※IF柱です、死亡キャラが生きています。
※残党の鬼が徒党を組んでます。
※今回も戦国BASARAノリが多いです。
※オリジナルの鬼化の設定が出ます。
※戦編、婚姻編に分けます。
※婚姻編は全く別物になります。
その日、なんの変哲もない日常を送るはずだった。一人の隊士が負傷して帰ってくるまでは。鬼の残党が徒党を組み、とある場所を根城にしていると偵察部隊から情報が入り、出立の準備をしているときであった。
「ご・・・五行柱・・・様・・・」
その隊士は全身が傷だらけで、特に腕の負傷が酷かった。真次は急いで駆け寄り、声を荒げる。
「!What!?(どうした!?)何があった!?ひでえ傷だ、応急手当をしてやる!おい『隠』!居るんだろ!コイツを蝶屋敷に!!」
「ま、待ってください・・・大切な事をお伝え・・しないと」
「あまり喋んじゃねえ!傷が開くぞ!!」
「て、偵察部隊にいた・・む・・・蟲柱・・・様が・・・奴らの罠に・・・かかって・・攫われ・・・まし・・た」
「んだと!?」
真次の命令を受けた『隠』は急いで怪我を負った隊士を運んでいき、真次は一本の屋敷の柱を八つ当たりするように殴った。
「Damn it!!(くそっ!!)しのぶが罠にかかっただと!?そんなはずがねえ、アイツは・・!」
「真次!」
「炭治郎!?それに善逸、伊之助まで!!」
「鴉達からの知らせを受けてね、しのぶさんが鬼の残党に捕まったって」
「しのぶは俺等にとっても大切なんだよ!アオイと同じようにな!」
「いや、お前らを巻き込む訳・・グアッ!?」
真次が言いかけた瞬間、拳が飛んできた。これは善逸からの一撃だった。ふざけているのではなく、本心からの怒りがこもった拳だった。
「カッコつけんなよ!!仲間に頼れる時には仲間に頼れってお前が隊士に教えていることだろう!自分ができなくてどうすんだ!それにな、伊之助が言ったように、しのぶさんはお前だけじゃなく俺達にとっても隊士のみんなにとっても大切な人なんだからな!(最も、後々恋人同士になるんだろうけど)」
「善逸・・・」
「ふん!子分が出しゃばっても親分がいなきゃ統率は取れねえ!お前が行くなら俺も行くからな!」
「伊之助・・・」
「聞いての通り、俺達は一緒に行くから。あ・・でも」
「?ぐわっ!?つうううううう!!何すんだ!炭治郎!?」
「お仕置きだよ。一人で全て抱え込もうとするのは、相変わらず変わってないな」
文句を言うが炭治郎からの頭突きを甘んじて受ける。これは親友を巻き込むまいとした自分へのケジメ、差し出された手を握り、立ち上がる。屋敷の外に出ると真次を慕う隊士達が所狭しと集まっていた。
「な!?なんだよこれ・・・皆なんで!?」
「水臭いじゃないですか!五行柱様!!」
「俺達全員、貴方に付いて行くって決めてますから!」
「それに、五行柱様と蟲柱様はお似合いですからね!二人の婚姻は絶対にこの目で見ないと!」
「Shut up!!(黙ってろ!!)人の恋路を勝手に話すんじゃねえええ!!」
真っ赤になった真次が叫ぶが全員がニヤニヤしており、全くもって応えていない。その中で異国語を必死に学ぶ隊士が声をかける。
「五行柱様、アレ・・・やって下さい。いつも異国語で俺達に発破をかけるアレを!俺達、あれから意味を調べて覚えたんですよ!みんなで返す返事も!!」
「アレをか?皆も?」
隊士全員が頷く、期待に満ちた目で全員が掛け声を待っていた。真次は軽く咳払いをするとパンッと両頬を軽く叩いて気合を入れ、自分を切り替えた。此処は人気が少ない屋敷であり、真次自身が望んで住んでいるのだが、それが発破をかけるのに一役買っていた。
「Are you ready guys?!(準備は出来てるか、お前ら?!)」
「「「「「「Yeah!!!」」」」」」
「We're going!! Go on with me!!(行くぞ!!俺に続け!!)」
「「「「「「Yeah!!!」」」」」」
この場にいる隊士全員が握り拳を上げて、気合の入った掛け声を腹から出している。その声の大きさに炭治郎、善逸、伊之助の三人は驚きを隠せない。
「すっごいなぁ・・異国語だから言葉の意味は分からないけど皆が一つになってる」
「多分、付いてこい的なことを言ってるのかもしれないけどさぁ・・・おっかないよぉ」
「お、俺以上に統率してやがる・・・負けたかもしれねえ!」
三人は彼が隊士から慕われる理由を知っている。彼は一人一人に合わせた稽古を行い『柱』である事を鼻にかけず、自分も共に稽古している。厳しさもあるが優しさもあり分け隔てなく向けている。また、異国語という誰も学ばないであろうものを自分から学び、学びたい者には門を開けている事も一つの要因だ。
だが、それだけでは人は集まらない。彼が人を惹きつけてやまない魅力、それは「自分も一人の人間であり、変わらない」という事を学び、大切にしているからだ。強くなりたいと言われれば共に稽古に付き合い、勉学を学びたいと言われれば共に学ぶ。隊士達の意見を取り入れつつ、自分だけでは進まないようにしており、非があれば自分の立場を関係なしに頭を下げ、統率する時は厳しく行く。
それが、隊士達の心を惹きつけてやまない[伊達男]。そんな彼に憧れを抱き、隠鬼殺隊の門を叩く人間は多い。
試験を突破し、真っ先に彼の屋敷に来る者も居るがそういった隊士に彼は「お前はなんの為に戦うんだ?」と問い掛ける。
その隊士が真次の為というと必ず彼は殴る。男性なら拳、女性なら軽い平手打ちだ。そして必ずこう返す。
「俺の為にだと?Don't be kidding me!!(ふざけるな!!)」
異国語が入る為に言葉の意味は分からないが、怒っている事は確かだ。更にはこう告げられる。
「自分が大切な物はなんなのか、それを他の『柱』から学んで来い。その為の鍵は自分の中にある。それを見つめ直せ」
そういって追い返してしまう。自分の中にある大切なものを見つめ直せと言う言葉に新しい隊士達は考え込んでしまうが、彼と同期の三『柱』に聞くことで答えを出すことが多い。
家族のため、恋人のため、友人のため、想い人のため、思うものは全て違う。自分が本当に心から大切だと思えるものを守れ、そう教えているのだが言葉が足らないのである。
◇
出陣に合わせて全員が走り出す。偵察部隊からの情報によればとある山にあるを根城に、洞穴を砦として徒党を組んで人間を狩り、男は食料に女は犯し嬲り、殺しているとの情報が来ている。
「You're safe(無事でいろよ)しのぶ」
気持ちが先行してしまうが、それを必死で抑える。自分の後ろには今、沢山の隊士達が居る。出来る事なら自分だけで助けに行きたいがそうはいかない。徒党を組んでいるという事は最低でも下弦レベルの知能があるということだ。
「あんな風に異国語とかで伊達男を出してるけど、本当に五行柱様は蟲柱様の事が大切なんだな・・・」
「言葉には出さなくてもわかり易いからね、あの御二人」
隊士達の中には察しの良い者もいたようで、すぐに二人の関係にも気づいていたようだ。隊士という後輩、仲間を守るために戦うのが五行柱・神威真次という男だ。
死をも恐れない覚悟を持ち、多数の隊士を率いる。だが、その過去は重いもの、それでも戦うと決めたのだから度合いが違う。隊士同士で婚姻が決まれば自分の事のように祝ってくれる。なのに自分のことは二の次、そんな『柱』様にやきもきしているのも事実。
そんなふうに思いながら、目的の山へと向かっていった。
◇
その頃、洞穴の中では徒党を組んだ男の鬼達が焚き火を囲み、酒を飲み町から攫ってきた女で楽しんでいた。攫われた中には胡蝶しのぶもいるが、縄で縛られ牢屋のように厳重な場所に閉じ込められていた。
「なぁ、大将はどうしてあの女で遊ばねえんだろうな?」
「なんでも、大将と因縁のある奴を誘き出すための餌なんだと」
「へぇ、あんな別嬪。滅多にお目にかかれねえのに」
「いやいや、綺麗な花には気をつけろってよく言うだろ?」
「違いねぇや!」
大げさに笑う鬼達、この鬼達は『
その中で、この生成りは『無惨の残滓』を大量に服用し、上弦と下弦の中間までの力と知能を会得した元人間だ。鬼のように夜に活動し、昼間は洞穴などに身を潜めている。
『無惨の残滓』は純度の高い麻薬と同様で、少しでも服用するとその中毒性から逃れられない。また、自分の筋力等が僅かな間、鬼と同等になるためその力を維持しようと大量服用するケースが後を絶たない。
その結果、生成りと成ってしまい鬼と同じ生活をするものが多い。更には生成りの力を維持するために人間を喰らう。人間の血液こそがその栄養素をクリアしている唯一の食料であるからだ。また、厄介な事に鬼となれば失うはずの人間の時の記憶を保持している為、武術家等が服用している場合が多かった。
◇
「っ・・・不覚をとりましたね」
牢獄の中でしのぶは、大人しくしていた。だが、偵察部隊の一人を伝言役として逃がしたのが大きいと踏んでいる。
今頃は此処へ隠鬼殺隊の仲間たちが来るだろう。だが、一つの不安が有る。それは慰み者にされないかという事だ。今でも僅かに女の嫌がる嬌声が聴こえてくる。覚悟はしているが、恋慕を抱いてしまった相手が居る今ではそれは最も嫌悪することである。
「っ・・・早く来てください」
しのぶの中の不安は白紙の紙に墨を垂らしたように広がっていく。こんな風にさせたのはズルいと思いながらも助けを期待してしまう自分もいる。身を呈してまで自分を助け出そうとするあの人を。
◇
目的の山に到着すると隊士全員が整列をかけるまでもなく五つの隊に別れる。それぞれが得意とする呼吸に合わせての隊列だ。
まさに五行に合わせての隊列になっている。『木・火・土・金・水』の形になるよう『炎・水・雷・岩・風』の呼吸にそれぞれ呼応している部隊が号令を待っている。
「良いか!死を恐れるんじゃねえ!だが、死のうとは考えるな!自分を守る事を優先にしろ!必ず戦う時は二人一組で挑め!相手は元人間でも自分から人間を捨てた連中だ!!手心なんて加えるな!!弔いの心は持ってもいい、その命を背負う覚悟を持って戦え!!」
これは真次が戦いを始める前に隊士に向けて、必ずかける言葉だ。一度、隊士を死なせた事があった経験からかけるようにしている。
「よし、雷・岩の部隊は左から攻めろ!水と風は右から!炎は俺と共に正面から行くぞ!炭治郎!善逸!伊之助!!部隊を預ける!炭治郎は水!善逸は雷と岩、伊之助は風の部隊だ!!」
「うん!」
「わ、わかった!けど、俺だけ規模が多くない!?」
「おう、任せとけ!!」
「善逸、やる時はやるんだからそれを見せてくれ、頼む」
真次に信頼されている音を聞いてしまった善逸は、やる気を出すように自分の頬をパンッ!と叩いて気合を入れる。
「今夜は最高のPARTY(宴)になりそうだ!HERE WE GO!!LET'S PARTY!!」
「「「「「「Yeahhhhhh!!!」」」」」」
異国語での号令と共に隊士達が指示された方角から突撃していく。何事かと騒ぐ間に見張りの生成り二匹が頚を切り落とされる。
「あ、あれ?俺の・・・頚」
隊士と鬼の戦いがあちこちで繰り広げられる。『新柱』達はそれぞれ追い込まれている隊士を援護しながら先へと進もうとする。
「どんだけいるんだよぉ!次々に出てくるじゃんかあ!!」
「善逸!泣き言を言ってないで頑張れ!!」
「そうだ!しのぶを助けるためだろうが!!」
それぞれが援護していてもやはり、負傷者が出てしまう。そんな中、一筋の雷光のような光が通った。
『新柱』となって以降、この五行の呼吸の技の冴えに更なる磨きが掛かっていた。『五行の呼吸』は真次が独自に編み出したと言っても過言ではない唯一にして無二の呼吸法で継承者は無きに等しい。だが、五つの色を魅せるその美しさに男女問わず惹かれてしまうのだ。
特に金の型は真次自身の実力を完全に反映させるため、最も強く美しく見られている。後続の二十人の頚を切り落とし、先へ進もうとするが阻まれてしまう。その中で四人の隊士が先へ行かせる為に生成りを押し返し始める。
「先へ急いで下さい!」
「ここは俺たちがなんとかします!」
「だから急いで!」
「早く、蟲柱様のもとへ行ってください!筆頭!あ・・・」
隊士の一人が思わず筆頭と口にしてしまい、真次は大声でツッコミを入れた。
「誰が!筆頭だ!!俺は確かに異国語を学んではいるが奥州の出身じゃねえし、刀を六本も扱えねえよ!!」
「そんなメタいツッコミはいいですから、早く洞穴の中へ!」
生真面目な女性隊士の言葉を受け、真次は改めて洞穴の中へと向かっていく。途中で行く手を阻む生成りの鬼達の首を容赦なく落としていく。先へ進んでいくと一つの部屋らしき場所になっているところへ足を踏み入れるが、そこに充満している匂いに真次は思わず手で鼻と口を覆い隠してしまう。
「うっ・・・この生臭さ、男の子種か?それに女の死体が転がっている・・・なるほど、情事をした後に嬲り殺してる訳か、胸糞悪い」
遺体を見れば、体中が子種まみれで喰い殺されているものが多数だ。その中に想い人が居るのではと不安がよぎるが、それはなかった。
「・・・・こっちか!」
左右に別れている別れ道に差し掛かり、己を落ち着かせ『勘』を頼りに向かっていく。右、左、右と順番に進んでいく。
「!生臭さが消えてきたな、ん?藤の花の匂い・・・?この辺りにしのぶが居るのか!?」
自分の指を舐め、風が吹いている方角を探す。藤の花の匂いがする風上が分かればそこに想い人が居るのが分かっているからだ。
「向こうか!」
風上へ向かっていくとそこには刀を取り上げられ、牢屋に投獄されているしのぶの姿が遠くから見えた。だが、そこには見張りらしき生成りの鬼が2匹で警護している。あくびをしているところ見るとかなり油断しているようだ。
「・・・・・」
息を潜め、居合いの構えに切り替える。警戒を完全に解くまで我慢比べだ。
「はぁ、警護役って暇だよなぁ。酒は飲めるし飯も食えるけどよぉ」
「女を抱けねえのがなぁ、この中にいるの味見しちまうか?」
「馬鹿、大将にすぐバレるぞ。大将は初物好きなんだからよ」
「あ、そうだったわ」
周りを見渡し、破壊して気を引ける手頃な岩を見つける。呼吸を静かに整え、その岩に集中する。
緑色の気弾を小さな鍔鳴りで岩へと放出する。大きな音と共に岩が崩れ見張りの生成り達が走って確認に向かう。
「なんだ!?岩が崩れたぞ?」
「此処じゃよくある事だろうが、あれ?」
「おい、なんでお前・・下向いてんだ?」
「お前こそなんで!?」
音も無く静かに納刀され、生成り二匹は頚を落とされたことを気づかず、お互いに注意し合っている。だが、身体が崩壊したことで自分達の危機に気づいた時には消滅していた。
「それだけ型を極めてんなら、一つくらい暗殺に使えるようにしておけって宇髄さんに言われたけど、本当だったな」
生成りの居た場所から鍵を見つけ出し、それを手に牢屋へと近づく。蝋燭の僅かな明かりから誰かが居るのが伺える。だが、僅かに香る藤の花の香りで誰なのか解ってしまう。
「しのぶ、無事か!?」
「ああ・・来てくれたんですね」
鍵を開けて牢屋に入ると、抵抗の痕と殴られたであろう傷が痛々しいほどに残っている。真次は縄を切って、しのぶの四肢を自由にすると応急手当をして肩を貸し立ち上がらせた。しのぶは彼の羽織に血が付いている事に気づいた。一体どれだけの鬼をここに来るまでに斬ってきたのだろうか?自分が恨まれようと憎まれようとこんな毒の塊となっている自分を守ろうとしてくれている。それが辛くもあり、嬉しくもあった。
「歩けるか?」
「ええ、なんとか・・・」
「お前の日輪刀は他の奴らが回収してくれてるはずだ。ここを出ないと」
「おおっと、ここから逃がす訳がねえだろうが・・・」
そこに現れたのは生成りの『大将』と呼ばれている者だ。だが、どこかで見た事があるような気がしてならない。
「しのぶ・・そこに座っててくれ」
「・・・はい」
しのぶを手頃な岩に座らせると真次は生成りの大将と対峙する。日輪刀には手をかけていないが握り拳を強く握っている。
「お前・・・元・隠鬼殺隊だな?」
「流石は天下の五行柱様、すぐに気付いたか」
「!?」
しのぶは生成りの対象に視線を向ける。この男が元・隠鬼殺隊だったとは信じられない現実だったからだ。
「一つ聞かせろ、お前・・・なぜ『無残の残滓』に手を出した?」
「あぁん?こんな良い物、使わねえ手はねえだろうが!気持ちよくて力が手に入るんだからよ!!ギャハハ!」
「・・・っ」
違う、コイツはそんな奴じゃなかった。コイツは生真面目で真っ直ぐで繊細な心を持っていた男だった。
『五行柱様!俺、自分の呼吸が分かりましたよ!』
『五行柱様、俺・・もっと、強くなるんです!』
『五行柱様・・・俺、好きな人が出来たんです・・』
真っ直ぐな目をしていた男がこんな姿になる事は想像したくもなかったが、向こうから拳を振り抜いてきたため、それを咄嗟に避けて距離を取る。
「てめえ・・なんのつもりだ!?」
「それだよ・・アンタはいつもいつも俺を各下だと見てるその目が気に入らねえ!!」
「!?」
「追いつこうとしても追いつけねえ、好きになった人はアンタの恋人、俺をどれだけ惨めな思いをさせりゃあ気が済むんだアンタは!!」
「Shut up!!(黙りやがれ!!)」
彼にしては珍しい怒号が口から出た。自分のせいで『無残の残滓』を使わせてしまった責任と相手に対する怒りが混合しており、言葉を遮る事しかできなかった。
「どんな女に恋焦がれようと構いやしねえ、追いつけねえなら追いつこうとするのも、諦めんのも一つの道だ・・・」
真次は強く拳を握り続け爪が肉に食い込み血が流れ出し始める。日輪刀を鞘から引き抜くとそのまま、投げ付ける形で地面に突き刺した。
「だがな・・・悲劇しか生まなかった野郎の残滓に頼りやがって・・!」
「何とでも言え、俺はアンタを殺してやると決めた!殺した後はアンタの好いた女を楽しんでやるよぉ!」
その言葉に真次の中で何かがプツンと切れた音がした。いつもは冷静になれと他の『柱』達から注意を受けていたがそんな言葉は弾け飛んでいる。
「くっくくく・・・ハハハハ・・・!」
真次の様子がおかしい事にしのぶと大将は違和感を覚える。自分の顔を片手で覆い、笑い続けている。
「ま、真次さん?」
「初めて聞こえた・・・緒が切れる音がな・・!」
その目は憤怒と化しており、いつもはニヒルに異国語を使っているはずが、今は使わずに完全に切れてしまった男がそこにいるだけだった。
「ぶっ殺す!!」
日輪刀を手にし、地面から引き抜くと片手で持ったまま大将へ向かって歩いていく。その姿が圧倒的な強者としての威厳が出ている。
「う・・・うああああああ!!」
大将は真次に向かっていき、殴りつけた。真次は殴られ唇が切れ血が出ているのにも関わらず大将を睨んでいる。
「この程度か?」
「うっ・・・」
「こんな程度の力の為に人間を捨てて『無残の残滓』に頼ったってのか?」
左手で大将の右腕を掴み、横へと力強く横へと押しのけている。その顔は鬼気迫るもので鬼以上に鬼の顔であった。
「この、大馬鹿野郎があああああ!!」
腕を押しのけると同時に刀ではなく、拳で大将の顔面を思いっきり殴り飛ばした。呻き声を上げる前に地面に倒された事に信じられないという様子だ。
「うっ・・・」
鬼になった肉体として痛みは感じるが大したものではない。だが、大将は心が痛かった、憧れの人から叱咤され殴られた右頬は治っているのに痛みが続いているようで辛い。
「立て!お前が捨てたものが、どれだけ重たい物だったのか・・その身に教えてやる!!」
しのぶは真次が泣いている事に気づいていた。涙を流すから泣いているのではない、彼の右手から流れる血、心の奥底で泣いているのだ。自分のせいで後輩を鬼にしてしまった、自分のせいで辛い思いをさせてしまった、自分が不甲斐ないせいで殺すことになると自分を追い込んでいる。
大将は自分の鏡だ。誰にも相談できず、誰にも頼れず、誰にも認められず、ただ自分の中に溜め込み続けた自身の鏡像。
「く・・うああああああ!!」
「うおおおお!!」
手にしたままの日輪刀を使い、再生してでも殺しにかかってくる大将に対して全力で応戦している。拳で腹部を殴られ、吐血しようとも拳で反撃され、歯を折られる大将だが鬼と同じ状態である為に大した事はない、真次は怪我を負いながらも攻撃の手を緩めようとはしない。
「人間が鬼に勝てるものか!!」
「鬼になった時点でお前は成長を止めているんだよ!!」
四神の一体である白い猛虎、白虎が大将に迫り、その爪で大将を引き寄せていく。大将は自身がやられそうになっていたが、それ以上に白虎の力強さに魅せられ、自分がどうして真次に憧れていたのかを思い出していた。
「(ああ・・・そうだ・・・気に入らなかったんじゃない・・・嫉妬しつつも憧れていたんだ・・・相手が強い鬼であっても・・・逃げようとしない・・・その力強さ、不屈の精神と不退転の決意に・・・重たくて嫌だったのに・・・こんなにも大切なもの・・・だったんですね・・・)」
大将の頚が斬られ、真次は大将の首の近くに行く。大将は視線を向けると無意識に泣いていた。
「どうだ?思い出せたか?馬鹿野郎」
「はい・・・思い・・・出せました」
「It's too late(遅すぎんだよ)・・・全く」
「せめて・・・憧れた人の手で」
「甘えんな、自分のした事をしっかり魂に刻んで反省しろ」
「はは・・・やっぱり・・・五行柱様は・・・厳しい・・なぁ」
異国語を口にしている時点で真次の怒りは冷めていた。大将の頚が崩れ始めており、もう、幾ばくもないだろう。それでも真次は視線を逸らすことはしない。大将に人間を捨てさせたのは自分なのだから、その最後を看取るのは自分の中でのケジメだ。
「五行柱・・・様・・・貴方の命を狙っているのは・・・俺だけじゃ・・・ありません」
「何・・・!?」
「身近に・・・います・・・蟲・・様・・を・・ねら・・を・・・つけ」
「おい!どういう事だ!?おい!!」
大将は意味が有り気な事を言い残して消滅してしまった。最後まで聞けなかったのが心残りだが、長を倒したのだからこの鬼達も倒されるだろう。
「しのぶ・・行こう」
「・・・・はい」
改めて洞穴から脱出し、しのぶの日輪刀は隊士の一人が回収しており本人に返却された。その後、残党も倒され、蝶屋敷に運ばれる者、帰宅する者、事後処理をする者に分かれ、真次は蝶屋敷へと運ばれ、自身の手当てを終えたしのぶから直接治療を受けていた。
「今回は本当に助かりました。ありがとうございます」
「いや、良い・・・」
「そこまで思い詰める必要はありませんよ?」
「だが、アイツは・・・俺が!っ!?」
「良いんですよ、あなたのせいじゃない・・・」
「なんで・・・なんでそこまで俺を・・・アイツを追い詰めたのは」
しのぶは真次を抱きしめていた。姉が自分にそうしてくれていた時みたく辛い時、悲しい時にあやしてくれた時みたく。
「しのぶ・・・」
「はい?」
「泣いていいか?」
「構いませんよ・・・」
「うぐ・・うぅああああ!」
どんなに伊達男を飾ろうと、どんなに厳しくとも、優しくとも、強かろうとこの人は私の前だけでは弱さを見せてくれる。この弱さを見せてくれる姿、辛くとも受け入れてしまうのはなぜだろう?逆に受け入れてもらえた時があったからだろうか?もう分からない、一つ言えるのはこの人に恋してしまった事だ。
「もう平気だ・・・ありがとう」
「良いんですよ」
その後、真次は傷を癒し、自分の屋敷へと戻っていった。その夜、自分の屋敷で一人、思考に耽っていると何かを落としていったような音が聞こえ、その場所へ行ってみると手紙のようなものが落ちていた。
「なんだこれ?」
それを拾い上げ、中身を見た瞬間に真次は震えていた。手紙らしき物を握りつぶすと夜空へ向かって大声で叫んだ。
「なんで・・・なんで、こんなものを寄越したんだあああああああああ!!!」
大正コソコソ話
最後の手紙は果たし状です。
誰とは言いませんが、真次の知っている人物です。
しのぶさんで見たいネタ
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前世
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ご解任
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子育て(ご都合有り)
-
夫婦