ゲーム世界の敵キャラに憑依したから死なないために奮闘する 作:赤山大和
カタリナには買い取った奴隷達の衣服や物資の購入を頼み、護衛としてマリスとミリス、それにシエルをつれて冒険者ギルドへと向かう。
「ねぇ。ちょっといい?」
「…姉さん」
こちらに声をかけるマリスにそれを咎めるミリス。
シエルは俺の隣で沈黙している。
「ん、なんだ」
「あんたって貴族なんでしょ?あたし達ってなんで買い取られたの?護衛なら私達よりも強い人がいっぱいいるだろうし買った奴隷も女性ばっか。やっぱ、そうゆう目的?」
「姉さん。まずいよ」
「ま、否定は出来ないな。そういう下心があるのもそういう眼で見ることも否定はしない」
そういうと明らかに身を固めてミリスを庇うように前に出る。
「安心しろ。だからといって無理やりといった事は出来る限り控えるつもりだ。基本的には護衛兼メイドといった形になる。色々と物騒でな。身の回りのメイドに戦闘力が欲しい立場なんだ。メイドを鍛えて戦力にするのと戦力になる人間にメイドとしての技能を教えるのとどっちが効率的かわからなくてな」
この世界にはバトルメイドやらメイドアサシンやらの職業も存在するしな。強くなってもらう必要があるのは間違いない。
「側にいる人間に戦える力が必要って訳ね。なに?命でも狙われているの?」
「今の所は大丈夫なはずだがな。俺は側室の息子で長男。弟は正妻の息子で次男。争いを避ける為に屋敷を出たし将来的には廃嫡される予定だが万が一を考えるとな。家の用意した護衛よりも自分で買った奴隷の方が信用しやすい」
貴族のお家騒動というのはどうなるかわからないからな。
「………そういう事。一応、言ってはおくけど妹に手を出すのは止めてそれなら私が相手をするわ」
「姉さん…!」
「それはありがたいが出来れば姉妹で望んで相手をして貰えた方が嬉しいかな。まぁ、悪いようにはしないし扱いもそれほど悪くするつもりはないから安心してくれ」
「そう」
「……………ねぇ」
今度はシエルか。
「ん、なんだ?」
「貴方は何故シエルを買ったの?私は忌み子だよ」
体に生えた鱗に眼を向けている。
それで迫害されてきたのだったか。
「…………それは間違いだ。どちらかと言えば神の加護を受けた結果だろう。それに、その綺麗な紅い眼も気に入った。可愛くて綺麗な女性を購入したというだけだからな驚く事はない」
実際、シエルは綺麗だと思うし俺よりも年下のためかゲームの時よりも可愛らしく見える。
体に鱗が生えているとか眼が紅いとか肌が灰色とかは単なる萌え要素だろ。
擬人化をして船等の無機物や食べ物にすら欲情出来る現代日本人を嘗めるなよ。
俺の言葉に眼を見開く彼女の頭を撫でて冒険者ギルドへと入る。
冒険者ギルドに入ると明らかに視線が集まる。
貴族として上質な衣服を身に付けた自分に奴隷として粗末な衣服を着ているマリス達。
明らかにこの場から浮いている。
「あー、なんだ坊主達は。ここは冒険者ギルドだぜ来る場所を間違ってねえか?」
酔っぱらいが絡もうとして来るがまぁ相手をするか?
「冒険者に依頼をする為に冒険者ギルドに来るのが間違いなのか?まぁ、この手の作法には詳しくわないのだが」
依頼と言った事で雰囲気が変わる。
こちらを値踏みする視線の質が変わり俺の着ている衣服等を見て商人や貴族の可能性を考えたか?
「………依頼人かよ。それならあっちの受付でしてくれ」
絡む気が失せたのか男が離れる。
マリス達に向けていた視線も和らぐ。
依頼人やそれの連れに絡もうとする冒険者は流石にいないようだ。
男に指差された受付カウンターに向かうがやはりギルドの顔と言われる受付嬢は美人なようだ。
「えっと初めまして。当ギルドに依頼という事ですがどのような用件でしょうか?」
「頼むのは護衛になるな。俺はガーゼン家の者だ。ガーゼン家の別荘と言えばわかるといいのだが其処までの護衛。更には別荘に着いてから周辺の魔物の討伐や護衛を暫くの間頼む事になる。相場がわからないのだがどれ位になる?」
貴族としての身分を証明する為の印章と供にガーゼン家である事を明かす。
この辺りを治める貴族の名が出て明らかに雰囲気が変わる。
受付嬢の後ろにいた職員が奥に向かったのが見える。
「………詳しくお聞きしたいので奥の応接間に来ていただけますか?」
「ああ、構わない」
促されるままに皆を連れて応接間に。
椅子には俺だけが座りマリス達は後ろに控える。
教えてないのにそういうのはわかるのだなと場違いな感心を抱いているとギルドの側からスーツを着た壮年の男性と分厚い筋肉をスーツに無理矢理押し込めたような男が出て来る。
ヤクザとインテリヤクザという言葉が思い浮かんだ俺は悪くない。
「初めましてゲオルグ様。伯爵家の次期当主とされる方に来ていただけるとは光栄です。私は当ギルドのギルドマスターであるエドワードと申します。こちらは補佐のグルガです」
名前はまだ名乗ってないが普通に知られているか。
まぁ、自分たちの街を治める貴族の顔を知っているのは不思議ではないな。
それくらいの情報収集はするだろう。
「エドワードさんと言ったかな。悪いがその情報は誤りだ。次期当主は弟のギムルだ。俺は退くつもりでいる。だからこそ別荘に向かうのだしな」
「おや、そうなのですか?」
「貴族のお家騒動が自分たちの街で起こる事が無くなったのは喜んで良いと思うぞ。俺も余計な騒動を起こしたくなかったからな。現状では身を退くのが一番だと考えたんだ」
多少の情報収集をしているならば家の現状を知っているだろう?
俺が退くのが一番簡単だと思ったぞ。
あとはギムルとアルトが厄介事を起こさなければ問題ない。
「…………なるほど。そうなると護衛というのは御自分が狙われる可能性を考えての事ですか?」
「騒動を起こさず敵対もせず大人しく身を退いた現状では暗殺の可能性は少ないと思っている。護衛は普通に旅の安全のためだ。それと、別荘に着いて暫くは周辺の魔物の数を減らして欲しいと考えている」
「となるとそれなりに腕の立つ方がよろしいですかね?」
「拘束期間が長くなるからあまり腕の立つ相手は避けた方が良いかと思っていた。腕の立つ相手を長期間拘束してはギルドとしては困るだろうしな。腕の立つパーティーを1つ雇うよりもそこそこの腕のパーティーを2つくらい雇う方が良いのかと思っていたのだが」
Bランクのパーティーを1つ雇うよりもC・Dランクの冒険者を2つ雇う方が安く付きそうだしな。
「なるほど。確かに高ランクの冒険者が長い間動けなくなるのは困りますね。となると護衛依頼ですのでCランクを2つといった所ですかね」
「それで良い。ただ、依頼は信用出来る相手に頼みたい。別荘にはそれなりに高価な物もあるしな。強盗まがいの真似をするような相手がいては困る」
「その辺は大丈夫かと。私達も選別はしますし、何よりも貴族の依頼で下手をうてばどうなるかを考えないような冒険者は少ないですからね」
「そうであれば良いが。…………因みに、冒険者を正式に家の護衛として雇う事等は可能なのか?」
有能な冒険者ならばそのまま護衛として雇いたいしその場合は雇用した方が問題も少ないだろう。
「それは冒険者の方との交渉しだいですね。まぁ、冒険者の中にもずっと冒険者を続けていく事は出来ないと理解している方もおりますから」
まぁ、そうだよな。
五十代、六十代の冒険者等はまず見かけないし。
とりあえず、依頼内容を煮詰めて依頼は成立。
明後日には依頼を受けるパーティーを紹介するとのこと。
これは冒険者ギルドの方から斡旋するつもりなのかもな。とりあえず、明後日を待つとしよう。
ゲームでの冒険者ランクと強さ。
Eランク。駆け出し。
レベル1~10。
Dランク。初級
レベル10~20
Cランク。中級
レベル15~35
Bランク。上級
レベル30~50
Aランク。最上級
レベル40~70
Sランク。伝説級
レベル70~100
職業によってはレベル15で Cランクに上がったりレベル30でBランクに上がる強者もいるためあくまでも目安。
レベルが低くても実績によってはランクが上がることもある。