ゲーム世界の敵キャラに憑依したから死なないために奮闘する 作:赤山大和
―――朝、目が覚めると世界が 変わっていた。
これは冗談でも夢でもない。
ホコリだらけのアパートの自室で寝ていたはずなのに豪奢なベッドで寝ていたのだから。
鏡が見当たらないが固く厚くなった手のひら。
灰色に見える髪。
これは俺の体ではないという思いとこれは俺の体だという思いが混ざる
混乱する俺の頭には2つの記憶が浮かび上がる。
1つは現代の日本で生きていた『霧島直哉』としての記憶。もう一人はこの体の持ち主であるゲオルグ・ガーゼンとしての記憶だ。
霧島直哉の記憶ではこの男、ゲオルグ・ガーゼンは18禁ゲーム『八王戦乱記』の物語の中盤でルートかサブイベントの進行によって戦う事になる敵キャラだ。
地方領主のガーゼン伯爵家の長男で次男と次期当主の座を賭けて争う。
現当主である父の正妻から産まれた次男と側室から産まれた俺の次期当主を賭けた争い。
それによって荒れた領地や犠牲になる領民の姿を見た三男であり父と使用人の間から産まれたアルト・ガーゼンが友人である主人公に協力を求め、アルトを新しい領主にすべく主人公達に倒される。
もしくは、ゲオルグの婚約者であるエリス・バールが主人公のサブヒロインの一人となる過程のイベントで敵対して倒される。
…………改めて思うと主人公の行いに問題があるな。
事情を考えずに領民が困っているから手を貸してという三男の言葉で此方を攻撃したり、人の婚約者を自分のヒロインの一人にすべく倒したりと。
まぁ、今はいい。
それよりも考える事は今後どうするかだ。
まず、現在の俺は15歳。
来年には物語の前半の舞台である学園に入学する。
主人公が入学するのは三男のアルトと同じ歳。
アルトが一年の時に俺は三年のはずだから原作開始までは三年の猶予がある。
その間に生き残るための基盤が必要だ。
戦乱の世になるのだから強くなることは必須。
強くなる方法に関しては原作の知識を元に考えるとしてだ。その為に何をするかだ。
今の俺は学園の入学に向けて鍛練、レベル上げに勤しむ予定であった。入学した時点でレベルが低ければ馬鹿にされたり強者に媚びる必要がでるから貴族としては必要な事。
ならば家を出てこの一年で強くなれるだけ強くなるべきだ。
そうなると思いつくのはダンジョンの攻略か。
この領地にはダンジョンが1つ。それほど離れていない隣の領地にもう1つ。それに、ゲオルグ関連のサブイベントを終えた時に手に入る報酬やアイテムで手に入れられる物が幾つかある。
物語の中盤で手に入るそれらを初期から手にすれば今後はかなり楽だろう。
問題は戦力か。
ダンジョンの攻略は当然力がなければ出来ない。
それにこの領地ではオーク等のそれなりに強いモンスターも出る。それに対する戦力をどうする?
…………………金が有ればいけるか?
このゲームでは奴隷がいる。
サブヒロインに奴隷として購入するキャラが何人か。
それに戦争パートでは奴隷部隊を戦力にもできた。
ならば、奴隷という戦力でダンジョンの攻略が可能なんじゃないか。
それにイベントとアレを手に入れられれば。
悪くないか?
ならば後はどうやって金を得るかだ。
今まで貯めていたお金や今回の支度金だけでは不安だ。
何かお金になりそうなモノは………アレを売るか。
アイツも喜んで買うだろう。
そうと決まれば後は………
コンコンッ
ドアを叩く音に思考を切り替える。
「入れ」
「失礼します。おはようございますゲオルグ様」
入ってきたのは俺の専属のメイドである少女カタリナだ。長い銀色の髪に褐色の肌。
この辺りの地域では珍しい色合い故に忌避されていた所を拾った俺が信頼し俺に忠誠を誓うメイド。
原作での行いとゲオルグとしての知識からして裏切る事はないだろう。
「ああ、おはようカタリナ」
「こちらが本日の朝食となります」
そういってサンドイッチの載せられた皿を机に置き、俺の衣服に手を掛ける。
着替えさせ易いように立ち上がり彼女に身を任せる。
俺の着替えを同じ歳の少女にさせる事に気恥ずかしさを覚えるがこれまでやってきたことだから急に変えるというわけにはいかない。
しかし、次期当主の俺に付いているメイドが一人だけで食事も自室でと。
やはり、跡目の争いはこちらの状況が悪い。
側室である自分の母親が既に死んでいるというのも大きい。原作で二番目の弟と拮抗したのはゲオルグの実力と学園でのやらかしで弟の元を離れた奴が多かったからなのだろうしな。
やらかしていない今の弟の支持者はこの屋敷のほとんどだ。
さて、どう動くかな、