ヴェルフは僕の契約鍛冶師だからね、いい装備を作ってもらえれば僕たちの生存確率も上がるし、何より仲間なら分かち合いだよ。」
「うむ、それにヴェルフ殿には危ない場面を救ってもらってもいる、報酬としては十分だろう。」
「我々もリリさんが大量のドロップアイテムを確保していますし、稼ぎとしては問題ないですし。」
「そのドロップアイテムの量を産み出すベル様の運がおかしすぎてリリはそろそろバックパックを買い換えようかと思ってますよ・・・?」
「あはは・・・。」
「お、おお、確かにベルの倒したモンスターからはヤバイくらいにドロップアイテムがボロボロ落ちてたよな。」
「そういうスキルだと思ってもらえればいいかな、じゃあヴェルフ、また次に。」
「わかった、流石に深入りはマナー違反だな、俺も気合い入れていい装備を作らねえとな!またな、ベル!」
ベルたちと別れた後、一人では相当負担のかかる量の素材の山を見てヴェルフはひとりごちる。
「さてと、これで作る装備は何がいいか・・・。」
キラーアントの甲殻は軽い割に丈夫なので軽鎧でもいいかもしれないが、籠手や膝当てもいいかもしれないと思考を巡らせつつ鍛冶場へとヴェルフは歩いていった。
先にクロードとアルスの二人をホームの教会へと帰らせたあと、ベルとリリはギルドへと向かい、ドロップアイテムや魔石の換金をするために受付に向かった。
「ベル君、相変わらず凄い量のドロップアイテム持ってきたわね・・・。」
「はい、なんでか強くなるたびにどんどんと落とす量が増えてる気がするんです。」
「何でしょうかね、ベル様の稼ぎを見てると上層の稼ぎがわからなくなりますよ。」
相変わらずの上層とは思えないほどの高額の稼ぎを得てため息を漏らすリリと首をかしげるベル。
これに関してはクミが若干顔を青くして。
『いやまさか、お兄ちゃんの運がいいのって夢でクミロミ様が「そういえば僕のエヘカトルが君の世界の少年君面白いね!ね!って言ってたよ。」とか言っていたけどいやいやそんなまさか・・・いくら神様がやりたい放題だからって信仰もしていないお兄ちゃんにそんな真似するはずが・・・だめだエヘカトル様だから信用できない。』
などと言っていたがこれは誰にも聞き取られていない。
「そういえばベルくん、例の時間決まった?」
「あ、はい、神様とも段取りを決めてここあたりの時間が・・・。」
「・・・うんわかったわ、ロキ・ファミリアにはこっちから伝えておくわね、それとこれは別件なんだけど。」
言うが否やエイナは周囲を見渡し、ベルたちに小声で伝える、「少し用があるので応接室に来てほしい。」
応接室に案内されたベルとリリ、エイナから切り出された話は、予想はしていたが意外なものだった。
ソーマ・ファミリア団長のザニスがガネーシャ・ファミリアによって捕まった。
コレ自体に関しては驚くものではない、改宗後にリリがソーマ・ファミリアで行っていたザニスの悪事や裏事情の告発をまとめ、ギルドに提出していたため捕まるのは時間の問題ではあったが、リリはあの男が簡単に捕まるとは思えず、何かしらしでかすとは予想していたのだ。
だが蓋を開けてみれば、ザニスは取り巻きの冒険者とともに捕まり牢に入れられた。
エイナの本題はむしろここからであった、なんでもザニス達は昨日深夜オラリオの街中で泡を吹いて卒倒し倒れていたらしい。
しかも発言自体も妙で、早く牢に入れてくれだの、あいつに殺されるだの、何やら精神がとても消耗していたらしい、その原因もまたおかしい。
「捕まる際の言い訳なのかもしれないけど、何でも街中で上半身が人間で下から馬の体を生やした人馬型のモンスター?みたいなものに襲われたって喚いているのよ、でもその証言が支離滅裂でね、あの日の夜、雨なんて降ってないのに雨が降っていたって言っているし、街灯も点いていなかったって言っていたけど、ガネーシャ・ファミリアが着いたときにはまだ街灯はまばらに点いていたのよね。」
「むー?あのザニスにしては発言が意味不明ですね?」
「人馬型のモンスターですか?そんなモンスター座学でも見たことなんて・・・。」
「そうなのよ、でもこれを聞いたガネーシャ・ファミリアが万が一もあるかもしれないって見回りを強化し始めたのよね、もし見つからなければザニス氏が嘘を言っているわけになるんだけど、早く牢に入れてほしいって自首する人間がそんな嘘を言う必要なんてあるのかな?」
エイナも首を傾げてウンウンと唸るものの、関係者であるベルたちならなにか知っているかと思って聞いてみたが、結果はベルたちも知らないとのことである。
「まあそんなわけだけど、今のところそんなモンスター見かけてないし、君たちも知らないなら多分嘘の案件で処理されると思う、でも一応数日は夜に警戒はしておいてね。」
「わかりました。」
で、いやまさかと思いつつ、その夜の夜食中にベルがふと。
「人馬型のモンスター・・・。」
「ゴフッ!?」
などと呟いた結果露骨なまでにクミが吹き出したために、さあ始まりましたヘスティア様主導の尋問大会。
「で、うちに襲撃かけようとしたザニスをその、幻惑魔法だっけ?でザニス達に人馬型のモンスターを襲わせる幻覚を見せたと。」
「はい。」
腕を組むヘスティアの前で正座するクミ、まあ話だけ聞けば悪いのは確実にザニスの方であって、怒られるのはクミではない、しかし見せた幻覚があまり良くなかったのである。
「まさか支離滅裂な幻覚で惑わしたらそれが原因でガネーシャ・ファミリアが真に受けるとは思わなかったんですよぉ・・・。」
「それにしたって街中でモンスターの幻覚を見せる必要はなかっただろうに、なんていうか君、実力は凄いんだけどどこか抜けてるよね。」
頭を抱えるヘスティアだが、更に悩みのタネが増えたとも言える。
(あーギルドに幻覚を見せる魔法を持ったうちの眷属がやりましたっていうのは簡単だけど、それにはクミくんの実力を根掘り葉掘りギルドに明かさなきゃならないわけで・・・。)
どう考えてもリスクが大きい、ノースティリスの冒険者の常識はずれの実力は他の神々にも有名だ。
結果ヘスティアの決めた結論は、事態が沈静化するまでスルー、つまり有耶無耶にしてしまえであった。
そもそも世間の認識はヘスティア・ファミリアがリリを正当に改宗させたのみで追い詰められたザニスが謎の事態で自首した認識なためこれ以上事態をややこしくする必要もないだろうとはアルフィアの意見である。
だが当事者のクミやヘスティア・ファミリアをして、本当に予想外なことが一つ起きているとすれば・・・。
ヘスティアが預かり知らぬどこかのファミリアと神たちが謎のモンスターが例の案件と同じ存在なのかと混乱する事態を招いた程度なのである。
なのでこの話はここでおしまいとヘスティアは話を打ち切り、ヘスティア・ファミリアは食事を済ませ就寝した。
しかし一つ、クミにとってさらに悩みのタネが増えたのが・・・。
『あ、そういえばクミ、前にも言ったけど僕のエヘカトルが君が兄と慕ってる子に注目してるから注意はしたほうがいいと思う、因みに僕は止める気はないよ。』
『クミロミ様ぁぁぁぁぁ!?』
などと夢でうなされるクミが居たのは完全な余談である。
4周年ガチャ?100連回して雑に3000前の英雄が完凸したけどどこぞの聖火神が出なかったので若干の金が消えますた