鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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ああ、私の縄張りが壊される。

 

泥沼は地盤ごと崩れ、私も死にかけた。余りにも巨大な影が、縄張りだけでなくその周辺すら覆い、跡形もなく消し去った。

 

 

いやだ。死にたくない。逃げて、逃げて、逃げまくった。妙な感じも無理やり無視して、とにかくあの〝龍〟から離れた。

 

 

 

でも、あいつはまだ追ってくる。

 

見たことない生き物ばかりの地に逃げても、まだ私を殺そうとしてくる。なぜ。私は奴の癇癪に触るようなことをしたか?

 

ならばまた逃げねばならない。戦うなんて以ての外だ。

 

 

 

だから、私は常に宙に浮く小さな外敵を泥に沈め殺してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大ナマズは尻尾をこちらへ叩きつける。私たちはそれぞれ左右に逃れてそれを避ける。尻尾に付着した泥がそこらへ飛び散る。

 

先制攻撃した相手を見過ごすほど、私も素人ではない。お札を構えてそいつへ投げつける。

しかし水分に富んだ泥が札の勢いを急速に弱らせ、湿っていく。

 

「これでも食らえ!」

 

魔理沙が星形弾を撃ち、ナマズもどきの胴へ走る。炎をまとった弾幕はナマズに一定の効果を示す。

 

巨大ナマズはこちらを本格的に敵視したのか、より眼光を強める。そして地面に潜り込み、半身を出した状態で地中から尻尾を思い切り叩きつける!

 

息を吸い、横へと再び回避。札では効果が薄いので、今度は針を頭部へ投げる。だがナマズもどきは長い首を使ってそれを回避し、今度はあしらうように尻尾を振る。

 

そいつにとっては小技だろうが、巨大な尻尾の一撃は人間にとってはオーバーキルも甚だしい。

多少の防御用結界を貼ったうえで横へ移動。尻尾が結界に当たり、結界が障子のように打ち破られる。

 

「くっ……!」

 

 

流れが悪いと悟り、そいつの攻撃が届かないであろう上へ退避。魔理沙も牽制用の魔法でナマズもどきの動きを止める。

 

「霊夢、大丈夫か!?」

 

「私は平気。それより、」

 

巨大ナマズは自動攻撃型の魔法陣に対して肉弾攻撃を当てている。魔法弾幕も食らってはいるのだが、予想以上に硬く、効果は薄い。

 

「あれ、火の魔法じゃないの!?」

 

「無茶言うなよ。アリスじゃないんだから、私は自動攻撃できる手段っていったらこれが限度だぜ」

 

「そう、なら魔理沙は火の魔法であいつに攻撃して。私の巫術だと効果が薄い。先陣をやるから、魔理沙はその後に攻撃して」

 

「ああ、飛びっきりに威力の高いのでいくぜ!」

 

そして私はナマズもどきへ急降下。魔法陣はすでに消え、奴の眼中には私が入っている。空中の敵に対しても、ナマズもどきの攻撃手段は変わらず尻尾が主軸のようだ。体をひねって尻尾を回し、こちらへ突くように仕掛けてくる。

 

だが遅い。あれより速い弾幕なら何度も経験してる。おまけに、回避先も分かりやすい。

私は突かれる尻尾の下へ潜り込み、頭部に向けて針を投げる。あまり有効ではないが、多少のダメージにはなるはずだ。

 

突いた姿勢のせいで、先ほどのように回避できず、頭部に針が飛来する。針は刺さりもしなかったが、奴の注意は引けたようだ。体をこちらへ向けて私を狙う。

 

「食らえ!〝ノンディレクショナルレーザー〟!」

 

弾幕ごっこでもよく使う魔理沙の魔法。しかしそれのように手加減した威力ではなく、木々を焼く熱量を持った本気の攻撃魔法である。

 

ナマズはそれをもろに食らってしまい、木に思いっきり突っ込む。

 

「よし!」

 

「やったか!?」

 

 

だが、巨大ナマズは生きている。無傷ではなく、それどころか結構な火傷を負っている。それでも、ナマズはこちらを見据え咆哮した。

思わず周囲の木が揺れるほどの大音量に、私と魔理沙は耳を塞がざるをえない。

 

ナマズもどきはそれを見て、魔理沙へ体をくねらせた突進をかます。魔理沙は急いで横に避けるが、突進と共に飛び散る黄金色の泥に当たる。

 

「いたっ!!?」

 

魔理沙の反応は明らかに泥に当たったようなもではなかった。見ると、泥を振り払った腕は赤く溶けたかのようなひどい傷を負っていた。

 

「魔理沙!!」

 

友人の傷に注意を引かれたのを、巨大ナマズは好機と見たか、私に向けて鉤爪を振り上げる。私はそれをすんでで避け、側頭部へ思いっきり蹴りを入れる。

 

霊力も込めたかなり強い蹴りのはずだが、怪物は煩わしそうに頭を振り、私を跳ね除け、直後、地面に沈んだ。

 

「え!?」

 

おかしい。ここは泥沼ではなく立派な地面だ。そこを水に潜るようにするなんて、あの巨体ではなおさら出来ないはず。

いや、魔理沙の傷跡、あれは恐らく酸性の液体による膿。だとすれば……

 

 

「っ!!?」

 

突如として巨大ナマズは地面からこちらに飛びあがり、私へ突進してくる。思考を巡らせていた私はそれを避けきれず、茶色い泥の塊が体を打つ。

 

妖怪の打撃とほぼ変わらない威力に、私は地面へ叩きつけられる。幸いにも焼けるような痛みは無い。だが地上に巨大ナマズの姿はなかった。どこに行ったと考える私に、上から声がした。

 

「下だ、霊夢!早く上がってこい!」

 

魔理沙の声に私は素早く浮遊する。

 

刹那、私がいた地面からナマズが勢いよく飛び出してきた。私はそいつの攻撃に合わせて防御結界を貼ったが、小技の尻尾振りとはまるで攻撃力の違う急襲に、結界は成すすべなく破れ、私は大きく吹っ飛ばされる。

 

 

視界が大きく揺らぎ、状況把握などままならなかったが、湧いて出てきたかのような勘が、私の足を木の幹へ動かした。

私は杉の木を踏んで着地したが、ダメージは大きく、すぐにふらついて浮遊できなくなってしまう。

 

「霊夢!」

 

私の腕が掴まれ、私は変な体勢で宙づりになる。

 

「……まり…さ」

 

「しゃべるな。今は退こう!」

 

魔理沙は巨大ナマズをにらみつけ、撤退のチャンスを窺っているようだ。だが霞む視界にはあの巨大ナマズの殺意がひしひしと感じられた。どう見ても、逃走を見逃してくれるようではない。

 

私の体は悔しいことに、先の一撃ですでに立てるかどうかも怪しい状態だった。こうは思いたくないが、この時ばかりは妖怪の頑丈な肉体が羨ましい。

魔理沙も腕に傷を負い、私を掴みながら戦って時間を稼ぐのは厳しいだろう。あの泥ナマズに蹂躙されてしまうのは、想像に難くない。

 

魔理沙だけでも逃げて、そう口にしようとした、その時

 

 

 

 

 

 

 

再び大地が揺れた。

 

宙にいる私たちには、まさしく地が揺れているように見えた。枝は折れ地面に落ちて、落ち葉の地面をより激しく叩く。

泥ナマズはその振動に、ある一点を見つめたまま、いや怯えていたというのが正しいだろう。

 

泥ナマズは先ほどの殺気がまるで消え失せたように、脱兎のごとくその場から立ち去って行った。

魔理沙は逃げて行ったのを確認すると、それまで泥ナマズが凝視していた方向へ向いた。

 

 

「……なんだよ…………あれ……」

 

 

魔理沙の視線の先にあったのは、〝山〟だった。

 

いや違う。山にしては形が尖りすぎている。頂点あたりから生えているのは、角のようで、力なく動いているのは咢のようで……

 

 

 

その山はまるで……まるで角の生えた龍の頭部(・・・・・・・・・)だった。

 

巨竜は大地を軋ませながら、地面へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫様!」

 

「騒がないで藍。状況は把握してる」

 

主従の間にしばしの沈黙が起こり、藍が口を開く。

 

「……これは、一体どういうことでしょうか?」

 

「その問いはまだ先に取っておきなさい。ただ分かるのは……」

 

紫は扇子を閉じて、剣呑な目つきでスキマの向こうの幻想郷を見た。

 

 

 

 

 

「あの世界からとうとう()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

それも、()()()()




霊夢はかなり頑張りました。
危険度の高い未知のモンスター相手に、相性の悪い霊力を使った方では。


ではまたいつか

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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