テンテンテンッ テンテケテンテンッ テンテンテンテンテンッ!
「うぉっ……!」
いきなりイヤホンから流れ出した大音量の着信音。音楽を聴いてたから驚いた。
いま朝の何時だと思ってんだよ。5時だよ5時。冬だから外はまだ真っ暗だよ。こんな朝早くから電話してくる非常識な無礼者はいったい誰だこのやろ──
《着信 “in side river” 》
……………………友人からでした。
「もしもし?」
『もしもしー? 元気ー?』
「あんまり元気じゃないかもしれない」
『……大丈夫?』
「ダイジョブダイジョブダイジョーブ博士」
『何それー』
ケラケラと鈴を転がしたような笑い声がスピーカー越しに聞こえてくる。友人は、相変わらず元気いっぱいのようだ。
「それで? こんな朝早くからどうしたん?」
『いや、ついさっき夜勤が終わってさー』
「そいつはご苦労さまです」
『これはどうも、ご愁傷様です』
「なんで気の毒に思われてんのよ」
それにしても寒い。冬の日も出ていない時間に外にいるんだから、当然といえば当然か。まったく、こんな寒い時に海上まで出て日本の平和を守ってくれている友人には頭が上がらない。
さっき自動販売機で買った缶コーヒー――もちろんHOT――を啜り飲みながら腕時計で時間を確認する。
「話し相手が欲しかった、とか?」
『それもあるんだけどね。……ちょっとお聞きしたいことがありまして』
およ? ちょっと声が固くなったな。何かお願いでもあるのだろうか。俺と友人の仲で、変な遠慮などいらないのだが。
「他でもない、大事な親友の頼みだ。何なりとお申し付けください」
『…………うん。ありがと』
おどけたのにツッコミがなくてちょっと寂しい。いつもの友人とはちょっと違う空気に戸惑う。
『その、さ』
「はいはい。何ですか?」
『今日と明日、一緒に遊ばない?』
……………………マジか。
「あー……」
『や、やっぱりダメだよね!? 先客いるもんね! ごめんね変なこと言っちゃって!!』
「いや、なんというか……」
よりにもよって、なんで今日と明日なんだ。友人からの誘いがあると分かっていれば絶対に空けていたというのに。というか、前日に上司から急に出張行けって言われても断ったっていうのに。
「すまん河内(かわうち)」
『う~……、謝らないでよぉ。私が悪いことしたみたいじゃん』
「俺、今から出張なんだ」
『…………………………………………へ?』
12月24日と25日。イエスキリストの降誕祭であるクリスマスイブとクリスマスに当たる、この2日間。
俺こと山中優馬(やまなか ゆうま)は、別支店で起きたトラブル解決の為に、突如として出張を命じられたのだった。
……ということで現在、自宅の最寄り駅のホームで始発電車を待っているところである。
あぁ、寒いなぁ…………。