『ゴガァァァァ……zzz……』
森のはずれに近い場所で、桃毛の牙獣がいびきを立てて眠っていた。いつぞやに幻想郷へ来たババコンガである。
一週間前、彼は自分の群れを率いて幻想郷にやってきた。
魔法の森の野良妖怪たちはコンガ達を排撃しようと試み、彼らの群れに襲い掛かった。
だがコンガの群れは妖怪たちを退け、そこらへんの野良妖怪たちはすっかり委縮してしまった。その結果、ババコンガ達は実質魔法の森の生態系の上位者となった。
この様子は魔法の森に住む者にも知らされたのだが、彼女らは動こうとしなかった。いや、動きたくなかったというのが真実だ。
コンガというモンスターは温暖湿潤な環境を好む。だからジメジメした魔法の森に縄張りを作った。ここまではいい。
問題は彼らの戦闘スタイル。〝弾幕ごっこ〟という
その結果、彼らは平和に暮らせていた。何より見たことないキノコが多く生える魔法の森は、コンガ達の食欲を大いに促進した。満足した生活を送る彼らは特に人を襲ったりするわけでもなく、この地に溶け込んでいた。
そういうわけで、このババコンガは群れを離れて暢気に惰眠を貪っているのだ。
しかし、過酷な野生で培った五感は研ぎ澄まされているらしく
ドォォォォン……
という派手な爆発音に、ババコンガは飛び起きた。驚きのあまり尻から茶色の気体が出る。汚い。
何事だ、とババコンガは手近な木に登り、辺りを見回した。
すると森のはずれで、派手な光が飛び交っているのが見える。その光と対峙するのは、泥色のモンスター。
昼寝を邪魔されたからか、はたまた未知のモンスターと鮮やかな光に好奇心をくすぐられたのか。
魔法の森の珍獣はその場へ駆けていった。
「よし、成功だ!」
巨大な爆発に呑まれショック状態にあるオロミドロを見て、私はこぶしを握った。
先ほどアリスとパチュリーがオロミドロの注意を引いている時に、私はバックから
その正体は前に私が拾った大タルだ。あちらのハンターは狩猟の際にこのどでかいタルにありったけの爆薬を詰めて、モンスターへの有効打にするらしい。
無論、あっちのものをそのまま調合したわけでもない。そもそも魔法の森では、爆薬の材料となるニトロダケと火薬草を満足に入手できない。
だから、
さっきの小タル爆弾のように、衝撃に反応する爆破型の魔法陣をタルに書いておいたのだ。霧雨式大タル爆弾、と言っておこうか。
外から大きな衝撃が加われば、中の爆薬が炸裂して、連鎖的にどでかい爆発が起こる、というわけだ。
昔、
先ほどの小タルの爆発が霞んで見えるくらいの大爆発に、オロミドロといえど相当堪えたようだ。胴体の甲殻は剥げ、尻尾を除いたほぼ全身に手ひどい傷を負っている。パチュリーとアリスの集中砲火も効いていたのだろう。
だが、このモンスターはそう簡単にくたばってくれない。身をくねらせながら周囲に泥の波を巻き起こす。
私たちはすぐに後退し、泥の波を回避する。オロミドロの尻尾には、巨大な泥の球が握られていた。
オロミドロはその尻尾を思い切り叩きつけてくる。衝撃で泥沼の泥が飛び散り、尾の一撃を回避した私たちに降りかかってくる。
「きゃっ!」
アリスが大きめの泥塊にあたり、バランスを崩しかける。
「アリス、下に落ちるな!」
私は叫び、アリスは何とか態勢を立て直す。
今、私たちがこうしてオロミドロ相手に優位に立ち回れているのは、あのモンスターが地上戦に特化した種だからだ。前に霊夢が地に降ろされた時も、あっという間にやられてしまった。
制空権を維持して回避に努める。そうでなければこうした小技が死につながる。妖怪だったら耐えられるだろうが、魔法使いは肉体的にはあまり強くないし、そもそも私は人間だ。爪に引っかかれただけで死ぬかもしれない。
「魔理沙、来る!」
パチュリーの声に前を向くと、オロミドロが尻尾を高く掲げ私に向かって振りおろそうとしていた。
とっさに回避するが、叩きつけた尾の振りまわしによる追撃が、私の体を掠った。
それだけで私の体は大きく吹き飛ばされ、泥沼に顔から突っ込んだ。
「ゲホッ!」
「魔理沙!早く!」
口の中に入った泥を吐き出し、飛行しようとした私の周りに影がかかった。
上を見ると、オロミドロの巨体が宙に浮き、尾につけた泥玉が私に迫っていた。
文字通り覆いかぶさる死の一撃に、私は身動きが取れなかった。見る見るうちに泥玉が私を砕こうと迫り・・・
オロミドロの顔面に、茶色い何かがぶつかった。
空中でオロミドロがバランスを崩し、私は鼻をつく何かを無視して飛びあがった。私のいた泥地にオロミドロが勢いよく突っ込み、もがいている。
「……うわ、最悪……」
アリスが視線を向けた先には、桃毛の猿がいた。
カバのような口に、長い爪。整えられた極彩色のトサカ。
ババコンガ。あちらの世界のモンスターで、別名は桃毛獣。
珍獣は後ろ足で立ち上がり、両手を大きく広げて威嚇した。奴の尻から茶色の気体が噴き出る。
そして辺りに漂う、強烈な悪臭。割と距離は離れているのに、目が染みそうなくらい臭い。この激臭を初めて嗅ぐパチュリーには、それは地獄だろう。
「む、むきゅう……」
「ちょ、しっかりしてパチュリー!おならなんかで墜落したら魔法使いの恥よ!」
人形に鼻を押さえさせながら、パチュリーを抱き抱えるアリス。私はババコンガに対処できるよう警戒する。が、
泥地にオロミドロの低い咆哮が響く。ババコンガはそれに対し、また威嚇を行う。
オロミドロもこの激臭は相当に嫌悪しているのか、標的をババコンガに変え尻尾を叩きつける。着地の失敗で泥玉は既に砕けているが、怒り心頭の攻撃は相当な威力だ。
ババコンガはそれを横に飛んで回避し、隙の生じたオロミドロへ向かって突進する。
長い爪を活かした引っかきで、傷だらけの胴体へ攻撃する。よく見ると、私たちがつけた傷に沿って攻撃を行っている。中々賢いようだ。自分よりはるかに大きい敵に攻撃を仕掛けたのは、すでに弱っていると気づいたからか。
無論、オロミドロはそれを許さない。ババコンガのそれより頑強な爪を横薙ぎ、接近したババコンガを吹き飛ばそうとする。
しかしババコンガはそれを飛んで回避し、そしてオロミドロの頭に着地した。重そうに首をもたげるオロミドロに、ババコンガは更なる追撃を加える。
オロミドロの頭に座ったようにしたまま、屁をかましたのだ。
「うわっ!最低だあいつ!」
再度迫る悪臭。襟を口に掲げ、私は悪臭を回避しようとする。離れている私たちでも相当なのだ、直撃したオロミドロにとっては溜まったものではないだろう。敵であるとはいえ、同情せざるを得ない。
してやったりと言わんばかりのババコンガを、オロミドロの尻尾が捕らえた。
オロミドロはババコンガを握ったまま泥沼に何度も叩きつける。私の目で見ても明らかに分かる、恨みの籠った攻撃だ。
そしてババコンガを大きく振りまわし、投げ飛ばした。もがくババコンガに、なぜだかこちらとしても胸がすく思いだ。
邪魔者を排除したオロミドロは、再び私たちに殺意を向ける。ババコンガの乱入もあり、かなり弱っている様子である。しかし気は抜けない。
逃げるババコンガを尻目に、私たちは再び相対する――――――
突如、泥翁竜に爆炎が降った。
「うわっ!?」
襲い来る衝撃と熱波に、私たちはすぐさま後退する。炎を頭部に食らったオロミドロは、爆炎の正体を確かめる力も無かったようであった。
ふらつくオロミドロに、今度は巨大な影が襲った。
赤い甲殻に棘の付いた尾。そして何より、雄大な翼が目を引く飛竜。
獲物を仕留めた火竜は、唖然とする私たちを排撃の対象にはしなかった。
空の王者は泥翁竜の死体を持ち上げ、大空へ飛び去って行った。
レウス「このままじゃ今回臭くなりすぎるだろ?感謝しろよ」
オロ「」
…ではまたいつか。
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい