打ち直した日輪刀を伊之助が自分好みにしてしまうトラブル等があったが、旅立つ準備の試験として例の巨大な瓢箪を差し出された。全員がそれに息を吹き込み破裂させ、合格とされた。
「さて、カナヲに挨拶・・・ん?あれは炭治郎?」
真次がカナヲに挨拶しようと思ってきたのだが、炭治郎はカナヲの手を握って何かを訴えかけている。
「またやる気を出させて・・・うっ!?」
真次の『勘』が二人の姿を見せてくる。二人が笑顔で歩いている姿だ。これは未来なのだろうか?まるで二人は遥か先に行っているような、そんな思いが過る。
「ああ・・・・なるほど」
それが終わると真次は何かを悟ったような表情に変わった。彼は自然とカナヲを異性として見ていた。初めて会話した時かも知れないし、出会った時かも知れない。
彼女の儚さや、身体能力で現る美しさ。身体の部位、黒く艷やかな髪など上げればきりがない。
だが、そんな恋心すら彼は自分の中で押し殺してしまった。炭治郎や伊之助、善逸にはバレてしまうだろう。だが、自分が口にする訳にはいかない。
そう、彼女のそばに居る事が許されている相手は既に決まっている。それを自分の『勘』が見せに来た、否、警告なのかもしれない。
炭治郎が居なくなったのを見計らって真次はカナヲの近くへやって来る。何事もない様に装って。
「カナヲ」
「?」
「今まで特訓などに付き合ってくれてありがとうな」
「ううん、師範の指示に従っただけだから」
「そっか・・・それでもありがとう」
「?」
「カナヲ、君は必ず幸せになれるよ。きっとね」
「・・・?」
「俺は『勘』が良いんだ。なんとなくだけど、君は必ず好きになった人と一緒になれるよ」
「意味が分からない」
「今は分からなくても良いよ。時間が経てば分かるようになるさ、それじゃ」
歩いていく背中にカナヲは彼の背中から『哀愁』が漂っているのが『視え』ていた。
そんな気持ちは自分には分からない、それでもとても寂しがっているのだけは理解できた。そんな相手に自分は何もできない。
「・・・・」
その背中をカナヲは黙って見送った。だが、カナヲも彼に黒い何かが纏わり付いているのを言い出す事は出来なかった。
◇
そして旅立ちの日、駅へと向かおうした三人の目の前に真次が立っていた。
「真次!?」
「なんでオメーが此処にいるんだよ!?」
「俺も旅に同行させてくれないか?」
「は?いやいや、何言ってんの!?鬼殺隊の異端児が何言ってんのさ!?」
「俺は構わないよ。味方がいるのは嬉しいし真次なら心強いよ!」
「何すぐに承諾しちゃってんの!?ちょっとは考えろよ!」
「いや、異端児よりも問題児的な要素の方が強いし俺」
「それもそれで問題ありだろ!?」
善逸は三人の言動に一つ一つ、ツッコミを入れていく。真次は悪い事とは思っていない様子で伊之助は真次に頭突きを入れようとしており、善逸が羽交い締めをして止めている。
炭治郎は仲間ができたのが嬉しい様子で笑顔になっている。真次は炭治郎に声をかけた。
「俺は炭治郎、君と友情を築きたい」
「?俺達はもう友達じゃないか、だからそういう事を言わなくても大丈夫!」
「!」
炭治郎の真っ直ぐな言葉に真次はほんの少しだけ、驚愕したがすぐに笑みを浮かべてトンと上腕部を軽くぶつけ合った。
「あーもう!二人で仲良く友情を確かめ合うなよ!!てか、俺達を除け者にするなよ!」
「そうだそうだ!」
「くっ、アハハハハ」
「テメー!何笑ってんだ!?」
「いやいや、楽しくなってさ!それでつい、馬鹿にした訳じゃないさ」
真次は家族を鬼に殺されて以来、初めて心から笑った。楽しくて楽しくて仕方が無かった。
仲間といるのがこんなにも楽しいだなんて初めての事だった。誰かといても独りでいるような感覚に囚われていた。
どうしても他人が信用できなかった。人の汚い部分を見てしまった事もあった。母が父に暴力を受けているのを見ていて何も出来なかった。そんな自分が許せず強くなっても誰も認めてくれなかった。
鬼殺隊に入ったのも認めて貰いたく、家族の仇を取るためだった。そんな中『柱』の中で何故か自分を気にかけてくれたのが胡蝶しのぶであった。
まるで出来の悪い弟を更正させる姉のように接してくれた。彼女は真次の求めているものが分かっていたのだ。
それは「愛」であり「無償の愛」でもあると。真次は厳しすぎる家庭に生まれたが故に誰かに「愛されている」という自覚が足りなさ過ぎるのだ。それを理解した上での行動だったのだろう。
「あー、笑った笑った!それじゃ、行こうか!」
「そうだね!」
「だから、お前が仕切るんじゃねーよ!」
「そうじゃなくて、ちゃっかり同行してるし!」
文句を言いながらも伊之助と善逸は二人の後を追った。真次が笑い出すなんてものすごく貴重な場面だったのではなかろうか。
炭治郎はそう思わずにはいられなかった。今の真次からは感謝の匂いが感じられる。自分に明るい感情を取り戻させてくれてありがとう、そんな気持ちが匂いとして出ているのだ。しかし、それと同時に自分に対する嫉妬と哀愁の匂いも感じられた。
だが、初めて出会った時に注意された事を思い出して口にしなかった。口に出せば彼は怒りに任せて殴りかかってくるかもしれない。
自分の心の内を隠したがる彼の性格なのは分かっていた。それと同時に自分の悪い癖も。
「口は禍の門」とはよく言ったものである。自身の悪い癖を彼から教えて貰う事で仲間割れを起こさずに済んだのだから。
今は仲間として、彼と共に戦おう。炭治郎は改めて心の中で決意を固くするのだった。
汽車に乗る前です。さて、次から汽車ですが・・・煉獄さんを生かすべきか・・・それとも死なせるべきか・・・
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