鋼鉄は泡沫の幻想に坐す   作:柴猫

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サンブレイクもいいけどダークソウルもちょっと興味あるなと思うこの頃。




枯れたひまわり畑は、夏の終わりを告げる兆し。やかましかった蝉たちも、今は他の動物たちの腹の中。その動物たちの中には、異世界の生物もかなり混じっているのだろうか。

 

だからといって、人間たちがすぐに元気になる、というわけでもない。

外の世界では地球温暖化だがなんだかの影響で、夏の暑さがかなり厳しくなっている。外の世界のあらゆる常識を否定する博麗大結界も、猛暑を妨げるほどには出来ていない。

実際、外の暑さで幻想入りしてきた花たちもよく見かける。彼女達が花を咲かせる場所が奪われるのは憂うべきことだが、幻想郷で花が多く咲き乱れるにしたがって私の力が強くなっていくのを感じると、どうしようもなくやるせなくなる。ここ最近は狩猟世界という未知の異世界からも花がやってきているので、この思いに沈む時間も多くなってきている。

 

 

例え異世界からの異物と決められても、花は花。

私にとって花は愛すべき存在。そこにどこからやってきたか、なんてつまらない壁はない。例え平行世界の植物たちの花であっても、私は愛そう。

 

花は魂のひと時のゆりかご。それを愛することによって、私は妖怪としてこの世に存在し続けてきた。花の持つ魔性の魅力、狂気といっても差し支えないかもしれない。

 

 

 

 

あばら家となった向日葵の傘の中で、一本の花が寂しく枯れていた。

今はこの子が悠々と咲き誇るに適した夜であるのに、夜に染まっていた茎にはもうなんの光沢も残っていない。明るさと暗さを兼ね備えたまさに桃色の星ともいうべき大輪の花は、少し指を触れるだけで地面へと堕ちた。

陽の光が花弁に少しでも直射してしまうと、そこから茎、葉、根までもが瞬く間に枯れてしまう。あまりにも繊細すぎる特徴が、落陽草の花の希少価値を高める一因でもある。

夜にこの子が放つかぐわしくも儚げな香りは、ここ最近の私の癒しでもあった。減りゆく花の将来への悲観も、この香ばしさで体すべてを満たしている間は忘れることが出来た。

 

でも枯れてしまった以上、もうあの匂いを味わうことは難しい。落陽草自体なら幻想郷を探せばたくさんあるだろうが、花をつけるのはごくごく一部の個体のみ。

それに口うるさい賢者どもがあちらからの文物の流入を制限しているのもあって、花そのものを入手するのも難しい。

 

 

こめかみを押さえながら、しばし考える。

こんなことをした輩は当然、昼間の古龍だ。悪意なしに花を傷つけたのなら睨みつける程度で済ませるが、今回の花は私のお気に入り。徹底的に虐めてやるのが花の妖怪としてのプライドであり、我儘でもある。

でもあいつの力を見る限り、そう簡単に復讐は決められないだろう。風を操る力はともかく、あの鋼の肉体の強靭さは鬼を超える。接近戦での勝ち筋は薄い。かといって遠距離戦に持ち込んでも、龍の頭蓋骨を背負った巨大蟹を吹き飛ばした風弾を撃たれては花畑が危ない。

 

……面倒ね。胡散臭い妖怪どもが〝幻想郷の守護者〟に仕立て上げるだけはある。外からのみならず、()()()()もってこと?

 

「腹立たしい……」

 

ひとまず枯れてしまった花たちを土に還して、落陽草の花の遺骸を片手で包む。

花畑の向こうでは残暑の鬱憤を晴らすためか、派手な光の下で幽霊たちのライブが行われている。別にここは私の居住地でも何でもないからライブなど好き勝手にやってもらっていいのだが、今日ばかりは少しイライラが刺激される。後で楽団と遊ばせてもらおうかしら。

 

「……ん?」

 

ふと手の中の枯れた花を見てみると、微かな温かみを感じる。

右手を開き、桃色の花弁の中を手探ると、

 

「まぁ、これは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花畑のはずれ、既に枯れてしぼんだ向日葵たちとはまるで正反対の音楽が、私の体を揺らす。

 

「いやー、久々のライブもいいもんだな!」

 

人里からやってきた多くの楽団ファンのテンションは、少し前の夏の暑さを思い出させるほどに過熱していた。

夏と言えばプリズムリバーのライブ。この人気ならそのうち春告精(リリーホワイト)のように夏の季語になりそうだ。

 

「何度か廃洋館にいたずらしに行ったけど、ここまで騒がしくは無かったなー」

 

「あたいはこの位のほうがいいけどな。特にメルランの演奏は癖になるぞ、なあお前ら!」

 

「それより、プリズムリバー三姉妹ってあそこの廃洋館が家だったのね。今度お邪魔しましょうよ、サニー」

 

「お、あいさつ代わりのイタズラね?もちろん!……ところでルナは何してるの?」

 

「……え、ごめん。ライブの音がうるさくて音を消してたわ。で、なんか言ったかしら?」

 

ただ余計な奴が六匹ついてきちまったのは誤算だったが。まあ、四匹くらいいてもいなくても同じだろう。

 

 

クシャルダオラがプケプケを吹っ飛ばした後、のびていたメディスンが起きたので事情を聞いた。曰くプケプケは花畑を我が物顔で闊歩していたらしく、プリズムリバーのライブに加えてメディスンも攻撃されていたらしい。

そんな蛮行ここを気に入っている幽香が許さないのでは、と思ったが幽香はプケプケを攻撃することは無く、プケプケも幽香を見るなり即座に逃げてしまうため、メディスンはいいようにいじめられていたらしい。

 

まあ、その毒妖鳥はクシャルダオラの目の前でエタニティラルバを攻撃してしまい、鋼龍の怒りを買ってお星さまになっちまったわけだが。

ライブの邪魔者を吹っ飛ばしてくれた礼だと、私たちは久しぶりのライブに無料で招待された、という次第だ。

 

「お、ラルバにクシャもいるじゃないか。こんなところで何してるんだ?」「チルノちゃん、さっきからずっといたよ?」

 

「二人とも久しぶりー。あれ?皆も招待されたっけ」

 

「いいえ?クシャを探しに行ったらこんなライブの特等席にいるから、姿を隠してここまで来たのよ。そういやチルノは?あんた、湖にもいなかった気がするけど」

 

「あたいたちはクシャの家でずっと帰りを待ってたんだ。でも、夜になっても帰ってこなかったから迎えに来たんだぞ」

 

横になっているクシャルダオラの背中に乗ったチルノは、どこか周りを気にしているように見える。

 

「あーなるほどな。幽香がいるからビビッてたんだな?」

 

「なんだとー!?サイキョ-のあたいが怖気づくわけないだろ!」

 

「そういえばチルノ、前に日焼けしてるときに私と戦ったあと、幽香に喧嘩を売ってコテンパンにされてたよね」「うぐぅ!?」

 

痛いところを突かれたチルノが呻きながら、鋼龍の背中から転げ落ちる。こんだけ傍で騒がしいのに、こいつはプリズムリバー三姉妹と、ドラムの付喪神をじっと見つめている。大した集中力だ。

 

「……触っても平気なの?」

 

「ああ、体を触るくらいなら平気だぜ。ただ翼とか角はやめた方が良いぜ。そうだろサニー?」「そうね」

 

「ほんとに体全部が鉄……これ本当に生き物なのかしら。中に妖精が入ってて動かしてるとかじゃないわよね」

 

「お前それ自分のこと言えないだろ」

 

確かにクシャルダオラの姿形は生きた鋼と呼んでも差し支えないが、幻想郷だと道具が動いたり喋ったりするのは割とよくあることだ。目の前の毒人形もだし、プリズムリバー三姉妹はどうか知らんが、小槌の影響で動き始めた楽器の付喪神たちに、知り合いの地蔵もだ。後は小傘もか。

渡しの死神から聞いたことがあるが、あの説教臭い閻魔も元は地蔵だったらしい。信じられない話だけどな、元が同じでああも違いが出るなんて。

 

 

 

「探したわ、こんなところにいたのね」「「「「「「「うわぁ!?」」」」」」」

 

聞き覚えのある声に振り返れば、そこに知り合いが立っていた。

 

「……珍しいな。お前がわざわざライブを見に来るなんて」

 

「そうかしら。近くでこんな騒々しい音楽が鳴っていたら、誰でも寄ってくるんじゃない?」

 

そう言って幽香はステージ上を覗いた。三姉妹は演奏に集中してるのか笑顔だが、ドラムを叩いていた雷鼓だけが視線に気づき、こっちに向かって目を細める。小槌の魔力に気づいたことといい、あいつは第六感みたいなのが強いような気がする。霊夢に比べれば可愛いもんだが。

 

「何よりも楽しそうなこと。私もお邪魔させてもらおうかしら」

 

「おいおい、これはライブだぜ。ただの馬鹿騒ぎじゃないんだぞ」

 

「花でも咲かせればいいわ。

 音の持つ魅力と花の持つ魅力は同質だもの、見分けのつかない奴らにはそれで充分よ」

 

嘲笑するような感情を含めた微笑みに、後ろの幼女たちは抱き合いながら怯えている。

かくいうわたしも内心びくびくしてる。師匠と共に初めて会った時からずいぶん経ったはずだが、こいつが出す、魅かれるようでありながら圧倒的な威圧感はどうにも慣れない。

食虫植物に誘われた虫も、こんな感覚なのだろうか。

 

「まあ、ライブになんか興味はないわ。私が用があるのは、そこで見入ってる鉄塊よ」

 

いつもと変わらないさりげない幽香の侮辱に対して、クシャルダオラはなんら反応を示さない。

それを見た幽香は、怯えている七人を無視してクシャルダオラのすぐそばに立った。観客に気づかないように小型化している鋼龍と、背の高い幽香が並ぶ様子はどこか不気味というか絵になるというような。

とにかくいつ戦闘が起きても撤退できるように、私は箒を手に取った。

 

 

幽香はクシャルダオラの体に手を当て、鱗を一枚ずつなぞっていく。ここで初めてクシャルダオラが視線を幽香に向けた。

氷のエネルギーを秘める鋼龍の鱗はチルノの体温よりも冷たいはずだが、幽香はそれを感じている様子はない。

私含めた八人が訝しんでいると、落とし物が見つかったようにある鱗の一枚に手を置いた。何度かそれをなぞり、正確な位置を確かめているようだ。

 

「なぁ、何を探してるんだ」

 

「いいから黙ってなさい」

 

幽香はその鱗へ指をはじくように当てた。

 

 

  リィィィィン……

 

澄んだ鈴の音が私たちの耳に響く。音量自体は非常に小さいものであるはずなのに、一瞬ライブのざわめきが消えたように感じたのは錯覚だったのだろうか。

クシャルダオラは握られた幽香の手をじっと見ていたが、彼女がその中身をポケットに入れると視線を外し、ライブへ戻ってしまった。

 

「ふふ、あなたには感謝しないといけないわね」

 

「おいおい、今何をしたんだ?」

 

「何って……これに付いてた花粉を振り落としたのよ。凍ったままくっついてたから、ちょっと力を込めただけ。

 こんな音が鳴るのは想定外だったけれど」

 

幽香はポケットに人差し指を入れ、目を凝らしてようやく見えるような桃色の花粉を取り出した。

 

「あれ、それって落陽草の花の花粉じゃない?」

 

「妖精の癖にカンがいいわね」

 

感心したようにラルバを一瞥して、鋼龍と顔を合わせる。

 

「鳥でも虫でもないのに媒介者になれるなんて。あなた、よっぽど花に好かれてるのね」

 

『そうか?妖精のほうが好かれるし好きでもあるが』

 

幽香の言葉をラルバがクシャルダオラに言い、クシャルダオラの口の動きに合わせてラルバが物を言う。

何度見ても不自然さの拭えない光景だが、妙な違和感も感じる。

 

エタニティラルバという妖精は、あんなに威厳があったか?巣へ何度か会いに行くときにチルノやサニーたち他の妖精が訳してくれることはあったが、こいつだけ貫禄が重いというか。適当に訳してくることが多い他の妖精たちとは、何かが違う。

 

 

 

神と言われても不自然じゃないくらい、威風に満ちている。そんな印象が伝わってくるのだ。

 

 

『お前を見ていると、前にどこかで会ったような気がする』

 

「引きこもってた時に見かけたのでしょ」

 

『違う。故郷にいたときだ。幼体の頃、お前みたいに花の匂いがする奴と会った気がする。背が低くて、黒かった。お前よりもひ弱で、殺気立ってなくて頭が良さそうで「わー!違う違う!今のはクシャが言ったんだって!」』

 

首根っこを掴まれたラルバが必死にもがくが、幽香は冷や汗が出るくらいににこやかな表情でラルバをビームで消し飛ばした。

 

「ぎゃあああああ!!」「「「「「「ラルバー-!!」」」」」」

 

 

 

…やっぱり気のせいだったか。鋼龍と視線を合わせながら私はそう思った。




その後ライブは怒れる花妖怪と雷様との喧嘩で中止になったとさ。
夏だというのに中々忙しい、もっと書きたいんですけどねー。現実は甘くない。
護石の排出率も甘くない。

作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。

  • このまま続ける(頻度は相当落ちる
  • モンハン東方で新しく書き直す
  • モンハン東方はもう出さなくていい
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