河童が作った薪ストーブが赤い炎を上げて、家の中を暖かくしてくれる。窓の外を見てみれば、ただでさえ真っ白で分厚い雪の大地に小雪が降り注ぎ、ため息を吐きたくなる。
私は秋 静葉。寂しさと終焉の象徴、八百万の神様の一柱だ。
妹の穣子と一緒に神力で構成……ちょっと木材の力を借りたけど、姉妹二人で作ったお世辞にも大きいとは言えないこの家屋に住んでいる。
私たちは秋の神様であり、私が紅葉、妹が豊穣を司っている。ちなみに穣子は今布団で寝ている。雪雲に隠された太陽もだいぶ上がってきた時間なのだが、この季節ならそうしたいのも分かる。
先ほどの通り、私たち姉妹は秋の象徴。そして秋が終われば、当然冬がやってくる。この時期になると、秋の神様である私たちは何もやることがなくなるのだ。まだ春や夏なら暖かいし、宴も結構開かれるので心持ちがいいのだが、冬はそれらが全て無いのだ。神様としてこう言ってしまうのはいけないのだが、正直やってやれない。
そんな季節なのに私が朝早く起きて憂鬱な雪景色を見ているのは、悲しいことにこれ以外やることがないからだ。穣子は豊穣の神様として秋はとても忙しいから、その精神的な疲れもあるのだから、起きてこないのだろう。
そう考えると自嘲の笑みが自然と零れてしまうが、まあ紅葉なんかの神様より豊穣の神様の方が民衆からの信仰は厚いのは当然よね。
こんな悲観的な性格でも私が〝存在できる〟のは、紅葉を楽しんでくれる一部の人間や、紅葉狩りで一杯やることの多い妖怪からの信仰、そしてなにより妹の存在からだろう。家族だが、どこかライバルのような彼女がいなければ、私も消滅していたのかも知れない。
しとしとと静かに山に降り注ぐ雪景色。呆れたくなるほど綺麗な光景に再びため息をつく。
だが突如として現れた巨大な黒い影が、窓の外の雪景色を覆った。
「……!??」
混乱覚めやらない私は急いでその影の正体を確認しようと窓に近づく。
影の正体は鋼。
鉄の翼を滑らかにはためかせ、辺りを見回す龍は記憶に新しい姿だった。
クシャルダオラ。
異世界からやってきたという存在。現れただけで国一つを滅ぼしうる力は、まさに生ける天災。神様の最底辺みたいな私とは正反対の強さ。山の仙人が言うに、幻想郷を気に入って定住したという。守矢の二柱がコンタクトを取ったのは聞いていたが、まさかこの目で見れるとは。
当のクシャルダオラは、飛びながら周りをきょろきょろしている。何かを探しているのか?
でも、聞いた話あの龍は自分の住処から出てくる事なんて滅多にないらしい。確かに私の知り合いにもあの龍をみたという人はかなり少なかったし、あの龍を詳しく知っている人なんていなかった。
……いや、一人だけいる。当の仙人、茨木華扇。彼女の能力なら、幻想郷一、かの龍に関して知っているといっていいだろう。
もしかして、クシャルダオラは彼女を探しに来た?確証はないが、山に来てまで探しに来るのはそうとしか思えない。
出来るだけ関わりたくはないのだが、ここに来て暴れられても困るし……
「あっ……」
迷っているうちにクシャルダオラはこの家に気付いたのか、こっちに近寄ってくる。鋼に覆われた巨体が迫る様子は目上の神様と接するのとは違う迫力を感じさせるが、ここにはあの龍が探している人はいないことを知らせないと。
私は窓を開けてクシャルダオラに自分の存在を知らせる。開け放たれた窓から雪が家の中に遠慮なしに入ってくるが、それは後回しだ。
こちらに気づいたクシャルダオラが地面に降りる。とてつもなく重いのだろう、着地の振動が家越しに響いてくる。
眼前まで迫った龍の目を気合で直視しながら、変にビビらないように話しかける。
「えと、初めまして……何しに来たの?」
そうまで言って、この龍はあくまで動物なのである、と誰かが言っていたのを思い出した。そうなら私の言葉が通じるはずがない。たまにしか見ない幻想郷の龍はみな意思疎通が出来るから、うっかり失念していた。
変わらずクシャルダオラはこちらの様子をまじまじと見ている。ここまで来たら後には戻れないと思い、言葉を続ける。
「ええっと、あの仙人に会いたいのよね?だったら、神社に行ってみるといいわ。山じゃないほうの」
しかし、残念かな。ここまで言ってもあの龍は不思議そうにこちらを見つめ続けるだけで、言いたいことは伝わってなかったようだ。
窓を閉めて、他を当たってもらうか?いやここまでやって急に閉めたら怒り出すかもしれない。そうなったらもう取り返しがつかなくなる。かといってこのまま意思疎通を続けても向こうに通じるとは思えない。
どうしようかと途方に暮れる私と龍の元に、またしても黒い影がやってきた。
「あややや、これはこれは……」
特徴的な口癖をつきながら現れたのは天狗の射命丸。新聞を売りに行った帰りか知らないが、今の状況には誰でもいい。
「静葉さんじゃないですか。どうしてこの龍と?」
「ブンヤの……よく分からないけど、家の目の前に来て何か探してそうだったから声をかけたの。でも、上手く意思疎通出来なくて」
「まあ、この龍は幻想郷の龍とは違って他生物とコミュニケーション出来ませんし、彼女と話したいのなら山の仙人殿か、地底のさとり妖怪ぐらいでしょうね」
「そう、そうよ!この龍、多分仙人を探しに来たんだと思うわ。そうじゃないと、この山にまで来ないと思うし」
確かに……と腕を組みながら考え込む射命丸。龍の方は射命丸を初めて見るのか、彼女を見ている。理由ははっきりと言えないが、私は胸中でほっと息を吐いた。
「あの仙人なら、たぶん博麗神社にいると思いますよ。そちらに行ったらどうです?」
「……でもこの龍、博麗神社の場所を知ってるのかしら」
二人してクシャルダオラを見るが、どこか暢気そうな雰囲気を感じるに、恐らく博麗神社の場所を知らないのだろう。
「……わかりました。私がこの龍を案内しますよ」
「え、本当?大丈夫なの」
「私もこの龍には少々興味がありますからね。それとも、あなたが道案内しますか?」
「い、いやいや結構よ。遠慮しておくわ」
天狗の視線が少々心に来るが、仕方ない。私のような神様では、未知の龍を道案内するなんて荷が重いにもほどがある。
「それでは、鋼龍でしたっけ?私に付いて来てください」
手招きをする射命丸を、クシャルダオラは少々訝しむように見ていたが、射命丸が僅かずつ遠ざかっていくのに追随し、やがて空を飛んで行った。
冬の季節はやっぱり嫌いだ。寝ぼけている妹が起きてくるのを見ながら、私はつくづくそう思った。
ちなみに秋姉妹の住居から少し離れたところでは
「ちょっと!目当てのドラゴンが天狗に付いて行っちゃったじゃない!」
「これは予想してなかったわ。どうしようかしら」
「……日を改めて出直す?」
「いや、ここまで来て退くは妖精にあらず!尾行して行くわよ!」
「え~~やめたほうが良いわよ。天狗がいるのよ?」
「それがなんぼのもんじゃぁ!これ以上寒くなって凍死する前にさっさと行くわよ!」
三妖精たちが付いていくか否かで騒いでいた。なお、サニーミルクとルナチャイルドの能力で姿と音は消しているため、秋姉妹にはばれていない。
ついでに付いていったチルノはというと…
「こらー!待てー!」
最近幻想入りしたツルを追っかけまわしていた。自分がなぜここまで来たのかはもう忘れている様子である。
相変わらずの妖精たち。
ではまたいつか
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい