いつも通りの朝が来る。明けの光が、幻想郷をまばゆく照らす。
だが頬に感じる鋭い風は、一週間経っても勢いが衰えない。
博麗神社
私は朝の支度を終え、境内を掃いていた。
いつもより落ち葉の数が多いが、奴の仕業だろう。仕事が面倒になってしょうがない。とりあえずアイツが何なのか分かったら、一回はしばく。
あの〝りゅう〟が来てから、私たちはいつもみたいな弾幕勝負を仕掛ける前に、奴の情報を集めることにした。紫があんな態度を取るときは、大抵言葉通りに従っておけばいいから。
といっても、情報に関しては魔理沙のほうに丸投げだ。「心当たりがある」と言って、もう一週間会ってない。
私はとりあえずアイツの動向を監視しておくことに。そもそもの仕事がこれだからね。
一週間前に「とりあえず敵の姿だけは見ておこう」と同意したので、奴を追った。想像以上にスピードが速く、夜になってようやく見つけたのだ。
全身が鍛え上げられた鋼に覆われた、私も見たことのない異質な姿。全体の姿としては西洋の竜に酷似していたが、それとは確実に違うと本能が察した。
西のことには私より詳しそうな魔理沙に聞くと、「鋼の竜なんて本じゃ見たことない」、全部借り物の本を熟読した限りではそうらしい。
私達が来たときは寝ていたのだが、それでも近づくにつれ風が増していった。冬一番より強い風だった。寝ている時でもここまでの風を起こせるのなら、天狗より強いと感じた。
見ただけだが、紫の言っていることは分かった。
こいつは、妖怪でも神様でも、まして幻想郷の龍でもない。
もっと古い〝なにか〟だ、と。
それからもう一度一人で奴を見に行ったのだが、顔の見たことある天狗が奴を監視してた。近づくといきなり攻撃を仕掛けてきたので、〝仕方なく〟応戦。吐かせたところ、そいつの上司から監視を命令されたらしい。天狗もかなりピリピリしているようだ。まあ、暴れたら退治するだけだけど。
遠くから黒い塊がこっちに突っ込んでくる。何回も見たものだが、今回ばかりは注視せざるを得ない。
「よう、一週間ぶりだな。そっちはどうだった?」
魔理沙は箒から地面に降りる。
「別に、結界も調べたけど何も異常はなかったわ」
「え?あんな奴が来たのに?」
「そうなのよ、来る前と全然変わってなくて、いっそ不気味だったわ」
「紫の仕業か……?まあいい、とにかくこれを見てくれ」
そう言うと魔理沙は自信ありげに、帽子の中から一冊の本を取り出した。かなり古いものに見えるが、頑丈なのか本としての形を保っている。日本語ではあるが、その書体はどの文字とも似ていない。
「また紅魔館からの借り物?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。前に森の奥までキノコを取りに行ったんだ。その時に、こんな本が落ちてたなって」
「じゃあ、その時持ち帰ればよかったのに」
「それがな、見たことないキノコが山ほど取れてたから、ちょっと持ち帰れなかったんだよ。改めて探そうにも、そこまでの道を忘れててな……」
ふーんと返事をし、本題に移る。
「その本がどうかしたの?」
「とりあえず、見てみろよ」
そういって魔理沙は本を開いて見せてきた。〝王立古生物書士隊 編纂記録書 シキ国語版〟と書かれている。
「王立……どこの?」
「知らん。でもこの本に私が手に入れたキノコの事が載ってたんだ。異世界からアイツが来たなら、同じ異世界からのモノが来てるのは不思議じゃないだろ」
「確かに」
縁側に座り、本を広げる。
魔理沙の言う通り、異世界のモノがわんさか載っていた。文化圏の違う人々の暮らし、彼らの技術、そして、植物やキノコ云々。どれもにわかには信じられないものばかりで、結構面白かった。
そして、ページをめくり続けると〝モンスターの生態〟という箇所に着いた。
ページの最初には赤い甲殻に覆われた、雄大な翼を持つ生物の絵が描かれていた。名前はリオレウスというらしい。その後も、見たことない生物が出てくる。
そのままページをめくり続けると、これまでとはかなり意匠の違うページの見出し。
「〝古龍種〟……?」
胸の内にざわめきが起こるのを感じ、魔理沙はページをめくった。
まずは見出しが続く。
『古龍とはなにか。古龍観測所が設立されて以降、多くの人々がその解を導き出そうと調査してきた。
しかしながら、あの竜人族でさえ真実の欠片すら掴めていないのだ。我らが唯一共通して言えるのは、〝存在そのものが天災である〟ということ。
食事、繁殖、縄張りの巡回、果てはただの歩行……それだけで、国の機能を停止、もしくは滅亡させうるもの。実在する神、といっても過言ではない。太古の人々が神として崇めるのも至極当然である。妖怪や超常現象のすべからくが古龍の仕業なのは、民俗学を専攻していないものでも理解は容易であろう。
編纂者としてこれ以上の私事は避ける。まだまだ未確認の生態も数多くあるが、分かっている限りの情報をここに記す』
二人ともその誰かさんの私言をしっかりと読み、ページをめくる。
「「あった!」」
指差した先には間違いなく、今幻想郷に居座る龍の姿が、
鋼龍 クシャルダオラと名づけられた古龍がいた。
異変解決者があの世界に関する情報を手に入れる数日前、
クシャルダオラは寝床にいた。
ここ数日の間、彼女はその場から動いてなかった。身じろぎもせずに数時間以上経つのも珍しくなく、監視している天狗がこっくりこっくりとうたた寝してしまうほど。
彼女自身は意識していないが、生まれた土地に数百年以上閉じこもっていた癖が抜けていないのだろう。下手に動いてしまうといつ滅尽龍に首を狙われるか分からないのだ。
誰も気にしていないが、普通クシャルダオラが飛来した土地が、ここまで〝静か〟なのもそれが原因かもしれない。
そしてそういうように動いている―――物理的には動いていないが―――ということは、彼女も分かっているということだ。
この地には油断ならない強敵がいる、と。
なぜそう感じるようになったのか。それは、見られているのが分かっているから。
今現在、監視を続ける天狗の存在も彼女は分かっている。そして、それ以外の存在が同様な動きをしているのも同様にだ。追い払おうと動くと、そいつらは即座に逃げていく。自分では敵わないと分かっている証拠だ。
それらに加えて、妙な力を感じるのだ。龍の力のような暴力的なものではない、さらにぬめりとした、お世辞にも心地よくないもの。
移動しようと思えばいつでもできるのだが、彼女はそうしない。人間的に例えるのなら、プライド、だろうか。暴風雨を司り、あらゆる障害を文字通り吹き飛ばしてきた古龍としての自負が、彼女をこの地へ据わらせていたのだ。
来るならいつでもかかってこい、という感じだろうか。
ガサッ
風による葉の擦れとは違う音が聞こえた。音の聞こえたほうには、奇妙な奴がいた。
姿かたちはほぼ人間だ。鎧を着た狩人に比べると、小さいから子供だろうか。
だがそれと異なるのは、翼が生えている。人間は翼を持たないはず。夫からも、翼の生えた人間の話は聞いたことがない。
翼人間は明らかに恐れた様子でこちらを見ている。他と同じような監視かとも思ったが、自分から姿をあらわすなど阿呆なことをする理由が分からない。そのまま立ち竦んだように動かないのを見て、私は一歩足を踏み出す。
翼人間は体を震わせるが、飛んで逃げようとはしない。そのまま近づいていく。よく見ると、背に生える翼は思ったより薄く、羽に近いようなものだった。飛んで逃げようとしないのではなく、できないのか。
私と羽人間は互いの顔を見合わせる。足の一掻きで散ってしまう脆いものは、相変わらず私を見ていた。
ただ、顔からは恐怖の感情が薄れ、代わりに畏怖しているかのように感じられた。同時に私も、そいつの力のようなものを感じた。それは私に向けられた妖しい力ではなく、純粋な、我々と近いもの。
少女は私の頬に手をつける。
私も少女の顔に頬ずりをした。
異郷の世界に来て初めて、クシャルダオラは心が鎮まるのを感じた。
ちなみにクシャルダオラに霊夢と魔理沙がそのまま戦ってた場合、霊夢の弾幕は多分クシャルダオラの風に押し負けると思います。バランス型が祟って威力不足。夢想転生で攻撃は受けないけど、こっちの攻撃も通らないジリ貧に。魔理沙なら風の鎧は押しのけられるけど満足なダメージは与えられなさそう。
というかクシャは弾幕ごっこ知らないから血みどろの戦いになりますね。幻想郷の勢力全員で討伐しようとされればクシャも死ぬでしょう。
被害も前代未聞になると思いますが。
ではまたいつか
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい