鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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始まりとは、なにもひとつだけなのか


(RISEのネタバレあります)


泡沫の郷、百竜が踏みならさん


幻想郷には多くの妖怪が住んでいる。

鬼、天狗、河童などの外界でも良く知られているというものから、種族不明の妖怪まで、その数は数えられないほどである。昔はもっと多かったのだが、科学の発展により多くの魑魅魍魎が消滅し、そして幻想郷へと居を移した。

 

そして、特徴の違う妖怪たちがひとところに集まれば何が起きるか。

 

 

 

まあはっきり言うと、諍い。

大抵の妖怪と言うのは自尊心が強い。人間の上に立つという自負があってこその妖怪なのだから、当然といえば当然である。しかしそのプライドは、時に面倒な争いを起こすことになる。

ただ人間が襲われたのならまだいい。問題は妖怪同士の争い、もしくは神と妖怪など。双方人間よりも遥かに強く、周囲への影響力も高いため人間と妖怪のそれよりも、もっと質の悪いものになる。

悪化すると戦争レベルにまでも発展し、余りにもやりすぎてしまうようなことも往々にしてある。人間同士の戦争ですらそれが顕著なのだ。個々の力がより強い妖怪など、想像したくも無い。過去に西洋の妖怪が幻想郷に侵攻してきた事件も、その一例と言えるだろう。

 

だからこそ幻想郷にはスペルカードルールが制定され、どうしても発生を未然に防ぐ事が極めて難しい問題やそれらに雌雄をつける争いを、可能な限り穏便に済ませようとしている。幸い、ルールの一つに派手さや美しさなどが散りばめられている決闘は、自尊心のお高い妖怪どもの気性にはあっていたらしく、現在では人間の里を除いてほぼ取り入れられている。

 

 

しかしそこまで対策をしたとしても、少し血生臭い問題や不穏な事件は起きる。

 

 

 

 

 

「地鳴り?」

 

「ああそうだ、このところ里山で地鳴りが頻発しているらしい」

 

いつものように神社で話している霊夢と魔理沙だが、魔理沙は里山で起きている怪現象について霊夢に知らせに来たらしい。

 

人里にはそこそこな規模の人間が生活している。そしてそれらの人間の生活を支えているのが、里の近くにある里山だ。妖怪の山に比べたらなだらかな丘みたいなものだが、土壌は良く、立地もかなり良いため、里の人々にとって無くてはならない存在である。

 

「農家の話によると、農作業をしているときに、地面が揺れているのを感じたらしい。最初は気のせいかと思ってたが、他の仕事仲間も同じ揺れを感じたってさ」

 

「そうなの…他に何かあった?」

 

「ああ、山の奥にまで行っている猟師なんだが、昨日狩場の目印にしていたはずはずの大樹が折れていたらしい。クマが壊せるものでもないし、これはおかしいとその日はすぐに引き返したんだとさ」

 

里山には野良妖怪の侵入を防ぐための結界が張ってある。里自体に掛けられている結界と比べるとその効果は低いが、野良妖怪の侵入を防ぐためには十分すぎる。

それに妖怪たちは人間を食うことが主義。人の作った作物なんて口にはしないだろうし、そもそも作物に被害を出せば人の数が減ってしまい、彼らの腹も満たせなくなる。

そう思っていた霊夢は、これまで里山にはあまり関心を抱いていなかった。

 

「……妖怪の線は薄いかなあ」

 

「そうか?そんな奇妙な事件起こすやつ、私は妖怪しか思い浮かばないんだが」

 

「妖怪の中にも果物や米を食べる妖怪はいるけど、あくまでそれは自己の存在の安定化のため。そうやって力をつけていって、最終的に人を襲うのよ」

 

「おう……」

 

「それに地鳴りを起こすなんて、それこそわけが分からないわ。地鳴りを起こせるほど力があるなら、人を襲うはず。それなのに……」

 

妖精のイタズラにしては規模が大きいし、何より凝りすぎている。妖怪として見てみても、行動の真意が全く分からない。

 

「もしかして……」

 

魔理沙の呟きに、どうしたのと言って続きを促す霊夢。

 

「まさかまたあっちからモンスターが来たんじゃないか?」

 

モンスター

現在幻想郷を気にいって居座った古龍の世界。そこに住まう強大な存在たちの総称。

霊夢は地鳴りの犯人がそれらの中の種類かもしれないと思い、しかし途中で首を横に振った。

 

「それこそないわ。紫から聞いたけど、あっちのモンスターが結界を超えて来れるはずはないって」

 

「どうしてだ?」

 

「モンスターは妖怪とは違って、精神的なものに依拠しない。つまり人から忘れられることは無いのよ。人間の常識を隔てる結界を、なまじあちらの世界の住人が当たり前と思っている存在は、たとえ異世界であっても例外じゃない。古龍を除いてだけど」

 

「じゃあそれだ。古龍だよ。クシャルダオラみたいな奴なら、ここに来れるんだろ?」

 

「だとしたら、被害はもっと大きなものになるはずじゃない?少なくとも、里山だけの影響じゃ収まらなくないかしら」

 

確かに……と魔理沙は腕を組んで悩み始め、再び地鳴りの犯人捜しは振り出しに戻ってしまった。

 

「……考えてても仕方ないし、里山を調べてみましょ」

 

「そうだな、それがいい」

 

 

 

 

 

 

 

里の農家と猟師にもう一度詳しく話を聞き、私たちは畑へやってきた。

青々とした稲が一面を埋め尽くし、これから来る夏へ向けて成長の準備を始めている。

 

聞いた話、あれから何度か地震は起きているらしく、農家たちの間では不安が拡がっているという。だから私たちも原因が何かないか集中して探していたのだが…

 

「魔理沙ー、何かあった?」

 

「いや、なにも」

 

目ぼしいものは見つからず、妖気の反応もない。ゲンゴロウやミズカマキリなどが見られるだけで、特に動物たちの様子も変わりない。

 

「うーん、なんか妙ね。一応お札は貼っておきましょうか」

 

「じゃあ次は山の奥だな」

 

 

 

ブナや杉が生い茂る里山の森。少しずつ蒸し暑くなってきたこの時期には、森の空気がより涼しく感じられる。今はそれをじっくりと味わえなさそうだけれど。

 

猟師曰く、その日の森は行く先々で泥が飛散していたらしく、イノシシが泥浴びした量にしては多かったという。本人もその道三十年のベテランであるため、その異変にすぐ気づいたらしい。すぐに引き返してくれたのは良い判断だ。

 

そうして森を歩いて十数分、私たちは大樹のもとへ到着した。

 

猟師の話通り、直径数メートルはあったであろう巨木が、今は根元を残して折られていた。無理やり力を入れて折ったかのような跡は、人間の仕業ではないことを明確に示していた。

 

「ふむ、もう乾いているけど、泥が多いな」

 

魔理沙の言う通り、折れた大樹と根元周辺には、黒いシミのようなものが残されていた。それも大量に。

 

「泥田坊かしらね」

 

「それって、あれか。田を返せーっていう妖怪だろ?」

 

「うん、といっても私も実際に見たことは無いんだけどね」

 

とりあえず怪しい妖怪の目星はついたので、私たちはそいつの住処である泥沼を探そうとした。人の田んぼにはいないから、大方この里山の廃棄された田んぼに住み着いているだろう。

 

そう思って一歩を踏み出そうとしたとき、

 

 

 

大地が揺れた。

 

「きゃっ!?」

 

「何だ何だ!?」

 

思わず手をついてしまうほどの大きな揺れ。木々が大きく梢を揺らし、鳥たちがその場から飛び立っていく。

だが揺れは十秒も経たずに小さくなり、そして元の森の静寂が戻った。

 

「……今のは」

 

「またあの不良天人かしら…はあ、面倒なことを」

 

そう悪態を吐いたところで、しかしまた、揺れ始める。

 

「またかよ!」

 

しかし先ほどと比べてそこまで揺れていない、振動は感じるが立っていられないほどではなく、大したことでもない。

 

 

 

目前に突如として泥の壁が迫ってくるまでは

 

「「……っ!?」」

 

驚きながらも私と魔理沙は浮遊で後退し、迫る泥壁を回避した。泥壁は波となって地面の草木を飲みこんでいく。絡めとられていれば、なすすべなく溺れていただろう。

 

すっかり泥の海となった地面から、そいつはゆったりと這い出てきた。

 

 

大きい。縦に長いナマズのようなそいつは、優に三十メートルは超えていそうな巨体である。だがナマズと違って、前足には鋭い鉤爪がついており、体中を鈍色の甲殻が覆っている。

そして最も目を引くのは、尻尾。エビの尻尾のようであるが、大きさは先ほどの大樹の切り株と同じ。

 

「なんだ!?このナマズ!」

 

「知らないわよ!でも、倒せないといけないわね」

 

私はお祓い棒を、魔理沙はミニ八卦炉を取り出し、目の前の妖怪もどきへとそれらを向ける。

 

 

巨大ナマズは宙に浮く私たちへ尻尾を向けて、戦闘態勢へ入る。

 

 

 




というわけでオロミドロです。この子強くないですか……?

ではまたいつか

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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