鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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満足できるものが中々仕上がらなくて…今度はなるべく早めに出します




紅白の人間の巣に入る時から、妙な気配を感じていた。決して妖怪の視線ではない。それよりも深く、大きい。

この場ではっきりと見えるのにも関わらず、捉えきれないほど巨大な力。なぜか周りの奴らはそれに気づかず、酒とやらを飲んで暢気にはしゃいでいる。

 

紫の毛ともまた違う褪せた黄金。もしくは森が真っ赤に染まった時の、整然とそろった草の波の色か。壁に囲まれた巣に住む人間はこぞってそれを刈っていたが、これにはそんな事出来そうもない。

煮えたぎる溶岩の光を表すような、だがどこか暗い色の皮。木を糧に燃える炎や、小さくなった太陽の光では、その深い目を照らすにはあまりにも心もとなかった。

 

 

「あー!!お前はあの時の!」

 

さっきまで自慢をしていたチルノが、目の前の奴を指さして叫んだ。三妖精と二人の人間もそろってそいつを見る。

 

「もしかしてこの人が……」

 

「い、異変の元凶……!?」

 

「この煮物やわらかーい」

 

スターだけ場違いな事を言った気がするが、ニモノとは何だろう。ケモノの亜種だろうか。

 

「おやおや、元気そうね、氷精。まだ夏の魔力が抜けきってないようだけど」

 

 

 

「……誰だお前?」

 

チルノの発言にその場の奴らがこける。地鳴りだろうか。私は重いので地鳴り程度ではびくともしないが、妖怪連中は軽いので揺れてしまうのだろう。

 

「いや戦ったでしょ。後戸の戦い覚えてない?今あなた聞いてるこっちが恥ずかしいくらい自慢してたでしょ」

 

「あたいが戦ったのは椅子に座ってる奴と、髪がブワァーってなってる奴だぞ」

 

「それだよ、それ!なんで別々で覚えるかなぁ!?」

 

「だってお前そいつらと全然喋り方違うじゃんか!」

 

焼けた皮のチルノがそう叫ぶと、隠岐奈とかいう奴は大きくため息を吐いた。

 

 

 

「……これで分かるか?暴走した妖精」

 

 

まただ。私を見ていた時。私たちの中に入ってきた時。そして今。

こいつは性質をコロコロ変えるのだ。今の態度は前に来たエリマキに近い。さっきの紫のような雰囲気は、どこ吹く風のように消えてしまった。

 

「ああ!」

 

「ようやく分かったようだな。お前との話は後にするつもりだから」

 

さて。と声を続けながら、隠岐奈は妖精ではなく私を、そして人間たちに向き直った。

 

「ごきげんよう、人の身の者たち。そして古龍クシャルダオラよ。楽しんでいるようだね」

 

私の甲殻を触っていた一人の人間が後ずさりする。チリンチリンと、小ぶりな丸い角から音が出ている。一体どんな造りをしているのだろうか。

 

「おー。お前か、四季異変の首謀者ってのは」

 

「その通りだ。知っていたのか」

 

「見舞いに来た人形使いから聞いたんだよ。紫みたいな奴がもう一人出たってさ」

 

「あんな奴と一緒にされては困るぞ。私は裏で、常に、幻想郷の秩序を守り、観察しているのだ。熊みたいに冬眠して仕事を式に放っている怠け者とは違……モゴッ」

 

何もない場所から草を固めたようなものが隠岐奈の口に押し込まれた。においからおそらく紫だろう。一瞬だけ見えた手が、また一瞬で消える。

 

「紫ぃ、もうちょっと押し込んどきなさいよ。うるさいのが静かになりそうだったのに」

 

「ごほっ、おい。まだまだ言うべきことがあるんだ。これくらいで喧しいといわれては敵わないな」

 

隠岐奈が草の塊を見て、「麦飯……あいつめ」と言いながら塊を後へ放り投げる。背後から木の壁が現れると、それは中心から真っ二つに割れ、塊が飲み込まれた。そしてそれは元に戻り、木の壁も消えた。

 

「い、今のはなんですか?」

 

鳴る丸角の人間が後ずさる。私には積極的に寄ってきたのに、あれくらいで怯えるのか?ただそれよりも、動くたびに丸角から音が出るのがどうも気になる。

 

「後戸。私の世界への入り口だ。この扉を幻想郷中のあらゆる存在の背中から開き、潜在能力を一斉に開放する。そうして暴走した妖精たちが季節を狂わしたのが、お前達の言う四季異変ということだ」

 

「なんでそんな事したのよ。あんただってモンスターの異変があったことくらい知ってたでしょ」

 

「無論。…あそこで踊ってる二人の後継を見つけたくてね。潜在能力を解放させて、良さげな奴がいないか試していたのさ」

 

「呆れた……そんなこともっと後にしなさいよ。お陰で私の手柄があんな奴に取られたじゃないの」

 

 

 

「お前の回復を暢気に待っていれば、今頃幻想郷はモンスターの巣窟になっていだろうな」

 

 

レミ……なんだかの近くで激しく踊る二人の人間が、会った覚えのある耳の長い人間に絡んで踊りを促している。緑色の白い鰭が割って入り、緑と赤の二人を電撃で追い払う。確か妖精から電気ウナギという魚がいることを聞いていたが、まさか妖怪になって地上に上がってくるとは。

電撃の恐怖は嫌というほど身に染みている私は、少し身じろぐ。他の奴らも同じなのだろうか、固まったように動かない。……いや、揃って木の段に座っている隠岐奈の方を見ている。どうやら違ったらしい。

 

「……どういうこと?」

 

「言葉通りさ。私が後戸を開かなければ、龍結晶の地から狂乱した竜の群れに幻想郷は蹂躙されていた。それだけさ」

 

「ゼノ・ジーヴァはあの二人が殺したわ。そんなことしなくたって、結界を張りなおせば済む話だったんじゃないの」

 

「分かってないな。お前はあの地で何を見たんだ?」

 

隠岐奈が紅白を見ると、紅白は何か思い込むように下を向いた。紅白の足元を見てみるが、光るトカゲがいるわけでも、奇面族が騒いでいるわけでは無かった。

 

「冥灯龍が保有するエネルギーは、私の想像するところを遥かに超えていた。狩猟世界のモンスターたちが侵入してきたほんの数日程度で、奴の幽界の火は既にこの地の龍脈を焼いてしまっていた」

 

「それがどう関係するのよ」

 

「幽界の火を通じて、新大陸に流れる地脈が幻想郷へと繋がってしまったのだ。つまるところ、幻想郷と新大陸の連結。結界を張りなおした所で、あちらからモンスターが来るのは避けられないだろう」

 

「はぁ!?何よそれ、初めて聞いたわよ!?」

 

紅白が何か叫び、周りの奴らも少しざわついている。耳の長い人間も、こちらに振り返った。耳の長さは伊達ではないということか。

 

「まぁ落ち着け、ここからが本題だ。

既に幻想郷に定着してしまったモンスターだが……現時点ではそのまま放置することにした。追い払っても追い払ってもやってくるのなら、送還することに意味はない。労力の無駄だからな」

 

「そんな大きなことを、あんたの独断で決めたってわけ?」

 

「他の奴らと話をして決めた結果だ。龍脈の浄化が終わるまでの暫定的な処置に過ぎん。幻想郷の賢者として、このような異常事態を続けさせるわけにはいかない。無論、浄化が終わればモンスター共にはとっとと出てってもらう」

 

紅白は難しい顔になって俯く。また下を見るが、木の段の下には地面があるのみだ。ううむ、紅白の習性はかなり謎である。

今度は白黒が隠岐奈に話しかける。

 

「ちょっと質問するぞ。さっきのお前の話でいうと、龍脈の浄化が終わるまでは幻想郷にやってきたモンスターについては無視、ってことだよな。なら、新しく来るモンスターはどうするんだ?新大陸の奴らはかなり強いって聞いたぜ?」

 

「ん?なんだそんなことか。それなら既に方法はあるぞ。私がいちいち後戸を開くまでもない、非常に楽な方法がな」

 

 

すると隠岐奈が私を指さした。

 

「……そいつを使うの?」

 

「左様。モンスター達は古龍の存在を恐れる。この鋼龍に幻想郷中を飛び回らせ、こやつの存在を顕示する。仮に奴らがここに来たとしても、古龍の縄張りと思ってすぐに逃げ去る。こやつにとっても難しいことではない。ただ活動の痕跡を残せばいいだけだからな」

 

隠岐奈がそう言うと、他の五人も静かになる。ところで私を指さしたのは何故だろうか。人に向けて指を指すのはシツレイにあたると、以前華扇が言っていたのを思い出すが、私は人ではないし意味を解せない。

深く考えていると頭に花が咲いている紫髪の人の子が声を上げた。

 

「む、無茶言わないでくださいよ!こんな大きな龍を里の近くでうろつかせたら、住民全員がパニックになりますよ!他のところは大丈夫かもしれませんが……」

 

「他にいい案があるのか?御阿礼の子よ」

 

「……」

 

「我ら賢者達が考えぬいた末に出した結論だ、別の妙案が急に降って出てくるとは思っておらん。まぁ、人里のみを監視するならば鋼龍に頼らずとも充分だろう」

 

花咲き人間は複雑な面持ちであった。何か納得しているようでもあるし、警戒を崩していないようでもある。あの人間は何の感情を持ってあの顔なのだろう。

 

そうだ、私の首にぶら下がっている派手な皮の妖精に聞けば分かるかもしれん。名前は……ええと確か、

 

『ピース?』

 

「ん?どうしたんだクシャ」

 

『隠岐奈たちはいったい何を話しているのだ?』

 

「んぇ?あたいもよく聞いてなかったから分からないけど、なんかクシャを幻想郷に飛び回らせるって言ってたような……」

 

ピースの発言に、私は一瞬呼吸を止めてしまった。

 

『本当か?!』

 

「おっとっと……急に首振るなよ!びっくりしただろ!」

 

それを見ていたサニー、ルナ、スターとチルノが寄ってきた。

 

「二人揃ってどうしたのよ」

 

「サニー、今さっきの神様たちの話って、こいつが幻想郷を自由に飛び回っていいって話だったっけ?」

 

ピースがそう言うと、四匹は顔を合わせた。

 

「言ってたわよね、自由に飛び回らせていいって」

 

「そんな適当だったっけ。自由に、とまでは言ってなかったんじゃない?」

 

「クシャの存在を示すとかなんとかが目的だ、じゃなかったかしら」

 

「サニーの言う通りだぞ。背中ヤローがそう言ってた」

 

チルノがそう言うのを聞いて、私はチルノに顔を近づけた。ピースが対応出来ずに石畳に落ち、「あだっ」という声が聞こえた。

 

『本当か、本当なのかチルノ?』

 

「そ、そうだよ!あたいの耳は正しいんだ。聞き間違いなんかじゃないぞ、ホントだぞ!」

 

 

そうか……そうか!

うれしい。今まで行きたくても華扇に止められて行けなかった所にも、自由に行くことが出来るのか!先の熱戦のケガと引き換えても十分なものだ!更に綺麗な花や水、土地や人の巣も見れるのか!想像するだけでなんだか見たような気分になる。何故だが知らないが、目から水が流れそうな感覚になる。

 

 

 

私は喜びを示すため、歯に力を込めた。周囲に音が響き渡り、木々を揺らす。

 

「「ぎゃああああああ!!耳がっ、耳がああああああ!」」

 

「おい、ルナ!!早く音を消せ!」

 

「無理言うんじゃないわよ!この手を離したら鼓膜が吹き飛ぶわ!」

 

「あ、彼岸、花の畑が、見えて、きたかも……」

 

丸く足跡を残すように早めに歩いていると、隠岐奈と人間たちの姿が見えた。

 

「う、うるさっ!!ちょ、誰かあいつ止めなさい!」

 

「これは……歯軋りか?にしても大きすぎるぜ!!」

 

「痛い痛い痛い!何このデスボイス!?ジャイ〇ンもびっくりよ!?」

 

「阿求!しっかりしなさい、阿求ー-!」

 

蟹のように泡を吹いて倒れている花咲き人間の裏で、隠岐奈も触発されたのか大声を張り上げた。

 

 

 

 

 

「誰かさっさとこいつを黙らせろぉぉぉぉ!!」




黒板にチョークこすりつけて不協和音流したことある人、挙手。

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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