北陸本線の下り特急「しらさぎ7号」が、ゆっくりと速度を落としながら、終着の金沢駅構内へ入った。始発駅の名古屋を、昼の12時10分に出て、金沢へは15時07分に着く。グリーン車は、7両編成の丁度中央の4号車で、雪も止んだ頃には車体は雪も残っていた。乗客がおり切った車内を、車掌長の村田が、確認しながら見回っていた。年末になると帰省や旅行で人々の移動が多く見られるが、旅慣れない乗客が多く、それだけ忘れ物が多い。4号グリーン車の中ほど、窓側の6番Dの席で、濃いサングラスをかけた1人の男が、シートにもたれながら眠り込んでいた。村田は、その時、妙な胸騒ぎを覚えた。男の足許の床には、口の空いたウイスキーのポケット瓶が転がって、液体が流れ出た痕跡があった。国産の180ミリリットル入りの白い瓶である。
「お客さん、金沢駅ですよ。」
村田は呼び掛けた。それでも反応がなかったので、男の肩に手をかけてゆすった。
「終点ですよ、お客さん」
男の身体が崩れた。
サングラスが飛んで、異様に見開かれた眼は力なく空を見ていた。
「うわぁぁぁ。」
「どうした、何事か。」
と、助役がやって来た。
「しらさぎのグリーン車で男が倒れたんだよ。」
「何、人が倒れてる。」
「ええ。」
「はい、金沢東署・捜査一係、何、しらさぎ7号で男性の変死体。」
と、電話を切った。
「しらさぎ7号で変死体だ。」
安達武郎警部補の声に引っ張られて、捜査1係の刑事たちはデカ部屋を飛び出した。
亀山宏が、車に乗り込むために署の中庭へ出ようとした時、丁度通りかかった7歳の娘のみゆきがやってきた。
「パパ、事件?。」
「うん、殺しだったら家には帰れないよ。」
「うん、ママに伝えておくよ。」
「頼むよ。」
安達班は、覆面パトカーのV2#型ビスタと70型チェイサーとE9#型カローラはサイレンを鳴らしてJR金沢車両基地へ向かった。
しらさぎ7号は、回送して車両基地に到着していた。
「係長、被害者の名刺です。」
「殺害されたのは。」
「えーと、被害者は東京在住の緒方辰郎、住所は東京都港区赤坂2丁目、年齢からすると44歳ですね。」
「おう。」
しらさぎ7号のグリーン車に乗っていた乗客は、東京都港区赤坂2丁目の緒方辰郎、44歳と判明した。
「死因は、恐らくウイスキーの瓶に混入していたのは青酸系の毒物と考えられます。」
「被害者の緒方は、おそらく東京駅で東海道新幹線で東京へ発ち、名古屋か米原で乗り換えて、金沢へ向かっていたとみて考えられるわ。」
と、片桐刑事は言う。
「緒方は、東京から新幹線に乗り、名古屋か米原で「しらさぎ」に乗り換えて金沢へ向かっていた。」
「それは考えられるな。」
そこへ、1本の無線が入った。
「えっ、2件目。」
「上野発特急「白山1号」の車内にて女性の絞殺死体が発見したと入電あり、その「白山」は金沢車両基地に回送してくるそうです。」
「えっ、又車内で死体!?。」
「今度は女性だそうです。」
金沢車両基地
「とにかく、死体が発見した時は現状の保存何です、えっ、回送で車両基地で運んでくるんですね。わかりました。」
と、電話を切った。
「おい、直江津から来る特急「白山1号」を乗り入れるんだ。」
「はい。」
T17#型のカリーナの覆面パトカーはサイレンを鳴らして金沢車両基地へ向かっていた。
「こちら、石川301、金沢車両基地へ緊走で向かっております。」
と無線で連絡しているのは石川県警捜査一課の草彅刑事である。
同僚の香取刑事はハンドルを握って運転していた。
「しらさぎと白山で殺人が起きるなんて。」
「ああ、こんな時に事件が起きるなんて、付いてないな。」
香取と草彅が乗ったT17#型カリーナの覆面パトカーは金沢車両基地に到着した。
「ご苦労様です。」
「捜査一課の香取です。」
「同じく草彅です。」
「状況は。」
「しらさぎ7号の車内で毒殺されたのは東京都港区在住の緒方辰郎、44歳です。」
「死因は?。」
「緒方は、ウイスキー瓶に混入していた青酸系の毒による中毒死。」
「それで、上野発の特急「白山1号」に乗っていたのは。」
「女性だそうです。」
香取と草彅は、特急「白山1号」の車内に入った。
「被害者は25から27歳の女性で、縄による絞殺と思われます。」
「殺害方法は、車両によって手口が違うって事か。」
「はい。」
「香取、被害者の女性の身元分かったよ。」
「本当か。」
「被害者は、東京在住の女性ですね。」
「ええ。」
しらさぎ7号と白山1号で起きた殺人は、金沢東署に特別捜査本部を設けた。
手口は違うが犯人はどんなトリックを使ったのか?
彼にはアリバイはあるのか