サボっていた二人も全力全開DA!!
「うおおおおおお!」
「ぬああああああああ!!」
努力コンビ結成から翌日の朝、二人はそれぞれ鍛錬をしていた。炭治郎は走り込み、真次は縄で縛られた岩をもちあげて維持する鍛錬だ。
「はぁ、はぁ・・・!」
「ぜい、ぜい・・・!」
二人の息は上がっているが、自分でも分かっている。肺が弱い、それだけだ。人間は筋肉を鍛えることは簡単だが、肺などを鍛えるというのは難しい。だからこそ、呼吸法が要になる。
前日の夜、炭治郎は屋根に、真次は縁側でそれぞれ瞑想していた。炭治郎は何度も深呼吸して呼吸を落ち着かせ、真次は自身の特殊な呼吸で落ち着かせていく。
「(落ち着け落ち着け。集中しないと!)」
「もしもし、もしもし」
「はい!」
「頑張ってますね。お友達二人はどこかへ行ってしまったのに」
炭治郎に顔を近づけてきたのは蝶屋敷の主であり『柱』の一人でもある胡蝶しのぶだ。
自然と炭治郎の頬も赤く染まる。相手が異性でしかも美人であれば男としては当然の反応だろう。
「一人で寂しく・・・ああ、真次君が居ましたね」
「はい!彼と一緒に出来るようになればやり方を教えてあげられるので!」
しのぶと炭治郎の会話はしばらく続き、しのぶは自分の夢を炭治郎に託したいという想いを話した。
◇
しのぶは屋根から降りると今度は真次の所へとやってきた。彼は呆然と月を眺めている。
「もしもし」
「ん?ああ・・・しのぶさん」
「昔のようにしのぶで良いですよ」
「昔って言っても出会ったばかりの時でしょう?今はもう立場も違うから出来ませんよ」
「そういう所はキチンとしていますね。自分の身体は心配しないのに」
「う・・・」
笑顔で毒を吐かれ、真次は申し訳なさそうに視線を逸らす。しのぶは隣に座ると真次と同じように月を眺め始めた。
「ようやく回復しましたね。君の身体は本当に危なかったんですよ」
「ずっと、使い続けていましたからね。この特殊な呼吸が出来るようになってから」
「私は君のことが気に入っているんですよ?問題児的な部分もありますが」
「それは嬉しいことですけどね」
真次はさり気なく、しのぶの横顔を見た。それと同時に頭の中に映像が浮かんで来る。しのぶらしき人影が何かに取り込まれていく様だ。具体的には見えない、自分としてはただの『勘』なのだが、不思議とこれが今まで外れた事がない。つまり、この映像はしのぶの死を暗示しているのではと真次は思う。
「し・・・もしもし?もしもーし?」
「はっ!?な、なんですか?」
「なんですかじゃありません、ボーッとして!」
「す、すみません・・・」
笑顔を崩さないしのぶが珍しく拗ねた声を出していた。話していたのに無視されていたのだから当然といえば当然だろう。
「それじゃ、私も部屋に戻りますね」
「あ・・・しのぶさん」
「はい?」
「もしも・・もしもですけど、自分が死ぬ時になったらどうしますか?」
「・・・!?そうですね・・・私は次に託そうと思います」
「次に・・・ですか?」
「はい、それでは」
一瞬だけ目を見開いたが、しのぶは言葉を残して去っていった。だが、真次は言えなかった。貴女はこの先、死ぬ事になる。そんな事を本人に言えるはずがない。何よりもただの『勘』でそんな重要な事は言えない。この『勘』はこういう時になって自分を苦しめてくる。以前、不安になって伝えたりしていたが皆、そんな事はありえないと言い忠告を聞いてくれなかった。
「どうして・・・俺の勘は当たってしまうんだ・・・」
真次は自分の頭を抱え込みながらも一通り、落ち着いた後に瞑想を済ませ休む事にした。
◇
そして九日後、カナヲが破裂させていたという瓢箪を目の前にして真次は立っていた。
「すぅ・・・・・ふぅ・・・すぅぅぅぅ!ふーーーーーーーっ!」
ブオーーー!という低く大きな音が響き渡るが、真次は息を吹き込むのを止めようとはしない。しばらくして圧力に耐えられなくなった瓢箪がバァン!と思い切り破裂したのだ。
「・・・!」
「「「やったああ!」」」
「い・・・いよっしゃあああああ!」
「やった!真次!!すごいよ!!」
「へへっ!これで瓢箪は俺が一番乗りだな!」
「よし!俺も負けてられないな!」
「この瓢箪を当然のように破裂させられるようになるまで頑張ろうぜ!」
「うん!!」
この出来事を切っ掛けに努力コンビが快進撃を始めた。その翌日には炭治郎もカナヲが破裂させている瓢箪をクリアし、全身訓練は炭治郎が一番乗りとなり、反射訓練では二人共、カナヲの頭に薬湯の入った湯のみを置いてクリアした。
◇
それを遠くから見ている二人がいた。伊之助と善逸のサボり組である。炭治郎と真次が次々に課題をクリアしていく事に対して焦りが出てきていた。
そんな折、鍛錬を終えた二人が近づいてくると同時にしのぶも来ている。どうやら呼吸法に関しての説明をする為のようだ。
「真次君と炭治郎君の二人が会得したのは『全集中・常中』という技です。『全集中の呼吸』を四六時中やり続ける事で基礎体力が飛躍的に上がります」
「これはまぁ、基本の技というか初歩的な技術なので出来て当然ですけれども、会得するには相当な努力が必要ですよね」
そう言いながら、しのぶは伊之助へ近づくと肩をポンと叩いて笑顔を見せた。
「まぁ、
そう言いながら何度も何度もしのぶは伊之助の肩を挑発するように優しく叩き続ける。伊之助としてはふざけるなと言いたげな様子だが、ついに決壊した。
「はあ゛―――ん!?出来るっつ―――の!!当然に!!舐めるんじゃねぇ――よ!!乳もぎ取るぞゴラァ!!」
「(上手い!俺は付き合いがまだまだ浅いけど『やれるものならやってみろ』的な言い回しの方が、伊之助に効果的なのを見抜いてる。流石しのぶさん!)」
真次の心中をよそに、次にしのぶは善逸の手を包み込むように握って、微笑んだ。
「頑張ってください善逸君、
「え・・・わわわわわわわ!は、はいいいいいい!!」
「わー!あははは」
「(善逸は女好きだものな、あんな風に手を握られて一番貴方を応援しています的な事を言われたら落ちるよなぁ・・・)すごい・・・二人のやる気を簡単に引き出したよ、しのぶさん」
「ウフフ・・・」
僅かに真次に笑みを見せていたが、真次は苦笑するしかなかった。炭治郎は思わず真次に聞いてしまった。
「しのぶさんって・・・あんな感じでやる気を出させるのが上手なの?」
「俺も初めて見たけど、医者をやってるから性格を見抜くのが上手なんじゃないかな」
「なるほどね・・・」
炭治郎は納得し、次真は乾いた笑いしかできなかった。その後、サボり組と化していた二人は俄然、やる気を出して鍛錬に望んでいた。
「うおおおおおお!」
「ぬぐあああああああ!!!」
「まだまだァ!もっともっと、呼吸を意識しろ!伊之助!!」
「お前が・・・指図・・・するんじゃ・・ねえええ!!」
「善逸!しっかり走れ!女の子達が見てるぞ!!」
「ぬおおおおおおお!!!!!!!」
次真と炭治郎の努力家コンビはそれぞれ、伊之助と善逸を担当し真次が伊之助を、炭治郎が善逸を担当している。しのぶが見抜いた二人の性格からやる気の引き出し方を真次が覚えていた為、炭治郎にアドバイスしながら鍛錬の手伝いをしている。
◇
そんな四人を遠巻きに見ているのが居る、栗花落カナヲだ。彼女は四人が特訓しているのを黙って見ている。
「・・・・」
カナヲは一枚の銅貨を取り出す、裏表と書かれており空に向かって軽く弾くとそれを手の甲で受け止める。出たのは裏だ。
「・・・・・・」
そのまま屋敷へと戻る為に歩き出す。何かを決める為に使っているようで、裏が出た場合の行動を決めたのだろう。
「・・・」
一瞬だけ振り返る。四人は全員が大の字になって倒れていた。やる気を出したは良いが体力が続かなかったのだろう。
「ぜい・・・ぜい、俺はまだ・・やれっぞぉ・・・!」
「身体の動きと・・・口の動きがあってないから・・な・・・はぁ・・・はぁ!」
「俺が一番・・・応援されてる・・・はぁ・・・はぁ!」
「全員で・・・無茶しすぎた・・・・・はぁ・・・はぁ!」
この日から四人は徹底的に己を鍛え続け、全員が『全集中・常中』を完全に身に付ける事になる。そんな中、真次はまた直感が働いていた。
「はぁ・・・はぁ(なんだ・・・なにか良くない事が起こるような気がする)」
次回は時間を飛ばして列車編になるかと。
間近な人の死を初めて体験する事に。
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