華と日の刃を護る五行の刃   作:アマゾンズ

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結納を済ませ数年後、二人はとある墓地にやってきた。

そこに報告をする為に。


プロローグ 回忌の日

時は大正XX年、夏。この時期は死者が特別に現世へと帰ってくると伝えられる御盆である。

 

「大丈夫?カナヲ」

 

「平気・・・」

 

一組の男女が少しだけ小高い丘を登ってある場所を目指している。そこには一つの墓があり、その前には刀の鞘と朽ちかけ刃先が折れた刀が置かれている。

 

「来たよ。真次」

 

「・・・遅れてしまってごめんなさい」

 

花を添え、線香に火を点けそれを刺して供える。二人は目を閉じて手を合わせた。線香の独特の香りが鼻腔をくすぐる。

 

「君が居なくなって、随分と時間が経っちゃったね・・・」

 

「っ・・・・けれど、貴方のおかげで私達は今こうして生きている」

 

悲しみと申し訳なさが混同したような表情をする二人。だが、感謝の意をもって話しかけている。

 

「真次・・・私と炭治郎ね、夫婦になったんだよ」

 

「その祝儀の時間があったから、なかなか来れなかったんだ」

 

墓前に結婚の報告をする二人、この二人はかつて鬼を滅する事を目的に組織された鬼殺隊の隊員だ。

 

竈門炭治郎と栗花落カナヲ、この二人の名がそれである。男性が炭治郎、女性がカナヲ。

 

「真次・・・もし、君が生きていたら親友として結婚式に出て欲しかったな」

 

「・・・・」

 

二人は真次と呼ぶ相手を思い出し始める。神威真次、鬼殺隊の一人で炭治郎の親友でもあった一人である。

 

彼は炭治郎と同じように鬼に家族を殺され、凄まじい努力によってある才能を開花させた隊員であった。それは『五行の呼吸』である。元来、呼吸法は始まりである『日』から始まり『炎・水・雷・岩・風』という五つの呼吸から成り立っている。

 

だが、真次は『炎・水・雷・岩・風』ではなく『木・火・土・金・水』という特殊な呼吸と共に「相生」「相剋」「比和」「相乗」「相侮」という異なる呼吸と異なる属性を同時に操るなどの応用力を身に付けたのだ。だが、名義上『木・炎・岩・金・水』としている。

 

彼の特殊な呼吸の基本は順送りに生み出して行く、陽の関係である「相生」から発生し彼の戦闘は相手の五行属性を見つける事から始まる。

 

木生火(もくしょうか)木が燃える事により火を生む関係。

 

火生土(かしょうど)物が燃えれば後には灰が残り、灰は土へと還る関係。

 

土生金(どしょうごん)鉱物・金属の多くは土の中にあり、土を掘りその金属を得る関係。

 

金生水(ごんしょうすい)金属の表面には凝結により水が生じる関係。

 

水生木(すいしょうもく)木は水によって養われ、大木となる関係。

 

それと真逆の相手を打ち滅ぼして行く、陰の関係となる。「相剋」とは。

 

木剋土(もっこくど)木は根を地中に張り土を締め付け、養分を吸い土地を痩せさせる関係。

 

土剋水(どこくすい)土は水を吸い取り、常にあふれようとする水を地割れなどによりせき止める関係。

 

水剋火(すいこくか)水は火を消し止め勢いを殺す関係。

 

火剋金(かこくごん)火はその熱により金属を熔かす関係。

 

金剋木(ごんこくもく)金属によって形作られたの斧などが木を傷つけ、切り倒す関係。

 

その他の「比和」「相乗」「相侮」の三つは過剰な力となる為に彼は積極的には使わなかった。それと同時に彼はこの呼吸を身に付けてから基本となる『炎・水・雷・岩・風』の呼吸が使えず、これら身に付けた特殊な呼吸を複合する事で究極の技を発現させ、彼は帰らぬ人となった。

 

「真次、君がいた時はたくさん喧嘩もしたし、競い合ったよね?善逸も伊之助とも一緒になってさ!」

 

「初めて蝶屋敷に来た時・・・本当に弱かった」

 

「それで一緒に強くなって!そして君は・・・」

 

炭治郎から言葉の強さが無くなっていく。鬼殺隊はいつ死んでもおかしくないものである。だが、炭治郎が彼の死亡を聞いたのは鴉からの知らせを聞いた時であった。

 

「貴方は壮絶な最期だったと聞いてる・・・・その最後を私も炭治郎も見届けられていない・・・」

 

「けれど、君の日輪刀が戦いの凄さを物語っているよ」

 

「・・・(炭治郎には教えていない・・・私が最後に会話したのを)」

 

 

 

 

 

 

X年前、蝶屋敷道場。

 

「っしゃああ!」

 

「う・・嘘ぉ!アイツが炭治郎の前にクリアするなんて・・・!」

 

「へへっ!これで瓢箪は俺が一番乗りだな!」

 

善逸が騒いでいるのを見ながら、歯を見せニヤニヤと笑う彼こそが神威真次。まだ、少年のような好奇心とあどけなさを残しつつも、目の奥にある冷たさと優しさは隠されていない。

 

歳は17、生まれが早く現代で言うところの早生れであるため、実際は16歳である。

 

こうして明るく振舞ってはいるが、それは本心ではないと見抜かれてしまっている。

 

乱雑に切られた焦げ茶色の髪、右腕の上部と右肩にかけての火傷の跡、そして心に巣食っている鬼への強烈な怒り。肉体面では蝶屋敷における鍛錬によって順調に形になって来ている。

 

「なんでそんなに早くクリア出来るんだよぉ!?」

 

「ただただ、鍛錬の積み重ねのみ!これに尽きる!」

 

「ちくしょおめええ!」

 

こうして騒いでいるが、彼自身も鍛錬する理由があった。それは彼が蝶屋敷に運び込まれた初日の事であった。

 

 

 

 

 

 

「しのぶさん、お願いします!俺の身体を回復させてください!」

 

「うーん、それは構いませんが・・・今回みたいな戦い方をするのならお説教が必要ですね」

 

「うっ・・・」

 

そう彼は一匹の鬼を容赦なく切る事で評価されているのだが『五行の呼吸』のうち、過剰に攻撃力を上げる「相乗」を使い続けているため『柱』達から厳重注意を受けていたのだ。

 

その厳重注意を完全に無視して「相乗」を使い続け、『柱』の一人である胡蝶しのぶの屋敷に強制連行された訳である。

 

「貴方は最も『柱』に近い位置に居る。その事を忘れた訳じゃありませんよね?」

 

「・・・・・」

 

真次は大量の冷や汗を流している。男性の『柱』はどんな事があっても臆する事はないのだが、この胡蝶しのぶだけは別であった。薬学に精通し、そして何よりも『笑顔で鬼を殺す姿』を見てしまった為に恐ろしいと感じるようになってしまっている。

 

また彼は「相生」をする事で人間の体内で生成される脳内麻薬と呼ばれる物質を自分の意志で自在に引き出す事が出来る。現代で言うなら『β-エンドルフィン』や『ドーパミン』『アドレナリン』などが有名だろう。

 

彼はそれを「相生」の呼吸で相性の良い脳内麻薬を『強化』し己の肉体の限界を操作してしまうのだ。呼吸法の一つ『全集中の呼吸』と同じだと思われるが、性質が違っている。

 

『全集中の呼吸』は呼吸によって血流を操作する事で全身に血を巡らせ、身体強化と体力補強をするのに対し、真次の呼吸は体内で作られる物質を『強化』状態にして全身に巡らしている。つまり薬物強化、すなわちドーピングと変わらないのである。

 

薬学に精通しているしのぶからすれば、これは止めるべきものなのだ。常に薬物強化していては肉体の方が限界を迎えてしまう。それ以上に厄介なのが身体の内部で作られている物質であるために外部からの薬物ではそれを抑制する事しか出来ないのだ。

 

「『相生』の呼吸による限界操作は私の屋敷にいる間、使わないでくださいね?」

 

「な、だってあれは!」

 

「使・わ・な・い・で・く・だ・さ・い・ね?」

 

「はい・・・・・・」

 

ものすごい威圧のある笑顔に真次は生返事を返す事しか出来なかった。なによりも怖いからだ。

 

「では、貴方も先ずは『相生』の呼吸に頼らないようにする為に『全集中の呼吸』全集中・常中を最初に体得してもらいますよ」

 

「え”?あれは確か・・・」

 

「大丈夫、貴方なら出来ますよ。貴方が強くなった姿を私、見てみたいです」

 

「う・・・」

 

彼、真次は美人から貴方のこのような姿が見たいという言葉にめっぽう弱かった。善逸と似たような大奮起の仕方だが、彼自身強くなった自分を見てもらいたいというのが根幹である。

 

「う・・ううう・・・ああ、もう!やぁぁぁぁってやるぜ!!!」

 

この日から、真次の鍛錬が始まったのだ。だが、度重なる戦闘で脳内麻薬に頼りきりの戦いをしていた彼にとって、此処の鍛錬はまさに地獄と化していた。いうなれば薬物中毒者が完全に薬物を断つために、厳しく制限された生活を送ってるようなものだ。

 

毎夜毎晩、しのぶ特性の薬と拘束されながら眠る日々である。肉体は薬物を求める身体と同じであるために毎晩毎晩のたうち回りかねないほどだ。

 

「ぐ・・ぁ・あああああっ・・!!」

 

そして、薬物が抜け切った身体で鍛錬をしている時に出会ったのが、後に親友となる三人と自分が恋をした一人の女の子であったのだ。




鬼滅を読んでいたら浮かんだ話です。この話のオリ主は漫画の巻数で言うと6巻で登場し、19巻で死んでいます。

男が命をかけた理由は一つしかないでしょう。

『惚れた女の未来を守るため』です。

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