というか、4って勇と書くんですね
一
幻想郷には、妖精という種族が存在する。
自然が持つ純粋な生命力の権化のような存在であり、幽霊を除けば、幻想郷では最も数は多く、軽く散策してみれば、確実に一匹二匹は見かけるもの。
種としてはイタズラ好きで、後先考えないような行動原理である。それが祟って妖怪や人間にやられることも多くあるが、前述の通り、彼女らは自然の一部のようなもので、季節をまたげば、元通りに復活する。妖精たちはこれを、〈一回休み〉と言っている。
他の種族からすれば、弱いくせにちょっかいばっかりかけて来て、駆除しようとしてもすぐに蘇る地味に鬱陶しいものである。
さて、そんな妖精にも一部別格の強者が存在する。普通に比べて頭が回り、強さも人間程度を上回る。そういう個体は区別して、〝大妖精〟と呼ばれ、各々が自分だけの名前を持つ(例外もいるにはいる)。
まあ、それなりの実力者からすると普通の妖精とどっこいどっこいな印象で、あまり注目はされないのだが。しかし、そんなこと彼女らには関係ない。イタズラして、他の娯楽も嗜み、それで毎日が楽しければいいのだ。
博麗神社の裏手。
一面雪に覆われた花のない桜の森に、ポツンと巨木が立っていた。
冬なのに落葉していないのは、照葉樹ならではの特徴。蔦に覆われたそれは、根を下ろしてからかなりの年数が立っているのが分かる。
だが、幹の少し高いところに窓があったり、地面と同じ高さに扉があったりするのは、どう見ても人が住んでいるのでは…と思わせる。
まあ、住んでいるのは人ではないのだが。
「雪だーーーー!!そして寒い!」
扉を勢い良く開け、幹の中から飛び出してきたのはクレヨンのオレンジ色みたいな髪の妖精。陽光の妖精、サニーミルクだ。庭(?)に積もった雪の中で、ごろごろと転がり、遊んでいる。
「ちょっとサニー、扉壊す気?」
「いいじゃない、壊れたら直すだけだし」
後から二匹の妖精が出てくる。金髪の方がルナチャイルド、艶のある黒髪がスターサファイア。
彼女らはこの巨木を家にしている大妖精たちだ。三人そろって〝光の三妖精〟
何て格好つけているが、実力は並程度。大妖精が三匹集まったところで、妖精は妖精である。悲しいかな。
ただ、彼女らの能力は結構厄介なもので、博麗の巫女は結構悩まされている(主にイタズラ)。そういう意味では、大妖精らしいといえるのかもしれない。
「こんなに積もるのは久しぶりね。色々遊べそうだわ」
「サニー、今日は雪遊びより重要な予定が入ってるの覚えてる?」
ルナの言葉にキョトンとするサニー。そこにスターが、
「今日こそあの龍に会いに行くのよ」
「ああ、そうだった!」
サニーミルクはポンと手を打ち、ルナは毎度の様子に呆れている。
夏の終わり頃、外からクシャルダオラが現れた。
あの龍は博麗神社のすぐそばから来たらしく、神社のすぐ近くに住んでいる彼女らなら、霊夢や魔理沙と同じく、即座に異変に気付いていただろう。
だがちょうどその時、彼女らは夜雀の屋台に出かけていたのだ。当然その後何かおかしいとは気づけたものの、妙に妖精たちが集まる場所には、既に妖怪が異変を調査していて、なかなか行きにくかった。
こりゃダメだ、と早々に諦めて過ごしていたら、何かがやって来たということすら忘れてしまった。まあ、妖精らしいといえばらしいのだが。
そして、外界から現れた存在というのが見たことない龍であること。そしてそれが極めて高い生命力に満ち溢れているということを氷の妖精から聞いたのは、つい先日。
「そうとなれば、早く行くわよ!」
「誰のせいだと思ってるんだか」
ルナのぼやきにスターが笑い、三人は目的地へ飛んで行った。
何だこれは。空から降った氷が、地面を純白に変えている。
私の縄張りは、龍結晶のそれよりも白く塗られていた。これが夫の言っていた、雪というやつか。気温が低い時に雨が降ると、雨粒が凍ったまま地上に降るという。
溶岩煮えたぎる地に住んでいた私でも、氷そのものは見たことがある。
氷というものを初めて見たのはかなり昔、氷の鎧をまとった龍がやってきた時だった。止めどなくマグマが溢れていた龍結晶の地を、私に寒いと思わせるような気温にまで下げた力。その者の氷は、今私の周りで妖精が遊んでいるような優しい雪ではなく、あらゆる命を凍らせる、文字通り冷酷無慈悲なものだった。
若く闘争心に溢れていた私は、そいつを追い出そうと排撃を試みたが、しなやかでありながらこれ以上ない鋭さのある攻撃にやられ、悔しい思いをしながら立ち去ったのは、今も覚えている。
とはいえ、そんな出来事も既に過ぎた話。
こうして妖精と触れ合っている今は、かつての地のように常に神経を張り詰めていた頃では考えられなかっただろう。妖精の間では、雪で玉を作り、互いに投げ合うじゃれあいが流行っているらしい。
ただ、雪は雨と違って積もりやすく、私の常に動かない過ごし方だと非常に鬱陶しい。羽ばたけばすぐに落ちるのだが、いかんせん量が多く、根本的な解決策にはならない。かといって、風の能力を使ってそもそも雪を降らせないようにすると、今度は妖怪たちがうるさい。たがたが雪で巣を住みにくくしてしまうのは非常に面倒だ。
正直雪を使って遊ぶのもいいのだが、妖精が相手だと貧弱すぎて遊びにすらならん。独りで遊ぶもいいが、何だか空しくなってくるので気は進まない。
故郷では見られないものなのだ。せっかくなら、有意義に利用したい。
私が楽しめるかつ、妖怪たちに目をつけられない方法……
ああ、そうだ。
これほど多くの雪が積もっているのなら、この幻想郷にも何か変化があるはず。
常に龍結晶以外は枯れたような風貌の故郷とは違い、ここはこうして大きな変化がある。
それを観るのもいいだろう。それだけなら、妖怪たちも気にはしないだろう。
だが何の兆候もなく行ってしまうと、流石に警戒されるだろう。
ならば、華扇に聞いてみよう。あの人間が許すのなら、安心できる。
そのため私は翼を広げ、空へ浮く。風圧で、遊んでいた妖精たちの何匹がこけるが、大丈夫だろう。再生力だけは破滅の龍より高いし。
確か、ここで一番高い山の麓に住んでいると言っていたな。一番といっても、ここには目立った山は一つしかないから迷う心配はない。
妖怪たちが巣食う山へ、私は翼を羽ばたかせた。
しばらくしてから、クシャルダオラの寝床に三人の妖精が姿を現した。
「遊びに来てやったわ!……って、どこにもいないじゃない!ルナが道間違えたんじゃないの?」
「いやいや、ここであってるはずよ」
森の開けた一角の隅で言い争う二人を置いて、スターはそこで遊んでいた妖精に話を聞く。
「え、どこかに飛んで行っちゃったの?」
「「なに!?」」
ほっぺたをつねり合っていたサニーとルナが、妖精の元に集まる。
話を聞くと、彼女らは雪合戦をして遊んでいたのだが、突然クシャルダオラが、妖怪の山のほうへ飛んで行ってしまったのだという。
「うぅぅ、せっかく遊びに来たのに、これじゃ骨折り損のくたびれ儲けじゃない!」
「しかも、行き先が山って……」
「取りあえず行ってみる?」
「ちょ、スター本気!?」
「大丈夫よ。今年の冬は特段寒いから、もしかしたら妖怪たちも寒さにやられて、お酒を呑んでいるかもよ」
スターの発言に二人はしばらく黙っていたが、すぐに納得したように顔をほころばせる。
「そうか!長年過ごしてきた私たちですら、格段に寒く感じるんだから、妖怪たちが暖かくなりたいのも分かるわ!」
「いたとしても、私たちの能力で隠れ続けられるかもね。この大雪だし」
「でしょ?」
そう結論づけた三妖精たちは、意気揚々と妖怪の山へ飛んで行った。他の妖精たちが止めようとしたが、彼女らの耳には届かなかったらしい。
ちなみにまた数分後、鋼龍の寝床にチルノが現れ、クシャルダオラの行き先を聞いて、また飛び出してしまった。
果たしてどうなるのだろうか。まあ、どうにもならないだろう。
全ては、自然のみぞ知るのだから。
ほのぼの……?
ではまたいつか
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい