幼馴染の川内と   作:語部創太

5 / 7
川内視点


4.秘事

『おっ、それじゃ電車来たから切るぞ?』

「う、うん。また今度ね」

 

 ツー、ツー。幼馴染との通話が切れた音がする。

 

「そっか、仕事か……」

 

 わざわざクリスマスに仕事を入れてるってことは、特定の相手がいないっていう証明だ。好きな人が独り身であるという事実に嬉しく思うと同時に、結局クリスマスは彼と一緒にいられないって現実に泣きそうになる。

 

「……帰ろ」

 

 そう、そうだ。せっかく来年の三箇日まで休みが取れたんだ。出張が終われば優馬も帰ってくるだろうし、これからいっぱい一緒にいられるじゃん。

 自分を鼓舞するようにそう思い込もうとしても、今すぐ会いたかった人に会えないのがすごく悲しい。

 

 ちょっと気分が憂鬱になりながら実家に帰る。途中で優馬の家の前を通ると、優馬のお父さんとお母さんが車に乗り込んでいる姿が見えた。

 

「……あら? 河内さんとこの陽子ちゃんじゃない!」

 

 オバサンが駆け寄ってくる。これから2人でお出かけかな?

 

「あらやだ、久しぶりじゃない? 元気にしてた!?」

「お久しぶりです。おかげさまで元気にやってます」

「そうそう、この前は優馬を家から連れ出してくれてありがとね? まったくもうあの子ったら働きだしてから休みの日はずっと家でゴロゴロしてばかりで──」

「あ、アハハ……」

 

 怒涛の世間話に、オバサンの後ろで聞いてたオジサンが苦笑いする。目があったので会釈しておく。

 

「どこかにお出かけですか?」

「そうなのよ! 今日から来年の三箇日まで主人と旅行なの!」

「そ、そんなに長くですか!?」

 

 パァッと眩しいくらい満面の笑みになるオバサン。照れ臭そうに頬をかくオジサン。今年50になるはずの2人は未だにラブラブで羨ましい。

 

「──そうだ! 陽子ちゃん、留守を頼めないかしら?」

「え、私がですか?」

「優馬が出張で今日明日といなくてね? 魚の餌やりどうしようか悩んでたのよぉ」

 

 最悪なくても大丈夫かと思ったんだけどねーと軽い調子で恐ろしいことを言う。

 

「私で良ければ、餌やりしておきますよ」

「そう? 悪いわね、むりやりさせてるみたいで」

「いえ、お気になさらず」

「優馬が来たら餌やり押し付けて鍵返してくれていいから!」

 

 オバサンから鍵をもらう。2人はその後、慌ただしく出発していった。

 

 …………思わぬ幸運が舞い降りてきた。私は手の内にある鍵を見てニタッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰って両親に挨拶するのもそこそこに、山中家に向かう。隣って訳じゃないけど、徒歩5分くらいには近い。最後に訪れたのは去年の年末年始。中に入ったのは、中学生が最後だったと思う。

 高校が別になってからはちょっと疎遠になってたんだよね。家に遊びに行くよりもどこかに遊びに行く方が増えたし。

 

 鍵を開けて中に入る。10年ぶりくらいに訪れた家は、昔と変わらない温かくて優しい匂いがした。

 真っ先に向かうのは2階にある優馬の部屋。階段を駆け上がって左手のドアを開ければ、そこは南東に窓が配置された最高の物件だ。

 

 部屋の中に入って思いきり息を吸い込む。

 

「はあああぁぁぁぁ…………♥️」

 

 恍惚とするような、身体が火照ってくるような甘美な匂いを全身で感じる。

 そのまま数秒間、これでもかと深呼吸する。昔は良い匂いだと思ってはいたけど、ここまで興奮することはなかった。やっぱり恋心を自覚すると匂いも一段と強く感じるようになるらしい。

 

 匂いを堪能して満足した私は部屋をグルリと一瞥する。

 机は小さい頃見た時と同じ木製の学習机。隣に置かれた本棚には小中高の教科書と難しそうな専門書。それから私も好きだった漫画や一緒に遊んだこともおるゲームソフトのパッケージが並んでいる。

 半開きになっているクローゼットからはスーツのジャケットやネクタイが見え隠れしている。予備のスーツなのかな? 羽根なしの扇風機と空気清浄機、オイルヒーターは部屋の3隅にそれぞれ置かれている。

 そして……

 

「………………(ゴクッ)」

 

 思わず生唾を飲み込む。部屋の最後の角には、これまた小さい頃に見たものと同じ木製のベッドがあった。

 その上には、優馬が毎日のように寝ている敷き布団と掛け布団、枕にタオルケット──

 

 ボフッ

 

 ──気付いた時にはベッドにダイブしていた。柔らかい布団に顔を埋めて思いっきり匂いを嗅ぐ。

 

「~~~~♥️♥️♥️」

 

 脳みそ一杯に広がる優馬の匂いに視界がチカチカ光るくらい強い興奮を覚える。タオルケットと掛け布団を頭の上まで被り、今度は枕に顔を、窒息するんじゃないかってくらい埋める。

 

「優馬……! ゆうまぁ……!!」

 

 より強く感じる好きな人の匂いに、我慢できず自身の股座に手を伸ばす。

 

 クチュッ……♥️

 

「あっ……♥️」

 

 今までこんなにならなかったくらいビショビショに濡れているその場所を思い切り、自分の指で苛め抜く。

 

「すき……! すきぃ……!! ゆうまぁ、だいすきぃ……!!!」

 

 誰もいない幼馴染の家で、私は久しぶりに自分を慰めた。




 どこまでがR18か分からないので、もし引っ掛かってたら教えてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。