木枯らしが吹く時期がやってきた。
赤く色づいた木の葉は既に境内に積もっている。これが全部雪に変わるのは、もうすぐだろう。
今年は異変続きの年だった。
月から侵略されて月へカチコミに行ったら、なぜか月を救う羽目になって、頭のおかしい神様と弾幕ごっこしたり。今は一応収まってはいるが、完全に解決したわけじゃない。そもそも幻想郷だけでの問題ではなかったのだ。私が経験した異変の中でも、最も大きな異変だった。
これだけでも十分なのに、もう一つの異変が起きたのだ。
異変というには物足りないかもしれないが、まあそう言っても過言ではないと私は思う。
異世界からの生物の流入。天界とか地獄とか、そういう異界ではなくて、本当の異世界。もう一つの私たちの世界のような場所から、次元を超えてやってきたのだ。
ただの生き物なら異変とは呼べないかも知れない。だが、そいつは私たちの常識では、捉えきれない存在だった。
古龍
自然の一部でもあり、自然そのものでもある超常的な存在。元の世界ではそう呼ばれ、ただ
あの世界では魔法的な文化より、科学的な文化の方が発達しているらしく、モンスターと呼ばれる強大な生物と渡り合う技術を作ってきたという。幻想郷から見ても結構優れた技術を持っているのには違いないが、古龍の正体に関しては一切が不明という。
当然、あちらで解明されてない存在を、ここで解明できるわけもない。
幻想入りしたのは、クシャルダオラという龍。鋼龍の異称の通り、鋼の外殻に身を包み、一帯を嵐に包む力を持つ、強大な龍。
最初は、幻想郷の住民全員が警戒していた。特に、異変で現れた月の探査船を、上空からの急襲一発で破壊した事は、かの龍が極めて強い力の持ち主であることを証明したことにもなった。
幻想郷全体がピリピリしている状況を変えたのは、山の仙人だった。
彼女は鋼龍の意思を聞き、攻撃の意思がなく、むしろこの地を気に入っていることが分かった。
その後、茨華扇の仲介であの龍と接触した面々は、『この龍は、今すぐ追い出すほどの危険性はない』とした。その時勝手に神社に上がられて、ちょっと気に入らなかったけど。
何はともあれ、特に大きな問題もなくこうして年の暮を感じるようになった。今年は色々あったけど、いつも通りの一年の終わりを迎えることができるだろう。
そう考えていたからだろう。
魔理沙が謎の妖怪に襲われて、怪我を負ったと聞いた時、私はひどく動揺した。
幸いにも魔理沙のけがはそこまで重くなく、すぐに話すこともできたのでひとまず安心した。
そして、魔理沙から事の顛末を聞いたのだ。
紅魔館へ本を借りに(盗みに)行こうと着いたら、館の中から獣みたいな雄たけびが聞こえて、図書館に行ったら床からその声の主が現れた。
そいつは悪魔を獣の形にしたような姿で、背には強靭な翼を持ち、頭に巨大な双角を有していたという。見たことは無かったが、あふれ出る妖気から妖怪なのは分かったらしい。
驚くべきことにその妖怪はフランを襲っていたらしく、魔理沙は紅魔館の連中と一緒にその妖怪と戦ったらしい。そいつは館の壁をぶち破って逃走し、現在は行方不明という。
紅魔館は図書館が大きく破壊され、襲撃時にパチュリーが進めていた研究はおじゃんになったらしい。かなり機嫌が悪かったようで、本を盗んだらこれはヤバいなと、魔理沙は本を盗らなかったらしい。そもそも最初から盗る事自体が間違っているのだが。
だが深刻なのは悪魔の妹の方で、見るも酷い怪我を負っていたらしい。館の主はその獣の行方を血眼で探しているらしい。
「……というわけさ」
「うーん、悪魔みたいな獣で、再生力がずば抜けて高くて、再生した棘を飛ばして攻撃するか。あいにく私はそんな妖怪知らないわね」
「そうか……霊夢なら知ってると思ったんだけどな」
日差しが暖かい神社の縁側で茶を飲みながら、私は魔理沙と話していた。
魔理沙は既にケガなど無かったような、いつも通りの感じである。魔理沙はそこまで妖怪の知識に精通しているとは言い難いから、妖怪退治の専門家に聞きに来たんだろう。ただ、知らないものは知らないので、魔理沙の疑問には答えることが出来ない。
「悪魔っぽい見た目なら、西洋の妖怪とか?だったら、紅魔館の連中の方が知ってそうだけど」
「それがあいつらも見たことないってさ。パチュリーでも知らないんだから、あいつらが知ってるはずないだろ」
そうねえ、とお茶を啜る。
私がこれだけ暢気なのは、狙われたのが妖怪である、という事実があるからだろう。人里や幻想郷自体に危害を加えかねないのなら、余りこちらから動く必要はないだろう。ただ、まがりなりにもかなりの強さを誇る吸血鬼とタメを張れる実力の持ち主ならば、警戒する必要はあるが。
「また異変かしらね……」
私がそう呟いたのと、目の前に不気味な空間へのスキマが現れた。
八雲紫はいつにもない深刻そうな表情だった。
「あんたか。何か用?」
「霊夢、あなた紅魔館の襲撃を知ってる?」
「え、ええ」
「なら、話は早いわ」
そういうと、紫は不遜にも神社の中へと入っていった。
「何してるの、こっちで詳しく話しましょ」
何してるもどうも、ここは私の家でもあるのだが。
光源の乏しい居間のちゃぶ台に座ると、紫はまくしたてるように口を開いた。
「霊夢、魔理沙が戦ったあの
「何よいきなり藪から棒に……待って、半妖?魔理沙が戦った奴が、半妖なの?」
紫はコクりと頷き、話を進める。
「あれは、五百年前に現れたネルギガンテの子孫よ」
「ええ!?そいつがそうなの!?」
「お、おいおい、何だよネルギガンテって」
「ああ、あんたにまだ言ってなかったわね。五百年前に妖怪の山を襲撃した奴よ」
なに!?と驚く魔理沙を置いて、紫は話し続ける。
「盲点だったわ…あの古龍の繁殖力は桁違いだったのに……」
「え?五百年前にはネルギガンテは一頭しかいなかったんでしょ。繁殖なんて出来るはずが……」
「
ネルギガンテは、棘を生殖に利用する。仕留めた獲物に棘を刺して、その養分を吸収し、繁殖を行う。番という存在もいらないし、性別の境界も無いのよ」
私と魔理沙は、ネルギガンテという古龍の驚くべきその生態に唖然とした。
「処理し損ねた妖怪の死体から生まれてきた可能性があるわね。放っておけば、被害が拡大しかねない」
「なあ、ネルギガンテはなんで吸血鬼を襲ったんだ?古龍とは言え、半妖だろ。同種を襲って何になるんだよ」
「分からなかったの?ネルギガンテは元々、古龍を食らう古龍。半妖になって、妖怪も積極的な捕食対象になったのよ」
「妖怪を喰らう妖怪だと……?」
幻想郷では、妖怪同士が争うことはあるにはあるが、命のやり取りをすることはない。大抵が、弾幕ごっこで済むいざこざだ。それが命を奪う〝狩り〟となると、紫も妖怪として黙っているわけにはいかないのだろう。
「正確に言えばネルギガンテは、自分を除いたほぼ全ての生物が捕食対象。当然、人間も入ってるわ」
「………………」
「良い?これを人妖問わず伝えて。人里にも知らせなさい。そして、見つけ次第討伐するように」
それだけ言って、紫は即座にスキマに消えた。
「……どう思う?」
「あいつの表情からして、質の悪い嘘ではないわ。人里に危害を加えるのなら、半妖だろうが退治するまでよ」
「だと言うと思ったぜ。私もやられっぱなしは御免だからな」
私と魔理沙はすぐに調査に乗り出した。
秋雨の暗雲が、はるか遠くからやってくるのが見えた。
はい、ネルギガンテです。
何か妖怪になっちゃってます。若干頭も良くなってますが、まあさじ加減程度ですね。あと小さい。大体アプトノスと同じくらいです。
次章からはちょっとのんびりとしていきます。あんまり戦闘ばっかりは、飽きるでしょうし、そもそも私が書くの下手くそなのでね。もうちょっと研究したいと思います。
ではまたいつか
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい