鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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霜月の寒々しい空を、いつものように飛んでいく。私としてはごく普通の日常のはずなのだが、後ろから追随する重厚な気配が、心落ち着かないものにする。

 

 

 

烏天狗 射命丸文は後ろに鋼龍 クシャルダオラを連れて、神社へと向かっていた。

もしこれを遠くから見ているものがいたら、あの天狗は鋼龍に追いかけられてるのか、と思うことだろう。別にどこの馬の骨が見ていても構わないのだが、あの妄想新聞ヤローに見られるのは誠に遺憾だ。

 

それにこれは私の個人的な新聞のネタ探しではなく、天狗としての調査である。

 

〈かの龍に関する更に詳しい情報を得よ〉、との上司からの命令である。あくまで可能な限りでのことなので楽な仕事のはずなのだが、私自身、というかどの天狗でもこの龍に関わりたくはないだろう。

理由なんて分かりきっている。無論こいつが強いこともあるのだが、風の能力が最たる理由だろう。当たり前だが天狗は風を操る。それは扇を用いれば大木を根こそぎ倒せるほどの威力であり、人間が天狗を恐れる最たる理由にもなっている。

 

だがこの龍が起こす風は、少なくとも天狗が操る風の領域を遥かに超えているだろう。もちろん実際に見た者は幻想郷にはいないため、魔法使いの持ってきた本の記述を見る限りの未確定情報だ。我々が言えることではないが、かなり現実離れした記述には笑い話か何かか?と思ってしまった。が、同時にあの龍ならありうるとも思ったのだ。

 

 

 

妖怪は人の恐れを糧に生きるもの。

もしこの龍の存在が人間たちに広まり、その力の強大さが知らしめられれば、天狗の立場が危うくなる。消滅まではいかないかもしれないが、確実に力は弱くなってしまうだろう。だから天狗はこの龍を非常に危険視しているのだ。

それもあってか、現在この龍の存在は人里の人間たちには伝えられていない。混乱を招くためだの色々言われているが、結局は妖怪たちの力を維持するのが真の理由だ。間違って信仰なんかされたら、それこそ幻想郷の妖怪が絶滅しかねない。

 

 

 

 

人里を避け、目の前に古臭い神社が見えた。

 

「見えましたよ」

 

社交辞令みたいな言葉で、私は平静を保とうとする。私の声に反応したのか知らないが、鋼龍は首をもたげ目の前の神社を見据えた。

 

 

雪かきされてない境内に降り立つ。外に人影は見えず、頭に悪い状況が閃いてしまう。どうかここにいてほしい…と願っていると、後ろで雪が派手に舞った。

 

「わぷっ」

 

少し高い場所から着地したのだろうか、ドシーンという着地音が神社に響く。

数秒経って、神社からドタバタと足音が聞こえてくる。どうやら少なくとも、龍との非常に気まずい時間を送る羽目にはならなさそうだ。

 

「なんなのよ、この寒い時期に……って!」

 

「ブンヤの奴に……クシャルダオラ!?」

 

最初に現れたのは博麗の巫女と魔法使い。少し遅れて、後ろからようやく目的の人物が現れる。

 

「ああ、やっぱりここにいた」

 

「ちょっとあなた、なんで彼女をここに連れてきたの?」

 

彼女、なるほどこのクシャルダオラは雌だったのか。後で上司にでも伝えておこう。

 

「あややや、私が連れてきたわけではないのですよ」

 

「じゃあ、何でここに連れてきたのよ。理由のいかんによっては……」

 

「いやいや!そんな腹積もりありませんって、霊夢さん!」

 

そこで私はなぜ鋼龍を博麗神社に連れてきたのかを、こればっかりは隠し通さず話した。

 

 

「…………それでわざわざ山にまで来るのは、あなたを探していたからではと思いまして。山で待たせて騒ぎになるのも嫌ですので、華扇さんならここにいるだろうと思い、連れてきた次第ですよ」

 

「あらそうだったの。それはどうも」

 

「どうもじゃないわよ!家主のこっちは迷惑かかってんのよ」

 

「いいじゃないか、どうせ来なくてもぐうたらしてただろ」

 

魔理沙の小言に霊夢はキッと睨むが、当の本人はどこ吹く風と言わんばかりである。

 

「そう……え?何?」

 

華扇はクシャルダオラがなぜここに来たのかを聞いている。

 

もし……万が一この仙人が妖怪に対して本格的に敵対したら、この龍もそれに味方するのだろうか。完全に私の妄想であるが、だが可能性はある。無論それを妖怪の賢者は黙っていないだろう。だとすれば、あのスキマ妖怪は何を以てこの龍を幻想郷に招いたのか。自分たちの側に近づけるため?だったら無理やり式にでもしてしまえばいいはず。なぜ、わざわざ異世界からそのままここへ送り込んだ?

 

答えの出ない問いを繰り返していると、華扇は話を終えたらしく、我々に訳を説明した。

 

 

 

「暇になったからここを飛んで回りたいって、そんな理由……」

 

華扇の口から鋼龍の謎の行動の理由を聞いた霊夢は、頭を抱えるように口を開いた。

 

「この子も生き物だし、人間程ではないけれど頭はとてもいいからね。そう思うのも自然なんだけど」

 

「ただ、こいつが自由に飛び回れるかというと……」

 

 

クシャルダオラはここに来てまだ日が浅い。その強大な力から警戒する者は、多くいる。

それに彼女は神様とは違い、生き物。何をしでかすか分からないという不確実な懸念もあるのだ。

 

それを分かってだろう、三人は頭を抱えてしまう。悩みぬいた結論が出たのか、華扇は鋼龍に体を向けた。

 

「……ごめんね。まだあなたを信用していない者も多くいるの。観光はまた今度にしてくれるかしら?」

 

そう言われると、クシャルダオラは口を僅かに曲げた。見てくれほぼ変化がないが、やはりそれが不満なのだろう。

 

「その代わりといってはなんだけど、私の家に来る?あそこなら、誰もとやかく言わないわ」

 

なるほどそれがあったか。と魔理沙と霊夢は、揃って頷いた。茨木華扇に限らず、仙人は自分たちの哲学で開くことの出来る仙界を持っている。自分の思うとおりに気候などを変えることが出来るし、侵入者が入ることもない。

クシャルダオラもそれに賛成したのか、首を縦に振った。その動作も、華扇が教えたのだろうか。

 

「それじゃあ、いらっしゃい」

 

華扇はあえて空を飛ばず、徒歩で向かっていった。

 

 

 

「はあ、何はともあれ厄介ごとにならなくて良かったわ」

 

「むう、もっと何か面白いことが起きると思ったんですけど」

 

「いや何か起きても困るだろ」

 

残された三人がリラックスしてそう呟く。

 

その後、文は新聞の編集に帰っていき、魔理沙も魔法の研究のために帰っていった。

霊夢も神社に入り、暖かいお茶を一飲みして息を吐いた。

 

 

 

 

 

「はあ…妖怪の山にまで近寄って、またどっか行ったと思ったら、まさか神社に来るなんて……」

 

「果報は寝て待てって言うのは、ほんとだったのね……」

 

「……どうする?また追う?」

 

「いや……もう帰ろ」

 

そうね、とルナとスターが返し、光の三妖精は神社の裏手の家に帰っていった。

 

 

骨折り損のくたびれ儲けとはこのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだ、ここを十分に回れないのか…』

 

独り言を呟くクシャルダオラに、華扇は笑みを浮かべて言う。

 

「そうね、こればっかりは複雑だから私一人の力でも厳しいし……

でも、私に相談しに来てくれたのはとても良いことよ。出来ることなら何でも協力するから、遠慮なく言ってね」

 

『そうか、〝感謝〟というやつだな』

 

鋼龍は笑い―――傍から見ると牙を剥いているようでかなり怖い―――、華扇も笑みを深める。

 

『ところで、お前の巣はどこにあるのだ?山の麓に来たが、別の奴の巣しか見かけなかったぞ』

 

「ああ、私の家はちょっと特殊だから、道順を憶えていないと絶対に辿り着けないの」

 

『そうなのか、敵に襲われなさそうで羨ましいな』

 

「いやいや、私たち仙人に天敵はいるのよ」

 

クシャルダオラは疑問に思い、華扇に問いかける。

 

『それは、どんな奴なのだ?』

 

「うーん、〝死神〟って言うの。輪廻……分かりやすく言うと、寿命を超えてまで生きようとする存在を狩りにくるようなものよ」

 

『そうか、随分恐ろしそうな奴らだな』

 

「まあ、私はそんな奴らに殺されたりはしないけどね?」

 

互いに笑いあいながら、歩いていく仙人と古龍はどちらも楽しそうだった。




やばいRISEたのしすぎる
というわけでちょっと投稿頻度下がるかもです。

ではまたいつか

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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