※しのぶさんに憧れてた描写があります。
無惨を消滅させ炭治郎の完全な鬼化を阻止し、完全に鬼の居なくなった夜を取り戻した後に生き残った神威真次。その最終決戦の激闘によって彼は左目を切り裂かれて失った。四肢は無事だったのが幸いだ。
「さて、これからどうしようかな」
「真次、よかったらうちに来ないか?」
「え?」
「善逸も伊之助も来るって言ってくれた。真次もと思って」
「良いのか?俺、片目失ってんだぞ?」
「そんなこと言ったら俺もだよ」
真次は炭治郎の左腕に目線を向ける。形だけで動かない老人のような左腕、更には機能していない左目と自分以上の重傷だ。そんな彼からの誘いを受けて真次は一瞬迷ったが誘いを受ける事にした。
「分かった。一緒に行こう」
「本当に!?」
「ああ!」
承諾した後、人間に戻った禰豆子から「もう一人、家族が増えるんですね!嬉しいです!」と言われ、しっかり者なんだなと真次は思った。
その後、皆への挨拶回りを済ませ戦いに散っていった鬼殺隊の方々への献花をして回り、真次はその中でしのぶの墓の前で中腰になって話しかけた。
「しのぶさん・・・全て終わりましたよ。それと・・・俺、貴女に憧れてました・・・。藤の花のような美しさと蝶のような可憐さを持っていたから・・・もしかしたら好意を抱いていたのかもしれません。その先は・・また、出会えた時にお話しますね」
「おーい、真次!」
「今行くから、大丈夫だ!」
真次はしのぶの墓に手を合わせると炭治郎達へ合流すべく、走っていった。善逸がなにかを背負っているのが気になり、真次は聞いた。
「善逸、その背負っているのなんだ?」
「ああ・・・爺ちゃんの遺骨だよ」
「イコツ?それ食えんのか?」
「馬鹿か!お前は!!」
「まぁまぁ、伊之助も悪気があった訳じゃないだろ?」
「そうだけどさぁ」
「ちゃんと弔ってあげないとな、善逸の爺ちゃんも」
伊之助の疑問に善逸が怒った為、真次が場を宥めると同時に供養の話もした。すると善逸が泣きながら真次の手を握ってブンブンと強く上下に振った。
「そう言ってくれたのお前だけだよぉ~!真次~!」
「分かった、分かったから!腕がもげる!!」
賑やかに会話しながら山へと入り、途中で炭治郎と禰豆子の知り合いだという三郎という名のお爺さんとの再会を喜んでいた。その後、しばらく歩くと一つの家が見えてきた。
「此処が炭治郎と禰豆子の実家、炭焼きの家か・・・温かい雰囲気だな。それと同時に悲劇の始まりでもある場所・・・か」
「暗いのは抜きにしとこう」
「そうだな」
善逸の言葉に真次が頷き、五人全員が花が所狭しと咲いている場所が一箇所あり、そこへ供養の為に手を合わせた。二人は家族に此処まで来るまでの経緯や帰ってきた事などを報告しているのだろう。すると炭治郎と禰豆子が突然泣き出した。家族の声でも聞いたのかもしれない。
「(あ・・・『なんとなく』解るけど誰かが二人に声をかけたんだな)」
「お、おい!?どうしたんだよ!?突然!」
「禰豆子ちゃぁぁん!泣いちゃイヤァアア!」
しばらくして、家の中に入ると畳の匂いが全員の鼻腔を擽る。藺草の香りがすることから新品の物になっているのだろう。
「えー、家の中全然荒れてないじゃん!」
「三郎爺さんや街の人たちが綺麗にしてくれてたみたいだ。手紙がある」
「新品なら決して安くないぞ、これ全部か」
「畳だけじゃなく棚も全部、替えてくれてるよ」
「伊之助?何やってんだ?」
伊之助はさっきから落ち着かない様子であちこちを獣が探索するように見て回っている。すると一本の柱に何かを見つけ大声で叫んだ。
「なんだァ、これェ!!爪痕があるぞ!見たことねぇ獣の爪痕だ、気をつけろ!!」
「違うよ、伊之助。これは家族の身長を測っていたんだ。どのくらい背が伸びたか分かる様に名前を入れてあるだろう?」
「お?本当だ」
「なにぃ!?じゃあ俺も!!これ全部抜いてやる測れ!!早く早く!!」
「お兄ちゃん、伊之助さん。後にしてね?掃除しないと日が暮れちゃう」
禰豆子は髪をまとめ、三角巾を被っていた。伊之助はその場で駄々っ子のように暴れていた。
「今!!いーま!!」
「測ってやりなよ。それからでも充分、掃除は間に合うだろ?」
「も―――」
真次の提案に禰豆子は苦笑しながら、柱に伊之助をピタリと付けさせ身長を測り名前を刻み込んだ。その後、全員で役割分担を決め、家の掃除を始めた。
「禰豆子ー!この集めた木はどうすんだー?まとめといたけどー!」
「あ、それはお兄ちゃんに炭焼きの竈の場所を聞いて、持って行ってくださーい!」
「あいよー!」
「真次、こっちこっち!」
「おう、今行く」
真次は両手に炭焼きに使うための木をまとめた物を二つ抱えて、炭治郎の案内で炭焼きの竈へ持っていきそれを置いた。
「ふぅ、まさか鬼殺隊の稽古がこんな形で役立つとは鍛錬は続けるか。なぁ?炭治郎」
「あはは、俺はもう出来ないって」
「脚くらいは鍛えようぜ?俺も手伝うからよ」
「む・・・」
「さ、これで終わりだ。飯の仕度があるから戻ろう」
「うん」
炭治郎を支えつつ、家の中に戻り夕食の準備をする。伊之助がつまみ食いしないよう気をつけつつ禰豆子が手際よく料理をこなしていく。
善逸は器の準備、真次は配膳を手伝っておりそれぞれに食べ物が盛られていく。
「はーい、準備できましたよ」
「禰豆子ちゃぁんの手料理だぁ~」
「おい、早く食わせろ!」
「慌てなくても飯は逃げないって」
「そうだぞ」
それからの夕食はまるで宴のように楽しいものになった。真次が伊之助に箸の正しい使い方を教えたり、善逸が無理して食べ過ぎたりなど笑いが途切れることはなかった。
全員が風呂を済ませ、寝るだけになった時刻、真次は一人起きて夜空を眺めていた。
「・・・・」
「眠れないのかい?」
「ん?ああ、起こしちまったか」
どうやら炭治郎が起きてしまったようだ。片手で起き上がって真次の隣に座る。
「ここは、静かだな・・・ゆっくりと時間が流れてる」
「だろ?本当に此処は良いところなんだよ」
「で、お前はいつになったらカナヲに告白するんだ?」
「な、なななっ!急に何をい言い出すんだよ!?」
「静かにしろって、みんな寝てんだから」
真次に冷静に返され、炭治郎はハッとして口を塞いだ。先手合戦は真次に軍配が上がり、炭治郎は少し悔しくなった。
「で、いつ告白するんだ?」
「まだ分からない、カナヲだってまだ俺の事をどう思っているのかも分からないし」
「あんまり待たせてると俺が取っちまうぞ」
「それだけはダメだ!」
「はぁ・・・もう腹が決まってるじゃねえか」
「あ・・・」
「Go when you can(行ける時に行けよ)前にも言ったろ?カナヲを幸せに出来るのは俺じゃなくてお前なんだって」
「・・・・」
真次はどうしてこんなにも優しいのか?こうして誘わなければよかったんじゃないかと思ってしまう時もある。彼が好意を抱いた相手の心を奪ってしまったのは自分だ。だが、彼は嫉妬などを含めた匂いを出してはいない。
「炭治郎、良い男ってのはな?優しいだけじゃ成り立たねえんだ。いざという時には引っ張っていく胆力、実行する行動とか言われているが、俺は一つを厳守しているものがある」
「それは?」
「未練を直ぐに断ち切る事だ」
「え?」
「例えばだけどな?いずれ禰豆子は嫁いでいくだろ?いつまでもお兄ちゃんの下にはいない、新しく家族を作るんだからな」
「・・・・」
「だけど、兄妹の繋がりが無くなった訳じゃない。妹が自分の好いた相手を見つけてきた、だけど兄としては可愛い妹なのは当然だ。なら、相手になる人間を見極めて送り出してやるのが未練を断ち切る事と似てるだろ?」
「うん、確かにその通りだ・・・」
「いつまでも縛り付けたままじゃダメなんだよ。俺が言えた義理じゃないけどな」
そうだ、真次はいつも自分を縛り続けてきた。いつもいつも口癖のように『なんとなく』と言って解ってしまうから、煉獄さんやしのぶさんが死ぬ事も『なんとなく』解っていたと戦いの後に教えてくれた。はじめは皆で責め立てた。蝶屋敷のみんなもどうして止めてくれなかったのか!と騒いでたけど、カナヲがそれを止めてくれた。
「長男なんだからという我慢も程ほどにな?我慢しすぎると爆発するぞ」
「うん・・・」
自分に兄が居ればこんな感じなのかと炭治郎は思う。歳の差はほとんどないのに一回り先の考えをする彼に少し頼る時があるのを自分で自覚していた。
「さて、明日から大変だぞ。寝ようぜ」
「そうしよう」
翌日から何気ない生活が始まった。炭治郎は町へ炭を売りに行き、善逸は禰豆子の手伝い、伊之助は蝶屋敷へ出向いており山に行くと山の幸を取ってくる。真次は街へ出て軽食店でアルバイトをさせてもらっている。その稼いできたお金は生活費と貯金に回しており、必要な時に備え蓄えているようだ。そんな中、善逸が危機感を感じていた。
「あれ?俺が一番何もしてなくね?」
「だったら屋台でも引くか?」
「なんでだよおおおお!?」
と、年月が過ぎていき冠婚葬祭も起こることもあった。それぞれが好きあった人と一緒にいた。そんな何気ない生活は続いていく・・・。
それはきっと何年、何十年とかわらないまま。
大正コソコソ話
真次に発破をかけられた炭治郎はその翌日にカナヲに告白しました。
カナヲも混乱していましたが受け入れ、恋人同士に。
片目では働けないかと言われるかもしれませんが、利き目が無事だったので真次は働けています。
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