ゲーム世界の敵キャラに憑依したから死なないために奮闘する 作:赤山大和
朝の食事を終えた俺は今後の行動を決める。
先ずはこの屋敷から出て行くとする。
「カタリナ。これからこの屋敷を出る。別荘へ向かうつもりだ。準備を頼む」
「ゲオルグ様。それは………」
俺の言葉に戸惑うのはわかる。
別荘と言うのはこのガーゼン家の所有する領地の隅にあり、跡目争いに負けたり罪を置かしたガーゼン家の一族の者を幽閉する為の場所だ。
俺が弟と争い敗れたのならばそこに幽閉される事になる筈の場所に今から向かうと言うのだからな。
もっとも、今後のアイテムの回収や物語を考えれば悪くはない選択なのだ。
なんと言っても彼処には隠しダンジョンがあるはずでそこには欲しいアイテムが幾つもある。
俺の決意が硬いとみたのか荷造り任せたカタリナを横目に部屋を出る。
当主である父と弟には話を通さないとだからな。
廊下を歩いて暫くすると運良く弟であるギムルと出会う。弟は俺とは違い父と同じ水色の髪で少しばかり太っていたりする。
「おや、兄上一人とは珍しい。いつも一緒にいるメイドはどうしたのですかな」
ギムルの後ろには何人ものメイドが侍りそれはこの屋敷での俺と弟の差を示している。
長男の俺の周りには人がいないという現状。
正妻の子である弟の支持者が多いという事実。
やはり、今争うのはないな。
「ああ、カタリナには荷造りを任せている」
「荷造りですか?」
意外な返答だったのか戸惑う気持ちはわかる。
「ギムル。俺は此処を出て別荘に住むつもりだ」
「兄上、それは……」
俺の言葉に驚いた表情を浮かべるが理解が及んだのかその顔に喜びの色が混じる。
「父上にもこれから話すつもりだ。ただ、出て行く上で色々と必要な物があるし、せめて学園くらいは行っておきたい。そのための支援や生活に困らないように金銭的な援助を求めたいのだ。お前の方からも義母に伝えて貰えないか?」
家を出る手切れ金と考えればそれなりに払っても惜しくはないだろ?
「……ええ。直ぐに伝えますよ。確かに必要でしょからね。安心してください。別荘に移れば色々と必要な事は理解できますし出来るだけの支援は約束します」
言外に次期当主の座を渡すと伝えているからか素直な反応だ。
「ありがたい。それならば俺も安心して家を出れる。まぁ、婚約者との話し合いも必要だから正式な廃嫡となると学園を出た後とかになる可能性もあるが」
「ああ。そうですね。兄上には婚約者も居られる訳ですしその方が都合が良いかもしれません」
俺の婚約者であるエリスの家は没落貴族というのが現状だが没落する以前からの約束でありそれ破棄する事は出来ない。
俺が廃嫡となり自分がエリスの新しい婚約者となる可能性やデメリットを考えて納得の意を示す。
俺とエリスが結婚した上で大人しく別荘暮らしをするという未来に賛同しているのだろう。
自分が新しい当主となり家の力を強める相手との結婚を考えているのかもな。
「後は別荘で過ごす上で使用人を雇ったり近隣の村に多少の干渉をする事を許してもらわないとな。場合によっては近くの街で冒険者にでもなるか」
別荘周辺の領地を貰って分家扱いしてもらえれば最良なんだがな。
「ああ、冒険者ですか。それもいいかも知れませんね。それと近隣の村は別荘に住む方の領地扱いされているとも聞きますから干渉するのは問題ないと思いますよ。領地扱いしても怒られる事もないでしょう」
冒険者と言った辺りには多少の嘲りが見えるが意外と寛大だ。現状では当主の座を争う前だしさっさと隠居しようとしているから敵意もないのか?
貴族の中で一定数が自由な冒険者に憧れると聞くしその類いと思われたか?
どちらにせよ悪い事ではないな。
目に見えて敵意が薄れているのは良いことだ。
「ま、とりあえず父上に話さないとなんでこれから行くつもりだ。反対はされないだろうが念のためだ。お前も一緒に説得を手伝ってくれないか?」
仲良く父上を説得しようぜ。
「喜んで。説得が上手くいかなければ次は母上とも一緒に行きましょう」
「それは心強いな是非とも頼む。俺としても良い条件を引き出したいからな」
久しぶりに仲良く話して父の部屋に。
運良くその場にギムルの母親がいたので話しはトントン拍子に進んだ。
俺の話を聞くと熱烈な賛同が貰えたのがありがたい。
結果としては貴族でも数年は生活に困らない支度金と別荘で新しく使用人や奴隷を雇う為のお金を気前良く払ってもらえた。
ただ、外聞が悪いという事とエリスとはギムルではなく俺が結婚した方が都合が良いという事で俺の廃嫡は学園の卒業後という事が正式に決まった。
正式な書類に一筆書いてそれを父上とギムルの母に保管を頼んだがギムルの母は終始笑顔でギムルの嬉しそうにしていた。
さっそく物語を変えてしまったが次の手を打つとしよう。