一
霧雨魔理沙と博麗霊夢は神社にいた。
いや、この二人が神社にいることは日常の風景なのだが、二人とも今は異変解決モード(by霊夢)の顔をしていた。
そして今日は、もう二人が博麗神社にいた。
一人は緑色の髪の毛をカエルのカチューシャでまとめた、霊夢と似たデザインの巫女装束の少女。
もう一人は、桃色の髪に赤い前掛けを着用した少女。右腕は包帯を巻いており、今のこの四人の中では一番年上に見える。
巫女の少女は東風谷早苗。もう一人は、茨華扇。
東風谷早苗は、外の世界からやってきた現人神であり、茨華扇は妖怪の山に屋敷を構える仙人である。
この二人もよく博麗神社に来る面子なのだが、今は少々表情が硬い。
「月の都に行ってくる直前でそんなことが起きてたのね。早く言いなさいよ」
「仕方ないじゃないですか!月の民が攻めてきてるって言ったら霊夢さんも魔理沙さんもすぐに行っちゃいましたし、その次に優曇華さんが来て、「月の都に行こう」って、どう見ても話が早すぎなんですよ」
「異変解決はスピードが大事だぜ。そういうお前も、人類史上二回目の月面探索だー!、っとか言ってたじゃないか」
「それはテンション上がるに決まってるじゃないですか!」
どうやら異変解決の宴も終わってさあ日常の再開、といったところで早苗が突然、「あの龍が月の探査船を襲った」と言ったらしく、それを二人が詳しく聞いていたところらしい。茨華扇は偶然立ち寄っただけ、というかここで初めて鋼の龍の存在に気付いたという。
「というか華扇は知らなかったの?あんたなら知ってそうだったけど」
「二週間くらい前にペット達が急に騒ぎ出して、一部の子が逃げて行ったりして大変だったのよ。今思うと、その鋼の龍が来たからだったのかしらね」
「だろうな。古龍が来ると、その周辺の生物は全て姿を消すらしいからな。きっとお前んとこのペットもクシャルダオラにビビッてたんだろ」
魔理沙の応答に、華扇と早苗は口を開けた。霊夢の方は呑気に煎餅を食べている。
「魔理沙さん……?どうしてそんなに詳しいんですか?あとさっき名前も……」
「ん?私はアイツと同じ異世界から漂着してきた本を拾ったんだ。アイツの事も載ってたからな。ちなみに私のものだからな、あげないぜ?」
魔理沙は帽子の中から奇妙な書体の本を取り出す。それを見て華扇は声を上げる。
「ちょっと!今幻想郷の皆が喉から手が出るほど欲しがってるものじゃない!」
「だから、これはあげないぞ!こいつはまだまだ有用なんだ!」
「そんなことしてないで、鈴奈庵でそれ写せばいいじゃない」
ああそうかと、魔理沙が手を打った。
「最初に手に入れた時からそうしなさいよ……それで、クシャルダオラ?だったかしら。それはどういうものなの?」
「えーとだな……」
魔理沙はペラペラとページをめくり、クシャルダオラの項を探す。
「あったあった。
鋼龍 クシャルダオラ
古龍目 鋼龍亜目 クシャナ科
鋼の甲殻に身を包む大型の古龍種。古龍の中では比較的生態に関する調査が進んでいるが、未だに謎の多い種でもある。全身の鋼の外骨格は肉や骨と一体化しており、これにより鉄鋼に身を包みながら自由に動くことが出来る。」
「……なんか、思ってたよりちゃんと生物らしい区分けがされてますね」
「だよな。私もちょっと驚いた」
どうみても超自然的な存在に生物学上の亜目までつけるとは。こっちはそこらへんは大分適当なのに。
「アイツが初めて来たときにね、紫が邪魔して来たのよ」
「え?紫さんが?」
華扇の疑問に霊夢は首を縦に振る。
「なんか、自分で調べてこい、って言って、消えたの」
「そう、なんかあのままだと勝ち目はないぞ、って感じで」
二人のその言葉に、早苗と華扇は頭を捻る。
八雲紫は非常に頭の切れる妖怪である。彼女であれば、幻想郷の壊滅を招きかねない存在をみすみす入れたりはしないだろう。なぜなら、彼女は幻想郷をこの上なく愛しているから。そんな彼女が、あの古龍を幻想郷に入れた。どうやって結界の中に入れたのは分からないが、そこに彼女の意思があったことは明白。では、その理由は?
「とにかく!」
思考の波に沈んでいた博麗神社に、霊夢の声が響いた。
「考えててもしょうがないから、アイツに会いに行きましょう」
「えええ!?霊夢さん、本気ですか!?」
「本気よ。その本に書いてあったのよ。『古龍にとって他の生物は一瞥するだけで追い払えるほどの存在でしかないから、縄張りに人間が入ってきても襲い掛かっては来ない』って」
「『ただし繁殖期や脱皮などの気が立っている時ではその限りではない』、とも書いてなかったか?」
魔理沙の一言に霊夢は少し勢いを無くすも、すぐに取り戻し
「ええい!そうなったら華扇が説得すればいいのよ」「私!?」
「だってあんた龍の子供に指示できるんでしょ。それくらい出来るはずじゃない」
「……異世界の生物と話したことはないんだけど」
「いいから行くわよ!」
そう言って、霊夢はすぐに飛んで行ってしまった。「ちょっと霊夢さん!?」と言って早苗も追いかけていく。
「……どうする?お前もいくか?」
「仕方ないわね……あの龍が動物の範疇にあることを願いましょう」
霊夢と魔理沙、それに早苗と華扇の四人組は鋼龍の巣へと向かって行く。道中に妖精が出て来たが、彼女らに取ってそれは障害にすらならなかった。
近づくにつれ風の勢いは強くなっていく。それに比例するように妖精の数も多くなっていくが、四人は危なげもなくそれらを落としていった。
やがて、襲ってくる妖精の群れが不意に消えた。四人は地に降り、目的地へ徒歩で向かっていく。
森の木々が途切れた先には、奇岩の並ぶ草原が広がっていた。そしてそこには所狭しと大量の妖精が遊んでいる。
「……多くない?」「だな」「多いですね」「ええ」
四人が足を進めると、妖精たちはその場を退いていく。能天気な妖精でも、異変解決のできる実力者には迂闊に近寄らないのだろう。
進んでいくと、彼女らの視界に鉄くずが映った。正確には玉兎達の乗ってきた探査船だが、操縦席部分はひしゃげ、六本足も根元から折れており、使えないのは明白だった。今は妖精たちのおもちゃである。
そして、この光景を生み出している元凶の姿が見えた。
巨大な鉄の彫像、それに命が宿ったかのような存在。躰を覆う鉄はただの鉄なんかではなく、玉鋼か何かかと思わせる最上級の金属のよう。翼も鋼に覆われているが、同時に飛ぶためのしなやかさも併せ持っている。冠の如き角は、妖力の類とも違うような超常的な力を生み出しているようにも感ぜられた。
茫然としている華扇の袖を、霊夢は引っ張った。「行け」と言っているのである。またこの子は……と思いつつも、華扇はクシャルダオラに近づいていった。
クシャルダオラも華扇と後ろの三人に視線を向けているが、敵意は感じられない。近づいてくる華扇のほうに、目を向ける。
華扇は鋼龍の周囲に飛ぶ妖精たちをどけながら、彼女に近づいていった。そして、
『ちょっといいかしら』
そう、クシャルダオラに言葉を送った。
鋼龍はすぐに辺りを見回し、声の主が目の前の人間であることを悟る。
座っていた彼女は立ち上がり、華扇に向き直る。それに後ろの霊夢たちは構えるが、彼女は意識していない。
そして、10分ほど華扇と鋼龍の会話が終わると、彼女は笑顔で振り返ったのだ。その顔に唖然とする霊夢たちに、華扇はこう言った。
「大丈夫、どうやら私たちが思っていたよりよっぽど生き物らしかったようだわ」
その後、博麗神社にて華扇は、クシャルダオラがここに来た理由を三人に話した。
曰く、彼女―――クシャルダオラの性別が雌だったことより―――は生まれてからずっと同じ場所で過ごしてきて、自分の命を脅かしかねない龍と戦い続け、凝縮された龍のエネルギーを取り込み、他の個体より大分長生きしたこと。長らく番を待っていて、ようやく自分のお眼鏡に適う雄を見つけ、彼から色々なバイオームについて聞かされて興味がわき、産んだ子供が巣立ちしたので番の話に聞いた場所を探していって、ここに来たという。
色々ツッコミどころはあるが、別に強く縄張りにしたいからとかそういう理由ではなかったようだ。
また華扇はクシャルダオラの様子について、
『強い凶暴性は感じない。こちらから手を出さなければ大丈夫だろう』
と言った。数々の動物を飼っている華扇が言うのだから、間違いないだろう。
それを聞いた早苗は、自分の仕える神様たちに伝えると言って、帰っていった。
残った三人は、クシャルダオラの情報を広めるために動いていくとのことで一致した。
鋼龍と交流!
すいません(´;ω;`)
ではまたいつか
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい