Vtuberフランドール・スカーレット 作:ピュレルーズンガル
「・・・・・・すまん。お前たちは何をやってるんだ?」
「私は絵の練習も兼ねてキャラクターとかスペルカード―――敵の必殺技みたいなものの原案になる絵を書いてるんです」
「私は弾幕の素材―――弾作りですね」
私たちの回答に顧問の
部活動を立ち上げるには本来は部員の人数を最低五人は確保することと顧問の先生を立てるという二つの条件が大まかに存在するが、私たちのゲーム制作は遊戯部の活動の一環として扱われているので遊戯部の部員全員が私たちの部員という扱いだ。だから部員の人数については問題がない。
しかし遊戯部は顧問が一人ではなく、チェスと囲碁と将棋の三つの部門ごとに顧問の先生が別々に存在している。将棋に詳しくてもチェスや囲碁には詳しくない先生は普通に存在するだろうし、当然と言えば当然だ。
顧問の先生がいないというのは生徒―――それも私たち中学生二人に部費の管理を完全に任せることになってしまう。それは流石に学校側としても了承できないため、私たちは顧問の先生を担当してくれることを了承してくれる人を探すことになり、無事に見つかったのが慧音先生というわけだ。
「フレンが原案を考えていることは理解したが、リミーリアの言う弾作りとはなんだ?シューティングゲームを作っているとは聞いたが・・・・・・」
「当たり判定に絵を貼り付ける作業にすると当たり判定の調整が面倒になるので、弾の絵と当たり判定のデータを結合してるんです」
簡単に言えば弾の絵であるデータAと当たり判定であるBのデータを一つにして弾のデータABを作っているということだ。正確には発射音のデータや他のデータとも結合させていたりするらしいが、そこら辺は姉に丸投げしているので詳しく把握していないので、もしかしたら間違っているかもしれない。
しかし―――
「お姉ちゃん、もうちょっと自分のやってることを自覚した方がいいよ」
「え?何か失敗しちゃった?」
「そうじゃなくて・・・・・・お姉ちゃん、お姉ちゃんがやってることはゲーム制作のためにゲームを作ってるようなものだよ?」
「この制作プログラムは別のプログラムを流用して少しアレンジしただけよ。それに今の状態だとゲームとしては正直微妙よ?基本的に弾幕の自作は打ち込み式で地味だから面白くないし、自作の弾幕を他の誰かに共有できるようにはできてない。ゲームとしては問題だらけだわ」
「いや、そういうことじゃなくて・・・「ちょ、ちょっと待て⁉・・・・・・どういうことなんだ⁉」・・・」
明らかに狼狽した声で慧音先生が私の言葉をかき消した。
置いてけぼりにするのは気が引けるので、私は慧音先生に姉のやってることを簡単に説明することにした。
先程から姉が校舎のコンピューター室に設置されているパソコンを借りてやってることは、言ってみれば弾幕メーカー制作だ。赤い帽子を被った配管工のステージを自作できるゲームの親戚みたいなものだと思えばいい。
ゲームを作る前にゲーム並みのものを作っているのだ。いや姉としてはゲームを作る道具を作っている感覚だろうが、それでも目的からズレているものを作ろうという思考は普通におかしい。自作するときに自作に使う道具も自作しようとは普通は思わないだろう。
あくまで私たちが作りたいのはゲームであってゲームを作るプログラムではないし、何より道を困難にしすぎてしまう。
姉のチートっぷりを理解した慧音先生は「頭がクラクラするぞ」と言って、若干ふらついた足取りで近くにあった椅子を引っ張り出すと、精神的疲労を背もたれに預けるかのように腰かけた。
「ふぅ、やはり私ではお前たちの力になれそうにないな。すまないな・・・・・・」
「いえ、部費の管理をしてくれるだけで十分ですよ。先生は生徒会の顧問も担当していらっしゃるのでしょう?日本史の授業関連でのお仕事もあるでしょうし、お忙しい中で顔を出してくれただけでもありがたいですよ」
慧音先生は申し訳なさそうに肩を落としていたが、姉の言葉を聞くと「そう言ってくれると嬉しいよ、リミーリア」と言って少し微笑んだ。まだ彼女の顔には申し訳なさそうな表情が残っているが、それでも先程より幾分か表情は柔らかくなった。
私たちにとっては確かにゲーム制作の知識がある先生がベストではあるが、理解のある先生が顧問になってくれるだけでも御の字だ。
「先生は生真面目すぎです。どっしりと生徒の後方で見守っていても誰も文句なんか言わないですよ」
私は呆れるようにそう言う。
慧音先生は天井を少しだけ仰ぎ見た後、顔をこちらへと向けた。
「・・・そうだな、確かに私は少し生徒を導こうという意識が強すぎたかもな。まだまだ子供とはいえ、お前たちも中学生だ。まだまだ私も小学校の先生気分が抜けていないようだ・・・・・・作業の邪魔をしてしまったな、これからも時々は顔を見せるとは思うが―――」
「―――邪魔するぜ」
その声と同時にガラガラとドアを横にスライドする。
私たち全員の視線がスライドしたドアに集まると同時に声の主であろう少女が入室者してきた。
全身から元気が溢れているかのような雰囲気を纏った、まさにパワフルと言った印象が伝わってくる金髪の少女―――に加えて、もう一人ドアの外に誰かいるようだ。彼女の手はドアの外にいる誰かの手首に繋がれている。
私たちからは死角になっていてもう一人の人物の姿は見えなかったが、明らかに面倒に思っているだろうなという雰囲気が伝わってくる。しかし彼女が繋がっている手を引くと諦めたのか、実に嫌そうな顔を浮かべた黒髪の少女が入室してきた。
二人の名前は知っていた。
前にも校門近くで見た二人の少女―――霧雨理沙と博麗怜だ
霧雨先輩は軽く室内を見渡した後、作業している私たちを見つけたのか、こちらへと近づいてくる。
「博麗と霧雨、お前たちがいったい何の用だ?」
慧音先生が質問するが、博麗先輩は面倒そうに顔を歪め、霧雨先輩は質問を無視して私たち―――姉が使用しているパソコンを覗き込んできた。
「へぇ~これがゲームの制作か。なんかゲーム制作の裏側を見られるとなると興奮してきな」
「聞け」
若干の苛立ちを含んだ慧音先生の手刀がパソコンを覗き込んでいた霧雨先輩の後頭部を直撃した。
と言っても手刀の打ち込みは非常に軽く、叩かれた衝撃はあっても痛みが発生するほどの威力はないだろう。打ち込まれた本人も痛そうな雰囲気はなく、からかい混じりの表情で「痛てッ!先生、体罰だぞー」と大げさな反応で茶化そうとしている。
その様子に慧音先生は呆れたように溜息を一つ吐き―――
「―――で、いったい何の用なんだ。部活でゲーム制作するという噂でも聞きつけてきたのか?」
「半分は当たりだぜ、先生。話すと少し長いから省略するが、私の目的はゲーム制作を見学しにきた。あと事務の
そう言って霧雨先輩は少し後方にいる博麗先輩を親指で指差す。
どうやら彼女たちは別々の目的でこの教室にやってきたらしい。
「はぁ、色々な体験をするのは大事だから否定しないが、この二人の邪魔になることはするなよ。しかし事務から・・・・・・部費に関してか?」
「詳しい話の内容は聞いてないわ。呼んできてくれ、とだけ言われたわ」
博麗先輩が酷くどうでもよさそうな顔で答えると、自身が呼ばれた理由の推測を中断したのだろう、慧音先生が無意識に徐々に床へと下がっていた目線を上げた。そして私たちの方を振り向くと「すまないが席を外す。この二人が邪魔だと感じたら容赦なく追い出していいぞ」というアドバイスと共に断りを入れるとコンピューター室を去っていった。
それを見送ると今度は博麗先輩が出口へと足を進める。
「おーい、どこ行くんだよ」
しかしドアに辿り着く前に霧雨先輩が博麗先輩を呼び止める。
彼女は気怠そうにこちらを振り向いた。
「頼まれ事は終わったから帰るのよ」
「まだ全然見学してねぇぞ」
「それはアンタの目的でしょう。私は早く帰ってゴロゴロしたいのよ。境内の掃除とか洗濯物も取り込まないといけないし」
「でも怜、お前なんか勝手にゲームのキャラのモデルにされてるぞ」
思わず「あ・・・・・・」と声を漏らしてしまった。霧雨先輩の視線は私の近くを向いており、そこに何を置いていたのか私は瞬時に察したからだ。
彼女の視線の先を辿っていくと、私がずっと横で置きっぱなしにしていた原案となる絵があった。
「ちょ・・・「おっと」あ・・・・・・か・・・返して」
慌てて回収しようとしたが、どうやらこの世界でも彼女の手癖は相当悪いようで、すぐさま霧雨先輩が全てを搔っ攫っていった。椅子から立ち上がって取り返そうとするが、私と彼女の身長差ではとても取り返せそうにない。
視線で姉に助力を乞うが、あろうことか姉はクスクスと面白そうに笑っていた。
私は霧雨先輩が手にしている絵と姉の視線を数回ほど行き来させると、酷く虚しくなったので抵抗を諦めて椅子へと戻った。
「ちょっと私にも見せなさい」
「ほいよ。ちなみに私がモデルっぽいキャラクターの絵もあったぜ」
「確かに名字が一緒ね。アンタは・・・・・・この泥棒っぽいキャラかしら?・・・ピッタリね」
「おいおい、名前の左上に魔法使いって書いてあるのが見えないのか?」
「そろそろ返して・・・ください・・・」
もう観賞は十分だろう。
設定が中二ならぬ厨二とか言われて他の人に弄られても、元は自分が考えた設定ではないので恥ずかしくはないが、流石に絵は自分が描いているものなので少し恥ずかしい。
いや冬には自分の描いた絵が他の人にも見られるのだが、それは今見られている絵―――見られても構わないという覚悟を決めた絵ではないのだ。
幸いなのか、既に絵に興味を失った博麗先輩はすんなりと返してくれた。霧雨先輩も絵に少し名残惜しそうな視線を向けたが、また搔っ攫っていくことはしなかった。
「アンタたち・・・名前は?」
回収した絵を壁に寄せていた学生鞄の中に仕舞おうとして近づこうとしたとき、後ろから博麗先輩が名前を聞いてきた。足を止めた私は姉の方へ視線を向けると、姉は先を譲るように肩を竦めた。
私は彼女たち二人の方へと振り返る。
「紅フレンドル」
「紅リミーリア」
「私は・・・ってゲームのキャラのモデルにしてるぐらいだし私もコイツの名前も多分知ってるわよね」
そう言って彼女は視線で違うかどうかを尋ねてくる。
私が首肯すると彼女は「そう」と呟き―――
「―――それで、博麗神社は登場するの?」
「え?」
「意外ね、勝手にモデルに使ってるのを怒ると思っていたけれど」
思っていたよりも好意的、というかゲームのキャラのモデルになることを受け入れているような発言に私は酷く驚いてしまった。姉も私と同じ気持ちなのか、驚きで固まる私の言葉を代弁してくれる。
その言葉を聞いた博麗先輩は鼻を鳴らす。
「ただのゲームのキャラでしょ?私に似ているだけで私じゃないし、中傷でもないのに怒らないわよ。あと博麗神社の名前は宣伝になるから出していいわよ。申し訳ないと思ってるなら、それぐらいしてちょうだい」
「ちなみに私もオッケーだぜ。その代わりゲームが完成したらいち早くプレイさせてくれよな。なんなら入部してやってもいいぜ」
「やめときなさい。アンタは兼部しすぎよ。どうせ幽霊部員になるのが目に見えてるわ」
「それもそうだな。でも助っ人が必要なら呼んでくれよな」
「あ、ありがとうございます」
すんなりと許可を貰えたことに驚きつつ、頭を下げて感謝を述べる。
しかし両者とも感謝は不要なようで、彼女たちは無言で手で払うような動作をした。
「帰るわよ、理沙。これ以上は邪魔しすぎよ」
「もうちょっと見学したかったんだがなぁ」
「とっとと帰るわよ」
未だ名残惜しそうにしていた霧雨先輩だったが、博麗先輩が有無を言わさぬ雰囲気を感じ取ると観念したように両手を上げた。
そして博麗先輩は出口の前で一度こちらに一瞬だけ視線をやった後、すぐにコンピューター室を出ていった。それに続くように―――置いて行かれないように霧雨先輩が「またな~」と言ってこちらに手を振りながら急ぎ気味でコンピューター室から出ていった。
「・・・なんか嵐みたいな人たちだったね」
「この学校はそういう奴ばっかりよ。校長先生だってアレだし」
「あー」
あの校長、胡散臭いからなー。
この世界にきてあの人が胡散臭いと思われているのがよく理解できた。それぐらいには胡散臭いと思える雰囲気の人物だ。
本当に何を考えているのか―――よくわからない。
「・・・そういや、どうして弾幕メーカー(仮)みたいなものを作ったの?確かにゲームを作るときの手間は減るだろうけど、全体的な手間は増えちゃってるでしょ?よく作ろうと思ったよね」
「今は問題ないけど高三になれば受験勉強が一応あるでしょ?立ち絵までなら頑張って予定を開ければ描けなくもないけど、流石に一からのプログラム制作は無理」
姉は気恥ずかしさを誤魔化すように曖昧に笑った。
どうやら姉はもっと先のことを考えていたらしい。ならば私も姉と同じように先のことを考えて努力しなければならないだろう。
私は姉へと顔を向ける。
「・・・ありがと、お姉ちゃん。それとプログラム教えて」
そう言って、私は座っている椅子ごと姉の座っている椅子へと近づけた。
準備(ゲームプログラムを作るプログラムを作る)
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