鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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「……なるほどな。どおりで幻想郷の氣の流れがおかしいと思ったよ」

 

神子は火竜の返り血を手巾で拭いながら、霊夢の答えに相槌を打った。

 

 

豊聡耳神子は仙人ということもあり、自然の生命エネルギーといった分野に精通している。元々やんごとなき血筋で、その中でも千年に一度クラスの天才なのだから当然と言うべきか。

 

霊夢の話から聞くに、眼下で眩い霊光を放つあの古龍が元凶という。冥界の亡霊と境界の賢者があれほどまで完成された死の術を使っても、それに耐え、あまつさえ甦ろうとしている。

この新大陸という広大な大地を潤す、死を目前とした古龍の力。その凝縮された神威そのものたる、ゼノ・ジーヴァという存在。

 

 

古龍とは本当に、なんと巨大なのだろうか。彼らの声をより深く聴けば、昔の私の答えも、もしかしたら見つかるのだろうか。

……いや、既に死を超えた超人となったこの身でそれを知ろうと、何が変わるわけでもないか。

 

「妖夢は大丈夫なの?」

 

「心配ないだろう。布都が安全な所で治療している」

 

「そう……ならいいけど」

 

「死なせはせん。私たちといえど、彼女の主の恨みを買いたくはないからな」

 

自虐的に笑う神子に、二人はまったくもってその通りと、首を縦に振った。

 

その時、冥灯龍はますますその命の輝きを強め、術式の陣が耐えかねるように震えだす。周囲に反射した光が満ち溢れ、より一層と神々しさを増していく。光にあてられた火竜の死骸すら優美に見えるような冥光に、幽々子は眼を覆った。

 

「ま、眩しい……」

 

「これは……藍と橙も連れてきたほうが良かったかしら……!」

 

苦しそうに呟く幽々子と紫。見るとゼノ・ジーヴァの胸部から、仄かな赤い光が見え隠れしてきている。ドクン、ドクンと一定のリズムを持って、光は強弱を繰り返していく。

 

「……これはまずいな。二人とも、来い」

 

「そうなのか?霊夢!私たちも行くぞ……霊夢?」

 

霊夢は空を見上げるばかりで、魔理沙の言葉は届いていない。急ぐ魔理沙は霊夢の元へ駆け寄り、引っ張っていこうとした。

 

 

 

「魔理沙避けて!!」

 

 

その直後、魔理沙の視界は光に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あつい……体が燃えあがりそうだ……

敵が来ている。わたしは四本の足で立とうとする。立てない。また立とうとする。ようやく、足に力が入らないのに気づいた。

 

歩みを進める炎の王。辺りに粉塵が立ち込め、わたしの体に纏いつく。牙を鳴らせば、わたしは木っ端みじんになるだろう。だが、それをふり払う風をおこすことは、今のわたしには無理だ。

 

 

思い返せば、不思議な晩年だった。しずかな土地で、ちいさな仲間たちと過ごした日々は、なぜかここで過ごしてきた時間よりも長かったような。色々不便だったが、それなりに充足した日々だった。あの地を見ながら死ねないのが唯一の心残りだが、いまさらどうしようと……

 

青い炎と青白い爆炎が周囲に炸裂し、黒い地面を炭へと変えていく。

 

 

 

……いや。

 

私はそんな不満を残して死ねるのか?まだ見ていない森、川、湖、そして人妖の営み。まだ見たりない。

 

全然、足りない。もっと、あの世界を自分の目で確かめきれていない。現を捨てて幻に魅せられたのなら、最期までそれに魅せられたい。

 

 

足が動き出す。わたしの体が、生まれて初めて立った時のように、少しずつ持ち上がる。奴の顔を正面に捉え、私は吠えた。

 

掠れた咆哮に、炎王は僅かにのけ反った。しかしかの龍がその程度で闘気を弱めることがないのは、私自身よく知っていた。

辺りに舞う粉塵が、より濃さをます。爆炎の濃霧に、未だ狂いに囚われた瞳が光った。

 

 

 

その直後、辺り一帯を神風が吹き抜けた。粉塵は風に逆らえず、霧散して消える。

 

それだけではなく、奥で戦闘していた竜と炎妃龍の背中に見覚えのある岩が命中した。固められた岩は爆発し、彼らを怯ませる。己の妻の身の危険に、炎王龍は崖へと向き直り、爆炎の如き怒りの咆哮を轟かせた。

 

今だ。私は奴の後ろ脚に噛みつき、骨を砕こうとする。鋭い痛みに怯みながらも、再び粉塵を舞わせ爆破しようとする。

 

 

 

「攻撃ー!!」

 

炎王龍の肢体に突風をまとめた様な弾が何発も命中する。私の目で見ても中々の威力に、炎王龍は私を振りほどきつつ飛びのき、乱入者たちを睨みつける。

 

見かけは人間だが、背中には鳥の羽を生やしている。手には小さい翼のようなものを持っており、頭には角としては使い物にならないようなやつを被っている。

 

 

あれは確か、天狗だ。紫からの増援だろうか。一番奥に飛ぶ、青い天狗が言い放つ。

 

「烏天狗遊撃隊隊長、飯綱丸龍だ!天魔様の命により異変解決の援護、つまり、鋼龍クシャルダオラ!お前の助太刀に参った!」

 

何を言っているのかはサッパリだが、もしかして助けに来てくれたのだろうか。めぐむは手に持った羽で崖上を指さす。そこにいたのは、あのお気に入りの岩賊竜だった。周囲には奇面族が立ち並び、一匹が炎を頭に燃やしながら、激しく舞う。

 

『ホギャー!ホギャー!!』

 

「お前はそのまま攻撃に専念しろ!他の奴らは我々が足止めする!」

 

天狗たちは金銀の火竜に金色の刃のようなものを投げた。翼に当たったそれは炸裂し、竜達の翼に傷をつける。自身の生命線でもある翼を攻撃された火竜たちは、天狗たちへと攻撃し始める。

 

 

ヴォォォォォォォ!

 

重い風切り音を響かせ、紅蓮の爆鱗竜は崖上の岩賊竜と奇面族に空襲を仕掛けた。

低空飛行する爆鱗竜の眼前へ、奇面族が何かを投げた。天狗の投げた刃と同じくそれも炸裂したが、破裂したのは閃光を放つ虫だった。爆鱗竜は体勢を崩して地面へと落ち、そこに岩賊竜のブレスと爆弾が爆発する。

 

 

なるほど、彼らが奴らを相手するなら、必然的に私はこの炎王龍と対峙することになる。だがそれだけでもかなり違う。

私はこいつとはかなりの数の戦いを演じている。力の強さも、攻撃の癖も、良く知っている。満身創痍のこの体でもまだ戦えるはずだ。

 

その考えを否定するように、炎王の傍らに妃が並び立った。彼女もまた鋭い目つきでこちらを睨み、飛びかかってくる!

 

それを横っ飛びで回避する寸前で、炎妃龍の背中に何者かが飛び乗った。突然の出来事に、炎妃龍は空中で暴れる。

 

「おっと、こいつは俺の獲物だ!」

 

乗っているのは、人間。だが、気配からして妖怪か。見たこともないが、激しく暴れる炎妃龍から振り落とされることなく、背中を切り刻む。

 

それを見た炎王が番を助けるべく飛翔する。狂っていながらも、その夫婦仲は健在らしい。私はその尻尾に噛みつき、離陸を阻む。この鋼の重量を尻尾で引っ張り上げるのはいかに歴戦の炎王とはいえ不可能。私は顎の力を更に強め、炎王を地面に叩きつける。

 

炎王龍も標的を変え、私と対面する。周囲の大気は陽炎に包まれ、その赤い体には灼熱の炎が迸った。己の力を全解放した本気の姿。私はそれを見据えながらかの龍と睨み合う。

 

 

先手は炎王龍。全てを焼き尽くす灼炎を纏った突進によって、地面を炭が舞う。

その姿が眼前に迫った瞬間、私は回避する。勢いを殺すために生じた一瞬の隙に、私はその翼膜を噛みちぎった。口の中が溶岩のように煮えたぎるが、私の体の冷気の力がそれを中和してくれる。右の翼を大きく損傷した炎王龍はもがくが、すぐさまこちらへブレスを吐く。

 

かの龍の正面の物体全てを燃やし尽くすブレスを、私は真正面から受け止める。体の中から焼かれそうな熱量を、氷の妖精のように全身から冷気を吹き出すように力を籠めて耐える。このブレスは範囲こそ脅威だが、後隙が大きい。これを耐えさえすれば、反撃を確実に叩きこめる。

ブレスを吐き終わった時、私は後ろ足で立ち上がってかの龍に圧し掛かった。大きく暴れて私を引き剥がそうとするが、翼爪に噛みつき体勢を固定して抗う。重さも相まって炎王龍の暴れ方が少し弱まる。

 

その隙をついて私は空を飛んだ。火竜のブレスは飛んでこない。炎妃龍の妨害もない。今そいつらは妖怪(仲間)たちとの戦闘にかかりきりだ。こちらに意識を向ける余裕は無かった。

その隙を利用し、私はかの龍の背中へ蹴りを食らわせる。反撃の引っ掻きを躱しながら、一発、更に一発、追撃に一発。翼を噛みちぎられ、飛行がままならない炎王龍の尖角へ、着地の勢いを利用した渾身の飛び蹴りを食らわせた。

 

足裏に凄まじい熱量を感じながら、同時にボキリと何かが折れる音がしたのを、私の耳は拾い上げた。

降り立って見れば、かの龍の角は折れ、身にまとう炎もその勢いが半減しているのが分かった。

 

 

ガアアァァァァァァ!!!

 

 

 

怒りに満ちた咆哮に、私は怯むことなく突っ込んだ。

 

 

ふと、脳裏に妖精たちとの日々が走り、私の足に一層力が入った。




紅霧異変起こしそうな新古龍よりギザミの復活の方が嬉しかった。

ではまたいつか

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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