ゲーム世界の敵キャラに憑依したから死なないために奮闘する 作:赤山大和
親から大金をせしめてホクホク顔で部屋に戻ればカタリナが荷造りを進めていた。
「ゲオルグ様。御当主様はなんと?」
「俺の意思を尊重するとの事だ。馬車も用意してくれるらしいし十分な金銭的な支援も貰えた」
「……そうですか」
少し不満そうな顔で答えるが俺が次期当主の座を降りた事が不満なのか?
だが物語的には当主になっても利がないのだよな。
兄弟で争っても良いことないし。
三男のアルトが漁夫の利を得る可能性が高いのも嫌だ。
少なくともアルトが当主になるよりはギムルの方が当主になるのがベターだろ。
それに別荘に行く事もそこまで悪いことじゃないしな。
そもそも当主の争いで負けたり罪を犯したりした当主の一族の終の住みかといわれるが隠居した元当主が住む事もあるし実際に祖父も晩年は別荘で過ごしていた。
穏やかに暮らせるように環境は整っている。
更には隠しダンジョンや歴代の当主の隠し財産とかもある。
ゲームでは主人公達に奪われたけどな!
しかも、アルトの奴は自分が当主となる見返りにガーゼン家の財産やらアイテムを主人公に渡す事を約束したりするし考えれば最悪だ。
別荘に行ったらアイテムの確保と隠しダンジョンの攻略をしよう。
隠しダンジョンの攻略をする為の戦力については別荘に向かう途中にある街の奴隷商で購入できるかが問題か。
冒険者を雇うのも手か。
数ヶ月単位での雇用となるとあまり高いランクの冒険者は難しいよな。
ランクの低い冒険を鍛えるつもりでいけるか?
原作のキャラクターに会えれば期待できるのだが。
まぁ、それは後でだな。
翌朝になれば親兄弟に見送られて用意された馬車で屋敷を出る。
同伴はカタリナと数名の護衛のみ。
街に付けば護衛は冒険者を雇う予定ではあるが。
少しだけ俺の暗殺とかを警戒していたがその気配は無さそうだ。まぁ、黙って身を引く一族の長男をお金を惜しんでワザワザ暗殺するリスクを背をわないか。
少なくとも別荘周辺で大人しくしているならば害はないわけだしな。冒険者になる事を言ってはあるがそれで有名になったとしても冒険者になるために家を出た放蕩息子として扱えるから次期当主の座に揺るぎは出ない。
むしろ、下手に暗殺なんかしてその事実を知られたりした場合のリスクや暗殺を依頼した相手に作る弱みの方が厄介だしな。
馬車で揺られて暫くすれば事前に連絡を入れておいた奴隷商会にたどり着く。
「初めましてゲオルグ様。私は当商会のまとめ役を勤めていますグラハムと申します」
馬車を降りれば俺の事を笑顔で向かえる奴隷商人。
俺が次期当主の座を降りた事はまだ伝わっていないし伝わっていても俺が貴族で領主の一族である事は変わらないからな。
「ゲオルグだ。さっそくだが見させてもらいたい。ああ、こういう事にはなれてないのでな。時間がかかるかもしれないが一通り見せてもらいたい」
ゲームの原作キャラを探したいからな。
目玉商品とか売りたいのだけ見せられて見逃す事になるのは避けたいし。
原作の数年前だから容姿での判断は難しいかもしれないしまだ奴隷になっていないキャラもいるだろうけどな。
「そうですか。では一通りお見せしますがその場合、欠損奴隷や怪我や傷を負った見苦し者も見せる事になってしまいますが」
「構わない。その欠損奴隷や怪我を負っている奴隷等も相場などを含めて勉強させて貰えるとありがたい」
「……そうですか。ではお値段を含めてお見せいたします」
まずは身の回りの世話を頼む非戦闘系の奴隷等だが女性の奴隷等はその用途故か薄着で扇情的な格好をしている相手もいて少々困る。
エルフ等は確かに美しいが高額で人間も美しい女性は高い。ドワーフは人よりもやや安くや獣人等は種族によってマチマチ。
目玉商品として見せられるエルフは確かに美しかったがこちらをみる目が冷淡で買う気にはなれなかった。
身の回りの世話や屋敷の管理の為に何人かの奴隷の購入は決めたが非戦闘系として紹介された中に原作の戦闘キャラがいたのは驚いたぞ。
そしてこれからが俺にとってはメインである戦闘奴隷の紹介だ。
亡国の騎士、名を上げた元Aランクの冒険者、戦場で恐れられた傭兵等と見せられた相手は確かに強そうだったし今後はこの人達よりも強くならなければならないと考えると厳しく感じる。
「さて、次は元冒険の獣人姉妹ですね。」
そういって出てきたのは黒髪に犬耳と尻尾を生やした少女達。
気が強くこちらを睨む姉にその後ろに控える妹………。
姉妹と紹介されただけでどちらが姉でどちらが妹であるを判断できただと?
「姉の方がマリス妹の方がミリス。供に冒険者ランクはDとまだまだではありますが可愛らしい姉妹をセットでいかがでしょうか?」
名前から確定か。
この2人は原作のキャラだ。
確か非道な貴族に買われて姉妹で苦しみ姉が死亡。
妹は仇を売ったが犯罪者となるのだったか。
姉の能力はわからないが妹は暗殺者ミリスとしてそれなりに強いキャラだったはずだ。
値段もそれなりだし悪くないか。
「そうだな。では2人を買おう」
原作で死ぬ姉を救えるのも悪くない。
「ありがとうございます。では次ですが今度は西の蛮族との戦いで名をあげた………………。」
そのまま紹介が続き他にも原作のキャラをもう1人購入すると今度は欠損奴隷と廃棄奴隷だ。
欠損奴隷は腕や脚がなかったり片目を喪ったりしている奴隷だがその中にも原作のキャラである隻眼の少女がいたので購入。
廃棄奴隷は売れなかったり弱っていたりする奴隷で本当に捨て値で販売されるようだ。
流石にこちらも死にかけている相手を救う余裕はないな。
「最後になりますがこちらは呪われた忌み子のシエル。どんな怪我を負っても死ぬ事もなく体に鱗の生えた呪われた少女です」
出てきたのは髪も皮膚も灰色の紅い眼の少女。
全身に包帯を巻かれその包帯から鱗が覗く。
マジか!
呪い子のシエルってこのゲームの五指に入る最強キャラだぞ。それを捨て値で買えるとか幸運すぎるだろう。
確か蛇神の加護を持つ高い再生能力と魔眼に覚醒する紅い眼。並外れた身体能力を持つ強キャラ。
まぁ、仲間にはならない敵キャラだったけどな。
だが彼女を購入できるのならば購入すべきだ。
「買おう。シエルと言ったな。君は今日から私のものだ」
思わず立ち上がり彼女の抱き抱えて宣言する。
彼女もその眼を広げて驚いているし回りも戸惑っているがまぁ仕方ない。
原作キャラを6名も購入できてテンションが上がったのだからな。
そうして俺はホクホク顔で奴隷商会を出たのだった。