本編どうぞ
昼の幻想郷。吹き込ませてきた風が葉に当たって、心地よい音を響かせてくる。
妖精たちもいつものように暢気に遊んでおり、数匹が少し深刻そうに会話をしている。まあ、本当に重大な雰囲気ではないからいいか。
幻想郷へ竜どもが押し寄せてきてから、陽が沈んで十回くらいか。
妖怪たちはそれなりに対処できているようで、竜どもの声もかなり聞こえなくなってきた。殺したり、捕獲して元の住処に返しているのだそうな。
だが華扇はあまり安心してはいないらしい。
彼女らが確認している限りは、未だ地鳴りの原因は分かっていないという。私の方でも感じ取れたりはしたが、あの位の地震なら何度も経験してきたし、私の近くでは発生していないからな。人間や妖怪たちの巣は結構な被害が出ているらしいが。
あと最近、何だか不思議にイライラすることがあったが、ある時から苛立ちはスッと消えてしまった。なぜだろうか?そもそもイラついていた理由すら分からないのだから、考えても仕方ないか。
昔はそんなこと、考えたこともなかったな。
あの時の私は……自分で言うのも何だが、
幼いころから両親をあの滅びの龍に殺されたからか、道行く竜種を片っ端から侵入者として追い払った。あの爆槌や火の怪魚、爆ぜる拳と炎の断剣といった竜は、私が少し落ち着いてきてから来た者たちで、それ以前の竜たちは私が片っ端から殺したり追い出した。
ただその中にも異常な奴らはいて、黄金の牙獣や貪食の顎には特に痛い目を見た。それでも無理してまでそいつらを殺したのだが、振り返ると戦いに狂った阿呆としか言いようがない。命を捨てたら強さも何も価値がなくなる。百歩譲って雄なら、強い子を残すために分かる気はするが、雌である私がそんなことをしていたのはどうかと思うな。
それも成長していくにつれ、自分の力が増していくのに比して、私はあまり暴れることはなくなっていった。私の実力に見合うような奴が滅びの竜くらいしかいなかったからかもしれないが、その滅尽龍も飛び去ってからは、力を振るうことが滅多になくなっていった。
常に輝いている黄金の牙獣や、忌々しい属性を滾らせる貪食の顎などは襲い掛かってきたが、私はそれらを
山に住んでいるエリマキの神にはああ言ったが、実を言うと私はあまり暴風を使わずに肉弾戦を主に戦ってきていたので、風の能力が得意ではなかったのだ。そもそも私の目の敵だった滅尽龍にあまり暴風の一打が効いていなかったのもあるか。風で覆うとすぐに奴が飛んできてしまうので、使いずらかったのもあるか。
使おうとすると自分の視界まで覆ってしまい、攻撃もまともに当たらない悲惨なものだった。ある意味あの異常な者どものおかげで多少使えるようにはなったが、夫からは、「私たちの眷属でそこまで風を使うのが下手な成体もいないだろう」とか言われてしまった。反論しようもない事実なので何も言えなかったが。
それが今や自然あふれる緑と青の土地で、人間に酷似した信じがたい生物に遭遇して、こうして妖精達が飛び交う光景をのんびりと眺めているのだから、本当に世界というのは底が知れない。私が如何に狭い土地で過ごしてきていたのか、あの龍結晶とはまた違った豊かさを抱えるところがあったなど、昔であれば決して思いもしなかったしそんなことを考える余裕もなかっただろう。
そうだな……あと数百年か、もっと先か、ずっと早くか。
骨を埋めるとしたなら、ここが一番・・・・・・
ドォォォォン!!
大地が激しく震え上がった。木々は大きく揺れ、枯れかけたものはあっけなく大地に倒れ伏す。
地面で遊んでいた妖精達が慌てふためきパニックを起こす。かなりの地震に、私も腰を上げて辺りの状況を見回した。
翼をはためかせて、妖精達を落ち着かせようとする。
『みんなー!あれみて!』
一匹がそう叫び、他の妖精たちがある一点を見つめた。言葉の意味は分からなかったが、周りの奴らにつられて私もその方向を見る。
そこにいたのは
その事態が起こる少し前。
霊夢は神社の中で、熱心に何かを書いていた。普段ボーっとしていることの多い彼女が、何か懸命に物事に取り組むと言うのは珍しいことであり、彼女を知っているものなら思わず何かあったのか、疑問に思ってしまうだろう。
それは彼女と最も繋がりの深い魔法使いも同様で、
「何してんだ?」
いつもながら勝手に入ってきた魔理沙がそう言った。
霊夢は当たり前すぎるのか、勝手に入ってきたことには何も言わず。
「あら魔理沙。いたのね」
「少し前からな。で、そんな熱心に何をしてるんだ?」
魔理沙は霊夢の書いていた物を手に取った。
それは普段、彼女が愛用しているお札。妖怪退治や異変解決の時にも使用している飛び道具。
霊夢はまだ空白のそれに、見慣れない文字を書いていたのだ。もとより普通のお札のものも訳の分からない書体なのだが、魔理沙にはそれが何らかの術式なのではないのかと感づいた。
「これって……何かの術式かなんかか?」
「魔理沙は分かるの?」
「何言ってんだよ、私は魔法使いだぜ?これくらい楽勝さ。で、何の魔法だそれ?」
魔理沙の問いかけに霊夢が答える。
「これね、華扇が教えてくれたんだけど、あっちの魔法みたいなものらしいわよ」
「あっちって、モンスターの方のだよな」
「ええ。きめんぞく?っていう奴らが使ってるらしくて、華扇に教わって今書いてるの」
「ふーん……」
霊夢は再び机に向かい、お札を書き始める。
「あんたとかがモンスターに対峙してるのに、私だけ何もしてないってのはおかしいじゃない。仮にも異変解決者で、かなりの規模の異変なのにさ」
魔理沙はそれを黙って聞く。
「それで私も調べてみたんだけど、何も分からなくて。だから、何かモンスターに対抗できるような物が出来ないかなって考えて、そしたら華扇からこれを教わったのよ。
私は博麗の巫女よ。巫女だけど、無駄な殺生もするわ。この異変を解決するためなら、ね」
魔理沙はそんな霊夢の顔を黙って見ていた。その瞳はどこか遠くを見るようであったが、見つめられている本人はそれに気づいてはいなかった。
「へへ、そうか。なら、私が色々伝授してやるよ」
「ええ…あんたの魔法みたいな威力は望んでないわよ」
「何言ってんだ、モンスターのタフネスは相当なんだぞ。むしろあれよりもっと高い火力が欲しいくらいだぜ」
そして日が中天を過ぎたころ、
およそ数は百枚以上か、魔理沙の改良もあってか、出来上がりは上々である。
二人も地味な作業に、肩や首を回してコリをほぐす。お札が消耗品であることを考えるともう少し欲しいが、流石にこれ以上続けるのは精神的に厳しい。
「ありがとね、協力してくれて」
「いいんだよ、そんな水臭いこと」
二人は笑いあい、神社にはいつもの平和な空気が流れる。
幼いころからの腐れ縁とはいえ、やはり並々ならない情で繋がっていることを感じさせるようである。
縁側の景色はいつもの美しい幻想郷で、落ち着いた空気を運んでくる。
だが、地が大きく震えだし、その空気も消えていった。
「!?これは!」
「ああ、間違いない!」
霊夢は書いたお札をすぐさま懐にしまって飛び、魔理沙も箒にまたがって上空へ赴く。
そして二人の視界に、巨大な龍の頭部が大地を歩いているのが見えた。それが揺れるたびに大地も震えている。鳥たちが驚いて空へと飛び去り、心なしか遠くからモンスターの怯えた咆哮も聞こえてくる。
「こんな早くにこれを試すことになるとはね!」
「ああ、まったくだ。見せてやろうぜ!」
紅と黒い影が空を翔け、陸を揺らす巨竜へと進んでいった。
多分これから投稿ペースが大きく乱れると思います。
なるべく書けるようにしますので、気ままにお待ちください。
ではまたいつか。
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい