でもプロットはだいぶ形が固まってきたので、来年は一定のペースを保ちたい。
初詣気合いれるか……
今回会話多めです。
鈴仙と話していたクシャルダオラは、見目麗しい少女がいつの間にか後ろに立っているのを見据えていた。
絶世の美女、蓬莱山輝夜はそんな視線を受けながらも遠慮なく、この上なく優雅に歩み寄る。
「……あら、この子生きてるじゃない。付喪神を買ってきたの?」
「え、ええと……」
鈴仙がしどろもどろな態度なのには訳がある。
最も穢れた存在である蓬莱人に自ら進んでなるほど、この姫は好奇心が強い。常識の通じない古龍がいることを彼女が知れば、絶対に抜け出して会いに行くだろう。従者である永琳はそう考え、鈴仙やてゐに口外することを禁じていたのである。
『イチヘイソツ、こいつは誰だ』
『こいつ!?仮にも姫様なんだからもうちょっと……待って私のことなんて言った?』
『イチヘイソツ』
『うん、違う』
波長を用いて声を出さずに会話する二人に、輝夜はキョトンとしている。
「こんなところにいらっしゃったのですね、姫様」
「あら永琳」
いつの間にか輝夜の後ろに立っていたのは、赤と青で半分に分かれた模様の服を着た女性だった。先ほどてゐを渡した時に会っていたが、既に治療は完了したようだ。
「永琳ってば相変わらず意地悪ね。こんなに面白そうな妖怪がいるのに、一言くらい教えてくれてもいいじゃない」
「教えていたら、抜け出してでも会いに行くのでは?」
「?ええ、もちろん。最近やることが無くて退屈してるのよ」
「それ抜きにしても十分退屈しませんでしたけどね……」
長らく姿を見せていなかった仙霊が地獄の女神と手を組んで月に攻め込んできたのだから、最近は十分忙しかった方である。永琳はそう感じていたが、何も関われなかった姫としては、未だ退屈は続いているのだろう。
まさしく輝夜もその通りであり、久しぶりに非日常がやってきたことに少し興奮しているのだ。
「それで?この子はいったいなんなのかしら。普通の妖怪とは明らかに違うようだけれど」
もはや姫の好奇心を止められないと悟った永琳は息をついた。
「……この子は私たちとは違う次元から来た存在です。既に一年前には来ていました」
「あらそうだったの。早めに会えて正解だったわ」
「ええ。あと十年は隠し通したかったです」
微笑みをたたえる輝夜の視線に、永琳は参ったと言わんばかりに、蚊帳の外だった鈴仙に指示をする。
「鈴仙、姫様とその子の波長を合わせてあげて」
「え?は、はい。分かりました」
失礼します。と輝夜に人差し指を向け、師匠と比べれば些か短すぎる波長を古龍のそれに合わせていく。
『……なんか気持ち悪いな、お前』
『開口一番にそれはないじゃない!これでも殿方には好かれていたのよ?』
『お前に……人間の雄の気が知れん』
『おほほほ。永琳ちょっとこいつしばいてもいい?』
「育ちが知れますよ姫様」
早くも一触即発となった状況に、合わせなかった方が良かったのかな…、と後悔の念が起き上がってくる。
師匠は「鈴仙」と短く呼びかけ、師匠の波長を重ね合わせる。
『今日はわざわざ来てくれてありがとうね。早速だけれど、いろいろ話を聞かせてくれるかしら』
『お前も……さっきそいつと話したが』
『あら、そうだったの。じゃあそれ以外の事を聞いてもいい?優曇華には後で聞いておくから』
頬を膨らませている輝夜とは正反対に、永琳はスムーズに本題へと話を持っていく。
クシャルダオラは表情こそ変わらない―鋼だから表情筋なんてそもそもないのだが―が、目の前の二人に対して引き気味である。
『…そうねぇ』
その様子を見た永琳は懐に手を入れ、何やら白い金属を取り出した。
『せっかく来てくれたんだから、おもてなしの一つくらいはしないとね』
『!それは鉄の蜘蛛の甲殻か?』
『そうよ。良かったら食べる?』
彼女は永琳が差し出した金属片をしきりに嗅いだ。
鈴仙やてゐと違い、彼女が永琳と会ったのは今回が初めて。親交は深くなく、ゆえに毒が仕込まれていないかを勘繰るのは普通の反応だろう。
最も、恐れるゆえに最初から毒殺を仕込むほど永琳は愚かではない。妙な匂いは感じず、口でとって咀嚼を始める。
『……それおいしいの?』
『良い鉄をたくさん取らなければ生き残ることは出来ん。欲を言えばもっと濃い味付けがいいな』
金属に濃い薄いがあるのか。この場にいる全員がそう思ったが、それを言い出すといつまで経っても始まらないので心の中でのみ思うことに留める。
ノートとペンを取り出した永琳が座布団に座り込み、輝夜も鈴仙の用意した座布団に正座する。「お茶を用意しておきます」と鈴仙が出ていったのを、クシャルダオラは見ていた。
『あいつがいなくなったら私の言葉が分からなくなるんじゃないか』
『それは平気よ。私の能力で私たちの波長とやらを〝永遠〟に続くようにしたから。むしろこのままずっとの方が良いかもね、何かと便利だし』
『むず痒くてたまらないからやめろ』
『んもう、相変わらずそっけないわねぇ』
もはや幻想郷の住民の異次元の能力には驚かなくなったクシャルダオラの様子も、永琳は記述していく。
『じゃあ、質問させてもらうわね。普段はどんな生活をしているの?』
『ふむ。いつもは巣で妖精と遊んでいるが、気分が乗ったら遠くに出かけるな』
『遠出するときは大体どれくらいの頻度かしら』
『日が昇るのが十回に一回くらいだな』
『意外と巣での生活が大半、と。ちなみにどこに行ったことがあるのかしら』
『……華扇の巣には何度か行ったことがある。あとは紅白の巣にも。他は…………チルノの住処あたりか?あ、この前は花畑に行ったな』
妖怪の山、博麗神社、霧の湖、太陽の花畑に、今いる迷いの竹林。一年前と比べると、かなりの速さで進出を開始していることが分かる。これを脅威と取るか、純粋に順応性の高さに驚くべきか。
永琳の質問が途切れたのが分かると、滑り込むように輝夜が口を開いた。
『ねえねえ。あなた契りを結んだ相手とかはいるの?』
『チギリ?なんだそれは』
『…こんなことも分からないの?結婚した相手はいるの?って聞いてるの』
『それならそうと言え』
『あなたの方がそれくらい知っておきなさいよ。人間たちの常識よ、じょーしき』
『意味が分からん…それで、ケッコンとはなんだ』
ガクンとうなだれる輝夜の前に、鈴仙がお茶を「どうぞ」と差し出す。風味の良い湯気を出すそれを永琳の前にも置く。
『さっきから何を話されていたんです?』
『聞いてよイナバ―。こいつったら失礼なだけじゃなくて趣も分からないのよ』
『……それは当然のことでは?』
『優曇華の言う通りですよ、姫様。その龍は賢いですが、地上一般の龍ではないですから。どちらかと言えば、獣ですね』
『あらそうなの?』
ああ、とクシャルダオラは短く応える。
『そういえば名前を聞いていなかったわね。私は蓬莱山輝夜。あなた、名前はあるの?』
『?ない。だが人間は私をクシャルダオラと言うな。私を呼ぶならそう呼べ』
『ふーん、なるほど。じゃあ短いからクシャって呼ぶわね』
『その呼び方は妖精にしか呼ばせん。やめろ』『なんでよ!』
また怒り出した輝夜を横目に、永琳の質問は続く。
『はいはい、続けるわよ。次はあなたの能力についてなのだけど、風を操れるというのはどの程度なのかしら』
『私は風の扱い方を親から教わらなかったからな……同族の中では相当下手だと思うぞ』
『あなたがここにやってきた時は嵐が吹いていたけど、あれはあなたが起こしたの?』
『私は無用に風を起こさない。そうしないといつ襲われるか分からなかったからな。まあ、それでも自然に出来ていたのを吹き飛ばすくらいは出来る。もっとも、角が折れていてはもう出来そうにないがな』
あちらの世界の文献に〝一部の古龍の角は彼らの特殊能力と深く関係している〟と記されていたが、本人(龍)から聞けた以上事実であることは証明できた。
まさか自分から折り取って検証なんてすれば―不可能ではないだろうが―色々とリスクが高い。非干渉を貫いたあの騒動が、巡り巡って自分たちの利になっているのは本当に幸運である。
永琳は心中で呟きながら、白紙のノートにペンを走らせていく。
その様子を横目で見ていた鈴仙が、控えめに手を挙げた。
「あの、師匠。私からも質問していいですか?」
「あら、いいわよ」
『ねえ、さっきの話の続きを聞きたいんだけど』
飽き始めたのか横になり始めたクシャルダオラに、鈴仙は呼びかけた。
『なんだイチヘイソツ』
『またあんた……!これ以上私に変な名前をつけないでくれる!?』
『え……もしかしてイナバじゃ嫌だったの…?』『え?』
『ああそうだったのね……ごめんね、今まで気づいてあげれなくて……』
輝夜はおろおろと目を袖で覆い、泣いているような微かな嗚咽を漏らす。横になりがらもクシャルダオラは輝夜の方に顔を向け、永琳は何かを思いついたように目を開いた。
『泣かないでください姫様……鈴仙に優曇華院なんて長いミドルネームをつけた私の方が、彼女の心を傷つけていたというのに……今の今まで気づかなかったことの、なんと愚かな……』『お師匠様まで!?』
『…………ああ、そういう』
『永琳は悪くないわ……地上の兎たちと同じ感覚でイナバなんて無責任な名づけをした私の気配りの下手さ……ああ、なんて愚かな女』
『姫様に責められる道理なんて微塵もありません!……ただ私が好きな地上の花の名前をどうしたも入れたかったばかりに……ごめんね鈴仙……』『ごめんなさいね……』
『うぇぇぇえぇぇ!??お、お二人とも頭を下げないでください!姫様の名づけも素敵ですし、お師匠様の考えてくださった名前も私なんかには勿体ないくらい素敵ですから!ですから、どうか!!』
パニック状態に陥り所々会話が聞こえなくなるくらい謝罪の言葉を述べる鈴仙と、既にウソ泣きを辞めている輝夜と永琳が意地らしい笑みを浮かべている場面に、クシャルダオラはブフゥーとため息をついた。
なるほど、これがチルノの言っていた三文芝居か。時々紅魔館の吸血鬼がああなると言っていたが、なるほど確かに見てられない。
『……ごほん。それはともかく、さっき質問しようとしてたんじゃなかったかしら』
『あ、そうでした。
クシャルダオラ、あなた子供の頃に親を殺されたって言ってたわよね』
『ん?ああ言っていたような気がするな』
『あら、割と悲惨な幼少期を送ってたのね』
永琳は再びノートを取り始め、輝夜はのんきにお茶を啜る。
『あの後、あなたはどうやって生き延びてきたの?いくらあなたが強いからって、龍結晶の地のモンスターはすごい強いんでしょ?』
むくりと、鋼の体を起こしクシャルダオラはその場にいる三人と、目を合わせる。青々とした眼光は、顔を合わせている鈴仙よりも、後ろにいる輝夜と永琳にこそより深く差し込んだ。
数秒後、彼女は、続いた静寂に紛れるほど小さく息を、永く深く吸った。
『昔は、あの龍結晶もそこまで大きくはなかった。溶岩ばかりがあふれ出ててな、よく火傷したものだった。生き物もほとんどいないようなところだったな』
『それで、貴方は生き延びることが出来たの?』
『いや。滅ぼす龍がしつこくてな。あの時の私では手も足も出なかった。逃げることしか出来ず、数えきれないくらいには死にかけた』
彼女はそこで振り返り、薄い三日月を見た。鈴仙には見慣れた光景だ。
永く生きた存在が、積み重なった記憶の層から、無心に思い出を掘り進めているときの表情。
『……あなたも、そんな顔するのね』
懐かしむような輝夜の声色に、彼女は一瞬だけ振り返り、話を続ける。
『ああ。こうして過去を振り返ることなぞ、故郷ではそんな暇は無かったな』
『永く生きるには、過去を振り返ることも大切よ。時の流れっていうのは、あるべき自分も流していってしまうわ』
『ずいぶん詳しいな』
『これでもあなたより長生きしてるからね』
『……お前らの妙な雰囲気はそういうことか』
抱えていたしこりが取れたのか、流暢に彼女は再び語り始める。
『とにかく鉱石を食べるところから始めた。奴の攻撃を受け止めるには、もっと重く硬くならなければならなかった。
大きくなるにつれて、自然と私の周りに風が集まるようになった。そいつは嵐を呼び奴を呼び寄せてしまってな、抑制するには骨が折れた。この力のせいで何度死にかけたことか』
『風の能力って、応用次第じゃ色々使い道がありそうだけれど?』
『それは私も考えた。結局、ブレスの威力を上げる方が簡単なことに気付いてな。足りないものは自分の体で補うことにした』
『力任せというか……でも、実際それが正しかったのかもね』
永琳の納得した声に、彼女も頷く。
『重さと硬さ、ただひたすらにそれを得るために私は生き続けた。あの龍結晶が大きくなってからはあいつ以外にも多くの竜がやってきたが、あの時の私にとっては強さを得るための踏み台でしかなかった。
片っ端からそれらを狩り続けた。巨大な奴も小さい奴も、私と同じだった子供も、全てな。何匹狩ったか、もう覚えていない』
重い沈黙が三人にのしかかり、鈴仙は肩を震わせた。蛇に睨まれた蛙のように。
『そんなことを繰り返していた時だったな。初めて人間にあったのは』
今年最後の小説がこんな締まらないものでいいのでしょうか?
作者の執筆意欲が消えて投稿を再開できるかもかなり怪しいので、今後のプランをどうすべきか、読者の方々の意見を聞きたいです。
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このまま続ける(頻度は相当落ちる
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モンハン東方で新しく書き直す
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モンハン東方はもう出さなくていい