※前世の真次は痣者、しのぶは毒の影響で寿命が短い設定です。
※宇髄さん、元々イケメンなのに更にイケメンな看取り役
最終決戦とも言える戦いを制し、生き残れた者は生き残り次代へ繋ぐことを決心し、それぞれが生き始めていた。
「二十五歳を待たずに死ぬ・・か」
彼、神威真次は自分の両腕と両肩、胸元にある痣を改めて見る。龍、虎、鳥、亀蛇、馬の一部という特異な痣が発現していた。五行に対応している神獣達を模したのだろう。
「俺は今18・・・後二年か?六年か?いずれにせよ。悔いのない生き方をしねえとな・・・となれば行動は一つだな」
真次は目的地である屋敷へと歩き出していった。その頃、蝶屋敷でも似たような出来事が起こっていた。
「っ・・ゴホッ!ゴホッ!いよいよ、来てしまいましたか・・・」
しのぶは咳き込む口を押さえ、自分の掌に付いた血を見て苦笑する。仇を取るためと自分の身体を毒の塊にしていた代償が来てしまったのだ。
「私も永くはないでしょうね・・・」
感傷に耽っていると入口の方が騒がしい、誰かが来たのだろう。しのぶは手についた血を隠すように拭き取ると部屋の扉を開け、屋敷の玄関へと向かう。そこには真次がおり、しのぶは驚きを隠せなかった。
「よう、しのぶ」
「どうしたのですか?ケガも病気もしている訳じゃないですよね?」
「悪いが俺を此処で雇ってくれないか?」
「はい?」
余りにも意外過ぎる言葉に全員が呆気にとられている。理由がありそうなのを察するとしのぶは全員を居間に集め、お茶を出した。
「真次さん、いきなり雇ってくれとはどういう事ですか?」
「ああ、その理由はな」
「ちょっと、いきなり服を脱がないで!」
「違う、ちゃんと見てくれ」
「?それは・・・!?」
蝶屋敷の面々が真次の上半身に釘付けになる。両腕、両肩、胸元に痣が発現していたからだ。決戦の折、話に聞いていた痣者が今、目の前にいるのだ。
「あの時の戦いで発現した痣だ。これの影響で二十五歳まで生きられるか分からねえんだとよ」
衣服を着直しながら真次は平然と答える。その言葉に真っ先に反応したのがカナヲであった。
「二十五歳まで?」
「ああ、そうだ。アイツも同じかもしれないな・・・俺以上かも知れない」
「出かけてきます・・・」
そう言うとカナヲは屋敷を飛び出していってしまった。二人は目的が分かっている為に止めなかった。
「変わったな・・・カナヲの奴」
「本当に変わりましたよ。お話を戻しますが、今この蝶屋敷に雇う事なんて」
「力仕事と料理ぐらいはできるぞ?俺。ずっと一人暮らしだったからな」
しのぶはキョトンとした後にクスクスと笑い始めた。真次の意外な特技につい笑ってしまったのだ。
「あ、意外すぎるって思ったろ!?」
「ごめんなさい、想像出来なくて・・フフフ・・・っ!」
「しのぶ?」
「・・・何でもありません、真次さんはこの後、私の部屋に来てくれますか?」
「ああ、分かった(真次さん、か)」
その後、解散となり真次はしのぶの部屋へと趣いた。様子が変だったのは見抜いていたがあの場で言う事もないと思っていた。
「しのぶ?返事がないな・・・扉が空いてる?しのぶ来たぞ?何やっ・・!?」
「ゴホッ!ゴホッ!・・・ゴホッ!ゴフッ!!」
「しのぶ!?おい、どうしたんだよ!吐血してるぞ!?」
「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫、です」
「大丈夫じゃねえだろう!」
「本当に大丈夫・・・忘れたんです・・か?」
真次はしのぶの弱々しい言葉と笑みでハッとした。まさかとは思わずにはいられないが、それしか原因がありえない。
「まさか・・・高濃度の藤の花の毒か?」
「そうです・・・その副作用が出てきてしまったんです。貴方の痣と似たようなもの・・・ですね」
「・・・言っていたものな?どんな副作用があるかわからない・・と」
「はい・・・こんな形で出てくるとは思いませんでしたけど」
しのぶは傍にあった紙で吐血した自分の口元を拭った。いつもの張り付いた笑顔が弱々しく見えるのは気のせいではない。
「しのぶ・・・お前の残った時間を俺にくれないか?」
「え・・・?」
「俺も残り時間は少ない・・・・後悔の無いように生きたい。しのぶとの時間を多く刻みたい・・!ダメか?」
告白ともとれる真次の言葉にしのぶは自分を戒めるように唇をキュッと結び、言葉を発した。
「今の私は・・・いつ死ぬか、分からないんですよ?貴方よりも早いかもしれません・・」
「知っている・・」
「私は怒りっぽいんですよ・・・?当り散らすかもしれません」
「分かっている・・・」
「私・・・私、本当は死にたくない・・・!」
「しのぶ・・っと!?」
しのぶは真次に突進し、彼はそれを受け止めた。しのぶの目には涙が浮かんでいるのが感じ取れる。
「私だって女の子よ!?姉さんが言ったように好きな人と一生を添い遂げたいよ!一緒に歳を重ねていきたいよ!」
これが本当の『胡蝶しのぶ』の素なのだ。真次はそれを『なんとなく』感じ取っていた。この痣が発現してから『勘』が冴えてしまっている。この勝気な口調、鬼に対する憎悪、姉妹に対する優しさなど全てが感じ取れる。
「・・・・」
「貴方はこんな私でいいの!?毒の塊になった、女らしさなんてない!こんな私で!」
「それでもいい・・・俺はしのぶと残された時間を共有したい・・・」
「う・・ううっ・・・うぁああああっ・・・ああああああ!」
その日から、真次としのぶは日常生活や旅行を楽しむようになった。アオイにばかり任せていた料理や洗濯も行うようになり、そして四年の月日が流れた。
◇
「どうやら・・・先に・・逝く事になるみたいだ」
「ええ・・・分かっていますよ」
しのぶは病室の寝台で横になっている真次の手を握っていた。真次の命は尽きかけている。それを止める方法はない。
「教えたのか?アイツ等にお前の事は・・・・」
「ええ、教えました・・・・いずれ、私も貴方と同じ所に逝きます・・・」
「済まなかったな・・・婚姻も挙げられなくて・・・」
「良いんですよ。側にいてくれただけで・・・・嬉しかったです」
「この生が前世となるなら・・・来世でもまた会いたいな・・・しのぶに」
「ふふ・・・今度は夫婦になれるといいですね・・・ゴフッ!」
「Thank you(ありがとう)・・・しのぶ・・・・来世で・・・な」
そう言い残し、真次は事切れた。最後の最後まで彼女の事を気にかけ続けてくれた人が。
「っ・・・私も・・・もうすぐですから・・・」
真次が逝ったと同時に・・・彼を知っている人間達、全員に知らせた。その死を惜しむ者、悲しむ者など沢山いる。親友であった人間、慕っていた人間も彼の最期に立ち合ってくれた。
その数年後、しのぶの身体にも限界が来ていた。咳込みと吐血が多くなり歩く事はできるが、腕に力が入らなくなってきている。
「しのぶ様・・・」
「しのぶ姉さん・・・」
「二人共、あの人の所へ連れて行ってくれますか?」
「でも・・・!」
「なら、俺が連れて行ってやろうか?」
「音柱さま・・・!?」
「宇髄さん?・・・っ!ゴフッ!ゲホッ!ゲホッ!!」
そこに現れたのは元・『柱』である宇髄天元であった。三人の妻もその後ろに控えている。冷静に咳き込んで吐血しているしのぶの状態を見て先が長くない事を見抜いた。忍という特殊な生まれ出の知識がそうさせたのだ。
「胡蝶、お前・・・長くねえだろ?その様子だと持って半日ってところか」
「・・・今、それを言いますか?」
「性分でな・・・おい、コイツを支えてやれ!」
宇髄の三人の妻である須磨、まきを、雛鶴の三人がしのぶを支えた。虫の知らせというもので宇髄は薬をもらうという名目で蝶屋敷を訪れていたのだ。
「ひどい熱です・・・」
「本当なら横になってなきゃいけないのに・・・」
「何処へ行くんですか?天元様」
「コイツの想い人が眠ってる所だよ」
しのぶは支えられながら、墓地へと赴く。そこには花が供えられ、食物なども置いてある墓があった。
「おい、お前の想い人・・・連れてきてやったぜ」
「花が・・・こんなにも」
「お供え物まで・・・」
「随分と好かれてたんだね・・・この子」
須磨、まきを、雛鶴の三人は彼、真次の墓を見て驚く。これほどまでに花に埋もれたのを見た事がないからだ。
「派手な生き様だったからな・・・・コイツも」
しのぶは連れてきてもらった目的の場所にたどり着くと弱々しい足取りで、一歩一歩近づいていく。
「ああ・・・やっと・・・やっと眠れます・・・貴方の・・・・で」
しのぶは腕を伸ばしている真次と姉であるカナエの姿が見えていた。彼らの会話が聞こえてくるようで・・。
「しのぶを娶るだなんて、貴方が私の義弟になるって事よね~?」
「まぁ、そうなりますね。お義姉さん」
「ね、姉さん!!もう!!真次さんもそういうのに乗らないでください!!」
しのぶは真次の墓石に微笑んだ姿で寄りかかると、眠るように逝った。連れてきた四人はそのまま看取る形になってしまった。
「天元様・・・この子・・・」
「ああ、死んだな・・・それも派手に・・幸せそうに逝きやがった」
「・・・どうしますか?」
「とりあえず・・・報告しなきゃあな。蝶屋敷に」
「私が・・運びますね」
しのぶの遺体と共に戻るとしのぶが亡くなったと伝えカナヲ、アオイ、蝶屋敷の女の子たち全員がショックを受けていたが、宇髄がしのぶは幸せそうに逝ったと告げると泣きながら納得した表情を見せた。
「音柱様・・しのぶ様の最後の望みを叶えて下さってありがとうございます・・・」
「大した事じゃねえさ・・・知り合いが死ぬってのは慣れねえもんだな・・・お互いに」
アオイが代表して挨拶し、宇髄も寂しそうな表情を浮かべながら上を向いて自分の髪をクシャりと握る。
「・・後はお前らで看取ってやれ。現役の時は悪かったな」
「いえ、本当にありがとうございました」
宇髄は背を向け、軽く手を振ると妻達と共に帰っていった。アオイとカナヲはそれを見送ると布団に寝かされたしのぶの遺体に近づく。
「しのぶ様・・・」
「しのぶ姉さん・・・」
改めて見ると本当に眠っているようで表情は幸せそうで微笑んでいる。だが、少し青白い印象を受けてしまう。
「カナヲ・・・化粧道具、持ってきて。私の部屋にあるから」
「うん・・・」
「アオイ様、カナヲ様!私たちも!」
「お手伝い!」
「します!」
「うん、お願い」
寺内きよ、中原すみ、高田なほの三人も自分に出来ることを手伝い始めた。しのぶの身体を綺麗にし、新しい着物に着替えさせ、髪を梳き纏めると蝶の髪飾りを丁寧に付ける。
微笑みを浮かべたままのしのぶの顔に下地を塗り、化粧を施し最期に紅を筆で唇を美しく仕上げた。
「しのぶ様・・・綺麗ですよ」
「うん・・・本当に綺麗・・・姉さん」
「しのぶ様ぁ・・・」
「お綺麗ですぅ・・・」
「本当にぃ・・・うわああああん!」
高田なほが堪えきれずに泣き出してしまい、全員が泣き出してしまう。全員の姉が亡くなったのだ、ここまで堪えていた事は褒めるべきだろう。
蝶屋敷の面々はしのぶとの別れを惜しみながら、その夜を過ごしたのだった。
前編、後編に分けます。
漫画だったらきっとシーンが良いんだろうなぁ・・漫画描けませんが゚(ToT)
※この後、またアンケートを出します!
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